Memory of the starlit sky 作:ワッタン2906
今回で、ファントムシーフ編完結です!!
長かったこのイベントですが、期待通りの結末になってると幸いです。
それでは、第二十四話をどうぞ!!
(今回はあとがきまで読んでね)
船内のシアタールーム、その場所に怪盗たちを追いかけてたどり着いた。
のはいいいのだが、現在あたしは、
「え、えと......麗しいお姫様、あ、あなたが......好き、です......」
シアターの檀上に上がって、
人生初の告白を花音さんに向けてしていた。
(ど、どうして、こんなことに!?)
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事の発端はシアターに着いた直後に遡る。
あたし達三人がシアターにたどり着いた瞬間、
何かの機械音と舞台がせり上がってきた。
そしてその上がってきた舞台には、何故か不自然に置かれな椅子が一つとその椅子の背もたれに手を掛けている、怪盗ハロハッピーが居た。
(随分と派手な登場なことで......)
「探偵さん達、開演まで間もなくだよ。早く座席に着きたまえ」
そう言うと、ハロハッピーはマントを翻しながら、あたし達三人の着席を促した。
「二人とも、最前列に行きましょ!! 怪盗さんのお手並み拝見よ!!」
「もしかして、今から舞台!? 舞台見るの初めてー!! 手品とかするのかな!?」
「うん、はぐみのそれはマジックショーだよ......」
そう言いながら、あたし達は舞台の最前列席へと、そそくさと階段を降りた。
折り畳み式の椅子を広げ着席したと同時に、ふと疑問が沸いた。
(あれ、スマイルスターは......?)
舞台の上には、ハロハッピーしか居ない。
シアターへと辿り着いた時には気付かなかったが、もう一人の怪盗の姿が見えない。
一体何処へ......。
と思ったのも束の間、ハロハッピーが再び言葉を紡いだ。
「おっと、時間になったね。 さあそれでは、勝負を始めようか。でも今回は、ちょっと趣向を変えて、囚われのお姫様に手伝ってもらおうかな」
「お姫様......?」
そう言うと、ハロハッピーは舞台袖の方を見た。
すると舞台袖から一人の人影が出てくる。
舞台袖から出てきたのは、一時間前に見かけたっきりの花音さんだった。
(あ、花音さん。良かった.....)
と、少しだけ胸を撫で下ろした。
やっぱり、短時間だけ人を見なくてもそれが、もし親しい人だったら、心配するもんだなと思った。
例えそれが、安全を保証されてるって頭で分かっていたとしても。
「かのちゃん先輩だ!! 無事だったよ、こころん!!」
「花音、待ってなさい!!今、助けるわ!!」
「う、うん......」
......まあ、この2人は純粋さゆえの心配かもしれないけど。
「はあ、で今度は何をするんですか?」
「それはだね、さっきも言った通りちょっと趣向を変えた勝負をしようと思っているんだ。具体的には挑戦者はさっきまでと違って一人のみだ、......そして挑戦者は君だ。黒髪の探偵さん?」
と言いながら、ハロハッピーはあたしの目の前に指を突きつけ......ってあたしだけ!?
「ちょっ、ちょっと待って、なんであたしだけ!?」
「ふむ、そういう反応をするだろうね、ただ次の勝負は君が適任だと思ったからさ。ほら、お姫様も彼女に挨拶したまえ」
「えっ......は、はい、えっとお願い、美咲ちゃん」
「......はあ、分かりましたよ」
とこんな感じで、あたしはハロハッピーとのゲームに挑戦することにした。その時のあたしは早くこの茶番をさっさと終わらせようと思っていた。
勝負の内容が「花音さんに告白をして、演技が上手かったら返す」と聞くまでは。
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「そんなものかい? もっと愛を伝えてごらん?」
と、告白の続きを促してくる。
花音さんに至っては、何故か嬉しそうな目でこちらを見てくる。
(そんな目で見ないで花音さん!!)
