【完結】私はプレインズウォーカー。   作:デーテ

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20.ジェラシー

 水曜日の放課後。久しぶりに6時間の授業を終えた。新しい教科書の表紙はテカテカと光を放ち、ページの端は真っ直ぐ揃ってた。

 復習する教科書を選別してリュックに詰める。全ての教科書を詰めてしまうと、リュックの重さはおよそ100万トンを越えてしまうからだ。持って来るのめっちゃ大変だった。

 リュックの中には筆箱、教科書、ルーズリーフ、デッキケースが2個。今日から部活動が始まる。

 

「ゆーりん、カラオケ行かーん?」

 前の席に座ってるアヤメちゃんが振り向いて言った。プラチナゴールドの髪がふわりと揺れた。

「今日は部活なので行かーん」と私は答えた。

「あれ、ゆーりんクラブ入ってんの?」大きな目をパチパチしてアヤメちゃんは言った。

「入った。山内先生が新しいクラブ作って、今日が初日」

「え~じゃあ明日は~?」

「明日なら良いよ。アヤメちゃんの歌久しぶりに聴きたいな」

「ぅえへーい。じゃあ明日ー。アイクロも明日カラオケ行こー?」

 こっちを見てたアイちゃんはちょっとだけ驚いた顔をして、それから頷いた。

「行く」

 アイちゃんは人見知りなので緊張してる。私と二人きりの時にはあんまり見れない、キリッとした眼差しはクールで格好良い。

 ベニコちゃんが教室に入って来てアヤメちゃんと合流した。4人でちょっとだけ喋って、アヤメちゃんとベニコちゃんは帰っていった。

 私とアイちゃんもリュックを背負い、部室棟へと向かった。

 

 

 部室棟はけっこう大きな建物で、文化系のクラブはだいたいここに纏められてるらしい。下駄箱に用意されたスリッパに履き替える。スマホを取り出して山内先生からのメッセージを読み返す。ペタペタと足音を鳴らして指定された部屋まで進んだ。

 

「失礼しまーす」ノックしてスライドドアを滑らせた。

 部屋の中には細長い机が1つと、その周りにパイプ椅子が4脚置かれていた。山内先生は窓際に立っててこちらを振り返った。

「来ましたね。この日をとても楽しみにしていました。この通り何も無い部屋ですが、備品はおいおい揃えていくのでリクエストがあれば後で聞かせてください。早速マジックをしましょう」

 先生は足元の鞄から色々取り出して机に並べ始めた。透明な筒からランチョンマットみたいなのを2枚取り出して敷いた。掌に乗るくらいの小さな箱にはサイコロが沢山入ってる。タブレットで起動されたアプリは20─20を表示した。

 

 私とアイちゃんもリュックを床に置いて、デッキケースを取り出した。

「ロッカー的なやつ欲しいですね」リュックを部屋の隅に寄せながら私は言った。

「用意しておきましょう」

 先生は椅子に座ってデッキをシャッフルし始めた。

「アイちゃんどっちからする?」私はアイちゃんを見た。

「じゃーんけーん」アイちゃんは不意打ちしてきた。

「ぽん」咄嗟にチョキを出した。

 私からになった。

 

 先生の対面に座る。アイちゃんは私の横に椅子を寄せて座った。デッキをシャッフルする。

「おや、レベッカのスリーブ。良いですね」

 先生は私のスリーブを見て言った。誉められたので嬉しい。

「たまたまカードショップで見つけて、一目惚れしたんです。色が綺麗で。先生もレベッカ好きなんですか?」と私は聞いた。

「ええ、好きですよ。レベッカを嫌いな人はまだ見たことありませんね」

 シャッフルを終えて、お互いにデッキをカットした。

「先手後手はダイスで良いですか? 2つ投げて合計の大きい方が先手後手を決めるやり方です」

 私と先生はサイコロを投げあった。私の先手になった。

 

「ではよろしくお願いします」と先生は言った。

「あ、はい。よろしくお願いします」

 7枚ドロー。《森》2枚、《山》、《カープルーザンの森》、《エルフの神秘家》、《ブラストダーム》、《火炎舌のカヴー》。ファイヤーズは引けなかった。

「キープします」と私は言った。

「こちらもキープです。どうぞ」と先生は言った。

 

「《森》セットから《エルフの神秘家》です。ターン終了です」

 

「良いスタートですね。ターンを貰います。ドロー」

 先生はライブラリーから1枚引いて手札をシャッフルした。

「《蒸気孔》ショックイン。ライフは18になります。0マナ《羽ばたき飛行機械》、青1マナ《フェアリーの悪党》。ターン終了です。どうぞ」

 見たことの無いカードばかりだったので先生に断ってからテキストを確認した。全部飛んでる。でもパワーは低い。特に《羽ばたき飛行機械》なんかはパワー0だ。ブロッカーだろうか。

 見えてる色は青と赤。コントロールっぽい色だ。

 先生はタブレットを2回タップした。18─20。

 

「アンタップ、アップキープ、ドロー」

 引いたカードは《はじける子嚢》。重いカードばかりが集まってくる。ファイヤーズが欲しい。

「《森》を置いて、ターン終了です」

 

「アンタップ、アップキープ、ドロー」

 ドローしてシャッフル。

「《島》を置いて、コンバット。2体ともアタックします。通りますか?」

 飛行機とフェアリーが向かってきた。

「通り、ます、けど、飛行機もアタックですか?」と私は聞いた。

「そうです。鈴木さんは初めて見るみたいですね。ブロッククリーチャー指定ステップで2マナ。《羽ばたき飛行機械》を手札に戻して忍術を起動します。《深き刻の忍者》のエントリーです」

 

「わ、ニンジャだ! ニンジャナンデ!」横で見てたアイちゃんが大騒ぎした。

「おや、黒野さん。どうやら話が合いそうですね? 素晴らしい。ドーモ、プレインズウォーカーサン。ディープアワーデス」

 

 先生とアイちゃんはニッコニコだった。私にはよく分からないけど、アイちゃんが楽しそうなので嬉しく思った。それと同時に、ちょっとだけ嫉妬してるのにも気付いてた。

 この独占欲と上手に付き合わないと、駄目な事になりそうだという予感だけがある。

 

 ゲームを続けた。

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