アレックスはこの世界について最低限必要な情報を手に入れ、それからの行動を考えていたが、数時間が経過しても未だ答えが出ず悩んでいた。
(元の世界に帰る手段を探そうにも、どうすればいいのかが全くわからないな。源石が作り出すという謎のエネルギーを調べれば何かわかるかもしれないが...)
アレックスが吸収した人間の記憶を再度探ってなにか有力な人物がいないか調べてみたが、その手について詳しそうな人物は見つからなかった。
また別の人間を吸収しようかと考えたが、この世界で下手に吸収をしすぎると大きな騒ぎになってしまうかもしれないと考え、しばらくは下手な行動は控えることにした。
「ハァ...デイナは無事だろうな...」
元の世界にいるはずの妹の安否を心配し、アレックスは溜め息を吐いていた。
.........
現在アレックスは目的も無くチェルノボーグの観光をしていた。吸収した男達の中で1番マシな服装をしているヤツに擬態をして。
(...この世界は源石の力を元に大きく発展を遂げているのか、人類の脅威である存在で進化するってのは...なかなか皮肉な話だな)
たまたま見つけた飲食店の席に座りながら改めてこの世界を見ていた、道を歩く人々は現代的な服装のものが多く、文明の水準は高いようだった。
源石のエネルギーを利用した装置やアーツなどの特殊な技術が流通していて、どこか近未来感のある世界だ。
(アーツに関しては鉱石病の感染者を取り込めば俺にも使用出来るのか...?)
ブラックライトとの相性次第ではほぼ不死身の鉱石病感染者という強力な存在へと進化できるかもしれないと考えたが、そこまでのリスクは犯せないと結論付け、そこで考えを止めた。
再びアレックスは人通りの少ない場所へ向かっていき、偶然見つけた廃ビルの中へと入り身を隠そうとしたが...
「へぇ〜...変わったお客さんが来たみたいね」
突然後ろから声をかけられ、アレックスは声のした方向へと振り向く。
そこには黒と赤の服装で銀髪の少女がいた。赤く下向きに伸びた悪魔ような角と尻尾が特徴的だった。
「...誰だ」
「そんなに警戒しなくてもいいじゃない。別にあなたで始末したりだなんて考えは微塵も無いもの...やろうとしても私には無理そうだしね?」
彼女は笑顔のまま答えた。
「私の名前は【 W 】、フリーの傭兵をやっているのよ。...私のことを教えたのだし、あなたの名前を教えてもらえない?」
「......俺は...アレックスだ」
「アレックスね...ねえアレックス、質問をしてもいいかしら」
「そう情報を易々と答えると『 アナタは何者かしら? 』...」
アレックスの返答を遮るようにWは質問をした。
「...どういう意味だ」
「あなたのことを一目見て感じたのよ、『あなたは本物だけれど本物じゃない』って...種族もよく分からないし、謎だらけなのよね」
この女...俺の存在に勘づいている?
「だからもう一度質問するわ、あなたは『何者かしら?』」
「...それは俺にもわからないな、俺自身、自分が本物なのかどうかも理解できていない」
ウイルスによって変わってしまった今のアレックスは本当にアレックスなのか...あの真実を知ってから、今でもそれはわからない。
「...そう、残念だけどまあいいわ。久しぶりに面白い存在に出会えたし、私はそれだけで満足よ」
そういうとWはアレックスから離れていく。廃ビルから出ていくようだ。
「ああ、そうそう...この出会いを記念して特別に教えてあげる」
何かを思い出したのかアレックスへと振り返る。
「もうすぐウルサスでお祭りが始まるから、楽しみにしておくといいわ」
「祭り...?」
そう告げるとWはビルから去っていく。アレックスには祭りの意味がよくわかっていなかったが、なにか面倒が起こりそうだと直感で感じ取っていた。
はい、Wさんご登場です。
アレックスさんなら鉱石病の結晶が現れても余裕で切り落としたり抉りとるなりするだろうからジッサイ最強なのでは?