世話焼き男子とガールズバンド   作:れれれれ

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 gacha様、ティアナ000782様、医道様、黒須透香様、評価ありがとうございます。
 また、更新が遅いにも関わらずお気に入り300件到達、ありがとうございます。時間がカツカツですがちまちま進めていきます。
 


第12話 Listen To My Story

「筑波くんって、かっかかか彼女いるのっ!?」

 

「はいィ?」(杉下○京)

 

「違うの…?」

 

「いやよくわからんのだけど、なんでそうなったの」

 

「えっと、この前の水曜日にCiRCLEで」

 

「オーケー理解した」

 

 

 CiRCLEのカフェテリアにて。相変わらず鼻をグズグズ言わせながら椅子についている俺は、目の前の少女によって投下された核爆弾に心底困惑していた。

 事の始まりは、一時間前に遡る。

 

 

 ◇◆◇

 

 

S.Kentaro『今日かわりにゲーム買ってきてくんね』

 

筑波昌太『ざけんなバカ』

 

S.Kentaro『代金はわたすし今度なんか奢るから』

S.Kentaro『カツ丼でどうだ』

 

筑波昌太『3日分で手を打とう』

 

S.Kentaro『多』

S.Kentaro『わかったよ』

 

 

 放課後、こないだのマックがある駅前でふとスマホを確認した俺。

 唐突に来た健太郎からのLIGNE曰く、今日発売の『俺死んでまうストーリー2』を買ってきてほしいとのことだ。

 タイトルから重大なネタバレしてんのやめろや。てかなんで続編出てるんだよ、クソゲー感ヤバいのに。

 

 ヤツは体育会系ではあるがゲームもそこそこにやるらしく、たまにそれに関して話すこともある。ただ俺はこんなゲームは知らない。何なんだよこれ。

 

 

 ついいつものノリでざけんなバカとは言ってしまったが、俺自身今日は暇なので別にタダで受けても良かった。まぁでも、もらえるもんはもらっときませんとなぁ(ゲス顔)。

 世の中は等価交換で回っているのだよ。

 

 ちょうど駅前界隈はゲームショップあるしちょっと寄ってけば買えるだろ。とっとと済ませて帰ろ。

 

 

「あっ…あのっ」

 

「へぁ?あっ、あなたは」

 

「この間お話聞いてくれた人ですよね…?」

 

「えっと、先々週のことなら自分ですね」

 

「そうですか…!改めまして、私は倉田ましろっていいます。この間はありがとうございました」

 

「筑波昌太です。あれからどうですか」

 

「順調です。合唱コンの練習も恙無く進んでますし…あの、都大会行ったら是非見に来てください」

 

「大きく出たねー。もし出られたら見に行かせてもらおっかな」

 

「はい、絶対ですよ」

 

「いい闘志だ、見違えたな」

 

 

 駅前界隈に佇む俺に、こないだの白髪お嬢様が声をかけてきた。名を倉田ましろと言うらしい。そういえば今の今まで名前聞いてなかった。

 前は空気が淀みまくってて淀殿になってたが、今日はどこか吹っ切れたというか…以前の弱さが鳴りを潜めたように見える。あのときしたアドバイスは実を結んでいるようで何よりである。

 

 この後どうせだしと倉田さんにCiRCLEに行かないかと誘われた。どうやらいつの間にか彼女はCiRCLEの常連になっていたらしく、そこでバイトしてるはずの俺は全く知らなかった。

 とはいえ一度受けてしまった以上は頼みごとは遂行しなきゃいけないので、CiRCLEに行く前に倉田さんを連れてゲームショップに向かう。

 

 件の『俺死んでまうストーリー2』は何故か入り口そばにデカデカと陳列されていて、見つけるのはそう難しくもなかった。

 …手に取ったそれを、倉田さんは訳がわからなさそうな表情をして見ていたが。気持ちはよくわかる。

 

 

「ゲーム、お好きなんですか?」

 

「人並みかな。これは頼まれて買ったから全然中身知らんけど…やっぱこれのタイトル意味わからんよな。俺も思った」

 

「あっ…いえっ、そんなつもりでは」

 

 

 どうやら彼女は素直な性格のようで、香澄みたいに結構はっきり表情に出る。ババ抜きとかできなさそうだなぁ…。

 ちょっとつっついてみたら面白そうだが、大した面識もないのにそんなことをするほど非常識じゃないのでやめる。

 

