世話焼き男子とガールズバンド   作:れれれれ

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 でっひーー様、評価ありがとうございます。

 また、お気に入り総数が50を超えました。本作のご愛顧、本当にありがとうございます。
 


第7話 ハラハラ、キラキラ

「たけのこニョッキッキぃぃぃぃぃッ!!!!!」

 

「「「「うおおおおおぉぉぉぉぉッ!!!!!」」」」

 

 

「ちょっと待ってど初っ端から俺と読者を置いていかないで」

 

 

 高校生になって初めての週末をすぎ、今日はかの忌々しき月曜日。弊校こと栄星(えいせい)高校はもちろん通常授業です。

 俺もいつも通りに朝起きていつも通りにチャリ飛ばして高校に来たわけよ。そんでクラス入ったらこれやんな。そういうことだからニョッキッキについては俺も訳が分からん、すまんな。

 

 この高校さ、俺が偏差値的に背伸びしてやっとだったんだよな。

 だからそんな頭も悪くないはずなんだけど、どこにたけのこニョッキッキで雄々しい(とき)を上げるバカがいんの?もう酔っぱらった男子大学生のノリじゃん…

 

 勘違いしないでほしいのだが、栄星は男子校ではなく共学校。謎の鬨を上げる男どもを白々しい目で見る女子たちももちろんいる。あ、もちろん俺も傍観してるぞ。茫然と。

 それでも周りの目を全く気にしてないあたりマジで酔っぱらってる説あるなこれ。

 

 

「これ負けたやつマ〇ク奢りな!せーの」

 

「「「「「たけのこニョッキッキ!!!!!」」」」」

 

「「一ニョッキ!!」」

 

 

「「「「「だあああああっ!!!!!」」」」」

 

 

 うっさ。仲良しだねほんと。

 俺はそいつらを無視しつつ、一番左後ろの自席へ向かう。

 

 刹那、そのへんに放り出されていた誰かのカバンにつまづき、バランスを崩す。そのまま俺の頭部は前にあった机の縁へ──

 

 

「──っは!?このカバン誰の──」

 

 

 そういやあいつらなんかニョッキッキする前にカバン放り出してたわ!何してんあいつら許さねえマジぶっk──

 

 

 ◇◆◇

 

 

あぐッ──っえ?」

 

 

 思ってたより痛みが小さい…?いや、これは…

 

 どうやら俺は机に突っ伏して寝ていたらしく、周りを見てみると俺の席の周りがなぜか石灰だらけになっていた。

 …夢オチかよ。てかなにこの石灰…

 

 

「おうちゃんと聞いとけよー、ここ大事だからなー」

 

 

 …数学Ⅰの先生が俺にチョークを投げていたらしい。よく見たらめっちゃチョーク落ちてるわ、うん。

 でも俺にあたったの一発だけだよな?普通に20本くらい落ちてっけどもしかして全部外した?

 

 …あとで先生にこれからは普通に起こしてもらうよう言っとこ。隣の健太郎も巻き添え喰らってたみたいで昏倒してるし。これは本当にごめん。

 眉間にめっちゃくっきりと円く石灰ついてて俺ァブルっちまったよ…誤射なのにその威力は何なんですか先生…

 

 

 今は黒板に乗法公式が4つ書いてある。

 最初二乗の式見たとき単純に次数と係数とをかけるのかと思っちゃったんだけど同士いない?いや、小4レベルのこと高校生になってやるわけねえだろって話なんすけどね。ウッス。

 

 

 まあ、あれだな。今俺たけのこニョッキッキで雄々しい鬨上げるバカどもがいなかったことに心底安堵してるわ。でも夢って深層心理の表れだとか言うよな。俺の深層心理カオス過ぎませんか。

 正直夢で毎回毎回こんなにハラハラドキドキしてちゃ俺の身体が持たんわ。そういうのは漫画の世界とかで十分。

 

 

 漫画といえば、日曜日に本屋で漫画を眺めてたら猫耳ついたみたいな髪型の女の子がいて、思わず目で追ってしまったんだよ。たぶん年は近いと思う。

 …猫耳付きのカチューシャでもつけてたんじゃないかって?いや、あれは髪だった。ただ前例もなく例え先がないおかげでこう説明せざるを得ないんだけど、間違いなくあれは髪だった。

 

 髪の長さ自体は肩に届くか届かないかくらいの茶髪で、目は…いやそこまでは見てないな。髪型に目が行っちゃったから仕方ないじゃないか…

 

 その人はノースリーブの水玉カットソーに膝上くらいの丈のサスペンダー付きデニムスカートという服装だった。

 それがやけに身体のラインが出てて実に目のやり場に困った。生脚がまぶしかったッス。

 

 

