キリトである必要なくね?~UW編~   作:不完全CLOWN

8 / 8
第八話 赤薔薇

 

「ユージオ、さっき親子を誘導した。父親は負傷してるから、手を貸してやれ。それでギガスシダーまで避難しろ」

 

「わ、わかった」

 

 背中越しにユージオが走り去っていく音を拾う。

 これで思う存分、狩れる。

 

「やっぱり低能だなぁ。こんな簡単に挑発に乗ってくれるとはよっ!!」

 

 迫りくるゴブリンに、基本単発技・《ホリゾンタル》をくれてやる。

 何のひねりもないただの水平斬りだが、一撃で複数体ものゴブリンを葬り去った。

 拝借した剣とは比べものにもならない威力だ。

 

「ぐるらっ……」

 

 さすがに脅威に感じたのか、ゴブリンは距離を取り始めた。

 無意識に頭に血が上る。

 

「村を壊して、村人を殺しといてよォ………なに逃げようとしてんだ?」

 

 左手を前に突き出し、剣を構える。

 そしてそのまま突き出した。

 

「「ぐるあぁぁぁ!!!!!!」」

 

 単発重攻撃・《ヴォーパルストライク》 

 前方にいたゴブリンを一掃する。

 

「足りねぇなぁ!! 村を襲った罪、てめぇらの命で償えッ!!」

 

 ゴブリンを斬り殺すたび、《青薔薇の剣》は、赤黒く染まっていく。

 それに呼応するように、過去の自分に戻っていってるような気がした。

 

「死にさらせこのカスどもがぁ!!」

 

 あぁ、クソ!!

 何で思い通りにならない!!

 

 この村は俺を助けてくれた。

 受け入れてくれた。

 なんでそんな村をこんなゴミどもに壊されないければならない!!

 

「どうしたぁっ!! もっとかかって来いよぉ!!」

 

 

 手当たり次第に殺していく。

 殺す。殺す。殺す。 

 

 斬っても斬っても湧いてくる。

 他の場所にいたゴブリンも集まってきたのだろう。

 

 心臓を突く。

 首を跳ねる。

 頭をかち割る。

 口から突き刺す。

 耳から串刺す。

 殺す。

 殺す。

 殺す。

 

 気づけば、死体の山が出来ていた。

 服も、赤黒く染まっている。

 よく見れば《青薔薇の剣》も、刀身の半分くらいまで赤く、黒く染まっていた。

 

 

「よくもやってくれたなぁ、このクソイウムゥ!!」

 

 うるせぇ声がしたと思って顔を前に向ければ、図体のでかいゴブリンがいた。

 コイツがリーダー格か。

 

 無言で剣を構える。

 

「てめぇ、この《蜥蜴殺しのウガチ》と殺り合う気かぁ!! あぁ!? どうなんだクソガキィ!!」

 

「弱ぇヤツほどよく吠えるって、本当なんだなぁ」

 

「ガルルァアッ!!!!」

 

 ウガチは蛮刀を振り上げながら怒り心頭で襲ってきた。

 蛮刀を受ける。

 想像以上の重さに思わず仰け反る。

 

「さっきの余裕はどうしたぁ!? 白イウムのガキィ!!」

 

「確かにアンタは強ぇなぁ、でも頭の出来はあんまし良くねぇみてぇだ!」

 

 相手の力が緩んだ瞬間、回し蹴り・《水月》を食らわす。

 意識外からの攻撃に怯んだウガチの隙を突き、左腕を切り落とした。

 

「ガルルルァァァァァアアア!!!!!!!」

 

 耳障りな悲鳴を上げながら、隊長ゴブリンは距離を取った。

 ヤツは怒りが浮かぶ目でこちらを睨みつけながら止血をする。

 

「バカにしてたガキに腕を落とされる気分はどうだ? えぇ? イウム如きにやられる蜥蜴殺しのウガチさん?」

 

「こんのガキャァァアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」

 

 コイツは同じだ。

 あのゲームで俺が殺してきたヤツらと同じ。

 他人を身勝手に殺しておきながら、いざ自分が狩られる側に立たされると逆上してくる。

 あのレッドプレイヤーどもと全く同じだ。

 

「ガルルルァァァァァアアア!!!!!!!」

 

 殺してやろう。

 あのクソどもと同じように。

 

 剣を振り上げる。

 あとは間合いに入った瞬間に振り下ろせばいい。

 例え剣で受けてきたとしても、神器であるこちらが競り勝つ。

 

 

 なぁ。

 

 お前も同じじゃないか?