もちろんあたしは最初は断固拒否した。
もうそれはキッパリと。
だけど、
『みーくん、お願い!! かのちゃん先輩に告白して!!』
とはぐみから、
『はぐみの言う通りだわ!! ここで花音が戻ってくるか決まるの!! お願い、美咲!!』
とこころから言われ、花音さんからも『頑張って......!!』と言われ、まるであたしが悪者になったかのように感じ、そんな罪悪感から勝負を受けてしまっていた。
そして皆の前で告白というのは、
「う......えと、一目あった時から、心を奪われて......」
分かっていたけど、
「もっと真剣に」
「あなたを常に思ってて、と、とにかく好き......です......も、これでいいでしょ!? いきなりこんなこと言われたって分かんないし!!」
とてつもなく、恥ずかしい。
最後は、言葉として可笑しかったが、半場無理やり告白を切り上げた。
「はぐみ、全然演技分からないど、ダメだと思う」
「ええ、全然心に響かなったわね。これじゃあ負けかしら」
とこころとはぐみから、辛辣なコメントを頂いた。
しかし、花音さんだけは、
「そ、そんなことないよ!? 美咲ちゃんは凄く頑張ったよ?」
あたしのフォローをしてくれた。
(あー、もう花音さんが良ければそれでいいや......)
「ふむ、黄色の髪の探偵さんの言う通り、あんまり心に響かなかったね、告白というのはスマートにしなければならないよ。ホントは私がお手本を見せたいのだけど、時間が無い。また次の機会にしよう」
ハロハッピーがそう言った直後だった。
明らかに異質な音......例えるならば、何かと何かが擦れ合うようなそんな音がシアターに響いた。
そして、上から白い物体が
「っ!!」
驚いて反応が出来ない。
その白い物体は、シアターに着いた時から見てなかった、怪盗スマイルスター。
「「もう一人の怪盗さん!!」」
驚いて声が出ない中、
こころとはぐみが声を合わせて、叫んだ。
「やあ、探偵達、また俺たちの勝ちだね。このお姫様はまだ返す訳にはいかない」
そう言うとスマイルスターは、花音さんに近づいた。
一体何をする......
と思った瞬間だった。
「失礼するよ、お姫様」
「きゃあ!?」
「な......!?」
スマイルスターは花音さんの胴を右腕で、膝裏を左腕で支えるように持ち上げ、横抱き......一般的に言う所のお姫様抱っこをしていた。
花音さんと連音の格好が格好ということもあり、中々に様になっていた。
って吞気に、そんな事を考えている場合じゃない。
スマイルスターの言葉から察するに、彼らはまた逃げるきだ。
しかしそれは現実的ではないと思う。
シアターの構造上、此処の舞台の出口はあたし達が入ってきた場所しかない。
だけどその前に、あたしたち三人がいる。
(どうやって、逃げるつもりなんだろ)
「それじゃあ、探偵たち最後のゲームだ。先に行って待ってるよ」
そう言うとスマイルスターは花音さんを抱えたまま、舞台上から飛んだ。
本来なら重力運動に従って、着地するはずだった。
スマイルスターが飛んだ瞬間、またさっきの機械音が鳴り響いた。
そしてあたしは見た。
そしてその線は天井につながっている。
その線は二人分の体重をしっかりと空中へと浮かせ、さながらアニメのような感じに、
空中を駆け抜けて、出口の前へと降り立った。
「はっ、え、え?」
「すごいわ、怪盗さん!! 空を飛んでいたわ、なにかしらあれ!!」
「はぐみ、知ってる!! あれ、ワイヤーアクションだよ!!」
ワイヤーアクション。
まず、一般人が普通に暮らしていて、経験することのない物。
スマイルスターはそれを使って、舞台上から脱出をしていた。
「さすがだね、スマイルスター。それじゃあ、私も....よっと」
背後からハロハッピーのその声が聞えて振り返ろうとした。
だが、そうしたときにはもう遅かった。
ハロハッピーは横を駆け抜けて、スマイルスターと同じように飛び、出口へと降りたった。
そして二人の怪盗はあたしたちの方を、振り返る。
「それでは、探偵さんたち、私たちを捕まえてごらん!!」
「では、
「ふ、ふぇぇ──!!」
二人の怪盗はそれぞれ、言葉を言うとシアターから出て行った。
花音さんの悲鳴を響かせながら。
「ええ!? 行き先告げないで、行っちゃったよ!?」
「逃がさないわよ!! 追いかけましょう!!」
そう言うとこころとはぐみは、怪盗たちを追いかけるように出口へと向かって行った。
「まさか、ワイヤーアクションなんて使うなんて思わなかったよ.....というかもう終わりにしたい....」
とあたしは、そうぼやいた。
豪華客船に乗ってから、かれこれ約一時間休みなしで動いている。
正直疲れている。
(というかあの二人は体力底なしなんじゃないの.....?)
