【完結】私はプレインズウォーカー。   作:デーテ

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9.休日の根本原理

 夏休みが終わってからそこそこ経ち、朝晩は随分と過ごしやすい気温になってきた。

 

 土曜日の朝。腕の中にアイちゃんを抱えた格好でまどろんでた。アイちゃんがびっくりして起きないように、ゆっくりと腕を動かしてお腹を撫でたり、うなじに鼻の先っぽを擦り付けたりして過ごした。

 そうやってしばらく遊んでると、アイちゃんがもぞりと動いて目を覚ました。

 

「おはよ」ゆっくりアイちゃんの耳に唇をつけて、小さな声で言った。

「おぁょぅ……」アイちゃんは唸り声と言葉の中間くらいの返事をした。

 お腹を撫でてた私の手をアイちゃんは掴み、手で包むように握ったり、指で輪郭をなぞったり、指と指を絡ませて握ったりした。

 

「おいしそ」アイちゃんは自分の顔の前まで私の手を引っ張りあげるとそう言った。

 指の先っぽを唇で挟んでモゴモゴしたり、第二関節あたりを横から咥えたりとやりたい放題し始めた。

 目につくものを口に入れたがるのは、アイちゃんがまだ寝てる証だ。アイちゃんは意外と朝に弱く、目を覚ましてから本格的な覚醒まで多少の時間を必要とする。いつもならそろそろ正気に戻るので待った。

「わぁ、なんか濡れてる。いらない」とアイちゃんは私の手を遠ざけた。

「アイちゃんのだよ!」と私は憤慨した。 

 

 ベッドから起き上がり、顔と手を洗ってから朝ごはんを一緒に食べた。毎週末、アイちゃんのお母さんは単身赴任をしてる旦那さんのところへ通ってる。今家の中にいるのは私とアイちゃんの二人だけだ。なので私はキャミソール、アイちゃんはタンクトップというラフな格好をしてる。

 午前中はリビングの大きなテレビでアニメを見たりして過ごした。

 

「アイちゃんお昼どうする?」と私は聞いた。

 どうする、とは何か作るか食べに行くかという意味だ。

「ユーリちゃん親子丼食べれる?」とアイちゃんは問い返してきた。

「食べれるよー」と私は答えた。「作れないけど」

「ふふ、じゃあご馳走したげる」

「アイちゃんの女子力がとどまる所を知らない」私は戦慄した。

 

 アイちゃんが料理する手際を横から眺め、出来上がった親子丼を美味しく頂き、一緒に食器を洗った。

 

 洗濯機を借りて、アイちゃんの家に置かせてもらってるバスタオルや昨日着てたシャツなんかを洗濯槽に入れた。

「アイちゃん、洗濯物あったら出してー。ついでに洗っちゃうよ」と私は言った。

「はーい」とアイちゃんは返事をして、昨日着てたものを持ってきた。

「スカートのポケットの中は確認した? この前みたいにカード入れたままじゃない?」と私は言った。

「へへ、その節はどうもご迷惑をおかけしまして……」とアイちゃんは半笑いで言った。

「なにわろとんねーん」

 一応ポケットをチェックしてから洗濯機のスイッチを入れて、横に立ってるアイちゃんを両腕で捕まえた。タンクトップの裾から手を突っ込んで脇腹を直接くすぐった。

「ぅきゃあはははは!」

 洗濯機を置いてる洗面所兼脱衣所はそんなに広くないので、すぐにくすぐるのをやめる。アイちゃんが怪我をしたら悲しいので。

 

 リビングのソファに深く腰をおろす。アイちゃんは私の脚の間に座ってもたれかかってくる。両手をアイちゃんのお腹のあたりでゆったりと組んだ。

 アイちゃんは私の手に自分の手を重ねて握ったりさすったりしてる。その動きで私は朝の事を思い出した。

「アイちゃん、寝惚けてなんでも口に入れちゃだめだよ? お腹壊しちゃうかも」

「なんか美味しそうに見えたんだけどなぁ」

 アイちゃんは私の手を取って顔の前まで持ち上げた。

「あ、ユーリちゃんの爪つやつやしてて綺麗だから飴ちゃんみたいかも。これは起きてるときに見ても美味しそう」

「一応お手入れしてるからねー」と私は言った。誉められたので嬉しい。

「女子力が、10万、20万……! バカな。まだ上がるだと!」とアイちゃんは慄いた。

「うおおー私はまだ洗濯も掃除もできるぞー」私はパワーを解放した。

「大和撫子じゃん」

「マジー?」

「嫁にしたい女子ナンバーワン」

「やったぜ」

「嫁に行く予定は?」

「おいやめろ」

 

「ふふ、じゃあ、……私が貰ったげる」とアイちゃんは言った。

「……行き遅れ回避サンキュー」と私は言った。

 

 洗濯機が音を立てて私を呼んだ。

 

 

 昼過ぎの太陽の光は強く、干した洗濯物は残暑ですぐに乾きそうだった。

 アイちゃんとテレビを見ながらお喋りをして、洗濯物を取り込んで、夕方になるとそろそろ帰る時間だった。

 制服に着替える。アイちゃんは玄関まで見送りにきてくれた。

「じゃ、また明日ね。お昼はどっか食べに行こ」と私は靴を履きながら言った。

「久しぶりにハンバーガー食べたい」とアイちゃんは言った。

「オッケー」と言って私は両腕を広げた。バイバイのハグの儀式だ。

「わーい」と言ってアイちゃんは抱きついてきた。

 ぎゅうっと抱き締めて、朝のおかえしをしてない事を思い出した。

 

「またね。なんか濡れてるから拭いたほうが良いよ、頬っぺた」

 丁寧にドアを閉めた。夕陽のせいでめっちゃ顔が熱い。

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