可愛い幼馴染と弓道部を足すとプラマイゼロらしい 作:/\三瀧/\
小さめの一軒家の一室。
家でゴロゴロしながら、スマホをいじっている青年が一人。俺だ。
いや、いきなりそんなこと言われたってどうしろと。皆さんそうお思いだろう。そんな訳で、まずは自己紹介を。
俺こと神無月 春(かんなづき はる)は幸せものだ。
可愛い同い年の女の子の家の隣という好立地に爆誕した俺は、難なく美少女幼馴染をつくる事に成功する。
この時点で人生勝ち組と言っても過言ではない。しかしながら、俺のハッピーはこれにとどまらない。
そこそこイケメンな俺は、多少モテるのだ。運動も勉強も平均以上。友人にも恵まれた。
しかし、一つ皆の想像と違う点がある。高校二年生になった今でも、彼女とは付き合ってはいない。付き合う気もない。
何故か。そんな契約が無くたって、肩書きが無くたって、俺と彼女は繋がっている。
ある事件をきっかけにそれは明白になっている。決して独りよがりじゃない。つまり、彼女がいないんじゃなくて、作らないのだ。
……以上。俺の人生自慢だ。存分に羨むが良い!
まぁ、少し憂いがあるとすれば、親と良好な関係では無いってことだ。夜勤続きの両親とは三日話さないとかもざらだし。
だけど、その分の隙間をりんが埋めてるから、むしろ満たされてる。
親の分まで彼女が居てくれるなら、その方がいい。
やっぱりハッピーだな。俺は。
……なんて一人で考えて、ニヤニヤしてる。だって、こんなのラノベとか漫画とかの主人公と相違ないだろ?
つまり、俺は山あり谷ありな人生の末にハッピーエンドを迎えるわけだ。
脳内で自らの人生を振り返るというイタイ行動をとった翌日。
「起きてー!可愛い可愛い幼馴染ちゃんが起こしに来たよ!」
目覚ましをスルーし続けた俺を起こしに来たのは、例の幼馴染だ。
綺麗にまとめた黒髪のゴールデンポニーテールと、常にニコニコしてる彼女の明るいオーラは最早眩しい。
「おはよ、りん。そういうこと言うから可愛げが無いんだぞ。」
「えぇ?春は可愛くない子と一緒に遊び回ったりしてるの?B専なの?」
彼女の名は間塚 りん(まつか りん)だ。昨日の自己紹介の通り、実際可愛い可愛い女の子だ。自覚があるから可愛げはないけど。
「ちげぇよ。顔云々じゃなくて性格だよ。自分で可愛いなんて言うやつの約九割は地雷(当社調べ)なんだぞ。」
「ヒドイ言われようだね。じゃあ、春は地雷と共に生きる爆弾魔だね。」
「いや、りんは例外だな。珍しい一割だ。それでも、発言に問題ありだけど。」
じゃなきゃとっくに関わるのを止めてるね。まさか地雷女が好きなチャレンジャーなんていないだろ。
「知ってるよ。私は自覚した上で、嫌われないムーブを心掛けてるのさ。それに、嫌味は言わないからね。で、どう?実際可愛いでしょ?」
どうしても褒めて欲しいらしい。
「もちろんだ。世界で一番……かは分からないが、片手で数えられるくらいには入ってるな。」
「ありがと!一番になれるように頑張るね!」
圧倒的バカップル、いや、幼馴染たがらバカ幼馴染かもしれん。でも、他人の前じゃやらないから害はない。無害なバカ幼馴染だ。
だが、りんを狙う不届き者の前では平気でイチャついてやる。見せびらかしてやるのだ。高い幼馴染の壁を。
とりあえず起き上がった俺は、流石に着替えに居合わせられると恥ずかしいから、りんを追い出して制服に着替える。
バックを持ってリビングに行くと、今度はりんがエプロンを着けて朝食の準備をしている。
「毎度毎度悪いな。りんにそんな義務も責任も無いのに。」
「いやいや、私は楽しいから良いんだよ。」
