世話焼き男子とガールズバンド   作:れれれれ

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 〜お前誰だっけという人のためのあらすじ〜
 
 体育祭した
 


第34話 イェーイ!あなたを詐欺罪と器物損壊罪で訴えます!理由はもちろんお分かりですね?あなたが皆をこんなウラ技で騙し、セーブデータを破壊したからです!覚悟の準備をしておいて下さい。ちかいうちに訴えま

 東京駅から鉄道で約三時間、千葉県某所。夏休みを迎えた健太郎と修介、そして俺はここの海岸へやってきていた。

 天気は快晴、日を遮るものなどこの砂浜にはありもせず、砂たちがとてつもない熱を孕んでいるせいで異常に暑くなっている。

 

 それもあってか、空気が熱を持ちすぎて海パン姿の俺たちを灼きに来ている。これだから夏は嫌なんだよ…。

 

「来たはいいけどどうすんの? 帰る?」

「バカ言えよ昌太。海来たらすることといえば一つだろうが」

「…それとは?」

「ナンパです」

「「は?」」

 

 言うや否や海の方へ全力ダッシュする健太郎。頭をしばいて止める暇すらなく、俺たちは見送るしかできなかった。そしてあっという間にゴミみたいに小さくなっていった…。

 

「あー。海の家もあっちの方にあるみたいだし、行ってみる?」

「そうするか…何やってんだよアイツ…」

 

 そうして海の家の方へ歩き始めて数分。

 ようやくウッキウキで女の子に話しかけている健太郎が見えてきた。

 

「…ん?」

「どうしたの?」

「いや、なんか…女の子の方…」

 

 あの水着姿の女の子、既視感がある。

 一房に結われたローズブラウンの髪はゆるやかに肩へ下ろされていて、ゆるやかなカールを描いている。そして青の双眸は困ったように歪められ──。

 

「死ねオラァ!!!!!」

「ぶべぁ!!!!!」

 

 その少女が山吹沙綾だと気づいた瞬間、俺は健太郎に向かってドロップキックをかましていた。

 俺の姿を認めると、なぜか彼女はばふっと顔を赤くした。

 

「えっ、昌太!?」

「沙綾…だよな。どうしてここに?」

「こっちのセリフなんだけどな…。私はポピパのみんなで遊びに来たんだよ。昌太…も、そんな感じ?」

「あぁ、まあな。で、こいつが何か粗相をしなかったか?」

「あはは…大丈夫だよ。でもちょっと強引だったかな?」

 

 倒れ伏した健太郎を足蹴にしながら沙綾から事情聴取してみると、案の定。そのへんのくぼみに蹴っ飛ばして砂風呂にしてやった。

 

 所在なさげにもじもじしている沙綾は、まさしく目に毒であった。普段見られない真っ白な肢体が露わになっている水着姿はかなりセンシティブ。

 スタイルの良さも相まって、目を向けると思わず声を漏らしてしまった。

 

 当の沙綾は、顔を赤らめたままボーッとこちらを見つめていた。が、おもむろにこちらに近づくと、吸い寄せられるようにぺたぺたと俺の身体を触ってくる。

 この格好でゼロ距離に近づかれ、俺は動揺を隠せなかった。

 

「お、おい!?」

「…ぁ、ご、ごめんっ」

 

 距離が近づいたことで、視線もつい彼女の唇を追ってしまう。ぐっ…!

 

「どうしたの…?」

「いや、なんでも」

「そ、そう? それにしても、昌太ってこんながっちりしてたっけ? 脚とか」

「チャリ通のせいだろうな…」 

「そっか。その…かっこ、いいよ?」

 

 エ!? 沙綾ってこんな直球勝負する子だっけ!?

 なんというか、元来彼女は一歩引いてモノを見ているタイプだったはずだ。確かに頑固なところもあるが、人を慮りすぎる質からあまり自分をさらけ出せていなかったフシがあった。

 いや分析してる場合じゃねえ。顔がめちゃくちゃ熱い。

 

 沙綾は未だに顔を赤らめて何やらもじもじしている。

 上目遣いでこちらを射抜くその様は、何かを期待しているようで。

 

「…沙綾も」

「っ」

「すっげぇ可愛い」

「ぁ…ありがとう…」

 

 こういう言葉を期待してるのかと思い切って言ってみたが、沙綾は頬を覆い隠してそっぽを向くばかりだった。え、違った!?

