「ターンエンド! ユーリちゃんの番どうぞ」とアイちゃんが言った。
「あいあい。アンタップ、アップキープ、ドロー」と私は言いながらカードを1枚、山札から引いた。
「あ、アイちゃんに貰ったスーパーウルトライケメンワームくんだ」
私は嬉しくなって対面のアイちゃんに報告した。
「えっ、この場面で引いてきたの? ユーリちゃんすごい!」アイちゃんはニコニコと笑って誉めてくれた。
私は戦場に出している《森》カードの枚数を数えた。ピッタリ8枚。《森》カードをタップして、ホワッ! って感じで緑のマナを出した。カードの説明欄にはめっちゃ強そうな事が書いてあるし、なんと《氷河期の災厄の象徴》とかいうチョーイカス二つ名まである。
私は、ニヒルな笑みを浮かべてるように見えるワームくんを戦場へと降臨させた。
アタックアタックアタック。ワームくんは大暴れして、アイちゃんが並べてた小さい生き物たちを次々となぎ払っていき、最後は空を飛ぶ馬の怪物と凄絶な相討ちを遂げた。
パワーとパワーがぶつかり合う光景は、なにやら胸の奥を熱くさせるものがあると思った。
ここ数日、私達は学校の授業が終わるとソッコーでアイちゃん家に集まり、ヤりまくった。覚えたてなのでヤりまくっていた。
アイちゃんは疲れ知らずで、私が「しよ?」とねだったら必ずニコっと笑ってから「うん」と頷いてくれるのだ。
始めたての私を気遣って無理をしているのでは? と思ったので聞いてみた。
ちょっとビックリしたみたいな顔をしてから、アイちゃんは語った。
「小さな頃、近所に住んでた友達と、その子のお姉ちゃんが私にマジックを教えてくれたの。すっごく楽しかった。でも、その人たちは引っ越しちゃって」
「え~、うわ、残念だったね」と私は心の底から言った。アイちゃんがめっちゃションボリした顔をしたからだ。
「うん、残念だった」とアイちゃんは頷いた。「でもマジックを辞めるつもりは無くって、カードを買ったりデッキを組んだりは続けてて。高校生になってからはカードショップの大会に出たりもしたんだけど、独りで通うのも寂しくって……」
「うんうん」と私は頷いた。
「だから、ユーリちゃんがマジックにハマってくれていっしょに遊べるの、すっごく嬉しい。マジサンキュー」とアイちゃんは笑った。
「ええんやで」と私も笑った。
わっはっはっはと二人で笑いながらも、私はドキドキしていた。アイちゃんは最後に茶化した言い方をしたけれど、目尻に少しだけ光るものを見つけてしまったからだ。
(マジで寂しかったんだなぁ)と私は思った。
お互いハグしあいながら心の友よごっこをしていると、ふと気付く。
今アイちゃんが使っている山札は、無料で配ってるらしい初心者用のデッキだ。
では、アイちゃんの本来のデッキはどんな物なのだろう。
マジックはめっちゃ楽しい。でも正直、同じカードばかりを見すぎて飽きそうでもある。
「アイちゃん」と私は言った。「アイちゃんの組んだデッキ、使いなよ」
「えっ、いや、やめといた方が」とアイちゃんは言った。「カードパワー的なアレが違う的な」
「いやいや、ほら、マンネリしちゃうと良くないって言うじゃん。新しいプレイとか開拓してかないとさ。ね?」と私は説得にかかる。「ちょっとだけ! ね? 試しに、さ。ほんのちょっと!」
「あー、確かにー? 一理ありますねコレは?」
そういうことになった。
もちろん私はボロッボロのギッタンギッタンにされた。
コテンパンを古典パンって書くと秘密道具みたいだなとか考えてた。