親の仕事が夜勤なおかげで、基本俺が飯を作るように言われている。だが、俺がサボることが多すぎて、りんが手伝ってくれてるのだ。
さっきの問答ではかなり変な奴だったけど、何だかんだ面倒見が良いし、優しいのだ。
「本当に母親感すらあるな。」
「えぇ?若奥さんにしてよ。」
「まぁ、確かにそうかもな。」
若奥さんか。悪くないな。
「じゃあ、朝飯を持ってきてきくれ、りん。」
りん、の部分を強調する。
「分かったよ、あなた。」
その意図を汲み取ってあなた呼び。うーん。悪くない。
りんは少し軽い足取りで料理を取りに行く。
「お、朝飯は焼きジャケか。流石りんだな。俺の気分を分かってらっしゃる。」
「一生の八割程を一緒に過ごしてる私にかかれば、春の食べたいものを当てるなんて朝飯前だね。ちなみに、私の朝ごはんはハムエッグだったよ。」
どうやら朝飯前では無かったらしい。残念。
「ツッコまないぞ。全く……。じゃ、頂くよ。」
いただきます、と手を合わせてからまず手をつけるのは味噌汁だ。りんの気遣いで薄めだから朝にピッタリ。
半分ほど残して次に箸を伸ばしたのは、焼きジャケだ。焼きたてホヤホヤのシャケは、箸を入れると、そこから湯気が立つ。
塩気の強いシャケと白飯の相性は最強だ。いくらでもイける。
食事はめっちゃ美味しい。たが、一つ気がかりなことが。黙々とご飯を食べる俺は、もしかしたら変な顔をしてるのかもしれない。りんは向かいに座ってずっとニコニコしている。
「俺の顔を見て楽しいか?」
「もちろん。自分の作ったものを美味しそうに食べてくれたら、嬉しいに決まってるよ。」
「そうか。良かったよ。なら、今度はリアクション芸でも身につけるか。」
ご飯を作ってもらって、美味しそうに食べるのが恩返しになるなら、そんなにウィン・ウィンな関係はそう無いだろう。
なら、こちらも努力した方が良いだろう、という気遣いだ。だが、
「流石に鬱陶しいね。」
可笑しそうに笑っているりんに拒否される。当たり前か。絶対ウザったいわ。やられたら。
飯を食い終わり、歯を磨いて顔を洗ったら出発だ。歩いて十五分程で高校に着くから、徒歩で向かうのである。
「うぅーん!気持ちいい朝だね!」
「そうだな。少し肌寒いくらいだけど。」
寝過ごした割に朝早いな。という指摘のために、一応説明しよう。
俺とりんの所属する弓道部は、朝練があるのだ。お陰で毎朝七時に学校着という鬼仕様だから、眠くて仕方ない。
文武両道を謳う弓道部のせいで、授業が睡眠の場に成り果てた。武極振りのありえん部活だとは思う。
「肌寒いなら、その手温めて進ぜよう!」
そう言って、りんがギュッと柔らかい両手で俺の手を包み込む。
「相変わらずあったけぇな。りんの手。」
「優しさの温もりだよ。とくと味わうがいいよ。」
昔から体温の高いりんは、冬にはカイロと同じレベルの仕事をする。
逆に俺は手が冷たいから、夏にはりんの頬を冷やすのに一役買っている。
暦上は春だが、まだまだ冬の寒さが抜けていない。りんにお世話になるターンなのだ。
分かりやすくイチャつくなって?人目のない所なら良いじゃないか。え?読者の目?知らんな。そんなもの。
小綺麗な三つの白い校舎が並んだ学校の敷地の隅っこ、木に囲まれたのが、弓道場だ。
「失礼しゃーす。おーざいまーす。」
「失礼します!おはようございます!」
礼儀作法を重んじる弓道部では、入る時に挨拶をするのだ。
荷物を部室にしまい、二人の友達に挨拶をする。
「おはよーさん。」
「お、春じゃん。おはよ。」
「今日もまたりんちゃんと登校?」
