ジェダイ(仮)と理想主義者(笑)と退職(無断)者の小話。 作:夭嘉
まだ見てない方には、ネタバレになるかもしれません。
ネタバレが嫌な方は、閲覧をご遠慮ください。
クレームは受け付けませんので悪しからず。
それ以外の方は、どうぞお楽しみください。
ナブーの静かな田舎町、とある家にて。
ダンタム・ルードは、1歳半になる子供と平穏に過ごしていた。
「ママ……」
ダンタムに抱かれたウィリアムは、母親を求めて泣き出す。
「大丈夫だ、すぐに帰ってくる。」
息子にそうは言うが、ダンタムは妻のアリスを心配していた。
彼は子供をあやして、外を見つめる。
「アリス……」
ダンタムは人知れず呟く。
ウィリアムは、相変わらず泣いている。母親がいない不安と恐怖を抱え、大粒の涙を流す。ミルクを与えても、泣き止むことはなかった。
ウィリアムがようやく眠ったのは、泣き疲れた後のことだった。
──────
外縁部、某惑星、某酒場にて。
「初めまして、アリス・レイン。」
青いマンダロリアン・アーマーを着たボ=カターン・クライズを中心に、マンドーとキャラ、どこかで見たような賞金稼ぎと、彼の部下のような女性が私の下へ訪ねてきた。
「その姿……変わらないな。」
「あんた誰……?」
「俺を忘れたか……?」
彼がヘルメットを外すと、何度も見た顔が露わになる。
「待って!ここまで名前が出かかってる!喉まで出てきてるんだけど、」
「ボバ・フェットだ。」
「ちょっと!自力で思い出そうとしてたのに!」
「俺をサルラックに突き落としたくせにか?」
「あれはあんたがハンを、」
「そこまでよ。本題に入らせてくれる?」
キャラの制止に、私とボバは口を噤む。
食事中のフォークとナイフを両手に、ついボバを睨んだ。ベーコンを平らげた後、ボ=カターン達に座るように促す。まずは話を聞こう。
「それで?何の用?」
「手を貸せ。」
「随分唐突だけど、どうやって私を見つけたわけ?」
マンドー達の中に、フォース感応者は誰一人いない。それに、あの子供がいない。先日感じた気配は、あの子のものだったらしい。あの子なら私を見つけることは可能だけど、普通なら隠遁中の私は見つけられないはずだ。
「貴女、隠遁している割にやることやっているのね。」
「何のこと?」
「私がレイア姫に依頼したのは、貴女も知っているでしょう?けど、彼のレイン将軍の正確な所在は姫にも分からない。なら、誰に聞けばいいと思う?」
「そういうこと……」
レイアを通じてボ=カターンから依頼され、私はギデオンを探していた。通信はするけど、レイアは私の正確な所在は知らない。ナブーを離れている私を見つけるのは困難だ。
結果、彼女は私の所在が唯一分かる、夫のダンタムに聞いたんだ。
「ルード氏によれば、貴女はギデオンに目を付けられた、と。」
そう、厄介なのが、今度は私がギデオンに注視されているということ。どこから漏れたのか、私がギデオンを探していることが伝わり、今は逆に追われている。奴が率いる帝国の残党は、関わるギルド全てに対して私の身柄を求めた。
私がナブーに帰らないのは、ダンタムと1歳半の息子に危害が及ばないようにする為だ。
いくら隠れて活動していても、ギデオンは何をするか分からない。処刑されたと聞いていたのに、生きていたくらいだ。下手に帰れば、家族に危険が及ぶ。
「ギデオンが子供を拐った。」
「グローグーのこと?」
「………知っていたのか。」
「少し前、タイソンに行ったでしょう?私も彼を感じた。」
食後のスープを飲み干し、お代を置く。
「場所を変えよう。」
酒場を出て、私達はスレーヴⅠに乗り込む。
コックピットに入ると、ドクター・パーシングが手錠されて捕虜になっていた。
「マスター・レイン!?まさかここで会えるなんて………」
「あんた達知り合い?」
「そんなわけないじゃん。あのねキャラ、帝国が滅んでも、ジェダイは一方的に存在を知られているの。あんたが私を知っているようにね。」
ベンチに座ると、マンドーはプロジェクターを起動する。
「これがギデオンのクルーザーだ。」
「思ったより小さいね。」
「だが、ギデオンは手強いぞ。」
「知ってる。よく奴を見つけたよね。」
ボバの忠告に、私は肯く。
マンドー達は、帝国の施設に侵入して座標を調べたらしい。
「分かった。子供の為に、今回だけ手を貸すよ。」
スレーヴⅠは大気圏を抜け、早々にハイパースペースへ入る。
光速航行中、マンドーとキャラが私の行動について疑問をぶつけてきた。
「前回、あんたはマンドーの頼みを断ったでしょう。どうして今回は協力するわけ?」
前回、ソーガンではディン・ジャリンの頼みを拒んだ。それなのに、今回は協力することを了承した。答えが変わったことが、2人は解せないみたいだ。
協力を決めたのは、全てギデオンが元凶だからだ。
「ギデオンをどうにかしなきゃ、帰りたくても帰れないから。それに、動けるジェダイは他にいない。」
「アソーカ・タノもジェダイだろう。」
「そうだね。“あの子”もジェダイだよ。けど、アソーカは他のジェダイを示唆したでしょう?」
「他に誰がいる?」
「心当たりはある。私も模範的なジェダイじゃない。だから、答えはあの時と変わらない。私がグローグーを鍛えることはできない。」
隠遁した身で、愛弟子の作る新しいオーダーとも無関係。更に言えば、私は人々の理想のジェダイじゃない。人々がどんなに私をジェダイだと言っても、私自身が違うと疑っている。
そんな私が、新しい教え子を鍛えられるはずがない。
「グローグーを訓練するかしないかよりも、まずギデオンを押さえる。彼のことは、彼に選んでもらえばいい。他人である私が決めることじゃない。」
「つまり、ギデオンという標的がいるからだろう。」
「ボバ……」
格納庫で話す私達の下へ、ボバとフェネックが顔を出す。
「違わないだろう?」
「言い方が良くない。」
「なら、家族を守る為、こう言えばいいか?」
「………どこで知ったの?」
「俺が何もしていないと思うか?」
ボバは、私のことを調べ尽くしたらしい。サーラックの穴に突き落としたことを、根に持たれている。些細なことから子供のことまで、弱味になりそうなものは全て知られているだろう。
ジャンゴよりも、面倒で有能な賞金稼ぎになったものだ。
「家族?レイン将軍に子供は、」
「数年前ならいないが、今は守るべき子供がいる。」
「冗談でしょう……?」
同じ女であるキャラとフェネックから、疑いの目を向けられる。
「はぁ…本当だよ。」
「本当に子供が……?」
「いる。1年半前に出産した。今回だって、家族が脅かされることをするつもりはなかった。ギデオンを押さえない限り、安心して帰れない。」
マンドーを見れば、納得したような反応をしていた。
「マンドー、グローグーはあんたを一番信頼してる。頑張ってね、パパ。」
「誰がパパだ……」
「親代わりも当然でしょう?さーて、そろそろハイパースペースを抜けるよー。」
コックピットに上がって、私はベンチに座ってベルトを締める。
これからが本番だ。
私だけの為じゃない。マンドーと子供の為にも、ギデオンを止めなければならない。奴は、犯してはならない領域へ踏み込んだも同然。それ相応の報いを受けることになるだろう。
ギデオンを黙って見過ごす気は、毛頭ない。
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