 身体は本棚のほうを向けながらも目線だけで動きを追ってたら、彼女はヒョコヒョコと音楽雑誌コーナーのほうに吸い込まれていった。

 それを見届けた俺はそそくさと退店してしまったので、それ以降彼女がどうなったかは知らない。

 

 やっぱりブーム来てるんだねぇ…ガールズバンド。かのRoseliaもガールズバンドだっていうじゃない、びっくらこいたよねほんと。

 

 中にゃこのブームにあーだこーだと難癖をつけてるやつがいるらしい。

 が、大体そういうやつに限って女がどうの男がどうのと凝り固まったジェンダー観念に囚われた論法を展開している。長い人生、そんなくだらない先入観は捨て置いたほうが幸せになれますよ。

 ホラホラFIRE BIRD聞け?そらファンの仲間入りだ。

 

 

 などと脳内で「沼のほとりに立ってるヤツを深みへ引きずり込むオタクムーブ」をかましていたら授業が終わってた。あれ、数学…なんで三角関数書いてあるの?範囲飛び過ぎじゃね?

 

 

 ◇◆◇

 

 

 さて、なんだかんだと放課後です。

 

 あの後先生に叩き起こし方について忠告に行くついでに謎の三角関数について聞いたら、雑談の話題に上がってサラッと公式を書いただけとのことでした。よかった、突然授業レベルブチ上がったんかと思った。

 

 あと俺の席周辺に先生によってぶちまけられた石灰はなぜか俺が掃除する羽目になりました。解せません。

 それでもまあそれ以外は普通に授業を受け、入学式のとき喋ったアイツらとくっちゃべりながらメシ食ってって感じで今に至る。

 

 えっ、部活?帰宅部だよ。なに笑ってんだこれも立派な部活動だぞ、なんなら公式戦あるから。春夏と帰宅甲子園あるから。ごめんさすがに嘘です。

 

 

 今日はたまたま数学の時間に寝てしまい石灰まみれになったが、俺は普段はちゃんと授業を受けているタイプである。俺の隣で昏倒してた健太郎はちょこちょこ寝てて、修介は俺と似たような感じ。

 …あれ?つーと今日昏倒してたのって誤射じゃなかったのか…?俺寝てたからわかんねえや。

 

 

 などと考えつつ、俺はチャリにつけたチェーンを外す。

 

 今日は何となく夜飯つくるのめんどくせえから、パンとかで軽く済ませようか。あと付け合わせに適当にウィンナーと野菜とか卵とか突っ込んでソテーにでもしよ。

 よし、そうと決まればやまぶきベーカリーだ。パン食うならとりあえずあそこ行っときゃ間違いない。

 

 品質で言ったら北沢精肉店もなぜかめっちゃいい肉が手に入る。しかも安い。

 あとはー…羽沢珈琲店に行ったら俺は必ずカツサンドを頼むんだが、あれもめっちゃ美味い。あそこ何頼んでもアツアツで出てくるんですよね、反則。グリーンカード4億枚くらいあげる。

 …あいやさすがにアイスとかは冷たいよ?

 

 こう考えるとやっぱり恩寵(おんちょう)あるよなこの地域。これネタに町おこししたら絶対うまくいくだろ、ガールズバンド文化も盛んに興ってるし。引っ越すならおススメですよここ。

 

 と、チャリなので結構あっという間に目的地へ着いてしまう。今17時くらいで微妙だけど沙綾おるかな。

 

 

「どうもー、沙綾おるかー」

 

「昌太、いらっしゃい。今日は何にする?」

 

「そうさな、無難に食パンとかもらってくわ」

 

「食パンね…はいこれ。今晩はパンにするの?」

 

「ん、そのつもり」

 

 

 沙綾は案の定制服にエプロン姿でちゃんとお手伝いしてた。最近ちゃんと休んでる?大丈夫だよね?

 などと沙綾と駄弁りながらパンを選んでいると──

 

 

「さーやー!いるー?」

 

「ぅおお!?な、何だ…あっ、昨日の本屋の」

 

「あ、香澄。いらっしゃい」

 

「…?あなたは…あっ、さーやの彼氏さんですか!?」

 

 

 は?