一人目は、山谷 一希(やまたに いつき)。だらしないし弓もへっぽこだが、人付き合いはいい方だ。少しツンツンした髪の毛に、常にニヤけたふざけた奴。
二人目は、保原 りゅう(ほはら りゅう)。こちらはチャラい感じのやつだ。茶髪にツリ目のこいつは、普段遊んでまわってる癖して、弓も勉強も出来る。要は要領が良いんだな。
どちらも同じクラスの友達だ。
「おう。当たり前だろ?幼馴染なんだから。それにしたって、朝はえーよな。」
「今更何を。ブラックもブラック、真っ黒なこの部活を辞めてない方が悪いのさ。」
一希が袴の帯を締めながら、軽口を叩く。朝早いのに、放課後は三時間練習あるから、帰りは七時。十二時間も学校にいるのだ。
「せめて、休みが欲しいね。女の子を誘う余裕も無いよ。」
更には、定休も無い。週休一日と顧問は謳っているが、実際はそんなに無い。
りゅうはナンパしてまわってるし、顔がイケてるから実際彼女が出来ることは多々ある。ただ、長続きしない。本人曰く、誰相手でも本気になれないらしい。
もしかしたら、本命のヤツがいるのかもな。
こいつに限って無いとは思うが、りんにまで手を出したら弓で射抜いてやろうと思ってる。割と本気で。
「それより、春はいつになったらりんちゃんと付き合うんだい?君達がアレで付き合ってないのが信じられないよ。」
「そうだぞ!フリーなのかフリーじゃないのかハッキリしてくよ!」
りゅうも一希もそればっかりだ。
「一希。お前はりんがフリーだとして、俺とりんの間に入ってイチャつけるのか?」
ヘタレの一希は年齢と彼女いない歴が見事に一致している。そんな奴にはハードルが高すぎるだろうに。
「うるせー!俺ならよゆーよ!」
「童貞そのものの癖してよく言うわ。経験積んでから来い。」
まぁ、もし経験を積んだとて間に入ることは許さんけど。
「俺はタイプの子以外にはなびかないの!理想が高いんだよ!」
「フラれたじゃん、お前。何言ってんだよ。お前が選ぶ前に選ばれるようになれ。」
今の所勝ちなしの一希は、最早りゅうの対極といっても過言では無い。最近やっとクラスの子に告ったと思ったら、フラフラして帰ってきた。
本人は俺達以外知らないと思い込んでるが、実際は皆知ってる。こいつも大概アホだ。
「結局春はりんちゃんとは付き合わないんだね?」
「おう。そんな肩書きいらん。今の状態で十分だ。」
完全に撃沈した一希を放置して、りゅうとの会話に入る。
「誰かに取られても知らないよ?」
「そんなことする奴は絞め殺す。まぁ、りんはそんな事しないさ。絶対断ってくれるよ。」
「はぁ……。朝から特大のノロケありがとさん。」
すっかりりゅうは呆れた感じだ。まぁ、俺も逆ならそうなるわな。
下らない話をしてる間に、袴の着付けが終わる。
部室から出ると、目の前には芝生の敷かれた矢道。その向こうには的の付けられた安土。
弓道の道場は、大抵、畳、弓を引く位置の射位、矢が通る矢道、そして的を付けるために積まれた土である安土がある。
「相変わらず風景だけなら綺麗だな。」
朝の日差しが道場に差し込んでいる。写真を撮れば、割と様になるかもしれない。
「ったく。毎朝毎朝何やってんだか。眠くて仕方ない。」
もちろん朝練に顧問は来ない。八時出勤だ。しかし、俺達は日誌を書いて出さなければならない。
あんまりに面倒な日は嘘ついて乗り切ったりしてるが、基本的には真面目にやっている。
仕方なく準備をした俺は、弽という右手につける鹿の皮で出来た手袋をつけて、弓と矢を持って弓を引く射位に入る。
弓ってのは普段使わない筋肉を使うもんだから、一晩寝るだけでも鈍ってしまう。
