デッキに新しいカードを加えて入れ換えたり枚数をいじったりしたら、実際に戦って様子を見て、その後アイちゃんに見せて相談したりする。
昨夜は全身全霊で戦ってくたくただったので、アイちゃんとくっついてダラダラ過ごしてから寝た。アイちゃんはずっとニコニコしてた。
朝。アイちゃんと一緒に起きて、手と顔と頬っぺたを洗った。昨日コンビニで買ったパンを食べて、アイちゃんの部屋でデッキを広げた。
「これがユーリちゃんのファイヤーズ。なるほどなるほど」
アイちゃんはカードを土地と呪文に分け、呪文をクリーチャーとそれ以外に分け、それ以外をソーサリー、インスタント、エンチャントに分けた。
それぞれをマナコスト順に、左から並べる。
「この《クロールの銛撃ち》を見つけてきたの、ユーリちゃん天才だなって思った。全然予想してなくて、唐突に5点持ってかれたのびっくりしたよ。フレイムたんとかマナクリと《紅蓮地獄》は相性悪そうだなって思ったけど、それを逆手にとってるのが素晴らしい。そもそも《紅蓮地獄》が辛かったのもあるけど。フェアリーにはフォールアウトって五輪の書にも書いてある」
カード1枚からいろいろ推察するアイちゃんは本当に楽しそうだった。めっちゃ喋る。そして誉められたので嬉しい。
「えへへ、花からいっぱいフェアリーが出てくるから、まとめてやっつけれるカードとか、フレイムたんみたいなカードを探したの」と私は言った。
「うんうん、トークンにカードを使うと損をするからね。ETBで除去できて、しかもパワーが上がる銛撃ちはファイヤーズにピッタリだと思う。後半に引いてきても強い2マナクリーチャーが入ってるデッキは強いよ。強いから強い。真理。たしか現役時代のファイヤーズの2マナは《リバー・ボア》とかのはずだから、カードパワー100万倍くらい違う」
アイちゃんはたまに早口モードになる。アニメとかゲームの話をするときに多い現象だ。めっちゃ楽しそうなので、私はこのアイちゃんも好きだ。
そして、私とのマジックでこうなるのは昨夜が初めてだった。
嬉しい。すごく嬉しい。
私は相づちを打ったりしながらずっとアイちゃんの顔を見る。
ふと目が逢ったとき、アイちゃんが急に黙った。
「どうしたの?」と私は聞いた。
「あ、たくさん、しゃべりすぎた、かな、って」
「めっちゃ楽しそうだから、アイちゃんの早口モード良いと思うよ?」
「早口モード!? もしかして私初めてじゃないの?」
「えっ、うそ気付いていらっしゃらなかった?」
「オタクな部分は抑えれてると思ってました。……引いた?」
「引かない引かない。楽しそうで良いと思うって」
「うぅ……」
アイちゃんはすごく凹んでた。
「なんかあったの?」なんでこんなに落ち込むのか分からなかったので聞いた。
「……中学のとき、クラスの子と喋ってるときに、引かれた」
「えっ、なんで?」
「なんか、いきなり早口になって、びっくりした、って引かれた」
「んー?」聞いてもなんで引かれたのか分かんなかった。
「……」
「アイちゃん、私は引いてないよ。楽しそうで、見てると私も楽しくなってくるよ」
「その子も、そのときは同じような事……」
たぶんその後、疎遠になったりしたんだろう。トラウマになってるんだと分かった。これは私も本気にならないといけないみたいだ。
その中坊と私は違うって事、ガツーンと分からせてやるか。
これからやる事に対して、自信はそこそこある。たぶんいけるはずだ。大丈夫だと思う。緊張はしてる。不安も、正直めっちゃある。でも、いける。いけると思うんだよなぁ。もし無理だったら今度は私が凹む。ていうか唐突だなぁ。最近やっと分かったんだけどなぁ。
いや、しかし、やる。やるんだ。アイちゃんが落ち込んでる。なら、私が凹んでる部分を埋める。めっちゃドキドキしてきた。やばい。お願い、上手くいって。
「アイちゃん」声を出した。よし、やるぞ!「ここ座って!」
アイちゃんをベッドに腰かけさせる。私はアイちゃんの正面から抱きつき、太ももの上に乗った。いつもみたいにぎゅっと抱き締めて、そのままゆっくりとベッドに押し倒す。
「ユーリちゃん……?」
いつもと何かが違うと思ったのか、アイちゃんが耳もとで呟いた。私は両手でアイちゃんの頬っぺを挟む。至近距離でアイちゃんと目が逢う。瞳に涙が滲んでた。
「アイちゃん、私、アイちゃんの事、好きだよ」と私は言った。
「す、え、あ、私も、好きだよ」
それじゃない。
「最近気付いたばっかなんだけど、私アイちゃんの事好きだよ」
「え、最近……? それまでは違ったの?」
アイちゃんはショックを受けたような顔をした。
「大好き」
私はゆっくり顔を近づけて、
「ぅえっ!? これ、そういう!?」
私は目を瞑って、
「き、キス!?」
目をひらいて、
「口と目を閉じて」
「は、はい」
私はアイちゃんに口付けをした。