【完結】私はプレインズウォーカー。   作:デーテ

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3.言わなくてはいけない事

「アイちゃん、私ね、気付いちゃったかもしれない」と私は言った。

 手に持ったカードは、ニヒルな笑顔が似合うワームくん。説明欄には長い文章が書かれていて、ワームくんの恐ろしさを伝えてくる。この長い文章をぎゅっと濃縮すれば、それはきっと《絶望》や《畏怖》なんかになるんだろうな。正直めっちゃイケてる。

「ユーリちゃん……」

 ワームくんのカードを持つ手に、アイちゃんがそっと手を添えて寄り添ってくれた。言わなくては。気付いた事を。

「ワームくん、てさ。もしかして、あんまり強く無いっぽくない?」

「たは~」とアイちゃんは言った。ぺちんと音をたてて自分のおでこを叩いた。

 空を見上げる。青い空。雲ひとつ無い蒼穹。でも今だけは、私にだけ雨が降って頬を一筋流れて行った。

 

 

「と言うわけでワームくんデッキから抜きまーす」と私は宣言した。

「やむなーし」とアイちゃんは言った。

 アイちゃんの部屋。私達はラグが敷かれた床に座り、ちゃぶ台を囲んで向かい合っていた。

「でもワームくんは格好良いし、アイちゃんに貰ったお気に入りなので大切に保管しまーす」

「ふふ、ありがと。コレあげる」とアイちゃんが何かくれた。

 何だろコレ。ビニールで出来た、袋、かな? ずいぶん小さくて薄い。たぶん薄さ0.01ミリとかそんなもん。

「これはカードスリーブっていう、カードを保護するための袋なの」

 おー、これが。私はワームくんを丁寧にスリーブへ入れ、少し考えてから生徒手帳に付いてるポケットにしまった。

「アイちゃんありがとう」と私は礼儀正しくお礼を言った。

「どういたしまして」とアイちゃんはニコニコと笑った。

 

 それはさておき。

 ワームくんを抜いたので、代わりのカードを入れなくては。

「ユーリちゃんに言わなきゃいけない事があるの」とアイちゃんが言った。

「なになにどうしたどうした」

「マジックのデッキは60枚以上で組むの。でも最初に渡した箱には30枚で構築された《ハーフデッキ》が入っていたの」

「なんと」

 箱を手に取り、裏面に書かれた文字を読んだ。

「30枚からなる構築済みデッキとルール参照カード入り。わ、ほんとだ」

「ユーリちゃんが使っていたのは、緑のデッキにワームくんを足した31枚デッキだったの。今はワームくんが抜けたので元の30枚ね」

 つまりあと30枚足さなくてはいけないのか。

「何を足せば良いんだ……?」と私は途方に暮れた。

「簡単な方法があるわ」とアイちゃんが言った。

 私には見当も付かないこの難題をサラリと解くアイちゃんは、まるで名探偵のようだ。格好良い。

 ビシリ、と犯人を指名するように伸ばされたアイちゃんの指は、残りの《ハーフデッキ》を指していた。

「なるほどなー」と私は言った。

 30枚足りないなら30枚足せば良いじゃない理論というわけね。ふふ、やるなぁ。

「でもアイちゃん。緑色のデッキはもうないけど」

「ユーリちゃん、これから教えるのが48の必殺マジックのひとつ、《マルチカラー》よ!」

「なんてこった! わお! そんな方法が有ったなんてぇ!」

 二人で笑いながら寸劇を楽しんだ。

 

「それで、ね」

 笑いを収めたアイちゃんは居住まいを正して、私をまっすぐに見た。長い睫毛がふるふると震えている。

「え、どうしたの?」と私は言った。

「オススメの、カードが、在って」

「うん」私は続きを待った。

「明日、学校終わったら、一緒に買いにいきまへんかぁ?」

「お、それはまさかカードショップってやつ? 行きたい!」と私は言った。

 アイちゃんは、にへらっと笑って、うんうんと頷いた。

 何でアイちゃんがこんなに緊張してるのかは分からなかったけど、珍しい笑いかたをしたその顔がめっちゃ嬉しそうに見えたので、まあ良いかな、と私は思った。

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