ジェダイ(仮)と理想主義者(笑)と退職(無断)者の小話。 作:夭嘉
もし、アリス・レインがシディアスの__になっていたら………
────────
最高議長から何度目か分からない呼び出しを受け、私は元老院のオフィスビルへ来た。
私はオペラ・ハウスで忠誠を誓い、“シディアス”は約束通りアナキンを諦めた。もうアナキンが悪夢に魘されることはない。その代わり、私は暗黒面から抜け出せなくなった。
そして今日、議長の前で跪き、呼び出しの意図を尋ねている。
「結婚しよう。」
「何を急に……」
「私がアナキンから関心を逸らしたことで、ジェダイ評議会は君を強く疑っている。私達が結婚すれば、疑いは消えるだろう。」
「そう簡単にはいかない。マスター・ヨーダは騙されないよ。」
あのマスター・ヨーダが騙されるはずがない。グランド・マスターは、結婚したことで何かに気付くはずだ。ここで知られたら、私が暗黒面に踏み込んだ意味がなくなる。
絶対に知られてはならない。
「アリス……まだマスターの敬称を付けるか。」
「え?」
「ジェダイは滅びるのだ。滅びるものに、マスターの敬称は必要ない。」
「確かに…」
「それに、心配することはない。ルード議員とのことがある。断り切れなかったと、私のせいにしてもいい。」
そこで、ルード議員の顔が浮かんだ。
彼が私を慕ってくれているのは分かる。だけど、ルード議員は違う道を進むべきだ。私一人の為に、荒れた道を進んでほしくない。
余計な感情を殺して、脳裏に浮かぶ彼の顔を掻き消した。
「分かった。貴方の妻になります。」
「私の計画通りだ。君を除いて、だが。」
「私?」
「アナキンは愛情を知っている。本物の愛情だ。私も本当の愛を知りたいのだ。」
つまり、心の底から愛せと言っているんだ。
考える必要はない。現時点で私を最も理解しているのは、シディアスだ。その期待には応えなければならない。
「あんたが命じるなら、私はあんたに従う。分かってるでしょう?」
「分かっているとも。では、私の為にアナキンを殺せと言ったら従うか?」
「アナキンは殺したくない。」
「ほぅ?」
「それだけは譲れない。あんたの指示でもね。」
シスにあるまじき行為だ。
シス・マスターに逆らうことは、本来なら許されない。
「良いだろう。我が妻よ、ジェダイは間もなく滅びる。ジェダイが滅んだ後、君は何を望む?」
「望み……私の望みを叶えられる?」
シディアスは何も言わず、目で続きを促す。
「ジェダイが滅んだら、平穏が欲しい。誰にも邪魔されず、静かに暮らしたい。」
「アリス……それは不可能だと分かっているだろう。私に忠誠を誓った日から、平穏などあり得ない。何より、シスが完全に復活すれば君の力も必要だ。」
そう、無理なことは分かっている。
シディアスの妻になることを了承した時から、平穏はないも同然。遠い未来に立ち上がる反乱軍は、シディアスの前に私を標的にする。最大の裏切り者として、反乱軍に恨まれ続ける。
私は思考を放棄して、シディアスにライトセーバーを差し出す。
「ジェダイにとって、ライトセーバーは命だと教わった。その命、あんたに預ける。私の誓いに偽りはない。」
「君の覚悟、確かに受け取った。このライトセーバーはまだ持っているべきだ。オーダー66が発令される時まで、君はその仮面を被っていろ。」
「はい、マスター・シディアス。」
従属しているというのに、シディアスは不満そうな顔をする。
「私達は夫婦になるのだ。私をシスの暗黒卿としてではなく、夫として接しなければならんぞ?」
「えぇ…正直言って夫婦の感覚とか分かんないし………」
「君らしい。ゆっくりで良い。時間は限りなくあるのだからな。」
下がるように言われ、私は議長のオフィスを後にする。
その後、極秘裏に結婚の話が早々に進み、マスター・ヨーダや評議会が知ることとなり、オビ=ワンとアナキンにも知られることになった。議長の権限で私はジェダイ・オーダーから除籍され、結婚が成立した。当然、パドメにも知ることになった。
結婚が成立した日から、アナキンの私に向ける目が変わった。
その目に篭った感情は、失望。
「アリス」
元老院のオフィスビルを忙しく走っていると、アナキンに呼び止められた。
彼の目は、相変わらず私を拒んでいた。
「何?」
私の声に、アナキンは悲しそうな表情をする。
「君は……」
「アナキン、何も知らないふりはできないよね。」
「アリス、なぜ暗黒面に手を出したんだ?」
やっぱり、アナキンは気付いていた。
手元のパッドを閉じて、アナキンに向き直る。
「私の為だよ。アナキンも言ってたでしょう?議長はとても良い人だって。やっとその良さが分かったの。」
「アリス、」
「私はもうジェダイじゃない。光明面も暗黒面も関係ない。親友を祝福してくれないの?」
ジェダイとしてのアリス・レインは、もう存在しない。私は議長の妻の、アリス・レインだ。今は、議長の為に尽くすことが私の役目なんだ。
「じゃ、私急いでるから。」
アナキンに笑みを見せて、彼に背を向ける。
これが今生の別れになるとは、予期はできなかった。
迎えたジェダイ粛清当日、私は議長に従ってジェダイ粛清を全クローンに通達した。私は議長の後ろに控え、ムスタファーにいる分離派のドロイドに、ガンレイ達の抹殺を命令した。ジェダイが滅び、分離派は消え、共和国は帝国に再建された。
私は皇帝の妻として、または皇帝の手として、シスとして、その名が知れ渡った。
だけど、私の心は穏やかだった。
なぜなら、愛する夫がジェダイという囲いを滅してくれたのだから。
continue……