あ、これ公文さんのとこでやったところだ! 作:カツカレーカツカレーライス抜き
「あー、もうこんな時間だよもぉー…ねぇわーあの係長」
部屋の真ん中、雑に置かれたちゃぶ台の上でノートパソコンを開き、ディスプレイの隅に映る時間を見ながらぼやく。
予定通りに行かないのは仕方ない。けどそれが人災でしかもやった当人が解決に役立たないとなると、ちょっと暗い感情だって長くなる。
「あぁもうはい、切り替え切り替え」
そう呟いて馴染みの、雑談上手の押しVのつぶやいったーをチェックをしようとして…
全然違うモノがディスプレイに映っていた。
何となく古ぼけた屋内で壁には大根が二本吊るされ、その下には物騒なナタが置かれている。
大きく開かれたむしろからは透き通る様な青空が広がり…そして画面の中央には、白い着物に黒い袴、濡れた烏の羽を思わせる長い黒髪。綺麗と呼ぶより可愛いといった感じの顔立ちなのに、ディスプレイ越しに見つめてくる目は力強く、生命力に溢れるロリがドーンと居た。
周囲に映る物と比較すると凄いコンパクトサイズ。町中で話しかけたら一発でアウトなロリロリだった。
「ぅ、ぇぁ?」
裏がえった変な声が部屋に小さく響く。手を出せば人生終了、でもお近付きになりたいし友達になりたいしおまわりさんこいつですされてもまぁいいやと思わせるスーパーロリだった。
そのロリが画面の中で軽く頷き、小さな唇を開いた。
『うむ、時刻らしいので始めるでござる』
ロリござるっ子だった。
○ ○ ○
「まずは…うむ、自己紹介を。拙者、土佐の一豪族の公文でござる」
『なに…この…なに?』『あれ、俺アリスちゃんのファンアート見てた筈なんだけど』『おまおれ』『うわぁ、よく出来たモデリングだなぁー』『いやこれ…モデリングじゃ…』『え、マジか』『あマジだこれ。本物だ』
「本物?いや拙者本物とか言われても困るでござるが」
『いやいやそんな、こんなハチロクがちょっと育った感じの子がリアルとか…リアルだこれ』『ちょいつり目だな。ハチロクより』『ハチロク?』『大人のゲームの…まいてつってのがありまして』『把握した』『把握してないなこれ』『あー、えっと、公文、ちゃん?』
「ちゃん…」
『さんだろぉ!?落ちこんでるだるぉー!?かわいいだるぉー!』『落ち着け。気持ちは分かるが』『うむ』『じゃあ公文さん?』
「うむ!」
『かわいいかよ』『僕ここの子になりました』『なるな』『いやいや、なんだこの…なんなんだほんと』『あの公文さん、これはその、なんなんだろう?』
「実は、皆に助けてほしいのでござる」
『助け?』『えっ、この自宅警備員の俺達に?』『お前だけだぞ』『せやな』
「恥ずかしい話でござるが実は拙者…もう去年もその前も、その前のずっとずっと前も、新年のお餅を食べてないのでござる…」
『ほーん』『クリスマスプレゼントだ!カードもだ!』『ジョナサンはやめろ』『土佐…餅で公文って…いや、まさか』『あーいや、そういう設定、なんだろ?』『設定にしては部屋の中とかリアルすぎるけど…まあないよな』『ここの子だからその設定を信じるだけだなっ』『まあ色々やね。で公文さん、それで?』
「ん。それで困って知り合いの石村殿に相談したところ、配信とやらの一式を貰ったのでござる」
『すでに足長おじさんがいたでござる』『処?』『はやまるな』『何でそこで配信セット一式なのか』
「集合知がどうとかなんとかかんとかでござる」
『(あっこれ分かってないパターンだ)』『でもドヤ顔かわいいじゃん』『それな』『でもさ、設定上その時代だと配信とかセットとかオーパーツじゃん?どーなってんの?』『その時代?』『餅 公文でぐぐれ』『うむ』『公文さん、石村殿ってどんな人?』
「どんな…痩せた感じの、南蛮の方から来た人でござる」
『消防署の方から来ました』『警察署の方から来ました』『絶対部外者だゾ』
「南蛮は凄いでござるな。この前石村殿から聞いたでござるが、近江のどこそこ村にからくり侍女の作り方を教えて、しかも成功したそうでござる。あと…鉄砲とかいうのも」
『とかいうの』『重要な歴史の分岐点が…』『国友村か?』『からくり侍女さんはどのくらい侍女さんでどのくらいからくりなんですか!?』『必死で草』『必死にもなるだろ!お前に人の心はないのか!?』
「石村殿の所にも居るでござるが、ほとんど人間でござるな。少し冷たい感じで…あ、後耳の所が鉄とかそんな感じでにょきっとしているでござる」