 くそ、それじゃ恥ずかしがり損じゃねえか。こんなこと面と向かって言うなんて慣れてないから、心臓がバクバクうるさい。きっと彼女同様に顔がさらに真っ赤になってるに違いない。

 

「まさかあんなストレートに来るなんて…! 今まではっきり言われたことなんてなかったのに…っ」

「…?」

 

 なにやらぶつぶつ呟いている。怖い…。

 

「おい修介…よく見たらあの娘…」

「今更気づいたの? 音楽祭で昌太といっしょに出てた人でしょ」

「…やってもーた」

「自業自得だよ。たしか幼なじみなんでしょ?」

「え、俺殺される? 死を覚悟しといたほうがいい?」

「何か言ったぁ?」

「いえなんでも」

 

 こいつ、このまま生き埋めにしといてやろうかな。沙綾に手を出そうとしてたって考えるとめっちゃムカついてきた。

 別に何しようが自由ではあるが、沙綾には手出すなよお前。

 

「てかお三方、もう俺腹減ったから出してくんない? まだ全然遊べてないんだけどー」

「海の家で昼めし食べようよ。あのアホはほっといて」

「あ、あぁ…。そうするか。沙綾は?」

「ふぇっ!? ぁ、私も行くっ。みんなも連れて行くから先行ってていいよ」

「わかった。じゃあまた後で」

「え、ちょっとおい俺は!? 放置!? 俺に死ねと!? おい、おーーーーーい!!!!!」

 

 

 ◆◇◆

 

 

「はふぅ…本当にびっくりした…」

 

 香澄の鶴の一声でとんとん拍子に決まった海水浴。まさか場所も時間もかぶって昌太と出くわすなんて思ってもいなかった。

 未だに心臓がバクバクしてる。最初にからかったのはこっちだけど、それでもあんなドストレートに褒めてくれるなんて思ってもいなかったから。

 

 火照った顔をごまかしたくて、みんなを呼んでくるという口実を盾に、いったん昌太たちとは別れた。友達と一緒だったみたいだけど、バレてないよね…?

 

「さーや? どうしたの、ちょっとのぼせてない?」

「ひぇっ!? なんだ、香澄か…。んー、ちょっとね」

「おい、まさかとは思うが…」

「…うん、そのまさか」

「どんな確率だよ!? もはや昌太がこっちに合わせてきてるとしか…」

「んーん、本当にたまたまみたいだったよ。もし本当にそうだったらあらかじめ連絡してくれると思うし」

 

 モンモンと考え事をしながらみんなを探していると、背後から香澄に声をかけられた。

 私が変な声を出して反応してしまったものだから、それだけで香澄と一緒にいた有咲は察してしまったらしい。

 

 私がここまで防御力が低くなるのは、おおよそ昌太関連に限られると、賢い有咲にはすでに察知されているからだ。

 最近私がどこかぎこちない理由も、きっと有咲はわかっている。

 

「ま、まあ…そうか。あんなお人好しがそんなだまし討ちみたいなマネ…」

「昌太くん? 来てたの?」

「うん…海の家行くって言ってたよ」

「ほんと!? 行ってくる!」

「あ、おい!」

 

 昌太が海の家にいると聞くや否や、香澄はすぐに海の家へ走り去ってしまい、残るは私と有咲だけ。

 落ち着きのない香澄に有咲がひとつため息をつく。

 

「りみりんとおたえは?」

「ん? 海の家。私がどっか行った香澄をひっ捕らえてくるからってみんなには先に行ってもらった」

「あ、あはは…。そっか」

 

 そう言いながら、未だ火照りの引かない顔を手で扇ぐ。

 夏の暑さもあってかなかなか熱は引いてくれない。こんなんじゃもう昌太と顔合わせられないよ…。

 そのさまをじーっと見ていた有咲は、不意に「なあ」と声をかけてくる。

 

「…なぁ。どんな感じなんだ? 恋って」

「えっ!?!?」

「ぁ、かかか勘違いすんなよ! ほ、ほら、私ってそういうのとは縁遠かったし! だから、その、気になって…」

 

 一瞬で有咲への警戒レベルが跳ね上がった。

 だが有咲は本当に興味本位で聞いたようで、踏み入りすぎたと思ったのか声色が尻すぼみになっていた。

 

「ごめん、デリカシーに欠いてた。今のは忘れてくれ」

「んーん、いいよ。教えてあげる」

「え?」

 

 びっくりしたのは本当だけど、もう有咲にはとっくにバレていることだ。今更繕ったところで意味はない。

 それに、箱入り娘の有咲には、女の子として一度は経験するだろうこの幸せを教えてあげたかった。親友として、恋愛の先輩として。

 

「恋、はね…。もうその人以外目に入らなくなるの。気づいたら目で追っちゃって、ふと目が合うと一気に顔が火照って…。胸がきゅーってなってさ」

「…」

「手を繋ぎたいけど恥ずかしくてなかなか踏み出せなくて、でもいざ繋ぐとすごく嬉しくなる。そのたびに思うの。あー、好きだなぁ、って」

 

