18.ガールズトーク・ツー
私とアイちゃんは無事に進級して新学期が始まった。
アイちゃんと待ち合わせて登校し、校内の掲示板で新しいクラス分けを確認する。アイちゃんと同じクラスだったので手を取り合って喜んだ。
新しい教室に入る。黒板に大きな紙が貼られてて、席の割り振りが印刷されてた。指定された席に座る。アイちゃんは私の右斜め前に座った。近くて嬉しい。
「担任の先生誰だろ?」私はアイちゃんに話しかけた。
「あー、確認するの忘れてた」とアイちゃんは言った。
クラス分けはアイちゃんの名前を確認した時点で見るのをやめてしまった。
「担任はウッチーだよ」
私の右隣の席に鞄を置いた娘が教えてくれた。顔は知ってる娘だ。1学年は100人くらいなのでほとんどの娘は顔見知りになる。
「山内先生なんだ。教えてくれてありがとう」と私はお礼を言った。
「どういたしまして、だ。顔は知ってるけど、同じクラスになんのは初めてだな。あたしベニコ。よろしく」
ベニコちゃんは明るい色をしたショートヘアの可愛い娘だった。
「私も顔は知ってる。ユーリだよ、よろしくね」と私は礼儀正しく挨拶をした。「こっちの娘はアイちゃん」
「黒野は1年の時同じクラスだったな。よろしく」
「おひさしぶりね。よろしく」アイちゃんは微笑んで言った。
「ベニコちゃんの髪、ちょっと赤入ってる?」私は気になった事を聞いた。
明るい茶髪は光の当たり具合で赤色にも見える。
「あ、やっぱ気になる? 派手過ぎっかな?」ベニコちゃんは髪を摘まんで難しい顔をした。
「目立つけど似合ってて可愛いと思うよ」と私は言った。「名前がベニコだから赤色?」
「うー、やっぱそうなるよな。これには浅い訳があんだよ」
「浅いんだ。うける」私はうけた。
「ユーリの前の席、あたしのツレで白鷺ってやつなんだけど、そいつと遊んでたらノリで染める事になっちったんだよ。ていうかまだ来てねーのか? ワリ、ちょっとメッセ送るわ」
ベニコちゃんは私とアイちゃんに断ってからスマホを取り出して操作した。
「白鷺さん。もしかしてアヤメちゃんかな? 1年生の時同じクラスだったよ」私は思い出しながら言った。
「そう、そいつ。あたしはサギーって呼んでる。たぶん真っ白に髪染めて来るはず」
名前に含まれる色と髪色を揃える遊び。
私はアイちゃんを見る。アイちゃんの名字は『黒野』だから黒い髪だったのか。
「違うよ?」とアイちゃんは言った。
「以心伝心って嬉しいね」と私は言った。
「言われてみればたしかに。今の、心で会話した気がする」ハッと気付いた顔をしてアイちゃんは深く頷いた。
「二人は仲良いのな?」とベニコちゃんは言った。
「めっちゃ仲良いよ」と私は自信を持って言った。
「ええ、とっても」とアイちゃんはよそ行きの顔で言った。
アイちゃんは人見知りなのでちょっと緊張気味だった。
「ベニコちゃんはアヤメちゃんと仲良いの?」と私は聞いた。
「おお、結構仲良いぞ。ノリが合うからだいたいツルんでるな」
ベニコちゃんのスマホが震えた。
「あと、サギーはアホなんだ。ちょっと迎えに行ってくるわ」
ベニコちゃんは教室を出て行った。
アイちゃんとお喋りをして過ごしてると先生が入ってきた。壁にかかってる時計を見るともうそろそろチャイムが鳴る時間だ。ベニコちゃんとアヤメちゃんはチャイムのBメロで入ってきた。アヤメちゃんの髪は明るい金髪だった。
白じゃないのが面白くて少し笑った。
「おはようございます。担任の山内です。高校生最後の1年間、悔いの無いように過ごしましょうね」
山内先生は綺麗な姿勢で挨拶をした。ほんのり染めた茶色い髪を肩まで伸ばした、若くて可愛い感じの人だ。
前の方に座ってる娘たちが、は~いと返事をした。
「はい、お返事ありがとう。この後すぐに始業式があります。およそ1時間ほどで終わります。その後は教室に戻ってホームルームです。クラス委員なんかを決めます。と言うわけで早速移動しましょう。廊下に出て2列縦隊。出席番号順に詰めてください」
私たちは言われたとおりに隊列を組んでダラダラと体育館に向かった。
始業式を終えて教室に戻ってきた。あくびをこらえる娘と、こらえない娘が席に着いた。
「お疲れさま。自己紹介タイムはありませんので、後ほど各自でお願いします。はい、お返事ありがとう。それではクラス委員を決めていきます。やりたい役職のある人は挙手をしてください。被ったらじゃん拳で決めます」
山内先生はテキパキと話を進めて、黒板に各役職の名前を書いてった。
やる気と情熱を持った娘が手を挙げてく。内申点が欲しい娘も挙げてく。10分くらいで全ての役職が埋まった。
「早い。良いですね。明日はいつも通りの時間に登校してください。1年生との顔合わせがありますので欠席しないように。体調が悪い場合は無理しないように」
山内先生は話をしながら手元の紙に各委員の名前をメモしてった。
「はい、今日やる事はこれで終わりです。少し時間がありますので、ミーティングでもしましょうか。MTGというやつですね。くだけて言うなら雑談です」
メモを書き終えた山内先生はそう言ってクラスを見回した。先生の口からMTGという単語が出てきたのが面白くて少し笑った。アイちゃんも少しだけ肩を揺らしたのが見えた。
チャイムが鳴るまで先生や回りに座ってる娘と喋った。私とアイちゃんと、ベニコちゃんとアヤメちゃんとで自己紹介をした。
チャイムが鳴った後も教室に残って喋る流れになった。
「なんで白じゃねーんだよ。あたしは赤くしてきただろー?」
「これはプラチナですぅ。漢字で書くと白金なので白ですぅ?」
「煽ってんじゃねーよ。腹立つ顔やめろ」
ベニコちゃんとアヤメちゃんはじゃれあってた。アヤメちゃんは長く伸ばした髪をハーフアップに纏めた美人な娘だった。
しばらく喋ってると山内先生がやってきた。
「仲良くやってますね。良い事です。そろそろ教室を閉めますので解散の準備をしてください」
「けっこう喋ったな。了解ウッチー」とベニコちゃんは素直に言った。
「黒野さんと鈴木さんはちょっと頼みたい事があるので残ってもらえますか?」
私とアイちゃんは顔を見合わせた。頼み事。何を頼まれるんだろう。
「分かりました」私とアイちゃんは返事をした。
教室に私とアイちゃんと先生が残った。先生が口を開く。
「もしかしたら、貴女たちはプレインズウォーカーでは?」