 身勝手な理由でレッドプレイヤーを殺してきたお前も、アイツら

と同じなんじゃないのか?

 

 お前はまた殺すのか?

 あのゲームに居た時のように。

 

 

 少し霧が晴れたような気がした。

 ここでウガチを殺したところで、コイツは死ぬだけだ。

 だがウガチを央都に引き渡せば、この惨状の原因を突き止めてくれるだろう。

 そうすれば、きっともう二度とこんなこと悲劇が起きないはずだ。

 

 そうだ。

 俺のすべきことは殺しじゃない。

 無力化することだ。

 

「死ねぇぇぇぇええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 単発垂直斬り・《バーチカル》

 これで相手の右腕を蛮刀もろとも切り落とす。

 そして刀身が足の位置に届いた瞬間、単発水平斬り《ホリゾンタル》を繰り出し、ウガチの両足をも切り落とす。

 

 これでもう、コイツは何もできない。

 

「てめぇの負けだ、ウガチ」

 

 俺がそう告げると、四肢を失いダルマのようになってた隊長ゴブリンが、突然笑い出した。

 

「俺の負けぇ? ブヒャッヒャヒャ、何を言ってやがる。この場合は引き分けだろぅ?」

 

「……この惨状を見てもわからないのか? 仲間は全員死に、お前は手足を失った。どこを見たら引き分けなんだ」

 

「最初から引き分けだったんだよぉ、てめぇとの殺し合いはなぁ!」

 

 何を言ってやがる。

 他に仲間がいるとでも言うのか。

 ならなぜ助けに来ない。

 このまま止血しなければ、コイツは確実に死ぬぞ。

 

 そもそも、コイツは俺と何を競っているんだ?

 途端、背筋に冷たいものが走った。

 

「てめぇ、村の人たちをどこにやったッ!!」 

 

「教えるワケねぇだろぅクソガキィ」

 

 吐き気のする笑顔を浮かべた。

 

「ブチ殺されてぇのか?」

 

「殺したきゃ殺せ!! 言う気はねぇけどなぁ」

 

 ニタニタと化け物が笑う。

 首を刎ねたい衝動を無理やりに抑え込んだ。

 

「急いだ方がいいぜぇ。もう手遅れかもしれねぇけどなぁウヒャッヒャヒャ」

 

 コイツは本当に場所を吐くつもりはないらしい。

 

 仕方なしに全速力で村を駆け回る。

 

「どこにいるッ!」

 

 広い建物を手当たり次第に開けていく。

 だが見つからない。

 

 自ずと、俺は教会の前に立っていた。

 めぼしい場所はもうここしかない。

 

 扉をゆっくりと開ける。

 漂ってきたのは鉄の臭い。

 

 部屋は薄暗かった。

 黄昏時の今、光は届いてなかった。

 何の、音もない。

 静寂だった。

 

 目が慣れてくる。

 だんだんと全体が見えてくる。

 

 地面を染める、赤黒い色。

 

 前に向ければ。

 

 地獄だった。

 

 

 死体、死体、死体。

 人体とわかるものから。

 ただの肉塊。

 首だけ。

 

「そ、んな。なんで、どうして………?」

 

 見覚えのある顔があった。

 

「シスター」

 

 パン屋のおばちゃん。

 果物屋の店主。

 靴屋のおっさん。

 

 知った顔が、落ちてる。

 

「あ」

 

 見つけてしまった。

 見慣れた髪色。

 

「あ、ああ」

 

 無意識に手を伸ばす。

 顔をこちらに向けた。

 

「セ、セル、か」

 

 セルカ。

 

「ぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

 

 また俺は。

 救えなかったのか?

 なぁ……?

 

 なんでだよ。

 なんでいつも。

 俺ばっかりなんだよ?

 

 なんで?