こころとはぐみはヘロヘロになるどころか、ずっと動き回っている。
いや、違うか。
そもそもあたしが疲れてる原因は、体力的にじゃなくて精神的にだ。
その元凶は、あの怪盗二人だ。
そもそもギフトショップの時点で、連音は負けていたはずだ。
そしてこの茶番は終わっていた....。
「.....よし、あとで連音になにかしてもらおう」
そう決意し、あの二人の後を追いかけた。
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怪盗たちを追いかけ、扉を開けた。
扉を開け、辿り着いた場所は、船上のデッキだった。
走って火照っていた体に、海の潮風が当たり、体が心地よさに包まれた。
「いたわ!!」
デッキへと上がった瞬間、先にたどり着いていたこころが、
船首に向けて指を指しながらそう叫んでいた。
船首の方に目線を向ける。
そこには、怪盗二人とお姫様抱っこで攫われていた、花音さんの三人が佇んでいた。
そちらの方へと、あたしたち三人は近づいていく。
「はっはっはー!! よくぞ追いついたね!!」
だんだんと近づいていく船首の方から、ハロハッピーの声が聞こえてきた。
そして、船首の方へと辿り着いた。
「ここまでよ!! 花音を返しなさい!! 花音は大切な仲間なんだから!! 」
「そうだよ!! かのちゃん先輩は大切な仲間だから、絶対に取り戻すもん!!」
こころとはぐみが、それぞれ口々に怪盗に向けて啖呵を切った。
「ふむ、大切な仲間....いい言葉だ、そちらの...黒髪の探偵はどう思う」
それまで沈黙していた、スマイルスターがこちらへと尋ねてくる。
そんな問い、答えはもう決まってる。
「花音さんは大切な仲間だよ、これからもずっと」
最初はこころに無理やり連れられてきた、同じ境遇の人だと考えていた。
でも、今はそんな認識ではない。
バンドを....ハロハピをやるうえでもう大切な仲間だ。
もちろんこころも、はぐみも薫さんも。
「そうか....じゃあ最後に一つ質問、
「そうだね....ちょっと大変だったけど、
スマイルスターのもう一つの質問にも、即答で答える。
答えた後、沈黙が流れ潮風の音しか聞こえない。
沈黙を破ったのは「そっか」というスマイルスターの一言だった。
「うん、分かった。俺の欲しいものは聞けた....。ほれ、やるよ」
そう言ったスマイルスターは、何かをあたしに向かって投げた。
受け取ったそれはUSBメモリだった。
「うわあ、っと、っと。 ....これは? 」
「今日のお詫びとお礼、その中にあるデータは好きに使ってくれ。」
「さあ、あとは任せたよ。ハロハッピー」そういうと、ハロハッピーへとバトンをパスした。
どうやら、スマイルスター....連音はあたしの言葉の中に、
求めていた答えがあったようだ。
ただ、何の答えを求めていたのかは、分からなかったけれども。
「ああ、任された。 スマイルスター。じゃあ最後の勝負だよ、探偵さんたち。最後はクイズだよ、私が欲しかったものは、なんだと思う? といっても、私の欲しいものも少々、スマイルスターに似ているのだけれども」
連音と欲しいものが似ている?
なんだろうか、と考えを巡らせたときだった。
「分かったわ!! 」と心が叫んだ。
「えっ、こころん、もう分かったの?」
はぐみと同意見だった。
そしてこころは、答えをハロハッピーに叩きつけた。
「怪盗さん、あなたが欲しかったものは『みんなと楽しく過ごす時間』よ!! 怪盗さん、あなたも楽しかったんでしょ? あたしは、すっ──ごく楽しかったわ!!」
「....すばらしい、正解だ!! とても楽しい時間を過ごす事が出来たよ、ありがとう。お礼にこのお姫様は返そう。さ、仲間の元へお戻り」
「は、はい」
どうやら、こころの答えは正解だったようだ。
花音さんは解放され、ようやくあたしたちのもとへと戻ってきた。
「じゃあね。子猫ちゃんとの逃避行……とても楽しかったよ」
「え.....?」
怪盗たちから去って行くときに、花音さんは何かに気づいたのか、振り返ったその時だった、
「それでは良い旅を!! また会えることを楽しみにしてるよ」
「それでは探偵たち!! また輝く夜にお会いしましょう」
怪盗たちがそう言った瞬間、あたりが白い煙へと包まれた。
突然の出来事に、あたしも、他のみんなも咳き込んだ。
「わっ、何この煙! なんにも見えないよ~!?」
「こほっ....シアターの時といい凝った演出するね」
そしてようやく煙が晴れた時、そこには怪盗の姿は見えなかった。
「あら、怪盗さんがいないわ!!」
「えぇ、消えちゃったの!?」
「せっかくここまで追い詰めたのに、捕まえられなかったわ……!」
「ま、別にいんじゃない? それより、花音さんも疲れてるだろうし、とりあえず中に戻ろう」
「うん、ありがと、美咲ちゃん」
そんな会話をした後、あたしたちは船内へと戻った。
こうしてようやく船内での、怪盗騒動は幕を閉じたのだった。
ちなみに渡されたUSBメモリの中にあったギターだけのフレーズが、
『ゴーカ! ごーかい!? ファントムシーフ!』
として生まれ変わるのは、もう少し後の話だったりする。
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ふと何かの音で美咲は目覚めた。
眠たい目をこすりながら、彼女は部屋に掛かってある時計を反射的に見る。
時刻は午前0時過ぎ。
普通ならほどんどの人が寝てる時間、なのに先程の音は彼女の鼓膜を揺らしていた。
(これは....ピアノ? こんな時間に....?)
