ジェダイ(仮)と理想主義者(笑)と退職(無断)者の小話。 作:夭嘉
今回は、以前よりリクエストされていたフォールン・オーダー編です。
リクエストして頂いたリコ様、遅くなりまして申し訳ございません……泣
長くなりそうなので、マンダロリアン編と同じく分けました。
どうぞお納めくださいm(_ _)m
事態は、突然変わるものだ。
何も考えず、私は惑星ガレルの市場でメイルーランフルーツを頬張る。
オーダー66を生き延びて5年、私は星々を頻繁に渡り歩いていた。尋問官を避ける為、同じ場所に留まることはしなかった。帝国軍の問題じゃない。長く留まれば、見つかりやすくなる。
「すみません、もう一つください。」
「あいよ。」
「私が払うわ。」
突如聞こえた声に、私は隣を見る。
そこには髪を短くしたシアがいた。彼女は店主にクレジットを払い、フルーツを受け取る。メイルーランフルーツを受け取って呆然とする私に、シアはマスターの敬称で私を呼ぶ。
「ようやく見つけました、マスター・レイン。」
何より驚いたのは、シアがフォースの絆を断っているのに私を見つけたこと。
「マスター呼びはやめて。あと、敬った話し方もやめて。何しに来たの…?」
少し苛立っていた。連日、尋問官が引き連れる帝国軍と戦っている。ようやく落ち着いたのに、これではまた戦うことになる。
私は婚儀の日から、尋問官との直接対決を避け続けている。
尋問官と戦うことが怖いから。
「貴女はジェダイなのに、戦いから逃げるの?」
「そういうあんたは?シア、私はあんたを知ってる。」
“フォールン・オーダー”というゲームがあることを、私は知っている。実際にプレイしたことはないけど、どういうものなのかは知っている。ヴェイダーが出てくることも知っている。
だからこそ、見つからないように外縁部のガレルに潜んでいた。
ヴェイダーと向き合うには、まだ怖い。
それなのに、シアは私を探しに来た。ジェダイ・マスターとしての私を求めて、彼女は追ってきた。帝国のリストの一番上に書いてある、私の名前を辿ってきたんだ。
私は、その期待に応えられない。
「あんたがフォースの絆を断ったのは、あんたの勝手。私が逃げたのも、私の勝手。私を探し出したところで、何も変わらない。」
「本当に変わらないのね……」
「え?」
「その姿も、独特な考え方も、貴女は何も変わらない。」
「期待して来たんなら、帰って。私はジェダイとして何かをする気はない。」
市場から出て隠れ家へ向かおうとすると、シアに腕を掴まれる。
「オーダーを再建したいの。」
その言葉に、私は立ち止まる。
オーダーを再建するには、まだ早い。ジェダイから民に声をかけても、何も変わらない。人々が自ら立ち上がらなければ、反乱の意味はないんだ。
「マスター・コルドヴァが遺したホロクロンがあるわ。中身は、フォース感応者の子供達のリストよ。それを使って、オーダーを再建するの。」
「………」
「お願い、アリス。」
その時、嫌な気配を感じてシアの手を引く。
シアが避けてすぐ、私はライトセーバーを起動して赤い刃を防いだ。私のフォース・プッシュに、パウアンの尋問官は受け身を取る。人々は私達の睨み合いに逃げていき、フルーツを売ってくれた店主も逃げていった。
シアの前に出て、私はライトセーバーを逆手に持ち直す。
「アリス・レイン、お前がここにいるとは嬉しい誤算だ。」
「ここで捕まるつもりは毛頭ない、よ!」
全力のフォース・プッシュをかまして、シアの腕を引いて全速力で逃げ出す。
沼に嵌るように、事態は混沌と化していく。シアに助力を頼まれ、大尋問官にも追われている。抜け道が見つけられない。
関わるつもりはなかったのに。
「こっちよ!」
今度はシアに手を引かれ、反対方向の宇宙港へと走る。
追ってくるストーム・トルーパーをフォース・プッシュで薙ぎ払い、パージ・トルーパーのエレクトロスタッフをライトセーバーで防ぐ。スタッフを抑えたまま、パージ・トルーパーの頭を蹴り上げ、取り上げたエレクトロスタッフで後ろのパージ・トルーパーを倒した。息を吐く間もなく、私はシアに連れられその場を後にする。
ドッキング・ベイに入り、私は手を引かれたままヨットに乗り込む。
「出して!!」
シアの声に、ラテロの男がエンジンを全開にする。ヨットはパトロール・トランスポートの攻撃を避け、軌道へと出る。追ってくる軽クルーザーをすり抜け、ヨットはハイパースペースへと突入した。
座り込むシアを尻目に、私は操縦席にいるラテロの男に外縁部で降ろすように頼む。
「適当な星で降ろして。」
「ダメよ!貴女が必要なの!」
「私にはできないと言ったはず。」
「俺からもお願いさせてほしい、マスター・レイン。」
銃座から降りてきた少年が、頭を下げてくる。
強いフォースを感じ、彼もジェダイだと気付いた。少年は、この物語の要だ。彼がシア達を変える。
私は未来の為に、ここにいてはいけない。
少年、カル・ケスティスの頭を上げさせ、私はもう一度断る。
「帝国が、あのホロクロンのことを知っていると言ったら……?」
「私には関係ない。」
「関係ない?貴女はジェダイだ。なのに、ジェダイの役割を放棄するのか?」
カルの言葉が胸に刺さった。
