「あ、また失敗した。」
本日三度目の爆発が発生した。
釜が光を放ち煙がまき散らされる。幸い人体に害のあるようなものではなく少し掃除すればかたずけられる程度の煙であるため、気にせずに二度ほど同じように調合をしてみた。結果は爆発のみ、完成品は得られず私の体は煤だらけになった。
「三回やっても結果は変わらないか。あと一歩のところで爆発してしまう。何でだろ。」
直感的にはこれで合っていると思うが、何かを見落としているのか一向に成功しないため一度考え直すことにした。失敗の原因を見つけないことには中和剤はできないだろう。
まずは掃除と水浴びでもして汚れを落とすのが優先だ。
埃や煤などが調合に影響を与えるかもしれないし、汚れたままでやるのは衛生的にもよくないだろう。
村の小川の端の方、私は人が入ってくることのない秘密の水浴び場で煤を落とし、錬金術に熱中して火照った体を冷やしていた。
そうして考えることは調合についてである。
「トーンは確かに反応していた。だとしたらなぜ爆発するのか。」
透明感の増したトーンは確実に液化していた。
「あり得そうなのは魔力の込めかたか。」
今のやり方は調節をせずに一定量流し続けているようなものだ。中和剤の魔力はごく少量なので、魔力が多く込められたのが今回の失敗の原因だとするとある程度筋は通る。
「魔力の調節かぁ。意識的に出したり引っ込めたりはまだ出来ないんだよね。」
自分の手を空にかざしているとうっすらと何かの力を感じる。
この世界に体系的な魔法は存在しないらしく、仮に使える人間がいても、異端扱いを受けかねない。
魔力が本の中に記述されていることから、それらの力を技のようにして使う人はいるかもしれないが、教わることは現実的に無理があるだろう。
「そろそろ弟たちも帰ってくるし、今日の実験はここまでかな。」
この後の掃除を考えると少し気が重くなった。
失敗も三回も続けば埃の量もそれなりになる。初めての魔力を使ったからか疲れている体で行う掃除はなかなかの難敵であった。
時間にして一時間ぐらいだろうか。無心に掃除していたこともあり早めに片付いたがなかなかの疲労具合になった。
「疲れた。このまま寝たいけどあの子たちのご飯作らなきゃ。」
寒村の料理はそれほど種類がない。そもそもとれる野菜も種類が限られており、捕れる魚も同じようなものばかりだからだ。せいぜい焼くか煮るかがほとんどでレシピなど数えるほどしかないだろう。
それでも食べなければ体がもたないのでたとえまずくても文句を言わず皆食べていた。今でこそ私が作るようになったから多少ましではあるが、此処で眠ろうものならあの地獄のような料理に逆戻りするだろう。流石にそれは弟たちに申し訳が無いので、頬を叩いて無理やり頭を覚醒させた。
作った料理はいつもより雑な見た目だったが、味は変わらないので弟たちは喜んでいた。
昼間に村の女の子からもらったお弁当が思いのほかまずかったらしく、やっと味がするものを食べれたことを喜んでいたらしい。
味がしないお弁当に興味をひかれたものの、間違っても本人には言わないように釘はさしておいた。少なからず好意を持っている男の子にそんなことを言われたら、さすがに可哀想だからだ。