 いろいろ口で言ってはいるけど、それよりも私の表情が恋が何たるかを雄弁に語っていると思う。

 女の子にこんな表情をさせちゃうのが恋の怖いところなんだよ、って。

 ずっとこちらに視線を送っていた有咲が、きゅっと胸元で手を揉み込む。

 

「やっぱりそれが恋なんだな。最近の沙綾ってそんな顔する回数が明らかに増えててさ」

「えっ!? ほんと!?」

「ああ。私からしてみればかなりわかりやすかったけどな…案外他の人にはバレてないっぽかったぞ」

 

 やば、全くわからなかった。そりゃ有咲にはバレるなぁ…。と、ふと有咲は顔を曇らせてぼそりと呟く。

 

「正直、羨ましい。私はこんなんだからさ、小学生の時は男の友人とかがいなかったんだ。だから私には…」

「有咲もきっと来るよ。恋に落ちる瞬間がさ」

「私にも、か。そんな時が来たら、きっと槍でも降るだろうな」

「あはは、そんなことないってば。有咲かわいいし」

「ななな、なっ…!?」

 

 有咲に限らず、みんな引く手あまただと思うけどね。私が顔を合わせたことのあるバンドの人たちは、みんなビジュアルで売ってますと言われても得心のいくようなかわいい子ばっかりだし。

 なんてことを漏らしたら、有咲に白々しい目で見られた。解せない。

 

 そんな軽口を叩き合いながら、私たちは燦々と太陽の照る砂浜を歩いていった。

 

 

 ◇◆◇

 

 

「おい、ここの海の家って何が食えるんだろうな」

「近えよ暑苦しい。砂くらい落とせよ」

「え?」

「え? じゃなくて…。まあオーソドックスに焼きそばとかサザエのつぼ焼きとかじゃない?」

「あぁ、いいなぁそれ。なおさら腹減ってきた…」

 

 やっぱり置いてくればよかったかなこいつ。

 海の家の前で、さっき埋められてたせいでついた砂を落とすアホを待つ傍ら、小屋の中に目を向ける。

 案の定人だらけではあるが、まだ昼には早い時間ということもあって入れなくはなさそうだった。

 

「私さっきメニュー見たけど、枝豆もあったよ」

「いやチョイス渋いな──え?」

「よっ、昌太」

「おたえかよ…急に入ってくんなビビるだろ」

 

 急に割り込んできておっさんみたいなチョイスをしてみせたおたえ。腰まで余裕で届く艷やかな髪をお団子にしていて、水色のフリフリのついた水着を着ていた。

 砂を落としていた変態が思っきしこっちを向いたので裏拳をかましておいて、やたらそわそわしている彼女を諌める。

 

「ねっ、早く入ろうよ」

「いやほかのみんなは? 待つんじゃないの? てか腕に抱きつくなお前」

「いいじゃん。席とっとけばさ」

「とか言いながら胴体に抱きつこうとするな! お前のパーソナルスペースどうなってんだ!!」

 

 こいつどっからこんなパワー出てんだよ! 年頃の男と力比べで拮抗しやがって!!

 お前見てくれがずば抜けていいんだから洒落になんねーって!!!

 

「おい健太…あれ? どこ行った?」

「友達? もう入ってったよ」

「だからお前はクソなんだよクソが! お前もいい加減諦めろ、余計な体力使わすなお前」

「昌太が受け入れてくれれば終わるよ」

「なんでそんなこだわんの?」

 

 何故かアホどもに見捨てられ、合流して強引に逃げることも叶わなくなった。

 そしておたえはやけに胴体にこだわってくる。こいつの行動の読めなさは今に始まったことではないけど、それにしてもなんでなんだよ。

 

「おたえちゃ〜ん! 置いてかないでぇ〜!」

「あ、りみ──おっ」

「ちょっ、急に力抜くな──」

 

 全力で取っ組み合いをしているところにりみりんの声が聞こえてきて、それに反応したおたえが力を抜きやがった。

 当然俺が反応できるわけもなく体勢を崩してしまい、彼女の両手首をひっつかんだまま海の家の壁に押し付けてしまった。

 

「いたっ…ッ!?」

「あっぶねっ!?」

 

 そう、壁ドンである。

 鼻先が触れ合いそうなくらいに近づくと、彼女の長い睫毛や瑞々しい唇とか普段目につかないところまで見えてしまう。

 おたえがもそもそと細い手首を動かそうとしているが、体重までかかっているのに抜け出せるわけもない。

 

 ──なんて言ってる場合かァーッ!