しかし、一年もやってればある程度は軽減される。本日一本目、初矢は無事的を捉えた。
一手引き終わって射位を抜け出すと、袴姿のりんがいた。帯でキュッと締められてるおかけで、細い体のラインがくっきりしてる。
「春さっきの一射綺麗だったね。凛とした姿がかっこよかったよ。」
弽の箱とノートを抱えたりんからお褒めのお言葉を頂く。
「そんなこと言って、りんのが中るし綺麗じゃん。」
「綺麗って、私自身が?射型が?」
りんがわざとらしく聞いてくる。答えは分かってるよって顔をしてる。
「どっちもだよ。引いてる姿も引いてない姿でも。」
その期待に答える。当たり前だ。実際そう思うんだから。
「はぁい。おふたりさぁん。ここでイチャつかないでねぇ。」
お熱い雰囲気の俺達の間におっとりした女の子が入ってくる。
「悪かったって。音初。」
ゆるーい雰囲気の彼女は、夢久里 音初(ゆくり おとは)。高めの身長に女性っぽい柔らかそうな体つき。結構面倒見が良い。常に眠そうなフワフワしたロングの音初は、
「まったくだよねぇ。本来なら、ここは恋愛禁止なんだよぉ。」
ゆっくりとした喋り方で咎める。彼女が怒った姿を見たことは無いが、怒らせたら一番やばいんじゃないか、というのが部の定説だ。
「そうだぞー。いい加減イライラするわ。」
部室からスマホ片手に出てきた一希が横槍を入れる。
「あんたはこれだけ貴重な物を見れるだけ感謝しなさい。今後一生こんなものは見れないよ。」
更にそれを横から叩き潰す強気な少女。
「あ?んなこたねぇわ!ふさわしい相手さえ居ればこんなん余裕で越えちまうよ!」
「まだバレてないと思ってるの!?あんたがフラれたことは部どころか学校の皆知ってるわ!」
健康的に焼けた肌に、短いポニテ。赤っ恥な一希をツリ目で嘲笑っている。
「嘘だ!誰が言いふらしたんだ!お、おい音初!お前知ってたか!?」
「んーー……。」
話を振られた音初は、しばらく上を見ながら顎に人差し指を当てて考えてる。
こういう動作が一々漫画チックな女子っぽいのも音初の特徴だ。
これが素なんだからすごい。
「フラれた翌日くらいかなぁ。」
もはや知ってるか知らないかじゃない。いつ知ったかだ。音初はそういうのに鈍感な方だから、手遅れと見ていいだろう。
「ほらね!あんたバカだ!やぁーい!フラれ魔!」
子供っぽい煽りをかます。彼女は衣葛 明琉(かつい あかる)。中学校まではハンドボールをやってたおかけで、男子と対等にやり合うくらい喧嘩が強い。
「もういい……。殺してくれ……。」
ガクッと膝から崩れ落ちた一希を、明琉が見下す。
「あんたにふさわしい相手なんていないんだよ?あんたで妥協してくれる人を探すんだよ。」
ちなみに、明琉が喧嘩が強いと言ったが、一希は逆に貧弱だ。背も低いし、運動は苦手らしい。
「でもぉ。一希君はブサイクじゃないけど三枚目だからぁ。きっと友達は多いはずだよぉ。」
方向性の分からないフォローに一希は微妙な表情で顔をあげる。
「じゃあどうしたらモテるんだよ。」
「あんたは頼り無さすぎだから、もっと鍛えな。そしたらモテるかもよ。」
明琉の明らかに適当なアドバイス。
「ほんとか?筋トレいっちゃうか?」
しかし、それを真に受けた一希は男子にしては細い腕にちっさい力コブを作ってる。
「あたしに勝てるくらいになればモテモテだね。」
「うぇ……。ゴリラには勝てないな。」
「はぁ!?ゴリラだ!?あんたちょっとシメてやるわ!」
「やべ!逃げろ!」
地雷を踏み抜いた一希が逃げ出す。それを明琉が綺麗なフォームで追いかける。追いつかれるのは時間の問題だな。