私はジェダイで、未来を守らなければならない。
それなのに、尋問官と戦うことが怖かった。あの時のように、暗黒面に誘われてしまう。呑まれてしまったらと、怯えている。
さっき大尋問官と鉢合わせた時も、手が震えていた。
「私はまだ帝国と戦う気はない。」
「なぜだ…?」
「怖いから。」
至極真っ当な理由だけど、ジェダイにとってはあるまじき感情だ。恐怖は暗黒面への入り口に過ぎない。呑まれたら後戻りはできず、闇の奴隷に成り下がる。
「尋問官が怖いんじゃなくて、自分が怖い。以前追ってきた尋問官を殺した時の感覚が、手から離れないんだよ……」
「暗黒面か……」
「暗黒面に抗うのは簡単じゃない。」
私の視線が自然とシアに向く。
画面でも観たけど、シアの手を握った時に、パダワン・スドゥリとの過去が見えた。その過去はとても生々しく、私の中に流れ込んできた。シアはなぜフォースの絆を断ったのか、黒い感情が伝わってきた。
「恐怖を抱えたジェダイ・マスターが、教え子を守れると思う?」
「………」
「カル・ケスティス、フォースを知れば知るほど、暗黒面は誘ってくる。光と闇は表裏一体だから。」
誰も言葉を発しなかった。
そして、最初に口を開いたのはラテロの船長だった。
「なぁ、とりあえず飯にしないか?」
「………そうだね。お腹空いた。」
船長がステーキを用意している間、私は瞑想に入った。
ゲームをやっているとは言っても、未来は常に不安定だ。どれだけ可能なのか分からないけど、予知を試みた。いや、“やってみる”ではダメだ。
未来を感じるんだ。
「マスター・レイン……?」
カルの声に、私は現実に引き戻される。
目を開けると、カルが心配そうな表情をしていた。背中に嫌な汗が流れ、長い息を吐く。正座を崩し、私は若きジェダイに向き直る。
「マスターの敬称はいらないからね。」
「すまない。何か見たのか……?」
「言わないよ。あのヴィジョンは私だけのもの。それに……言えば現実になる。」
見えたのはダソミアと、カル達が探しているであろうアストリウム。それから、ナイトシスターの生き残りであるメリン。そのメリンの後ろには、暗黒面に堕ちたマスター・マリコスを感じた。
私がやるべきことをフォースに問いかけた結果が、これだ。
「カル、ここに座って。」
正面の床を叩き、カルを呼ぶ。彼は言われた通りに座り、足を組む。カルの訝しげな表情に、私は一つ一つ言葉を選ぶ。
「シアを責めないで。」
「それは……」
「誰も苦痛に耐えられない。私でさえも。約束がなければ、私は暗黒面に呑まれてる。」
「約束……?」
カルになら教えても良いだろう。彼は無闇に秘密を漏らしたりしない。純粋なカルなら、別の答えに導いてくれるかもしれない。
「私ね、愛した人がいるの。」
「まさか……」
「本当だよ。一緒にはいられないけど、誓い合ってる。私は彼の為に、踏み留まってる。」
私は、婚儀の日を思い出す。
あの日の夜、私は“夫”の制止を無視して尋問官を殺した。一瞬とはいえ、暗黒面に手を出した。尋問官を殺す為に、禁忌を犯したんだ。
相手が尋問官でも、許されることじゃない。
「彼との婚儀の日、私は暗黒面に手を出した。」
「………」
「あの時の感覚が忘れられない。今でも、尋問官と向き合う時に手が震える。私はその恐怖を克服できていない。一度手を出したら、その恐怖に支配される。それはシアも同じ。」
シアは苦痛に耐え切れず、暗黒面に手を伸ばしてしまった。彼女はその時の恐怖を忘れることができず、フォースの絆を断った。元弟子を怖れ、己を怖れ、フォースの絆を切ったんだ。
唯一の救いは、シアが尋問官にならなかったこと。
カルはそれを受け入れるべきだ。
「あんたにも恐怖はある。」
「………ああ。」
「マスターの教えたことを忘れないで。」
その時、カルの後ろから小さなドロイドが現れた。名前はBD-1。小さなドロイドは膝を突っついてきて、私を見上げる。
BD-1はバイナリーで、マスター・コルドヴァから私へ伝言があると言う。
「見せてくれ、BD-1。」
カルが声をかけると、BD-1はホログラムを映す。
『これは記録だ、アリス・レイン。私は未来で生きるお前を見た。どういう訳か知らないが、お前はその不老に悩んでいるようだ。ダソミアへ向かえ。危険を伴うが、解決への糸口が掴めるだろう。』
マスター・コルドヴァ?これだけ?え?
他にヒントはないの!?冗談でしょ!?ダソミアしかヒントないのっておかしいだろ!!
「丁度いいだろう。俺達が向かってるのはダソミアだ。」
「え?俺達?私もメンバーに入ってる?」
「シアは最初からそのつもりだと…」
「シア!?」
私の意見聞く気なしか!!
ステーキが焼けたことを知らされ、私とカルはやっと席に着く。疲れているのか、ステーキがオビ=ワンの頭に見えた。似てる要素は欠片もないけど。
こんな時、オビ=ワンなら何て言うだろう?
あ、ステーキの味は最高です。
これからダソミアへ旅行だってさ。
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皆様、お付き合いありがとうございますm(._.)m
またコロナが流行りだしたので、気を付けましょう。
手洗いうがいは大事です!