萌えもんtest ss   作:シニカ

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萌えもんtest ss 2話

萌えもんtest 2話 渚とナギ

 

少年は1人ずつ眺めていく。

するとゼニガメと名乗った女の子の手が震えてることに気が付いた。

小さな震えだ。恐らく隣にいる2人の萌えもん達も気づいていないだろう。

その時に少年は察した。

彼女も自分と同じなのだと。旅路に出る不安は萌えもんと自分達に違いはないと少年は直感した。

 

反射的に呟いた。

「彼女…ゼニガメにします。」

 

オーキドはゆっくりと頷いた。

「うむ。育てがいのある萌えもんじゃ。」

続いてオーキドはグリーンの方へと目をやる。が、グリーンの手には既にモンスターボールが握られていた。

「俺はこいつにするぜ。」

フシギダネを選んだようだ。フシギダネは落ち着いた声でよろしくお願いしますと名乗っていた。

 

自分も挨拶をしようとゼニガメと名乗った少女を見るが、彼女はこちらに目もくれない。

 

オーキドは2人とも決まったようじゃのと納得したかように呟いた。

まるでこうなることが分かっていたようだった。

「では、カゲは引き続きワシの手伝いじゃな」

とヒトカゲに向き合う。

「ワシの萌えもんが1番の幸せものじゃぞ。何たってワシは昔萌えもんトレーナーとして名を馳せたものじゃぞ」とヒトカゲに自慢そうに語っていた。

ヒトカゲはそれを少々面倒くさそうに聞いている。

活発そうなヒトカゲは博士にとっては孫のようなものなのかもしれないと少年は思った。

 

オーキドは続けて赤いデバイスを少年たちに渡す。そして説明を始めた。

「これは萌えもん図鑑と言って出会った萌えもん達を自動的に記録して行ってくれる優れものじゃ。これで萌えもんの図鑑分布の把握や新種の萌えもんがいたら記録してほしい。何しろ萌えもんはここ最近急に出現した新種の生命体じゃ。これを解き明かすのが、ワシの最後の夢なのじゃ。何卒宜しく頼むぞ!」

オーキドは若い学生の様な顔で少年たちを見た。

 

グリーンは挑戦的に言った。

「任しとけよじーさん。こいつには出番すら与えないさ。全部俺に託せばいい。」

続いて少年の方へ向き合う。

「ついでに見せてやるよ。俺の実力をな。萌えもんバトルだ!」

 

少年は思わずたじろいだ。

萌えもんバトル。萌えもんをモンスターボールで捕獲する技術が広まって数十年。萌えもんは人間の文化の発展にも貢献してきた。

特に萌えもんバトルと呼ばれるトレーナーが萌えもんを戦わせる娯楽は今や全世界のトレンドであり常識と化していた。それを職業にするものもおり、子供たちの憧れである。

少年もそのうちの1人である。

しかし、1人でバトルをするのは初めてである。

一方萌えもん研究の権威であるオーキドの孫であるグリーンは何度か経験したことがあると少年は聞いていた。

 

オーキドは思わずため息をついた。

「萌えもんの育成においてまず大事なのは信頼関係じゃ。それをいきなりバトルとはけしかんのお。」

しかし、それに反してグリーン&フシギダネはやる気の姿勢を見せた。

「構いませんよ博士。僕はやれますよ。元々3人でも腕試しはしょっちゅうやってましたからね。負けませんよ。」

フシギダネが自信ありげに答えた。どうやら意外と血気盛んな性格らしい。

「やはりこいつが一番強いと思ったぜ。どうするよ?」

グリーンが少年に目を向ける。

 

ここまで言われて引き下がれるほど少年は冷静ではなかった。

思わずゼニガメの方を見ると彼女は仕方なさそうに返した。

やるわよ。私は貴方の萌えもんだから。

 

試合は研究用に開かれた広間で行われることになった。

オーキドは熱くなりすぎないようにと忠告し、審判を買ってでてくれた。

試合前に少年はゼニガメと向き合う。

「君のことなんて呼んだらいいかな?」

「はあ?ゼニガメでいいわよ」

「それは君の種族名だよね?さっき図鑑で見たんだ。」

「別に種族名で呼ばれるのは珍しくないわ。オーキド博士は私のことゼニーって呼んでたけれど」

少年は彼女に提案した。

「もし良かったらナギって呼んでもいいかな。僕の名前渚って言うんだ。だから君に2文字あげる。嫌じゃなければだけど。」

彼女は始めの時のようにぶっきらぼうに答えた。

「別にいいわよ。」

 

オーキドが用意していた闘いのホイッスルが鳴った。

 

その瞬間グリーンからの強烈な指示が飛ぶ。

「フシギダネ!体当たりだ!」

フシギダネはパートナーからの指示に的確に動いた。素早く動いてその体躯をナギにぶつける。たまらずナギは体勢を崩した。

 

「渚!指示を出すんじゃ!」

オーキドは渚に呼びかける。

 

その声に弾かれたように渚は指示を出した。

「ナギ!体当たり!」

しかし、ナギの身体は空を切る。

技が出切る前にフシギダネが身体を半歩引いたのだ。

 

「いいぞ!フシギダネ!今回の作戦はヒットアンドアウェイだ。一発当てて怯ませてるからお前の方が早く動ける。やつを撹乱するように動くんだ。」

フシギダネがそれに頷く。

出会ってまだ1時間も経っていないがグリーンとフシギダネは意思疎通が出来ていた。

 

対してナギはまだ体勢を立て直せていない。

序盤はグリーンたちに有利に試合は動いていた。

 

「体当たりだ!」

グリーンがまた指示を出す。

フシギダネはまたナギに狙いを定め進んでくる。

 

