まよマヨ! 〜後輩咥えるオオカミさん〜   作:パン粉

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 歓迎会、っていう名目で、豪華な食事を振る舞われて、景気良く迎え入れられた私。狼先輩が取り分けてくれていたおかげで、たくさん食べられたんだけど、多分それで狼先輩はあまり食べられていなかった。気にするな、と飄々として言う彼、気配りのできる男の人って素敵。途中でお嬢様が口移しをし始めてからは、若干嫌な顔をしていたけれど、コサメさんもスバル様も「いつものこと」って言って、取り合ってくれなかった。いつもなの?苺さんも、お嬢様Loveって言ってたのに、それには何もせず。

 

 そうして迎えるは、お風呂。豪華な大浴場、口からお湯を吐き出すライオン。綺麗な背中を向けながら、振り向いて私を迎えてくれるお嬢様。そう、裸の付き合い、ってところ。次々と入ってくる女性陣、もちろんスバル様も一緒。

 

 ――そして、コサメさんも案の定、スバル様を狙っていく。裸の付き合いだ、とニヤニヤしながらスバル様をお姫様抱っこし。

 

 嫌がるスバル様、一緒にお風呂に入るだけ、っていうコサメさん。でも、スバル様の言う通りだ。コサメさんからは、よこしまなものしか感じられない。

 

「何?それ以上、って。ベッドの上で、とか考えた?やだぁ、スバルたんのエッチぃ――ぐーぱんっ⁉︎」

 

 相変わらずですね、というか懲りないですね。私はもう何度この光景を見たか……。でも、スバル様?今の状況わかってます?

 

 コサメさん好みの肉体(カラダ)が、薄っぺらな布一枚だけで立っている。襲ってくれ、と言っているようなもの。もちろん、コサメさんにとってだけど。いやぁ、その布を私も脱がしたいです!って、違う!そんなことしたらスバル様に殺される!

 

 しつこすぎるコサメさんに鉄拳制裁を見舞うスバル様、それを見てもお嬢様は、賑やかね、で済ます。この人も肝が据わり過ぎている。このままじゃ、お湯が血の風呂になっちゃう、んだけどさぁ。

 

「大丈夫、お湯には浸かってない」

「そういう問題ですかっ⁉︎」

「それよりも、あなた。皆で一緒にお風呂を決めたのはお嬢様。だけども、お嬢様の身体に見惚れでもしたら……」

 

 

 なんでバール持ち込んでるんですか、苺さん。しかも入浴剤だなんて。そんなごまかし効きませんよ⁉︎赤い入浴剤だなんて、絶対嫌ですよ⁉︎

 

「苺」

「なに、狼」

「そんなもん、持ってくるな」

 

 ――やっぱりいますよねー。狼先輩。皆っていってたもん。男の人だけどさ。それを気にしないここの人達、なんでなんだろう。

 

 家族だからいいのかな。でも、流石に思春期の男女が混浴なんてするかなぁ。苺さんが振り回して手からすっぽ抜けたバールを平然とキャッチした狼先輩は、日中と同じように、それを引きちぎり。あの、それ鉄ですよね?

 

「どう?楽しめてるかしら?」

「はい……。ドタバタしてますけど、すごい懐かしい感じがして……」

 

 そういえば、そろそろ一年経つ。事故で両親を亡くしてから。身寄りの人はいたけど、その人にも家庭はある。私を受け入れる余裕はなかった。迷惑もかけたくなかった、だから私は1人で生きていくことを決めた。

 

 不思議と、寂しくはなかった。友達もできた、バイト先でも可愛がられた。そういう面では、私は恵まれていたのかもしれない。そして、今からもっと。

 

 ――新しく、家族ができたから。

 

 にこり、と自然に笑える。その顔で、お嬢様に答える。寂しくはなかったか、と。もう大丈夫だ、と。

 

「ふふ。そう思って。私は、堅苦しいのは好きじゃないから。狼も言ってたでしょ?」

「狼先輩が?」

「ええ。『メイドだろうとシェフだろうと、関係ない』って。あの子達は個性的だけど、仲良くできるわよ。もちろん、私ともね?」

「――はいっ!」

 

 ご主人様だから、とかそんなことは関係ない。確かに、狼先輩が言った通り。そうだったら、こんなに明るく、親しく接していない。ハチャメチャなこのお屋敷には、悲しいってことはないと思う。

 

 ――狼先輩だって、どこか嬉しそうだし。あんなに穏やかな顔をして、まるで……。

 

「あら。狼、寝ちゃった」

「そうですよね?寝てますよね?」

「ふふ、かわいい。流石、私の旦那様」

「ホントに……え?」

 

 ――弟さんが、旦那様?何言ってるんですか、お嬢様?