美咲は不思議に思いゆっくりとベットから降りた。
彼女がいる場所は自宅ではない。
まだ船の中だ。
花音の騒動が解決した後、怪盗役だった連音と薫は美咲たちに何食わぬ顔をして合流した。
そもそも、彼らが怪盗役をしていたのは、「こころ様たちを余興で楽しませてください」と言われたからのが、今回の追いかけっこの始まりだった。
最初は、薫だけが頼まれたのだが薫が、「連音も誘ってみよう」ということになり、話を聞いた連音は二つ返事で了承した。
そして二人は、こころを無事に楽しませた。
のはいいのだが、想像以上に時間を使ってしまい、余興が終わった頃の時間では、本土に戻ると確実に日を跨ぐ。
とそれならば、こころが「泊まったらどうかしら!! きっと楽しいわよ!! 」と言い出し、それに全員が了承しこの船に一泊することになった。
「静か.....」
部屋から出た美咲はそうつぶやいた。
時間帯も時間帯。
豪華客船に乗っているのは、彼女一人だけといわれても納得するくらいあたりは静寂に包まれていた。
がしかし、そんな静寂を破るかのようにピアノらしき音が船内の、空気を響かせた。
「こっちから聞こえる.....」
美咲は音が聞こえる方向へと歩き出す。
彼女が歩き出した方向には、ロビーがある。
そしてロビーにはグランドピアノが置いてある。
きっとそのピアノを誰かが弾いてるのだろうと算段をつけた。
そして近づく、ピアノの音。
(誰なんだろ....すごく上手....)
ピアノ経験者の美咲が上手だと唸るほどの音。
プロが聞けば、まだ荒いといわれるが、
その、演奏を聴きながら彼女はロビーへと、辿り着いた。
そこに居たのは......
「連音.....?」
数時間前に怪盗スマイルスターを演じていた、連音だった。
「っ、....なんだ、美咲か?」
連音が美咲に気付き、演奏していた手が止まりピアノの音も止まる。
「うん、驚かしてごめん。 連音ってピアノ弾けたんだね」
美咲が連音にそう尋ねた時だった、彼の目に曇りが灯った。
彼女は気付かなかったが、その目はいつもの連音からは考えられない、
哀しみの目だった。
「....うん、
「えっ...!?」
「....ゴメン、もう部屋戻るわ」
「あっ.....」
そう言うと連音は、鍵盤蓋を閉め、美咲が来た方向へと向かい出した。
その間美咲は、一歩も動けなかった。
彼女は彼に話し掛けることさえ出来なかった、それほどまでに連音から
そんな風に美咲は感じていた。
彼が去った後に残ったのは、後味が悪い空気だった。
「Memory of the starlit sky」 第一章 了
ということで、「Memory of the starlit sky」第一章終了です。
いやー、ここまで長かった。
本当は、去年の年末までに第一章終わらせる予定だったんですけどね.....
ということでこの小説の、起承転結の"起"が終わりました。
あらかた、連音君の設定は出せるところは出し切りました。
これで、お父さんの正体が完璧に分かったら、もう作家目指してください。
僕より才能ありますよ?
ここから第二章に入ってきます。まだまだ更新していくのでお付き合いお願いします!!
あ、紗綾の方も忘れてないですよ?(恐らく明日更新予定)
それと、今回アンケート実施してますので、解答してくれたら有り難いです。
それでは次のお話でお会いしましょう。
(モンハンが楽しー)
紗綾のやつ
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