「あの二人仲良いね。」
りんがボケーッと眺めながら呟く。
「りんちゃん達程じゃないけどねぇ。でも、あれはあれでお似合いだと思うんだけどねぇ。」
音初も同調する。俺も同感だ。喧嘩する程なんとやら。まぁ、本人達は否定するだろうけど。
「音初はそーゆーの無いのか?」
「んーとね。特に無いよぉ。私別に可愛くないからねぇ。」
そんなことないけど。実際音初は人気がある。しかし、彼女自身鈍感だし、おっとりしてるから、ほぼ告白されない。されても気付かないケースも多々。
男子からしたらやりにくい相手なのだ。匂わせても気付かないから。察してくれないから相当度胸が必要になる。
「憧れはあるんだけどねぇ。」
どこか遠くを見ながらポーっとした目をしてる。運命の相手を想像してるのか。さっきのポーズと言い、少女漫画から出てきた見たいな子だ。
言い方を変えれば女の子っぽい。男子ウケが良いに決まってる。
「ほらほら、そろそろ弓を引かないとショートホームルームに間に合わないよ。」
遅れてりゅうが手を叩きながら部室から出てくる。
「ほんとだねぇ。じゃあ、そろそろ引こうかぁ。」
「あ、ほんとだ。ありがと、りゅうくん。」
「俺は一手引いてあるから少しダラダラ引くわ。」
皆部室の手前の畳に座って弽をつけ始める。
部活には他にもメンツがいるが、それぞれ個性が強すぎて、完全に派閥が出来上がってるせいで、基本的にこの六人で固まっている。今は二人失踪したけど。
元々はクラスが同じだったからってのが大きいけど、比較的イチャつきへの許容度が高いのもある。その点こいつらはこいつらで変わり者だな。
この学校は朝のショートホームルームが八時半から。その時間に間に合うように大急ぎで弓引いて、掃除をして道場を出る。
他の派閥に比べて真面目な俺達が主になって掃除をしてたもんで、割と時間がかかるのだ。
二―三の教室に駆け込んだ時には八時二十八分。いつもよりは余裕がある。
しかし、担任は既に教室についていた。短髪の厳しそうな男。我が弓道部の副顧問。権限は弱め。
俺とりんと音初は同じクラスだ。三人まとまって一番後ろの席にいる。
六列のうち、真ん中の最後尾を俺とりんが、その前に音初がいる。
ショートホームルームを終えた後の十分休み。
「おはよー!バカップルとマーさん!」
楽しそうに笑っている明るいのは音初の友人の水音 遥(みね はるか)だ。俺達と同中。遥の言うバカップルは言わずもがな、マーさんとは音初のことだ。
面倒見が良く、フワフワした雰囲気の彼女の事をママと呼んでたが、流石に嫌がられてマーさんに落ち着いた。
「おう、おはよ。」
「遥ちゃんおはよ!」
「出来れば普通に読んで欲しいなぁ。」
音初は困り顔だ。確かにマーさんは嫌かもしれん。
「そ、そうだよ……。音初ちゃん嫌がってるよ?」
控えめに会話に参入してきたのは黒髪ロングの眼鏡っ子。長い前髪に隠れた顔は割と美人だ。
「別にそこまでじゃないよぉ?ありがとねぇ。優しいねぇ、詩津華は。」
詩津華(しづか)は見ての通りコミュ力が低い。だから、友達も俺達のグループくらいしかいない。
元々は本当にボッチだったが、音初が話しかけて、そこ経由で俺達も関わるようになった。
「ごめんね!マーさ……音初ちん!詩津華ちゃんもごめん。」
パンっと手を合わせて拝むように謝る。
「いやいやぁ。良いんだよぉ?ねぇ?詩津華。」
「あ、の、でしゃばってごめんなさい!」
謝る遥よりさらに深く詩津華が謝る。明るい遥と根暗な詩津華は、あまりというかかなり相性が良くない。