 駅前界隈をふらつく過程で、お互いのことを少し話した。こちらからは前会ったときにはもうタメ口だったが、結構絡んでるのにそのままなのもアレなのでお互いタメ口にしようと頼んだ。

 

 

「CiRCLEはよく来るのか?」

 

「うん。たまに練習してるんだ」

 

「ほへー、何?元からボーカルやってたん?」

 

「ううん、パートリーダーになる前は全然やってなかったよ。でも選ばれてからはどうにか勉強して頑張ってるんだ」

 

「ボーカルよくわからないのに立候補したの?勇者すぎん?」

 

 

 言いつつ、ようやっとCiRCLEに着いた。駅からは微妙に距離があり、歩くには人によっては長いと感じるかもしれない。

 お互い適当にアイスコーヒーを頼み、今まで謎のマカロンが鎮座していた席に座る。

 

 ちなみに今のCiRCLEカフェテリアは足湯の代わりに盆栽、そして各テーブル上にはアサイーボウルがある。いつも思うんだけどなんでむき出しで放置されてんのさこいつら…。

 

 相変わらず知らんうちに入れ替わってるし、まりなさんに聞いてもなんか黙っちゃうし。個人的にはCiRCLE七不思議の一に入ると思ってる。

 

 

「こないだから俺ここで働いてるんだよね、立地もいいからさ」

 

「そうなん…あっ」

 

「?」

 

 

 突然倉田さんの顔が赤くなった。今の話にそんな要素あった?

 少し声を漏らしたと思ったら目を伏せ、視線をせわしなく動かし始めた。というか泳いでいる。

 

 

「思い出したんだけど…つっ、筑波くん」

 

「な、何。どうしたの」

 

 

 そして冒頭の彼女による爆弾投下の場面に戻る。

 こないだ以上にしどろもどろになりながら彼女は──

 

 

「筑波くんって、かっかかか彼女いるのっ!?」

 

「はいィ?」(杉○右京)

 

 

 ──そう言い放った。つい右○さんみたいにねっとり返答してしまった俺は悪くない。

 今の俺は非常にマヌケな顔をしていることだろう。そんな俺の様子を見ながら倉田さんは続けて言う。

 

 

「違うの…?」

 

「いやよくわからんのだけど、なんでそうなったの」

 

「えっと、この前の水曜日にCiRCLEで」

 

「オーケー理解した」

 

 

 この前の水曜日とは即ち俺の初出勤日。たぶん彼女はラウンジで俺とひまりがいろいろやってたのを見たのだろう。

 そういえばAfterglowの俺に対しての態度が急変したのもアレからだな…あっ(察し)

 

 

「俺彼女はおらんのよ。いたらいいなーとは思うけど」

 

「そうなんだ…意外」

 

「俺そんなプレイボーイに見えるかな…」

 

「そ、そうじゃなくて…私を助けてくれたとき、いろいろ気を遣ってくれたから。いてもおかしくないかなって」

 

「あぁ…アレはただの癖みたいなもんだし、特に今までモテたとかはないからなぁ。しばらくはフリーのままじゃない?知らんけど」

 

「そうかなぁ…」

 

 

 倉田さんは猜疑心マシマシである。そんなに疑うところないでしょ…。今まで実績がないのが最たる証拠だ。

 

 

「何ならAfterglowのヤツらに聞いてくれてもいいぞ。俺と同じこと言うだろうから」

 

「えっ、あの人たちと知り合いなの…?」

 

「おう、全員とは中学以来の付き合いだぞ」

 

「…やっぱりいるんじゃないの?彼女」

 

「だからいないよ!!!!!」

 

 

 バン!と手のひらをテーブルに叩きつけて抗議する。本当にいたことないのに『彼女いないの〜?意外〜』ってずーっと言われるの社交辞令みたいでツラくない?俺は今ツラい。

 

 ここでコーヒーが来たので倉田さんに砂糖とフレッシュを一つずつ渡す。さっき話の流れで量は聞いといたから問題ないはず。

 俺は今日はブラックのままで飲むことにした。つぐならここでめっちゃミルクとか放り込むんだろうなあ。

 

 

「ほら、こういうさりげない気遣いとか…絶対キュンと来ると思うんだけどなぁ…」

 

「えっ?ギュンター・ラル?」

 

「あっ、いや…なんでもないよ」

 

「ほんとかぁ?」

 

 

 そうもずっと疑いの目を向けられても居心地悪いんだけど…。

 でもよく考えたら彼女童貞っていう主張も証拠能力としては微妙だよな。いよいよ悪魔の証明じみてきた。

 

 …彼女童貞ってなに?

