「わ、スリーブしてる。どんなの買ったの? え、この絵レベッカの《チャネル》じゃん! どうしてこのスリーブにしたの!? すごい! ユーリちゃんはセンスが良い! 最高! 美の巨人! 美少女!」
めっちゃ誉められた。
アイちゃんの部屋。アイちゃんが帰省から戻ってきて、お土産のお菓子を並んで食べてた。あんこの詰まったモナカとお茶でシブいティータイムだ。
アイちゃんにスリーブを見て欲しくて鞄からデッキを取り出したらこのようなリアクションというわけ。
思った以上に誉められて気分は有頂天だった。
「めっちゃ誉めるじゃん」と私は言った。
「私、このアーティスト大好きなの。でね、ユーリちゃんもこの絵を見て気に入ったから買ったわけじゃん。まずそれがレベッカのファンとして嬉しいわけ。見る目がある。審美眼の巨匠」とアイちゃんは早口で言った。
「ふんふん」
「それでね、ユーリちゃんもレベッカ好きなんだ、ユーリちゃんとおそろいだなって思ったらもっと嬉しくなったの!」ニコニコしてアイちゃんは言った。
ふふふ、と笑いながらアイちゃんはお茶を飲んでいる。
私とおそろいなのがそんなに嬉しいのだろうか。嬉しいのだろう。もちろん私だってめっちゃ嬉しい。
踊るしかないな、と私は思った。立ち上がる。
「アイちゃん、嬉しいから踊ろう」手を差し伸べた。気分はシャルウィダンスだ。
「はーい」とアイちゃんは笑いながら手を取った。
周知の通り、JKはテンションが上がると踊り出す習性を持つ。わっせ、わっせと二人で踊った。
「わわ、そのスカートフワフワしててすごく可愛いね!」とアイちゃんは言ってくれた。
わっせーら! わっせーら! と私の踊りは加速した。
めっちゃ嬉しい!
帰宅部で培った体力を存分に発揮して、私とアイちゃんはグッタリしてた。
私はラグの敷かれた床に座り、ベッドを背もたれにして手足を投げ出した。アイちゃんは私の脚の間に座り、私の胸を枕にしてもたれかかってる。
しばらくして息を落ち着けた私とアイちゃんは、そのままの格好でお喋りの続きをした。膝をたて、脚の間のアイちゃんをぎゅっと締めたり緩めたりしながら髪を撫でたり好き放題した。
そうこうしてると、だんだんと気分が盛り上がってきたので私はアイちゃんをお誘いした。
「ね、しよ?」
「うん!」
スリーブに入ったデッキは分厚くて、ゆっくりとシャッフルをする。
「あ、ユーリちゃん、今日はする前にこれ着けよ?」
アイちゃんは透明なスリーブを差し出してきた。
「アイちゃんこれは?」と私は聞いた。
「スリーブプロテクター。お気に入りのスリーブを守るやつ」
「まさに今の私にうってつけのやつじゃん。こういうのがあるって知らなかった」
「スリーブ入れるの手伝うね」
「アイちゃんありがとう」と私は礼儀正しくお礼を言った。
「どういたしまして」ニコっと笑ってアイちゃんは言った。
二人でスリーブに入れてると、ふと気付く。
スリーブプロテクターを持ってるって事は、それを使ったデッキがあるという事では?
アイちゃんのお気に入りを見てみたいと思った。
「アイちゃん」と私は言った。「アイちゃんのお気に入りスリーブを使ったデッキって無いの?」
「ふふ、あるよ。レベッカのスリーブ!」手を動かしながら、弾むような声色でアイちゃんは答えた。
「わ、そうなんだ。アイちゃんそれ使ってよ。見たい」
「うん。じゃあ、見せてあげる。レベッカのデッキ」
そういうことになった。
お気に入りのデッキを使うアイちゃんは楽しそうで、私はその顔をずっと見ていたい気持ちになった。
アイちゃんの使うデッキは強くて、私のファイヤーズはまだまだ戦えるレベルでは無いと思った。
もうちょっとカードを揃えてみよう。強くなったファイヤーズで、このレベッカのスリーブで、もっとアイちゃんとマジックをしたい。
モチベーションの高まりを感じつつ、私は思う。
2ターン目に花が咲くと苦い顔になるから《苦花》なんだなぁ。