【完結】私はプレインズウォーカー。   作:デーテ

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5.構築は難しくて、間違える事もある。でも楽しい。

 ハーフデッキを二つ組み合わせて、60枚のデッキにした。そこにアイちゃんと一緒に買いに行ったカードを組み込んで、そして代わりに何を抜けば良いんだろう。

 ちゃぶ台の向こう側に座るアイちゃんをチラリと見る。こちらを見ているアイちゃんが居る。目が逢うとニコってしてくれた。私は右手の人差し指を唇に当て、小さく音をたててアイちゃんの方へと動かした。ちゅっ。

 

「どうして舌打ちしたの?」

「投げキッスだよこの野郎」

 

 ふざけあいながら、めっちゃ迷って抜くカードを決めた。たぶんコレで強くなった。たぶん。わからん。

 

「デッキの構築には正解が無いってよく言われるよ。なので組んだら実戦で試して、徐々に完成に近づけるの」

「ならば」

「調整試合かいしー」

 

 負けまくって、その都度カードを入れ換えて、負けまくって、土地の枚数をいじったりして、やっと勝てるようになったのは深夜だった。

 疲労困憊の私はシャワーを借りて、アイちゃんと一緒のベッドで寝た。

 アイちゃんはニコニコして、楽しくて仕方ないという感じだった。

 

「良い感じになってきたね」とアイちゃんは言った。

「うん」

「マジック楽しいなぁ」

「いつかヒィヒィ言わせてやるからなー」

「楽しみー」とアイちゃんは笑った。

 あぁ、でも本当に、楽しいなぁ。

 

 

 

 目を覚ましたのはたぶん朝と昼の間くらいの時間で、枕の代わりにした丸めたバスタオルの感触が頬に気持ち良かった。

 部屋の中は薄暗く、閉められたカーテンの端から外の光が微かに零れてる。静かで、隣で寝てるアイちゃんの寝息がすぅすぅと聴こえるだけだ。

 アイちゃん。と思い、隣をそっと見た。アイちゃんは壁の方を向いて寝ていて、私からは綺麗な黒髪だけが見えた。

(あ、ちょっと跳ねてる)

 ゆっくりと手を伸ばして寝癖を撫でてみた。サラサラで滑らかな感触は、このままずっと触れていたいと思った。

(気持ち良いな。あのシャンプーめっちゃ高そうだったもんな)

 じわりと近寄って息を吸うと良い香りがした。きっと今の私の髪も同じ匂いをしているはずだ。女子力が高まっている感じがする。

 もぞり、とアイちゃんが身じろぎしたので撫でていた手を引っ込めた。ゆっくりとした動きでアイちゃんは寝返りをうち、こちらへ向かって転がってきた。腕を伸ばせば触れる距離にいたアイちゃんは、最早目と鼻の先だった。というかアイちゃんの鼻の先っぽと、私の鼻の先っぽはバッチリ触れあってる。

 もぞもぞとアイちゃんの腕が動き、その片腕は私とベッドの間を通り抜け、もう片方の腕は軽く私の背中に触る位置に置かれた。アイちゃんの目は閉ざされたままだ。

「おはよ」ハグされながら私は言った。

「ぅ~」とアイちゃんは唸り声をあげた。

「お~は~よ」鼻の先っぽでアイちゃんの鼻の先っぽを往復ビンタしながら言った。

「ぁ~めぇ~」顔を仰け反らせてアイちゃんは唸った。

「フーッ」アイちゃんの耳から首筋にかけてがあらわになったのでイタズラ心に身を委ね、耳に息を吹き掛けてみた。

 

「うひゃあ!」

 劇的な反応でアイちゃんは飛び起きた。マジでアニメみたいなリアクションだった。

「何いま何!? めっちゃゾワゾワした! にれぇ!?」

 アイちゃんは両手で耳を押さえて、めっちゃ目を見開いてて、そんな顔は初めて見た。

「にれってなに!? そんなに!? うわっはっはっはっ! マジで? うける!」

「いや今の! びっくりした! 耳からブワッて! あぁ! 鳥肌! ひぃぃ」

 私は寝転がったまま、ベッドの上に座るアイちゃんを見上げて爆笑した。

 

 しばらくして落ち着いたアイちゃんは、寝巻き代わりのTシャツの上から胸を押さえて深呼吸をした。下はハーフパンツを着てる。

「はぁ、びっくりした。鼓動がすごい」

「私もびっくりした」と私は言った。

「ユーリちゃんもされてみる?」

「この流れでされるわけ無いでしょ」

「試しに一回だけされてみない? ほんと凄かったよ。なんか、初めての感触だった」アイちゃんはのそり、のそりとゆっくり近寄ってきて、静かに私の上に跨がった。

 掛け布団は足元に畳まれていて、私は借りたTシャツと下はパン一という心もとない装備だった。

「えぇ~? するの~?」おや、この体勢はもしや格闘技で言うマウントポジションという奴では、と私は思った。

「一回だけ! ね、お願い。ちょっとだけ。ちょっとだけだから」はらりはらりと、アイちゃんの髪が落ちてきて私の視界を狭めた。顔の周りは黒髪のカーテンで閉ざされ、まっすぐ見下ろすアイちゃんの白い顔だけしか見えなくなった。

「すぐ済むから。ユーリちゃん、させて?」

「う~ん、わかった。じゃあ、して?」おねだりに負けて、受け入れた。

「うん。じゃあ、横向いてね」ニコニコしたアイちゃんの顔がゆっくり落ちてきた。

 私は顔の向きを変えて待った。カーテンに鼻先が触れて、耳にアイちゃんの唇が触れて、くすぐったくてシャンプーの香りが強くなった。

「じゃあ、いくね。3、2、1、フー」

「ん。……うーん?」

 吹き掛けられた瞬間はピクリとしたけど、それだけだった。

「あれ!? なんで!?」アイちゃんは、信じられないという顔をして言った。

「え、いや、なんか。息を吹き掛けられてるなぁ、としか」と私は感想を伝えた。

「あれぇー?」アイちゃんは上体を起こし、首をかしげた。カーテンが取り除かれ、景色が開けた。

 

 腹筋と手を使って体を起こす。アイちゃんの顔は目の前にある。両手を使ってぎゅうっと抱き締めると、お互いの胸が柔らかく潰れて密着した。唇に耳たぶの感触。

「フーッ」息を吹き込んだ。

「うひやあー! あー! にー! みいぃぃー!」

「フ~」

「ヒィー! ひぃー! ぃー! めぇー!」

 アイちゃんは両手と両足を使ってしがみついてきた。ぎゅうぎゅうとすごい力で締め付けられて、私は息を出すのを止めた。

 しばらくブルブルと震えていたアイちゃんは、くたりと力を抜き息も絶え絶えに言った。

「はぁーっ、はぁーっ、なにぃ、これぇ」

「大丈夫?」

「わ、わかんなぃ。な、なんか」

「うん」

「癖に、なりそぉ」

 うーん? 何か間違ったな、と私は思った。

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