【完結】私はプレインズウォーカー。   作:デーテ

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10.ダンス・ダンス・ダンス

 中間テストも終わって、もう秋だ。冬も近い。

 いろいろ調べたし、カードも集めた。シミュレーションもした。やれることはやった。他に出来ることもあるかもしれないけど、もう思い付かない。

 さあ、いざ! いざ! やるぞ! 心臓と魂を燃やせ!

 

 

「アイちゃんお願い、とーして?」

 私は可愛い子ぶって言ってみた。たとえ99パーセント無理だとしても、1パーセントでも可能性があるのなら挑戦する価値はあるはず。

「んー、フレイムたん通すとブロッカー焼かれて、ファイヤーズの速攻で叩かれて4点。あー、火切って6点か。おのれパイロさえ、パイロさえなければ……」

「全然見てないじゃん」

「ユーリちゃん、わたし、いま、ピンチ」

 

 なんと今、私はアイちゃんの【レベッカフェアリー】と戦ってる最中で、ちょっとふざける余裕があるくらい押してるのだ。

 

「どうしてレベッカはクリコマを描いてないの!? フレイムたん通ります……」

「やった!」

 場に出たフレイムたんは花から出てきたフェアリーをやっつけて、そのままアイちゃんに向かって走った。

 

「う、アタック指定でスタッター出して、そのままブロックしたーいな?」

 アイちゃんがめっちゃ可愛い顔しておねだりしてきた。

「えっ、うーん」

 唯一の手札《稲妻の一撃》を見ながら迷った。アイちゃんのおねだりで迷ったわけでは無い。アイちゃんのおねだりで迷ったわけでは無くって、どうすれば勝てるかを考えた。本当に全然迷わなかった。

 フレイムたんのアタックが通れば4点。《稲妻の一撃》より1点大きい。

「だーめ」とめっちゃ可愛い子ぶって言ってみた。

 

「んふっ」とアイちゃんは吹き出した。

「おい、今のは可愛いでしょ」と私は言った。

「ふふ、あ、あざと過ぎるから面白かったの」とアイちゃんは笑って言った。

「ちょっとやり過ぎたかなとは思った」と私は正直に言った。「とりあえずスタッターに《稲妻の一撃》撃ちまーす」

「焼けましたー。フレイムたんは何点?」

「4点だよー」と私は言った。

 

「んー、ファイヤーズは切らないの?」

「切る?」

「えーと、ファイヤーズの下のほうに書いてあるサクリファイスんにゃんにゃ+2/+2の部分は使わないの?」

 なるほど。そういう言い回しをするのか。私はファイヤーズの英語を改めて読んでみた。

「そう言えばこんな能力あったね。完全に忘れてた」

「ふふ、マジックではよくあるよ。そういう事」アイちゃんはニコってしてフォローしてくれた。性格が良い。

 

「アイちゃんあと7点だよね? フレイムたん+2しても足りなくない?」

「ファイヤーズと同じように、実は《苦花》にも隠された能力があるの」

 アイちゃんが《苦花》をこっちに向けてくれた。

「アップキーブにフェアリーが出て、ライフを1点失う……。アイちゃんこれって」

 

「ユーリちゃんの勝ち!」とアイちゃんはニコニコ笑いながら手を差し出してきた。

「か、勝った……?」

「ほら握手しよ! グッドゲーム!」

「うん……」

 アイちゃんに両手でぎゅっと手を握られた。

「わあ」私はよく分からない声を出した。

「ユーリちゃん!」

 アイちゃんは手を握ったまま立ち上がり、私を引っ張って言った。

「私と踊って!」

 

 

 アイちゃんは片手を繋いだまま、体をピッタリとくっつけてきた。空いてるほうの手は腰に回され、グイと引き寄せられる。ほとんど抱き合う形になってゆっくり回ったり揺れたりした。

 お互いの肩に顎を乗せないと顔がぶつかる距離。アイちゃんは私の頬に自分の頬をくっつけて話しかけてきた。

 

「ユーリちゃん強かったよ」とアイちゃんは言った。

「アイちゃん、今のマジック、楽しかった? 私とファイヤーズは、アイちゃんのお気に入りのデッキと楽しく戦えた?」

 アイちゃんは私の首に両腕をまわして正面から抱きしめてきた。おでことおでこをそっとくっつける。

 

「そんな事を考えてたの?」アイちゃんはちょっと目を見開いて、驚いた顔をしてた。

「アイちゃんが使いたいデッキを、使わせてあげたかった」と私は言った。

「うん」

「私がいつもしてもらってるみたいに、いっぱい考えて、悩んで、ライブラリーの一番上のカードにお祈りしちゃうようなマジックを、私もアイちゃんにさしてあげたかった」

「うん。うん!」

「アイちゃん、私ちゃんとできてたかなぁ?」

 

「うん、ほんともういっぱい考えたよ! 致命的だったのは最後の一つ前のターンに撃たれたパイロ! 《紅蓮地獄》! トークンが全部無くなっちゃった! おかげで次引いたスタッターでフレイムたん消せなくなっちゃってすっごく困ったんだからね。手札の残りはスタッターと土地だし、お願いブロックさせてその手札除去じゃありませんよーに、ってお祈りしたんだから。案の定焼かれたし! ユーリちゃんもファイヤーズもすっごく、すっごく強かったよ!」

 

 アイちゃんはめっちゃ早口で喋りまくった。

 

「それでねそれでね、私、すっごく、楽しかったよ!」

 

 つぼみが綻んで花が開くような顔をして、アイちゃんは言った。

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