【完結】私はプレインズウォーカー。   作:デーテ

14 / 34
14.エイト&トゥエルヴ

 マジックに使うお小遣いは、月に1,000円までって決めてる。高校生はマジックだけで生きてるわけではないのだから。

 お化粧を買ったり、お洋服を買ったり、友達とご飯食べに行ったり、カラオケに行ったり、お菓子を食べたりなどなど。新たに加わった趣味に割けるのは、それらを少しずつ切り詰めた余剰金。これが1,000円というわけだ。

 

 期末試験が終わると本格的な冬がやってきた。気温はぐっと下がり、コートとマフラーが手放せなくなった。

 私とアイちゃんは暖房の効いたカードショップをうろうろさまよってるとこだった。

 ファイヤーズに習熟した私は、端的に言うとちょっと飽きそうになってた。アイちゃんに相談した結果、まだ使ってない色を触ろう、もう一個デッキを作ろうという事になった。

 

「核戦争が起こっても白ウィニーは生き残る。というわけで今度は白単ウィニーを組もう」とアイちゃんは言った。

「白単は、白色単色って意味だよね。ウィニーって?」と私は聞いた。

「ウィニーは、マナコストの軽いクリーチャーって意味。1マナとか2マナでたくさん並べて、全体強化して素早く叩くの」

「そんな小さいの並べて、それって強いの?」

「すっごく強いよ。しかも安い」

「えっ、矛盾してる」

「人は矛盾を抱えて生きてるんだよ」

「急に深いこと言うじゃん」

「アイキューごせんまんくらいあるから」

「私のお嫁さんが天才だった」

「……ふふ」

 

 そんな訳で、いつものストレージコーナーだ。アイちゃんは手早くカードを選んだ。

「ユーリちゃんはカードの傷とかあんまり気にしないよね?」とアイちゃんは聞いてきた。

「むしろ安くなってラッキーじゃないの?」

「高いカード買わないしそれで良いと思う」

 アイちゃんが探しだしたカードは50枚くらいになった。

「ハーフデッキのカードで使えるのは無いの?」と私は聞いた。

「《平地》は全部使うよ。数が足りないから何枚か追加してる。あっ、基本土地の絵柄バラバラで良い? 揃えちゃう?」

 基本土地の絵柄? と私は思った。揃えてどうなるんだろう。

「揃えるとどういう効果があるんですか博士」

「お洒落の問題なんじゃよー」とアイ博士は言った。

 お洒落か。お洒落なら仕方ないな。

「大切なやつじゃん。揃えよう」

「真面目な理由も一応あるよ」とアイちゃんは言った。

「ほう」

「手札を見られた後ドローしたとして。既に持ってた《平地》Aと、新しくドローした《平地》B、どっちから置くのが得だと思う?」

「あ、なるほど。絵の違う《平地》Bを置いちゃうと、今ドローしたのが《平地》Bだってバレちゃうんだね」

「ユーリちゃん頭の回転めっちゃ早いよね。今ふつうにびっくりした」

「アイキューごせんちょうあるし」

「私の恋人は美人で賢い」

「おうよ」

 いきなり恋人とか言われると結構照れるもんなんだなぁ、と私は思った。

 

 だいたい60枚くらいのカードと、白い無地のスリーブを買う事にした。これで今月のマジックお小遣いはおしまいだ。

「ファイヤーズとは回しかたが違うけど、慣れたら楽しいと思うよ」

「楽しみだな」

 レジで受け取った品を鞄に入れながら、私は新しいデッキを回したくて仕方がなかった。マジックにはまだまだ私の知らないカードや戦略があり、この先もずっとアイちゃんと一緒にプレイしていきたかった。

 

「昔のデッキにはね、名前がついてる事が多いの。そのデッキも、最近なら白単ウィニーとか、白単アグロって呼ばれると思う」

「そうなんだ。このデッキはなんて呼ばれてたの?」

「今はもう世界から忘れられたカードとその亜種。それらを8枚フルで積んだそのデッキは【エイトクルセイド】と呼ばれてた」

 世界から忘れられた。なんだそれは。

「私そういうの好き」

「それともう一つ、当時とカードは違うんたけど。かつてマジックにはネクロの夏と呼ばれた暗黒時代があったの。当時最強だった【ネクロディスク】を倒すために組まれた白単ウィニー。3種12枚の騎士を積んでたからこう呼ばれてた。【トゥエルヴナイツ】」

 暗黒時代を打ち倒した12人の騎士。痺れてしまう。

「私そういうの好き!」

「だと思った!」とアイちゃんは笑って言った。

 

「でも、それだとこのデッキの名前は何になるんだろう」

「うーん、クルセイドって単語はもう使えないから、あえて名付けるなら【エイト&トゥエルヴ】とか?」

 アイちゃんはちょっと考えてからそう名付けた。数字だけというのがシンプルで良いと思った。

「このデッキ、大切にするね。すごく嬉しい。いっぱい考えてくれてありがとう」と私はお礼を言った。

「ユーリちゃんが嬉しいと私も嬉しい。どういたしまして」私の腕に自分の腕を絡ませながらアイちゃんは言った。「ね、早く帰って、しよ?」

「うん」と私は言った。私も同じ気持ちだった。

 

 冬の夜は長いけれど、やりたいことは沢山ある。私たちは白い息を吐きながら家路を急いだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。