 

 

「今日Afterglowここで練習してるだろうし、出てくるまで待ってみるか?もうすぐだと思うけど」

 

「えぇっ?いや、そこまでしなくても…」

 

「昌?」

 

「噂をすれば」

 

「誰、その子」

 

「ヒュウ↑」

 

 

 ちょうど蘭が声をかけてきたと思ったらスタンドを従えていた件について。

 えっ…なんか怒ってるとも違うような…こんな蘭は初めて見たかもしれない。というかそのせいで対処法がわからん。俺死んでまうストーリー…。

 

 あっ、蘭に続いてつぐが出てきた。助けてくれつぐ!というメッセージを籠めてガン見する。

 それに気づいた彼女はこちらにトテトテと寄ってきて言う。

 

 

「あっ、こないだ昌太くんが助けてた人じゃない?」

 

「は、はい。倉田ましろです」

 

「…美竹蘭」

 

「羽沢つぐみです。それで…昌太くん。なんで二人でいるの?」

 

 

 …つぐはやけに“二人で”を強調してそう聞いてきた。

 こっちもなんか蘭みたいになってる〜。こわいよぉ(失禁)

 

 

「あの、私から誘ったんです。お礼も込めて、ちょっとお話したいなって」

 

「…そうなんだ。それならいっか」

 

 

 俺の代わりに倉田さんが答えると、二人はすぐにその矛を納め──てはないなこれ。多少緩んだとはいえ倉田さんに対象が移った気がする。

 なんで?何が始まるのです?

 

 

「蘭〜?何してるの?」

 

「ひまり。いや、昌がいたから」

 

「昌くん、やっほ〜」

 

「オッス昌太」

 

「オッス。勢揃いじゃん」

 

「練習後だからね〜」

 

 

 遅れてひまり、モカと巴がこちらに来た。

 流石にこの三人は話を聞いていないこともあってか、蘭やつぐのようなアグレッシブさはない。

 Afterglowが全員揃ったのを見て、倉田さんはさっきのことを聞く。

 

 

「改めて、倉田ましろといいます。あの…つかぬことをお聞きしますが」

 

「うん、どしたのー?」

 

「筑波くんって、彼女はいるんですか?」

 

「…」

 

 

 あっ、まずい。あとの三人もどこかアグレッシブになった。

 …いやこれよく考えたら、今までの流れ知らないと倉田さんが恋敵嗅ぎまわってるみたいじゃない?

 これが、所謂アンジャッシュ状態…?

 

 えっ…やべぇ…誘導したの俺だし…

 

 

「それは、どういう…」

 

「あー待って、俺の話を聞いて」

 

「ちょっと黙ってて」

 

「聞いて!お願い!」

 

「…何?」

 

「あの、倉田さんはそういう意図はないから。俺の性格的に彼女がいないのが不思議なんだってさ」

 

「な、なるほど…でもなんでそういう話になったの?」

 

「えっと、この間は筑波くんの気遣いが心地よくて…それで不思議になって」

 

「…………そっか」

 

 

 ひまりがぼそっとそう漏らす。モカ以外はみんな倉田さんをじっと見ていて、当の彼女はどこか居心地が悪そう──

 

 ……。あれ?

 これ拭いきれてない?どころかちょっと威圧感が増してるような…俺説明したよね?矛を収めろ!デトロ!開けろイト市警だ!

 

 

「倉田さんは、まだ大丈夫だと思うなー」

 

「…モカがそういうなら。ごめん、倉田さん」

 

「い、いえ…私も変な質問をしちゃったので」

 

「昌太くんのことはどう思ってるの?」

 

「えっ?えっと…すごく、あったかい人だと思います。私が失意の底にいても、暖かく照らして導いてくれる、行灯みたいな人だと思いました」

 

「…本当に大丈夫?」

 

「……たぶんね」

 

「モカ〜!?」

 

 

 あの、俺に関していろいろ言ってくれるのはいいんだけどさ、本人のいないとこでやってくんない?めっちゃ恥ずかしいんだけど。

 

 ところでモカが諌めてくれた?のにやっぱり事が流れてないんですけど、どうなってるんですか。

 変に介入もできずただひたすらに傍観してるが、収集つくのかこれ。

 

 

「…本当に、筑波くんは彼女いないの?」

 

「そう言ってるじゃん…。なぁ?」

 

「う、うん!そうだよね!」

 