渚は指示を送る。

「左にかわせ!」

ナギはその通りに避ける。今度は綺麗にフシギダネの軌道の外へずれ込んだ。

しかし、次の瞬間ナギはまた吹き飛ばされた。

「なんで!?完全に避けたはずなのに!」

「ナギよく見るんだ!フシギダネは髪の毛を使って軌道を変えたんだ!」

渚は叫ぶ。

 

フシギダネは体当たりの瞬間髪の毛をつたのように天井のパイプに絡ませて強引に方向転換を

行っていた。

植物のように見えた髪の毛は実際に自由自在に動かせるようだ。

この時渚は初めて萌えもんの戦い方を目の当たりにした。

 

「ナギ!体勢を立て直して!もう一発くる!」

間髪入れずナギは起き上がるが、その瞬間髪の毛で方向を変えたフシギダネにまた倒される。

「大したことないな!渚!ゼニガメ!」

グリーンが勝ち誇ったように言った。

実際渚たちはなすすべなくフシギダネの猛攻を受けている。

 

そのときオーキドが叫んだ。

「渚!全ての萌えもんには得意とする能力や技がある!それを引き出すのがトレーナーじゃ!」

 

反射的に渚は萌えもん図鑑を開く。ゼニガメの項目を確認する。

ながい くびを こうらのなかに ひっこめるとき いきおいよく みずでっぽうを はっしゃする。

ナギの得意な技。みずでっぽう。水。

「ナギ!水でっぽうだ!」

「ちっ!特性のげきりゅうを発動させたのか!?だが無駄だぜ渚!体勢を崩してるゼニガメのみずでっぽうはフシギダネには当たらねえ!」

「それでもいいんだ!打ってくれ!その後右斜め前に移動だ!」

 

ナギは突っ伏したままみずでっぽうを放った。当然フシギダネには当たらず周囲に水が飛び散るが、フシギダネは水しぶきに怯んで攻撃の手を止めた。

その隙にナギは回転し、右斜めに前進して体勢を立て直した。

しかし、すかさずフシギダネは体当たりの姿勢をとる。

 

「とどめだフシギダネ!」

先ほどと同様髪の毛を使い縦横無尽に攻めてくるフシギダネ。ナギの視界から消えるように背後に回り込む。しかし、その瞬間フシギダネはバランスを崩した。

水を撒き散らしたおかげで床は滑りやすくなっていたためつるによる急激な方向転換が出来ず体勢を崩したのだ。

「バカな!かわせフシギダネ!」

「ナギ!体当たり!」

グリーンの指示も虚しく、ナギの身体はフシギダネの腹部に吸い込まれるように直撃した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

5分後オーキドの試合を告げるコールが研究所に響いた。

渚たちの敗北である。

フシギダネはつるによる方向転換は失われたもののその後もグリーンの指示により堅実にヒットアンドアウェイを繰り返し着実にナギの体力を奪った結果の勝利であった。

 

グリーンは勝ったもののどこか不機嫌だった。

「フシギダネ!こんなんじゃだめだ!渚なんか完膚なきまでに叩きのめさないと勝利にはならない!」

そういって怒っている。

対してフシギダネはどこ吹く風で2人の健闘をたたえていた。

案外いいコンビなのかもしれない。

その後2人は先にマサラタウンを旅立って行った。

 

ナギはダメージを受けていたが、博士からきのみジュースをもらい体力を回復したようだ。

 

渚は項垂れている。オーキドからは初試合でグリーン相手に良くやった。特に最後の咄嗟の機転は見事じゃった。お前にはトレーナーの才能があるとお褒めの言葉をいただいていたが初めての敗北が余程応えたようだ。

 

ナギは渚の隣に座る。

「負けたわね。」

率直な感想だった。

渚はますます縮こまる。何も答えない。

しかし、彼女の表情は晴れやかだった。

「でも楽しかったわ。

正直始めは不安だったの。いきなりオーキド博士から旅に出ることになるかもしれないって言われて。しかも本当にパートナーに選ばれて。

それに言わなかったけど私腕試しでフッシーとカゲに勝てたことほとんど無かったの。

そんなんでこれから旅に出る人間のパートナーなんか務まる訳ないって思った。

だけど今日いきなり始まったバトルでフッシーに一発お見舞いしたわ。私でもやれるんだって思った。」

 

続けてナギは渚の方に手を置く。

 

「後名前。あの時はぶっきらぼうに言っちゃったけど名前をくれた時すごく嬉しかった。

ゼニーってニックネームも嫌いじゃないけどナギの方が私は好き。

それにフッシーは全然気にしてないみたいだけど私は種族名じゃなくて名前で呼んでくれる方がパートナーって気がしていいなって思ったの。

だから負けたけど貴方のパートナーで良かったわ。」

 

ナギは笑う。

「だからこれからも宜しくね?」

 

しかし、渚は反応しない。

ナギは表情を怒りに切り替えた。

「私がこれだけ言ってんだから反応しなさいよ!そもそも始めの指示出しが遅れてたから後手後手になったんでしょ!反省しなさい!あんたの欠点はその切り替えの遅さ!

ウジウジしてないで早く旅!行くわよ!親に挨拶は!してないのお!?それでもトレーナーなの!?私は主従逆転は嫌だからね!面倒くさい!そもそもニックネームのセンスが自分の名前から切り取るってどういうことよ!紛らわしいとか考えないわけ!?しかも渚って女同士みたいじゃない!いい加減反応しなさい!こんなウジウジするドラ息子の親の顔が見たいわ!あ、今から見にいくんか!見に行くわよ!早く!」

 

結果渚たちが旅立ったのは3時間後だった。

 

 

続く。

 

 

 

 

 

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