 

「わ、悪いおたえ。大丈夫か?」

「ぁ…う、うん。大丈夫」

「はぁ、はぁ…あれ、昌太くん? 何でここに?」

「よ、ようりみりん。いや俺も友達に誘われてさ」

 

 慌てて手を離すと何故か切なそうな声を漏らすおたえ。

 気まずさが先行し、どうにか空気を変えんと体よくやってきたりみりんにことのあらましを話す。

 ちなみにりみりんは白地に朱色の水玉模様が入った水着姿だ。

 

「そうだったんだ。えへへ、ちょっと恥ずかしいな…」

「ウッ!」

「昌太くん?」

「ナンデモナイヨ…おいおたえ、今度は何だ」

「………」

 

 今度は俺が左手首を鷲掴みにされた。無言で俺の顔を見つめてくる。

 

「べっつにー」

「なんだよ…」

「みんなはまだ来てないのかな?」

「私とりみしかいないよ。でもすぐ追いつくんじゃないかな、香澄たちのことだし」

 

 と言いつつ手は離さない。

 

「ねぇなんでこれ離さないの?」

「…私に壁ドンしといてりみに鼻の下伸ばしてたのが悪い」

「言いがかりも甚だしいわ。てかあれは事故だって…」

「あれだけ熱く私を求めてきたのに…浮気?」

「人の話聞いてくんない?」

「ほぇ? 壁ドン?」

「りみりんは知らなくていいよ」

「さっき昌太がねー」

「おい」

 

 何を言っても離す気はないらしく、俺はもう諦めて掴まれている左腕をぷらぷらと振り始めた。りみりんは不思議そうに俺たちの腕を見ている。

 すると砂を蹴る音が聞こえてきたと思ったら、胴体に衝撃が──

 

「昌太くーん!」

「ホァアア!!!」

「むむ」

「痛い痛い! おたえはどさくさに紛れてつねるんじゃねえ!」

 

 

 

 

「お前ら、なぜ見捨てた?」

こいつ(健太郎)連行しただけだよ。あそこに放っといたほうがめんどくさいでしょ?」

「確かに。よくやった」

「もぉぉぉお邪魔すんなよぉ〜〜〜〜!!!!」

「うるせえ」

 

 先ほどあれだけ死守していた胴体には香澄が飛んできて、未知の感覚で星になった。一方で可愛く唸りながら俺をつねってきたおたえ。カオス。

 今は席の都合上ポピパとは離れているが、その間もずーっとおたえに何とも言い難い視線を向けられ続けている。

 

「お前なぁ…やるとは思ったけど、そのカッコで抱きつくとか、お前…」

「えへへ、ごめんなさーい」

「…? どうしたのおたえ。ずっと昌太たちの方見てるけど」

「んー…なんかちょっとムカッてきた」

「??」

 

 ちなみに香澄は有咲に説教されてる。貞操観念緩すぎだからね、仕方ないね。

 

「…なんかあの子ずっとこっち見てないか? もしかして俺のこと見てる?」

「自意識過剰も大概にしとけよ脳内お花畑野郎が」

「なんか修介がすげー辛辣だわ今日」

「お前修介めっちゃ振り回してんだから当然だと思うけど」

「まあそれは置いといてだ…お前何した? 告白?」

「いやーマジで置いてくればよかったかなー」

 

 おたえの視線をなぞってか沙綾もこちらを見てくる。その表情は『お前、何かしたのか』とでも言いたげなジト目だった。

 おちおち飯も食ってられんわこんなん。一応首を横に振っておく。

 すると沙綾は頬杖をついてさらに目を細めた。何も口には出していないが、『ふぅ〜ん…?』と言っている気がした。さらに首を振っておく。

 あ、ため息ついて視線外した。

 

「お前まさかあの子と表情だけで会話したの? 夫婦?」

「誰かこいつを黙らせてくれ〜。はぁ…お冷とってくる」

「あ、サンキュ」

 

 言いながらグラスがたくさんおいてあるカウンターへ向かい、人数分水を注いでいると、横にはさっき表情で会話した沙綾が。

 

「…なんかしたでしょ」

「さっき首振ったろ。なんもないって」

「何もなければいくらおたえでもあんなことしないってば。もう、私がいながら他の子ばっかり…

 

 何か言いながらも、沙綾はちょっとムッとしているようだった。それを見た俺は、去り際に──

 

「まぁ、なんだ。悪かったな」

「──っ! …ずるいよ」

 

 頭をひと撫でしておいた。マジですまん。

 

 

 

 

「も〜っ! なんであんな人好きになっちゃったんだろもー! でも好き!」

「さーや?」




 
 SS書いてる人ってほかにもなにか特技や趣味持ってるのがデフォルトなんですかね(自分で毎回挿絵まで描いてる人を見ながら)
 
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