俺達を経由しなかったら絶対関われないだろうな。
この音初と俺とりんと遥と詩津華が教室でのイツメンだ。チグハグな感じもするけど、何だかんだ楽しくやってる。
所で。これ、ハーレムじゃね?とかお思いだろう。男女比一体三だし。しかし、これには深いのか浅いのか分からない理由がある。
遥とか詩津華とか、他にも色々俺には女友達が多い。
なんでか。遥に一回聞いてみた。なんで女友達が増えてくのか。
すると、予想外の答えが帰ってきた。
「えっとねー。なんか安心感があるんだよ。ほら、りんちゃんと分かりやすくイチャついてるから、私達には女としての興味は無いんだなって分かるから安心できるの。こう、既婚者みたいな感じ?」
との事だ。つまり、女としての見られる事がないから気を張る事がないらしい。ついでに、
「まだ二人が初々しければ何あったかもしれないけど、最早熟年夫婦だからね。」
小馬鹿にされた気がする。まぁ、良いけど。
授業中は居眠りしたり、音初も含めて絵しりとりをしたり、りんとイチャついたり。とにかく楽しくすごしてる。
そして、昼休み。弓道部の仲間と詩津華で飯を食べる。遥はどっか行った。コミュ力お化けだから別の友達のとこだろうな。
「ねぇ詩津華ちゃん!俺どうしたらモテると思う?」
突発的一希の無茶ぶりに、
「え、えっと……。一希さんはそこまで悪い人じゃないと思うので、そのままでも良いんじゃないですか……?」
困り顔の詩津華がオロオロしながら答える。
「ほら!詩津華ちゃんを困らせない!バカ一希はさっさと謝りな!」
それを良しとしない明琉が一希の背中を引っぱたく。
「痛てぇ!」
一希が飛び上がる。パシィンと恐るべき破裂音がしたし、オーバーなリアクションじゃ無いだろう。
「お二人共、本当に仲が良いですね。」
詩津華が微笑みながら言った一言が気に食わなかったらしい。
「「なわけない!」」
全力で否定する。二人揃って。
「やっぱり君達お似合いだね。いっその事付き合っちゃえば?」
スティックパンを咥えたりゅうが茶化す。
「そうだよぉ。それなら私達も見てて楽しいからねぇ。」
「いざ、明琉ちゃん達もリア充ワールドへ!」
それに音初とりんが連なる。
一希と明琉がしばらく顔を見合わせて、
「ゴリラはゴメンだ!」
「もうちょいイケメンを選ばせてよ!」
お互いを貶し合う。これはこれでバカップルじゃないのか?
「ゴリラって女子に言うな!二度目!」
「ヒェッ。殺されるぅ!春助けて!」
「学ばねぇな。お前は。さっさと死んでこい。」
真面目な話明琉には勝てそうにない。ここは我が身可愛さに一希を捨てる。当然だ。
「ちくしょう!覚えてろよ!」
「待て!あんたの記憶残らないくらい殴ってやるわ!」
今朝同様追いかけっこが始まる。うん。これが日常の風景だから、さして驚かなけど。
楽しい昼休みが終わって、残りの五、六限は寝て過ごし。迎えるのは部活だ。
しかし、皆の足取りは軽い。何故かって?三日後(金曜日)にオフが控えてるからだ!
……冷静に考えれば阿呆だ。令和の年号にもなって、野球部ですら月曜定休。なのに、八日連続部活の我々は平日のオフですらテンションが上がるのだ。
狂ってやがる。弓が楽しいのは事実。しかし、弓道って肉体的よりも精神的に削られるから、休みが無いのは本当に厳しい。
なら、変えてやろう!反逆を起こして、いつか週休一日を勝ち取ってやる!
……顧問怖いからしばらくはやらないけど。とりあえず今は作戦を練るのだ。そして、いつか楽しい休みを勝ち取ってやる!りんとの楽しい生活のために!
もう一つの方も是非読んで下さい!
そして、評価お願いします!