 

 すやすやと寝息を立てて、湯船で眠る狼先輩。そんな中で、お嬢様の爆弾発言。なにも恥ずかしがる事なく、お嬢様は続ける。目をハートにしながら。

 

「本当ならここで狼を食べちゃいたいわ。巻いたタオルの先には、きっと大砲があるのよ。それを私のホルスターに入れて、全弾撃ち切らせるのっ!」

「スイマセン隠喩ニナッテマセン」

「つまりはSEX」

「直接話法っ⁉︎」

「法律も無問題。私と狼は義理だから!」

「問題あり――えっ」

 

 大暴れするお嬢様。直接的な言葉まで使って、その中でも気になる言葉――義理。

 

 ――確かに、顔付きも、性格も、似た所がない。優しさだけが、この2人の共通点。義理である、なんて。十分わかるはず。なのに、なんで私は気づかなかったんだろう。

 

 寝続ける狼先輩、その身体は、お湯の中に入ってもわかるほど、傷だらけ。対してお嬢様は、傷なんて一つない、卵肌。育った環境すら違う。でも、ボディガードっていう名目なのに、義理の姉弟である理由が、私にはわからない。

 

「ふふふ。義理だなんだ、ってことは、そんなに大事なことかしら?」

「い、いえ!確かに、メイドもシェフも、関係ありませんし……」

「そうでしょう。狼は確かに、私と血の繋がりはない。だけど、それ以上に大切な絆がある。家族、っていう絆。姉弟っていう絆。そして、恋愛を超えた絆が、ね」

「恋愛を、超えた……?」

「ええ。もちろん、私は彼に惚れている。それは隠さない。だけど、彼には、自分の悪い所を隠したい、っていうのはないの。等身大の自分を、ありのままの自分を、狼は受け入れてくれる。恋愛よりも先に、心が繋がっているから、ね」

 

 ――きっと、貴女も、狼に触れたら惚れてしまうわよ。

 

††††††

 

 

 

 お嬢様に意味深な言葉を伝えられてから、翌朝。なんとか着られたメイド服、姿見の前でチェックをしているときに、苺さんから急かされる。食卓の準備、っていうことで、苺さんの後ろについていけば、待ちくたびれてしまったと言わんばかりの態度で待っていたコサメさん。取皿を運んでくれ、と頼まれているときに、お嬢様とスバル様が現れた。

 

 おはようございます、挨拶をする。そんなときに、不幸スキル――というか、ドジスキルが炸裂してしまった。バイトでも見せつけた、私の第二の呪いの装備が……。

 

 つまづき、バランスを崩す。そのまま地面に傾いていく私。手に持ったお皿は、そのまま落下運動を続け――

 

「大丈夫か、真宵」

 

 しゃがんだ、スーツ姿の狼先輩の手の中に。

 

「――ああああありがとうございます!」

「危なかったわね、真宵さん」

「んだよー、割ったら脱がしていこうかと思ったのに」

「パワハラとセクハラか?お前、それに乗じてスバルの服を脱がすつもりだろ」

「あったりー」

 

 ――ええ。笑いながら話すのは別に構わないんですよ。というか、本当に助かりました。でも、狼先輩。

 

 なんで私の身体まで、抱きとめているですか⁈

 

「むー。ろーう、私もぎゅってして?」

「スバルにしてもらえ」

「えー。あなたがいいの!」

「苺」

「YES, Sir!!」

 

 苺先輩をけしかける狼先輩、それに迷いなく従う苺さん。こんなに近くと、狼先輩の落ち着いた心音が、とくん、と聞こえてくる。対する私の心臓は、どんどんと暴れていく。

 

 ――優しい腕、胸。こんな人に抱かれるなんて、はじめて。

 

 お嬢様の言っていたことが、わかるかもしれない。触れたら、惚れる。物理的にも、心理的にも。この人に、惹かれ始めている。

 

「具合が悪いのか?」

「いいいえっ!」

「ふむ。気を付けろよ」

 

 お皿はそのまま持ち、私を離す狼先輩。顔が真っ赤になったのをコサメさんに見られると、ニヤニヤとされ。こうなることを見過ごしていたかのような風態、面白いな、と言われた。

 

 ――狼先輩。私、貴方に食べられました。

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