年が明けた。お祖母様のお屋敷に親戚が集まり、それを終えると手元にちょっとしたお金があった。私の両親は兄弟が多くて、私をちやほやしてくれるのでお正月は楽しい。
資金を半分に割る。半分はアイちゃんとのデートに使う。残りは好きに使う。
何を買おう。お洋服、お化粧、おマジックに均等に割り振ろうか。なかなかの金額なので何でも買える。
スマホを手に取り、アイちゃんにメッセージを送った。
『買い物 デート 行きたい』
『その言葉が聞きたかった』
昼過ぎに駅前で待ち合わせた。広場は人もまばらで静かだ。コートのポケットに手を入れて待ってると、アイちゃんが歩いて来るのが見えた。
「あけおめ~」と私は手を振った。
「あけおめ~」とアイちゃんも手を振る。
小走りで近寄って来たアイちゃんと、ノリでハイタッチをした。
「いぇー」「ぅえーい」
適当な言語で会話を交わし、手を繋いで券売機まで歩いた。
年末年始は家族と過ごしたので、年が明けてから逢うのは初めてだった。アイちゃんの顔を見ると無条件で嬉しくなるので、握った手をにぎにぎして表現した。
「こそばーい」とアイちゃんはニコニコ笑って握り返してくれた。
電車を降りて少し歩く。なかなかの人混みだ。はぐれないようにという建前でアイちゃんと引っ付いて歩いた。
大きな道路を渡り、目的の建物に着いた。5階建てで、ワンフロアがめっちゃ広い。2階に太い渡り廊下が通されてて、同じサイズの建物と連絡してる。
片方のビルには服屋さんやアクセサリーショップなんかが入ってて、もう片方のビルにはゲーム屋さんとか本屋さんとか特殊な本屋さんとかが入ってる。カードショップもここだ。
「この2つのビルで何でも揃うの便利だよね」と私は言った。
「ここ造った人は偉い。発明王。平賀源内」とアイちゃんは言った。
「歴史のある建物なんですねー」
適当に見て回る。服屋さんは服屋さんって感じで、靴屋さんは靴屋さんって感じだった。来月あたりに春物を見に来たい感じだ。
アクセサリーショップを見てると、ペアリングが目に止まった。世の中の恋人同士が指につける輪っかだ。
「アイちゃんお年玉貰った?」と私は聞いた。
「ガッポガッポだよー」とアイちゃんは言った。
「アイちゃんとペアリングつけたい」
私の視線は並んだリングの上を素早く往復し始めた。
「お、おぉ? えっ、なんかめっちゃ照れる」
「学校行くときはチェーン通してネックレスにする感じ」
「ビジョンが具体的」
「どれが良い?」
「……」
「めっちゃ真剣なまなざし」
「コレかコレか、コレ」
「あ、3つ目のやつ良いね。アイちゃんに似合う」
「ユーリちゃんにも似合う」
店員のお姉さんに指のサイズを計ってもらい、指輪の選択を誉めてもらった。とてもよくお似合いです。比翼連理。天下無双の可愛さ。ブレッスド・パーフェクション。
小さな紙袋の中に、小さな箱が2つ。繋いだ手で一緒に持った。
「30分前まで、正直アクセサリーに興味無かったよ」とアイちゃんはニコニコしながら言った。
「普段つけないもんね、私とアイちゃん」私もウキウキしながら言った。
「なんか、すごいね」
アイちゃんは手をにぎにぎしてきた。私もにぎにぎした。紙袋がゆらゆら揺れた。
「うん。なんか、すごい」
「ほんとはこの後カードショップでも覗こうかって思ってたんだけど、なんか疲れちゃったね」と私は言った。
「うん」とアイちゃんは言った。
「ちょっと、休憩出来るとこ、行こっか」ドキドキしながら私は言った。
「……うん」とアイちゃんは応えた。
休憩出来る所に落ち着いた私とアイちゃんは、お互いに指輪を嵌めあった。
「おぉ……」
「きれい……」
アイちゃんと私の指に、金属の光沢が煌めいてる。細いリングは銀色と桃色の間くらいを揺らめいて光った。指でなぞると、滑らかな感触と控え目な彫刻が心地の良い反応を返してくる。
私の右手はアイちゃんの左手をなぞり、アイちゃんの右手は私の左手をなぞった。
「ユーリちゃんの指、長くて綺麗だね」
「アイちゃんの指も、細くて可愛いよ」
「ふふ、私は、とてもよく知ってるよ、ユーリちゃんの指。いつも優しくって、私を嬉しい気持ちにしてくれるの」
アイちゃんは私の目を見て言った。
「いつも愛を込めて触れてるよ」と私は言った。
「わ、気障なセリフ」とアイちゃんは笑った。
あまりにも美しかったので、頬に手を添えて口付けをした。
「まだ、明るいのに」とアイちゃんは言った。キラキラと瞳が潤んでる。
「いっぱい仲良くできるね」と私は言った。
「いっぱいするの?」
今度はアイちゃんから口付けをしてくれた。
「いっぱい仲良くしたいし、いっぱいされたいでしょ?」自信を持って言った。
「さ、されたい、です……」
「よく言えました。可愛い」
この後滅茶苦茶仲良くした。