【完結】私はプレインズウォーカー。   作:デーテ

19 / 34
19.春なので新しい事を始める

「もしかしたら、貴女たちはプレインズウォーカーでは?」と山内先生は言った。

 

 私とアイちゃんは顔を見合わせた。意外な人から意外な言葉を聞いた、とアイちゃんの目は言ってた。

「えっと、はい、そうです」

 私とアイちゃんは肯定の返事をした。

 

「良いですね。素晴らしい。私もプレインズウォーカーです。頼みたい事というのは、私とマジックで遊んで欲しいという事なのです。私を顧問にして新しいクラブを作ります。それの創設メンバーになりませんか?」

 

 言われた事についてちょっと考えた。マジックで遊びたいというのはとても良く分かる話だ。新しいクラブを作るというのはどういう事だろう。

 カードショップの大会に出るとかではダメなんだろうか。ダメなんだろう。アイちゃんみたいに、独りで通うのは寂しいタイプなのかもしれない。

 

「アイちゃんどうする?」と私は言った。

「クラブ活動……。やってみたいかも」とアイちゃんは言った。

 ならやってみよう。私とアイちゃんは了承の返事をした。

 

「どうもありがとう。助かります。活動日についてですが、月、水、金曜日の放課後を予定しています。構いませんか?」

 

 金曜はお泊まりの日なので駄目だ。

「金曜日は予定があるので無理です」とアイちゃんは言った。

「私も金曜日は駄目です」と私は言った。

 

「月曜と水曜の放課後は大丈夫ですか?」

 私とアイちゃんは頷いた。

「では活動は週に2回。部室の準備などがありますので活動は来週からです。メンバーは貴女たち2人。他にプレインズウォーカーの当てがあれば誘って貰っても構いません。私には見つけられませんでした。連絡先を交換しましょうか」

 私とアイちゃんはスマホを出して先生をメッセージアプリに登録した。

 

「私からの話は以上です。何か質問があればどうぞ」

「アイちゃん何かある?」

「えっと、フォーマットはどうするんでしょうか?」とアイちゃんは言った。

 フォーマット。聞いた事はあるけど意味は知らない単語だ。コンピューター関係の単語じゃないのだろうか。違うのだろう。

「フォーマット? マジックでフォーマットってどういう意味?」と私は聞いた。

 

「んー、格闘技とかなら体重で階級が分けられてるでしょ? マジックの場合は発売された時期で使えるカードが決まるの。ここからここまでの間に発売されたカードでデッキを組みましょうって取り決めの事」とアイちゃんは教えてくれた。

「そうなんだ。教えてくれてありがとう」と私は礼儀正しくお礼を言った。

「どういたしまして」とアイちゃんはニコニコして言った。

 笑ったアイちゃんはびっくりするくらい可愛かった。特に唇の形が良い。もちろん味も良い。

 

「フォーマット。そうですね、カジュアルで良いのではないでしょうか。貴女たちは普段カジュアルのようですから」

「ではそれで」とアイちゃんは返事をした。

 今日のところはこれで解散となった。

 

 

「それでは気をつけて帰宅してください。また明日」

 山内先生は教室の鍵を閉めて去って行った。私とアイちゃんも下駄箱へ向かって廊下を進んだ。途中でお手洗いに寄って指輪をはめた。

 

「びっくりしたね」と私は言った。

「うん。びっくりした」とアイちゃんは言った。

「カジュアルってどんなフォーマットなの?」

「カジュアルは、好きなカードを使ってゆるく遊びましょうってフォーマットだよ。つまりいつも通り」

「なるほどなー」と私は言った。

 

 ホームルームが終わってからそこそこ時間が経ってた。廊下を歩いてるのは私とアイちゃんだけで、グラウンドの方から運動部の声が遠く聞こえてる。春の日差しは柔らかくアイちゃんを照らして、微かな風が吹いて髪を撫でた。

 サラサラ揺れるアイちゃんの髪に触れたくなって、そっと手を伸ばした。

「どしたの?」とアイちゃんは言った。

 私は廊下の前後と窓の外を確認した。誰もいない。

「チューしたい」小さな声で私は言った。

「いいよ。ふふ、唐突だね」とアイちゃんも小さく笑って言った。

 

 髪を撫でてた手を動かしてアイちゃんの後頭部を押さえた。少しだけ力を込めて抱き寄せて、アイちゃんの素敵な唇に口付けた。

 柔らかくて、少し濡れてるような感触。舌の先でちょっとだけつつくとアイちゃんは素早く舐めとった。

 離れる時に瑞々しい音が鳴って、私はその音が好きだ。

「この音ちょっとエッチだね」とアイちゃんが小さな声で言った。

「そうだね」と私も小さな声で言った。

 小さな声で笑い合うと手を繋いだ。階段を下りて、下駄箱で靴を履き替える。バス停まで歩いてベンチに腰掛けた。

 

「アイちゃんはクラブ活動ってしたことある?」

「んーん、したこと無いよ。ユーリちゃんは?」

「私もなーい。なのでちょっと楽しみかも」

「良かった。私もけっこう楽しみ」

 アイちゃんは繋いだ私の手をにぎにぎと揉んだ。私もにぎにぎした。

 

「お昼どうする?」と私は聞いた。

 太陽は一日で一番高い位置にあって、気持ちの良い光を届けてた。

「ユーリちゃんどこ行きたい?」

「アイちゃんとなら何処でも良いよ」と私は言った。

「今そういうのいいです」

 アイちゃんはぎゅっと力を込めて私の手を握った。

「あれー?」

「そういうの駄目だからね。私チョロいんだから」

「アイちゃん手、あったかくなってるよ」

「ユーリちゃんがき、キスするからでしょ」

「明日は金曜日だし、今から盛り上げていこうかなって」

「ぅ、あ、明日?」

 アイちゃんは信じられないものを見た時みたいな顔をした。

「そう、明日」

 私は繋いだ手をほどいて、アイちゃんの腰に手を回した。グッと力を入れてアイちゃんの体を引き寄せる。小さな声で囁いてあげる。

「おあずけ」

「ひぅ、は、はい」とアイちゃんは言った。

 

 きっと喜んでくれるだろうと思っていろいろ考えた。

「こういうのどう?」と私は聞いた。

「あ、新しいパターン……! めっちゃ良い……!」

 アイちゃんが喜んでくれたので嬉しい。

 バスが来るまでお喋りをして過ごした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。