忍術について説明を受けた。ブロックされなかったクリーチャーと、手札の忍者が入れ替わる能力らしい。
「フレイバー的には、鳥などに化けて潜入した忍者が獲物の前で術を解いたというデザインのようです。ウィザーズは忍者をスパイやアサシンだと捉え、このように表現したようですね。
随分と脱線してしまいました。すみません。ゲームに戻りましょう」
「いえ、マジックのフレーバー好きなんで、聞けて良かったです。ありがとうございます」と私は礼儀正しくお礼を言った。
「ユーリちゃんゴメン。邪魔しちゃった」とアイちゃんは謝った。
「アイちゃんの全てを許すよ」と私はアイちゃんの目を見て言った。
アイちゃんはそっと微笑んで、声を出さずに唇を動かした。読唇術によれば、ありがと、と言ったようだった。私も声に出さず、どういたしまして、と返した。
忍者が2点、フェアリーが1点のダメージを与えて、私のライフは17点になった。右手でタブレットを3回押した。
先生18─17私。
「ディープアワーがプレイヤーに戦闘ダメージを与えたので能力が誘発します。1枚ドロー。第2メイン、0マナで《羽ばたき飛行機械》を出し直してターン終了です」
「ターンを貰います。ドロー」
引いたのは《稲妻の一撃》。手札をシャッフル。
忍者のテキストを確認して、少し考える。《深き刻の忍者》は私を叩くたびにカードをドローする酷いやつだ。生かしてはおけない。ただ、戦場に出た後は単なる2/2のクリーチャーでしかない。ダームくんで止めるか、フレイムたんで燃やすか。
恐らく、ブロックはさせて貰え無いんだろう。もし私が忍者を使うならそういう風にデッキを組む。たぶん。
「《山》を置いて、フレイムたんを出します。能力の対象は忍者で」
「はい。やられます」
「ターンエンドです」
「アンタップ、アップキープ、ドロー。フェアリーだけでアタックします」と先生は言った。
先生18─私16。
「第2メイン、《島》を置いて《海の神、タッサ》を唱えます。ターンエンド」
先生は私が読みやすいように逆さまにカードを置いてくれた。優しい。テキストに色々書いてるけど、注目するのは『2マナ払うと対象のクリーチャーはブロックされなくなる』という能力だ。
やっぱりこういうカードが入ってた。
「忍者を燃やしておいて良かったです」と私は言った。
「慧眼です。素晴らしい」と先生は言った。
「ユーリちゃんは頭の回転がとても早いんですよ。すごいですよね!」とアイちゃんは得意気に言った。誉められたので嬉しい。
ウキウキとした気分でターンを貰い、ドローした。来た!
「《カープルーザンの森》を置いて、えっと、どうしようかな。《山》、《森》、エルフからマナを出して、ファイヤーズを唱えます」
手札の《稲妻の一撃》を使えるように土地を残して、フレイムたんで攻撃した。
「やはり【ファイアーズ】! 良いですね! タンカヴーを見てもしかしたらと思っていました。素早く、そしてパワフル。グルールカラーの結晶と呼んで差し支えは無いでしょう。素晴らしいデッキです! 4点受けます!」
フレイムたんに叩かれながら先生は大喜びした。ファイヤーズが誉められたので嬉しい。
「アイちゃんが教えてくれたんです。マジックを始めたての頃、オススメのデッキがあるよって」
「なるほど。黒野さんは良い師匠なのですね。センスが良い」と先生は言った。
「そうなんです。アイちゃんは綺麗で可愛くてセンスが良いんです」
アイちゃんが誉められたのでめっちゃ嬉しい。
先生14─16私。
先生のターン。
「アンタップ、アップキープにタッサの誘発。占術1を行います。トップはそのまま。ドローステップ、ドロー。《シヴの浅瀬》を置きます。フェアリーでアタック。ターンエンドです」
先生14─15私。
先生の戦場には土地が4枚、フェアリーはタップ状態、タッサはまだクリーチャーじゃない、飛行機はブロッカー。次のターンに《はじける子嚢》を唱えるので、飛行機は燃やそう。
「エンドステップに、ライフを1点払ってカープルーザンから赤マナを出します。《稲妻の一撃》を飛行機に」
「ぅ。スタック。《羽ばたき飛行機械》を生け贄にして2マナ、《爆片破》を唱えます。対象は鈴木さんです。5点」
ブロッカーを退ける事はできたけど、ライフをごっそり持っていかれてしまった。
先生14─9私。
ターンを貰う。ドローは《山》。
「《山》を置きます。5マナ、《はじける子嚢》を唱えます」
「来ましたね、ファイアーズの必殺技。1枚で人を殺せる恐ろしい呪文です。トークンは3体ですか?」
「わ、先生めっちゃ詳しいですね。そうです、3体出します。フレイムたんを含めてパワー4が4体。エルフも一緒に総攻撃します!」
「ぅう。戦闘開始ステップに青1マナ、トークンに《蒸気の絡みつき》。トークンのコントローラーは1点ルーズ。《シヴの浅瀬》からライフを1点払って赤マナ。カヴーに《稲妻》」
先生13─8私。
ファイヤーズを切ればフレイムたんは生き残るけど、トークンがアタックに行けなくなる。手札にダームくんも控えてるし、速攻を維持した方がきっと強い。
「このままフレイムたんは焼けます。トークンとエルフでアタックします」
先生4─8私。
先生のターン。
「タッサの占術、はボトムへ。ドロー」
先生は2枚目の《フェアリーの悪党》を唱えた。
「着地したらフェアリーの能力が誘発。1枚ドロー。ターンエンド」
先生の手札は2枚。ブロッカーはフェアリーが2体。アタッカーの数を増やした方が良さそうに思えた。
「エンドステップに《はじける子嚢》からトークンを産みます」
「ぅぐ、はい」
これで3/3のトークンが3体、1/1のエルフが1体。
「アンタップ、アップキープに《はじける子嚢》からカウンターを取り除きます。トークンは2/2になります。ドロー」
ドローは《クロールの銛撃ち》。めっちゃ良い引きだ。この盤面ではダームくんより強い。
「2マナ、《クロールの銛撃ち》を唱えます」
「おっと? 随分と最近のカードですね。テキストを見ても良いですか?」と先生は言った。
「どうぞ」と私は言った。最近のカードだったのか。ストレージで見つけたので知らなかった。
「強いですね。【ファイアーズ】にとてもマッチしています。素晴らしい2マナ域です」
先生は少し考えて、静かに頷いた。
「立ってる土地は3枚。リークを撃っても止められませんね。負けちゃいました。グッドゲーム」
「はい、グッドゲーム、です」
「ああ、本当にとても良いゲームでした」
先生はしみじみと言った。
「忍術も出来ましたし、懐かしいデッキも見れました。【ファイアーズ】、良いデッキですよねぇ。新しいカードも入ってさらに強くなっています」
「そうなんですよ。ちゃんとブラッシュアップされてるんです。すごくないですか? 始めて1年なんですよユーリちゃんは! 天才の閃き! アカデミー! 精神力!」とアイちゃんは熱弁した。
「それは凄い」と先生は言った。
二人にひたすら誉められて私は有頂天になった。
下校時間を知らせるチャイムが鳴るまで、入れ替わり立ち代わりしてクラブ活動を行った。
山内先生は私のことをめっちゃ誉めてくれるので良い先生だと思った。
楽しい。楽しい!