『にょきっと』『ああああぁあぁー!ちょっと滋賀いってくる!』『長浜市にからくり侍女様は…おられませぬ!』『…そうだな。うん落ち着いた。ちょっとディスプレイの向こうに行く方法考えてくる』『欠片も落ち着けてないんですがそれは』『見つけたら俺にも教えてくれ』
「…で、話を戻してもいいでござるか?」
『餅ですか』『餅ですな』『他の話がインパクトでかすぎてすっかり忘れてた』『からくり侍女と配信セットと南蛮の方だからな…』
「忘れないでほしいでござる。それで何か知恵とか方法とかないでござるか?」
『あーまずどの位人いる?』『豪族なら配下とか村とかあるよね』『それ次第だなー』
「…」
『公文さん?』『今凄い綺麗な目そらしが』『いやいやそんな』
「村が一つと…狐と犬が合わせて二十…」
『解散!』『終了!』『閉廷!』
「ま、待つでござる!解散も終了もへーてーも待つでござる!」
『その時代の農政は大でも小でもマンパワーありきでして』『ド正論が』『あれ、石村殿とかからくり侍女様は?』
「彼らはひきこも…んん、姫の客人ゆえ…相談は出来ても…」
『でも凄い技術あるじゃん?なんかあるんじゃ?』『それだと最初から配信道具一式は渡してないと思うぞ』『あー、そっか』『軍事技術ツリーは進んでても農業技術ツリーは全然って感じか』『それかオーバー過ぎて渡せない、とか』
「んぐぅー…次の新年も餅はないでござるか…」
『レイプ目の公文さん…至高ぃな!』『処?』『処』『草…ってあれ?』『なんか画面が歪み始めてないか?』『こっちも歪んでる』『びびったぁ…モニター死んだかと…』
「あ…そろそろ危ないでござるな」
『危ない?』
○ ○ ○
『しばし待ってほしいでござる』
そう言うと彼女は開かれたむしろに近づき外に向かって声を上げた。
『とよー、今手が空いてる皆でネットとかいうのをもたせてほしいでござるー』
彼女のその言葉から少しして、狐と犬が数人屋内に入ってきた。数人。人。
ふさふさ尻尾でもふもふ耳で巫女衣装に身を包んだ、公文さんより頭一つ背の低い…スーパーけもっ子ロリだった。
そして彼女達は画面前に整列すると、せーのと声を合わせ踊り始めた。ロリロリしたスペッシャルなロリダンスだ。完全に有料コンテンツだ。
それが今無料で放映されている。
お試し期間かな。次からは有料かな。月額おいくら万円かな。
そんな画面向こうの人々の欲張りロリセットおいしいれす、な状況をよそにロリダンスは終わった。
『とよも皆も助かったでござる。ありがとうでござる』
その言葉に彼女達はにぱーっと笑い手を振りながら外へ出ていった。
『さて、続きでござる』
ロリけもっ子達を見送ったロリっ子がふつーの顔して安定した画面の中にいた。
○ ○ ○
『公文さん』
「ん?なんでござるか?」
『今の巫女さん達は…』
「拙者の村に住む狐と犬でござるが?」
『そ、そうなんだ…で、あのなんで踊って?』
「ネットとかに繋げる?為でござるが…皆は違うでござるか?」
『光とかよりけもロリ最高かよ…』『サービス始めろよ、無能かよぉ!』『モニターの向こうに行く方法、か…』『どうやら俺の本気を出すしかないようだな…』『録画しといた』『有能』『有能』『初めて人を尊敬した』
「それで餅でござるが…本当に無理でござろうか?」
『任せとけ!』『安心しな!』『大丈夫だ!』『公文さんのけもロリ村…俺達に任せろ!』
「なにか釈然としないでござる…」
○ ○ ○
ディスプレイには押しVのつぶやいったーが映っている。黒髪ロングの着物袴姿のロリも、狐や犬のけもロリ巫女も映っていない。
なんとなく、餅 公文で検索し該当する人物を調べてみた。
マイナー寄りで、知らない人は全く知らない戦国時代の武将。某学習塾を考え広めた人のご先祖様だが、やっぱりメジャーとは言えない。
それなりに歴戦の武将だった様だが、余り政は得意ではなかったらしく、新年の餅を用意出来なかった話が残っている。そこは一緒なのだろう。
けれど間違っても女性じゃないしロリでもない。
何度も何度も、履歴からページを開いたがつながらない。つながってもそれは押しのつぶやいったーだ。まるでそれは夢なんだ、なんて言われている様で無性に寂しくなる。子供の頃公園で聞いた十七時のお知らせみたいだ。だけれど、と思った。
彼女の悩みは解決していない。
あれがなんであれ、どこかの企業の宣伝であっても、ただの設定であっても、また会いたいと思った。
ネット検索で農業関連のページを片っ端からあたりながら、一人の…まあまあそこそこの人達の夜は更けていった。
文字入力大変だけどなんかたのしいれす