 

「なんでなんだよぉぉぉおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 そうだ。

 ユージオは?

 アイツは今どこにいる?

 

 その場から駆け出した。

 ひたすら駆け回る。

 

 最後の希望だった。

 ユージオが生きていれば。

 ユージオさえ生きていれば俺は。

 

 浅ましくも、そんなことを考えていた。

 もう、一人を失っているのに。

 自分の心を保つために。

 その希望に縋った。

 

 村からギガスシダーへと向かう出入口。

 そこに、ユージオはいた。

 

 ユージオは親子を守るように倒れていた。

 

「ユージオッ!!」

 

「カ、ガト」

 

 腹を、斬られていた。

 血が止め処なく溢れていた。

 

「しっかりしろユージオッ!」

 

 傷口を掌で塞ぐ。

 けれど止まらない。

 

「カガ、ト。ア、リスを…………頼ん、だ……よ」

 

 瞳が光を失っていく。

 魂の輝きが尽きようとしていた。

 

「お前がッ!! 助けにいくんだろッ。なぁ、ユージオ、おいユージ」

 

 首が、重力に従うように垂れ下がった。

 

「ユー、ジオ、おい、ユージオ……頼むよ、お前がいなくなったら俺は、もう………」

 

 頭が、痛い。

 

「ユージオォォォォォ!!!!!!!!!!!!」

 

 記憶が、縫い付けられるように蘇る。

 

 両親の葬式のとき。

 

 妹が息を引き取ったとき。

 

 そして――――――仲間を、殺されたとき。

 

「がぁ゛ぁ゛あぁ゛あ゛あぁぁ゛あ゛あぁ゛あ゛ぁあ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 また、俺は。

 大事な人を失うのか?

 なぁ。

 なんで?

 どうして?

 教えてくれよ。

 

 俺は、これからどうすればいいんだ?

 

 

 

「ブヒャッヒャヒャ!!!! どうだぁ、今の気分はよぉ? いやぁ殺したときの、イウムどもの顔を思い出すと笑けてくるぜぇ。あの絶望に染まった顔! ありゃあ、傑作、うぐぅッ!!!」

 

 心臓に剣を突き立てる。

 次に頭。

 胸。

 目。

 鼻。

 口。

 

 何度も。何度も。

 念を押すように。

 

「死ね、死ね、死ね、死ね、死ね」

 

 何度も。

 何度も。

 何度も。

 

 繰り返した。 

 

 やがて。

 ただの肉塊になった。

 

 殺して、しまった。

 

 ユージオの。

 セルカの。

 村の人たちの仇を。

 

 次は、誰を殺せばいい?

 誰に復讐すればいいんだ?

 

 ああ、そうだ。

 そもそもどうして村は襲われた?

 

 ユージオは言っていた。

『あれが、《果ての山脈》。あの向こう側に、ソルスの光も届かない闇の国があるんだ。闇の国には、ゴブリンとかオークみたいな呪われた亜人や、いろいろな恐ろしい怪物……それに、暗黒騎士たちが住んでいる。もちろん、山脈を守る整合騎士がそいつらの侵入を防いでいるけど、ごくたまに地下の洞窟を抜けて忍び込んでくる奴がいるらしい。僕は見たことはないけどね』

 

 ゴブリンどもが山脈を抜けれたのは、整合騎士の警備に穴があったからだ。

 つまりこの惨劇は、整合騎士が原因の一端だった。

 

 そうだ。

 ゴブリンを全員殺した今。

 やるべきことは決まった。

 

 やめろ。

 

 レッドプレイヤーを殺し回った。

 あのときと同じように。

 

 やめろ。

 

 整合騎士どもを。

 

 やめ、

 

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。

 殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。

 

 

「あぁ゛あ゛あぁぁ゛あ゛あぁ゛あ゛ぁあ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!!!!!

 

 《青薔薇の剣》が徐々に朱殷に染まっていき。

 そして。

 先端までもが、赤く。

 

 染まってしまった。

 

「はぁ、はぁ」

 

 ああ、懐かしい。

 長い間忘れていた。

 

 

 

 俺は。

 復讐者だ

 

 

 

 その日から。

 剣に染み付いた血の色が、取れなくなった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。