 

 

 ◇◆◇

 

 

「さっきはごめんね!さーやから聞いてた感じとそっくりだったからつい…」

 

「…なんでそっくりだったらかれぴっぴになるんだ」

 

 

 さっきとんでもない爆弾を投下してくれた昨日の猫耳娘。名を戸山香澄といった。

 すごかったぜ威力。だってあの沙綾が、油挿しサボってサビサビのブリキの人形みてえにギゴギゴしてたもん。見たことないよあんな沙綾…

 

 そのギゴギゴ沙綾曰く、こいつはどうやらこないだ沙綾とりみりんが言っていた「すごい人」と同一人物らしいが…

 なるほど、確かにね。わかる気はする。でも俺の思ってたのとはちょっとベクトルが違うかなーって。こう、俺が思ってたのはもっと、理知的というか。

 

 でも実際にはもう、「常にエネルギッシュ」だわ。完全に理解した。

 りみりんがそう言ってたけど本人を見るともうそうとしか言えない。ぶっ飛び過ぎて星になって「先生の次回作にご期待ください」ってなるやつじゃん。

 

 当時の意図とはズレてるけど、俺のした「恒星みたい」って例えはあながち間違ってなかった。うーんこの。

 

 

「香澄、お前昨日は本屋にいたよな?」

 

「?うん。駅前のでしょ?」

 

「ああ。そんとき気になったんだけどさ、その髪どうなってんの?猫耳?」

 

「違うよ、星だよ!」

 

 

 星?星なのか、そうか。もう星になってたのかこの人。

 「星だよ」って言われても、その髪の原理は全くもってわからないんだけども。どこの髪まとめてんだよそれ、やっぱ外付けじゃねえの?

 

 ちなみにしれっと名前呼びしているのは、本人にそうやって呼べってやまぶきベーカリー前で言われたから。

 

 そしてその香澄は、沙綾やりみりんと同じ花女の制服をふわふわとはためかせながら、チャリを押して歩く俺の横をトコトコと並んで歩いている。

 本人曰く「家の方向が同じ」らしいんだけど、大して知らん男にそうやって個人情報教えるのマジでやめたほうがいいよ。距離感ちけえよこの娘。

 

 あとそういう形而上の距離だけじゃなくて、物理的な距離もこいつは近い。俺の右側にチャリ、左側に香澄という並びなんだが、やけに距離が近いせいで気が気でない。歩道けっこう広いのにだよ?

 

 本当に大丈夫この娘?氷川さん以上に危なくない?

 

 

「…香澄、そうやって見ず知らずの男に個人情報ベラベラ喋るのはマジでやめたほうがいい」

 

「え?でも昌太くんは知らない人じゃないよ?」

 

「言い方が悪かったな、信頼できないヤツにやすやすと個人情報開示はすんな。そのうち喰われちゃうぞ」

 

「んー?私は昌太くんのこと信頼してるよ?それに私だってそれくらいはわかるし大丈夫だよ」

 

「…いや、こうやって面識薄いヤツとの距離感がめっちゃ近い時点でもう怪しいんだけど…」

 

「…やっぱりさーやが言ってた通り優しいんだね。心配してくれてありがとっ。気を付けるね!」

 

「お、おう」

 

 

 本屋で見たときは顔をよく見てなくて分かんなかったけど、香澄も例にもれずメチャクチャかわいい。

 アメジストみたいにキラキラ輝き出さんばかりの目と、すぐ顔に出る感情からくるくると変わる表情がとても愛嬌がある。

 

 あとこれは香澄に限った話じゃないんだけど、俺と女の子って大抵かなりの身長差があるから、隣同士並ぶと女の子を俯瞰(ふかん)することになる。そうなると上目遣い気味になるから…あとはお察しください。

 

 今少なからず俺が気恥ずかしいのも、本屋でかなりはっきりと身体のラインを見てしまったせいで軽く意識してしまってるからかもしれない。変態みたいで嫌すぎる…

 

 

「…?どしたの昌太くん、さっきから私の顔ずっと見てるけど」

 

「…いや、なんでも」

 

「?」

 

 

 ニコニコしやがって。かわいいなこいつ。

 こういう裏表ないとこがどこか人を惹きつける魅力を孕んでるんだろうなあ。一種のカリスマ力か。

 

 ふと香澄のほうへ視線を向ける。目が合う。相変わらずめっちゃニコニコしてる。なんでやねん、ずっとこっち見てたんすかあなた?

 

 

「昌太くんって、なにか楽器やってる?」

 

「楽器?ギターとかだな」

 

「ほんとっ!?手見せて!」

 

 

 そういって返答も聞かず、俺の左手がやわっこい手ににぎにぎされる。そういうとこだぞ香澄。

 ただでさえ近かった距離がさらに近くなって、シトラス系の…オレンジかこれ?そんな女の子特有の匂いが鼻をくすぐる。おい、腕から体温感じるんだけど。この娘パーソナルエリアってもんがないのか?ないんだろ?

