【完結】私はプレインズウォーカー。   作:デーテ

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17.次元渡りのための背景世界案内。殲滅波から世界呪文まで。

 マジックの舞台は多元宇宙というらしい。空に沢山浮かんだシャボン玉の中に、それぞれ色んな世界が入ってる的な世界観。

 シャボン玉とシャボン玉の間には《久遠の闇》とかいうなんか格好良い名前の空間が広がってて、普通の生き物は通れないらしい。

 プレインズウォーカーは、その《久遠の闇》を通って他の世界に移動できる珍しい生き物の事なんだとか。

 

 自室。試験勉強の息抜きに触ってたスマホを、机の上に置いた。

 前から興味があったのでマジックの物語についてちょっと調べてみたら、信じられないくらい沢山の情報が出てきた。

 軽い気持ちで調べた人間に、そもそも宇宙の“在り方”が違うんですよ、なんて情報を渡されても困惑してしまう。加減をして欲しい。

 とりあえず、『ドミナリア』という次元について調べたら知りたい事が分かるっぽい。

 そこまで調べて、試験勉強に戻った。

 

──

 

 自室。試験勉強の息抜きに触ってたスマホを、机の上に置いた。

『ドミナリア』の歴史は長く、地名と人名が入り乱れ、出来事は血生臭い。だいたい戦争してる。ここらへんは地球と似てる。魔法やらがあるのでスケールが大きいっぽい。

 氷河期という単語が出てきたので、次はこのあたりを調べてみよう。試験勉強に戻った。

 

──

 

 自室。試験勉強がなんかちょっと面倒になってきたのでスマホを手に取った。

 氷河期について調べてみると、どうやらウルザさんという人が戦争中にすごいアーティファクトを使ったのが原因で、ヤバい事になったらしい。

 ドミナリアはどんどん寒くなっていって、ヤバい事から400年後にとうとう氷河期に突入した。氷河期はそこから2,500年くらい続くらしい。

 ワームくんのフレーバーに出てきたキイェルドーというのは国の名前らしい。氷河期に出来た街がそのまま国になったっぽい。

 ある程度の事が分かって満足したので、試験勉強に戻った。

 

──

 

 学校の教室。空調がしっかりと効いてて、むしろちょっと暑い。ブレザーを脱いで椅子にかけた。

 今日からテストが始まる。英語、世界史、現代文が今日のメニューだ。教室を見渡すと、だいたいの人は自分の机で最後のチェックをしてる。例外に含まれる人も友達の席で問題を出しあってた。

 今回のテストはけっこう自信がある。特に英語はヤバい。英字で書かれた文章に拒否反応が無くなったからだ。単語の意味さえ分かればだいたいイケる。until end of turnとか出題してほしい。

 

──

 

 学校の教室。頭を使ったので暑い。セーターとブラウスの袖をまくる。テスト最終日、今日のメニューは古典、日本史、数学だった。

 悪く無い出来だったと思う。進級は間違いなく出来る。解放感に任せて腕と背筋を伸ばした。

 ホームルームまで多少の時間があるので、アイちゃんの席まで遊びに行くことにする。

「アイちゃんお疲れ」と私は話しかけた。

「この瞬間疲れが無くなった」とアイちゃんは言った。

 アイちゃんの前の席が空いてたので椅子を借りる。机を挟んで両手を握りあい、指を絡めてにぎにぎした。

「どうだった?」と私は聞いた。

「まあまあ。なんとか全部埋めた」とアイちゃんは答えた。

「やるじゃん。すごい」

 私も全部埋める事は出来た。その内いくつが正解してくれるだろうか。

 しばらくテストの出来を喋りあって時間を過ごす。先生がやって来たので自分の席に戻った。

「また後でー」と私は言った。

「はーい」アイちゃんはニコニコして言った。

 

 放課後の教室。テストから解き放たれたJKの群れがそこここでグループを形成し遊びの算段をつけていた。

 私は指輪を嵌め、マフラーを巻き、コートを着て、リュックを背負う。アイちゃんと一緒に廊下に出た。

 廊下をアイちゃんと喋りながら渡る。階段を下り、下駄箱を経て、校門へと至る。

 門から少し歩いてバス停に着いた。私とアイちゃんはベンチに座ってバスを待つ。その間もお喋りは続く。

 

「そういう訳でウルザはプレインズウォーカーになったの。弟と戦争までしてたのに、その弟が酷い目にあってるのを見たらすごいショックを受けちゃった。その時の大爆発は《ウルザの殲滅波》ってカードにもなってるよ。土地と伝説のパーマネント以外を全部吹き飛ばす、すごく派手な効果なの」

 アイちゃんはドミナリア史に詳しく、私の質問に早口でとことん応えてくれた。

「アイちゃんすごい。めっちゃ詳しいね」

「テストにドミナリア史があれば良かったのに」

「合格できるのアイちゃんだけだよ」

「私が知らないだけで、詳しい人が居るかもしれない」

 

 私の通う学校は1クラスがだいたい36人で、1学年は3クラスある。3学年合わせると300人と少し。300人居てマジックを知ってるのがたった2人だけというのはちょっと少ないかもしれない。

「あー、確かに居るかもしれない」ゆるい計算を終えて私は言った。

「マジックの話題、特に隠したりしなかったし同じクラスには居なさそう」

 興味を持ちそうなのは何人かいるけど、アイちゃんと遊ぶのに全力で、布教活動はしてない。自覚したのはたった今この瞬間だけど、無意識にアイちゃんを独占しようとしてたみたいだ。

 

「アイちゃん、もしかして私って独占欲強い?」

「脈絡さんがどっか行った。何となく言いたいことは分かるけど」

「マジック出来そうな娘を誘ったりとか出来たのに、思い付かなかったなーって」

 私がそう言うと、アイちゃんは私の肩に頭を乗っけて言った。

「逆かもよ。私はユーリちゃんに独占されるの、好き」

「アイちゃんそう言うとこあるよね」

「そう言うとこ?」

「なんか、ほら。ちょっと、アレだよ。ドMっぽいとこあるっていうか」

 私はなんとかオブラートに包もうとして、ちょっと失敗しながら言った。

「どぇっ!? そんなこと無いよ!? そんな、こと……」

 仲良くする過程で、いろいろなリクエストを受けた。その傾向を分析すると、どうも不自由を楽しむ嗜好があるように思えたのだ。

「アイちゃん、ずっと捕まえとくから安心してね」と私は言った。

「よ、よろしくお願いします……」

 アイちゃんも、気持ちの赴くままに頼んだアレコレを思い出したみたいだった。

 

 アイちゃんを捕まえて、でも閉じ込める必要は無いんだと閃いた。一緒に何処へでも行けば良い。

 色んな場所や人と出会って、その思い出を共有して蓄積していくのはとても楽しそうに思えた。

 時刻表どおりにバスが到着した。私はアイちゃんと手を繋いで乗り込んだ。




ドミナリアが氷河期に突入した時、シャードが形成された。
シャードはドミナリアを多元宇宙から隔離し、プレインズウォークによる往来を阻む結界となった。
プレインズウォーカーのフレイアリーズが世界呪文の儀式を行い、シャードは破壊され氷河期は終わる。
ドミナリアへ訪れるための障害は消えたが、訪れる者が善き者であるとは限らない。
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