レッドは変わらない毎日を過ごしていた。寝て、起きて、食べて、任務へと赴き、帰ってきて、ドクターに褒めてもらう。
趣味のようなものは無い。テキサスやプロヴァンスの大きな尻尾に触ってみたいという願望はあるが逃げられてしまうため、なかなかそれは叶わない。
今日は何も任務の予定が無い日だった。彼女は何をしようかと考えながら、食事を摂るためにロドスの食堂へと足を運んでいた。
──?
嫌な感覚がした。それが危険なものだと分かった、近い。
...だんだんと近づいてくる。
彼女は本能的に物陰へと身を潜め、様子を窺う。黒い男がこちらへと歩いてくる......
見慣れない人物だった。ロドス内にいるということは仲間、なのだろうか。
静かに観察していると男は立ち止まりこちらへと視線を向ける。どうやら見つかっているようだ。
レッドは隠れるのをやめ、警戒しながらも男へと近づいてみた。
「...見ない顔、してる...あなた、誰?」
「...俺はアレックスだ、ついさっきロドスに加入した」
道理で見たことが無いはずだ。
...危険な匂いはするものの、アレックス自身は悪い人には見えない。どうにもチグハグな感じを不思議に思っていると、彼は私の名前を聞いてきた。
「私は、レッド。」
...
アレックスと出会った彼女は、その後食堂で食事を摂っていた。
アレックスを連れて。
「...どうして俺を連れてきたんだ?」
「...アレックスのこと、知りたくて。あと、お腹空いたから。」
「...そうか...」
黙々とカレーを頬張り続けるレッドとそれを黙って見つめているアレックス。今、食堂にいるオペレーター達とって不思議に思える光景が出来上がっていた。
「アレックス。ロドスに来る前、なにしてたの?」
「そうだな...ウルサスでレユニオンと戦いながら都市を脱出していた」
「それより、前は?」
「...故郷でちょっとしたトラブルの解決だ、ついでに化け物退治もした...お前はどうなんだ?」
アレックスは淡々と質問に答えると、レッドに聞き返した。
「私は、ウルフハンター、してた。」
「ウルフハンター?猟師のようなものか?」
「うん。オオカミを、狩る。それが私の、生き方。」
随分と野生的な子だな...。
「どうしてそんな事を始めたんだ?家族が猟師だったのか?」
「私に、家族はいない。生まれた時から、1人だった。オオカミを狩るのが、使命。」
聞けば聞くほど、レッドについての謎は深まるばかりだった。彼女は食事を続けながら、今度はロドスでのことについて聞いてくる。
「アレックス、ロドスでどんな任務、受けるの?」
「単独での任務が多いらしい、まだどんな仕事が来るかは分かっていないがな...お前は?」
「戦闘任務、多い。殺しは、得意、殲滅任務、よく任されてる。」
この子は戦闘が主体か。かなり実力もあるようで、難易度の高いものを任されているようだな。
「そうか...なら同じ任務で会うこともあるかもな」
「アレックス、戦闘、得意なの?」
「それでロドスにスカウトされたからな」
...そんなこんな時間が経ち、彼女は食事を終えて食器を片付け始める。
「アレックス、このあとどうするの。」
「俺は自室に向かう...部屋の中を整理しておかないとな」
「じゃあ、ここでお別れ。またね。」
「ああ。」
(ここが俺の部屋か)
本来の目的を果たしたアレックスは鍵を開け、部屋の中を確認する。
どうやら掃除が行き届いていたようで埃は落ちておらず、部屋は綺麗だ。
(家具は少ないが、まあ暮らす分にはこのままでも問題ないな。)
アレックスは椅子へと腰かけると、テレビをつけニュースを見始める。
(...こうしていると、少しだけだが元の世界での生活を思い出すな。)
感染する前の暮らしを思い出して少し懐かしさを覚えたが、ニュースの内容を確認しようと気を取り直す。
...龍門での出来事、レユニオンについての情報、この世界の有名人の吉報やスキャンダルなど様々なニュースを見ていく。
(世界が違えども、ニュースは同じようなことばかりだな)
心の中で笑うと、アレックスは何ヶ月ぶりだろうか。平和な部屋で静かに眠りへとついた。
アレックスはその日だけ、人間を取り戻せたような気がした。
そろそろ任務でも始めさせますかね...