 

 

「…むむっ、ちょっと硬いね」

 

「そりゃあなあ、ギターやってたらみんなそうなるぞ」

 

「そうなの!?それじゃあ私もそのうち…」

 

 

 「むむっ」なんてマジで言ってるヤツ初めて見た。せいぜい川平くらいでしょ常用してるの。

 川平以外にこんなあざといムーブされたらきっとムカつくんだろうなとか思ってたんだけど、ぜんぜんそんなことないね。可愛いからか。やっぱ正義は揺るがないのか。美少女ってズリー…

 

 …川平慈英は美少女だった?

 

 

「そのうちってーと…香澄もギターを?」

 

「うん、ランダムスターってやつ!」

 

「えっ、変態?」

 

「違うよっ!?」

 

 

 ランダムスターってのは、調べてもらうとわかる通り形からなかなかにイカツい。

 こうも特徴的な形になってくると座って弾くときに変な癖がついてしまいやすく、初心者はまず変形ギターなんて選ばないのだ。

 

 あと単純にテクニックがきもちわるい変態たちが好んで使ってるギターでもある。

 

 だから、変態。

 

 

「普通は初心者はそういう変形ギターって敬遠するんだよね、練習するときとかやりづれえからさ。よほど好きなんだなそれが」

 

「わかる?一目ぼれっていうか…『キラキラドキドキ』を見つけられるきっかけになったからかな。もうこれしかないと思ったんだ」

 

 

 …今後は顔を紅潮させながら「一目ぼれ」とか言わないようにしましょうね。死者が出る。

 

 どんな経緯があったかなんてわかりようもないが、『キラキラドキドキ』といい『星の鼓動』といいランダムスターといい、やはり彼女にとって星はトクベツな意味を持つようだ。

 まあすでにこいつ自体が星みたいなもんだけどな(?)。次回作にご期待ください。

 

 

「…やっぱり本物か」

 

「どしたの?」

 

「いや。…指を気にしてるってことは痛いのか?」

 

「うん。最近になって練習し始めたんだけど、指が痛くて…」

 

「そりゃいわゆる宿命ってもんだ。指先のケアしつつ我慢するしかないな」

 

「そっか~…ねっ、昌太くん」

 

「ん?」

 

 

「私のギター練習、見てくれない?」

 

 

「…いや、ちょっと待て。なんで俺なんだ?実は知識だけのハリボテかもしれんぞ俺。あとさっき言ったはずだぞ、もっと慎重になれって」

 

「んー、ギターのことはよく知ってるみたいだし…指先も硬いから、ずっと弾いてたんだろうなって」

 

「…」

 

「あと、()()()()()()心から信頼してる人だから。だから私も大丈夫だって思ってるんだよ?」

 

 

 …香澄、意外と人のことを見ていやがる。

 

 彼女が腕前の判断基準として挙げたのは知識と、指先の硬さ。

 俺がさっき話した知識は、ギタリストでもなければそうすらすらと出てくるものではない。

 そのうえで指先が硬いから、少なくともそれなりに知識を得られるほどにはギターを弾き続けているとわかる。だから腕前は問題ない。

 

 そして信頼性の判断基準としては「沙綾が心から信頼していること」を挙げた。

 確かに彼女は人づきあいにおいてはある程度一線を引くタイプで、そこを超えて親しくなる人は実はあまりいない。

 一週間か二週間の付き合いで、香澄は沙綾のそんな振る舞いを見抜いていた。これはとんでもないことだ。

 

 

「…香澄、観察眼すごいんだな。正直恐れ入ったよ」

 

「さーやのこと?なんとなくだよ」

 

「そっちもだけど、俺のギターの腕とかさ」

 

「そっちはさーやからちょっと聞いてた。えへへ」

 

 

 だからそのあざといムーブすんのやめろ!可愛いだけだから!

 なんだよ、真面目に解説したこっちが恥ずかしいじゃん。まあ確かに知識があって指先が硬くても惰性で続けてるだけの下手くそかもしれんし。

 …ん?でも沙綾の一線引くクセは見抜いてたんだよな…

 

 

「それで、どう?見てくれる?」

 

「…わかったよ。まあ頼られた以上断るつもりもなかったけど」

 

「んー、やっぱりさーやから聞いてた通りだ!ありがとう!」

 

 

 そういって香澄は腕と腕とがくっつきあっていた体勢からもっと近づき、正面同士でめっちゃくっついてきた。

 もはやこれ抱き着いてるレベルだろ!腕回してるか回してないかくらいの違いしかないぞこれ!

 

 香澄を引きはがしながら、今後の連絡のためLIGNEを交換する。そしてそれも終わると、彼女は満面の笑みでひとこと。

 

 

「これからよろしくね、昌太くん!」

 

 




 出会っちゃった!ということです。


 よろしければ今回も感想や評価等よろしくお願いします。

これからはどっちが見たいですか

  • いつものゆるい日常
  • シリアス
  • その他(宜しければ感想などに)
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