「えっ、知ってるよな?俺いないよな?」

 

 

 そうだよねってなんだよ、つぐみさんや。中学時代からの付き合いのお前らならわかっとるやろ。今更確認することでもないだろうに。

 正直今まで生きてきて、モテ期だなんだとかそういった萌芽すら感じたことはない。普通に過ごして、普通に生きてきただけなのだ。

 

 …いや、普通に生きてたらモテ期って来るもんなのか?もしそうだったら俺かなりの落ちこぼれやん。普通以下やん。

 

 

「この通り、俺は再三に渡って彼女はいないって言ってるんだがなかなか納得してくれない。俺別にモテないよな?」

 

「…マジで言ってる?」

 

「ひまり?今なんて?何だ今のは?」

 

「いやぁーーなんでもないなんでもない!!」

 

 

 つーことは俺はモテてたのか?いやぁ、でもそんなこと微塵も感じたことないしなぁ。

 …となると、考えられるのは──

 

 

「噂の段階ではいい感じだけど、実物を見て失望されてた、のか……」

 

「昌太ーー!?」

 

 

 いや、辛。それじゃしばらくどころか一生フリーじゃねえか。一瞬にして俺死んでもうたストーリーな俺に巴が名前を呼んでくる。やめろ、今は放っといてくれ!

 衝撃の真実に全俺が涙──!

 

 ガックリと頭を垂れ、今度は俺が失意のどん底に叩き落される。

 

 

「筑波くん…!?えっとその、そんなことはないと思うよ…?だって現に私が良く思ってるんだから」

 

「…倉田さん?そうなの?」

 

「うん。本当に失望してたら、こうやって声なんてかけてないよ。だから、気を強く持って」

 

「…おう、ありがとう」

 

「ねぇこれ本当に大丈夫なの?」

 

「自信なくなってきたなー…」

 

「えっ」

 

 

 ◇◆◇

 

 

 あの後、Afterglowは倉田さんと少し話をしていたようだ。俺は相変わらず下を向いてたからよくわからんけど。

 ただ帰り際は結局誤解を拭えてない気がした。なんていうか、どこか訝しげだった。

 

 それは隣の彼女も同じようで…。

 

 

「筑波くん。本当にいないの?」

 

「何回聞くねんそれ。いないよ」

 

「…まぁ確かに、それは本当っぽいね。でもAfterglowのみんなは筑波くんとは真逆のこと言ってたよ?」

 

「えっマジ?何でだ…」

 

「…」

 

「…なんて言ってた?」

 

「それは、秘密かな」

 

「あ゛ぁんでだよぉ!!」

 

 

 本当のことを言ってるだけなのに、どうしてこうも歯切れが悪くなるんだ。ちゃんと俺の話を聞いてくれ。

 

 駅前まで倉田さんを送りに来た俺は、当の彼女と未だに禅問答を繰り広げていた。

 こうしてみるとやっぱりこないだとは大違いだな。失礼な話だが、当時の彼女はここまで能動的に絡みにくるような人には見えなかったのだ。やっぱり変わったんだなぁ。

 

 

「うーん、やっぱり倉田さんは変わったよなぁ…。前がひどすぎたのかな…」

 

「筑波くんもそればっかりだよね。…君のおかげなんだよ」

 

「ん?…いやまぁ、こないだとかほっといたら死んじゃうんじゃないかって思ったし」

 

「そんなにひどかったんだ…」

 

 

 そんなにです。

 当時はそんな彼女とここまで話すことになるとは、少しも思ってもいなかっただろう。不思議な縁だな。

 

 

「家は遠いのか?」

 

「うん。結構かかるかな、乗り換えも多いし」

 

「そっか。俺はここまでしかついてこれないけど、もう暗いし。気ぃつけろよ」

 

「うん。ありがとう、筑波くん」

 

「そんじゃな」

 

 

 土地勘ないあたりから察してはいたけど、結構遠くからCiRCLEに通ってるんだな。大変だなぁ。

 大切なウチのお得意様だし、これからもぜひともご贔屓にしてもらいたいもんだ。

 

 

「…『モテない』なんて、全然そんなことなさそうだけどな。ぽっと出の私でもわかったのに、鈍感なんだね。筑波くん」




 
 しれっと修正をかけて辻褄合わせをしたのはいいんですが、もしかしたらどこか見落としているかもしれません。気づいたらご一報ください。
 

これからはどっちが見たいですか

  • いつものゆるい日常
  • シリアス
  • その他(宜しければ感想などに)
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