ジェダイ(仮)と理想主義者(笑)と退職(無断)者の小話。 作:夭嘉
ルード議員が報われない!何とかして!
と、何人にも言われたので、何とかしてみた。
ちょっと重いかもw
小話なのに、長いです。
良かったら、読んでみてくださいw
これは、ダンタム・ルードとアリス・レインの秘密の記録である。
────────
ジェダイが滅んで3年後。
私は惑星タコーボにある、ハンマータウンに身を潜めていた。移住者が多いこの惑星では、一人くらいヒューマノイドがいても違和感はない。放浪者も多い為、私のような小娘がいても何ら不思議じゃない。
店で栄養バーを少し買い、寂れた住宅街に向かう。
いつものように空き家の中で栄養バーを食べて、いつものように空き家で身体を休める。
幸い、タコーボに帝国軍はいない。帝国はまだ辺境惑星の掌握ができていないから、しばらくは静かに過ごせる。瞑想に明け暮れる日々だが、帝国軍とドンパチするよりはましだ。
「っ!」
嫌な気配がして、腰のライトセーバーに手を添えながら、そっと空き家を出てみる。外には誰もいなくて、警戒を解いた。だが、嫌な気配は気のせいじゃない。
用心しなければ。
日が暮れて、私はホテルが立ち並ぶストリートを歩いていた。マントのフードを深く被り、人混みを選んで紛れ込む。人混みは騒がしくて嫌いだけど、面倒事から遠ざけてくれる。
「!!!」
突如、口を手で塞がれて、強引に路地裏へ引っ張られる。
もちろん黙っているはずがなく、引き摺り込んだ相手を早々に組み伏せる。腕を捻り上げれば、相手は呻いて降参した。捻り上げた腕を緩めると、その人は顔を上げる。
その顔を見て、私は思わず手を離した。
「ルード議員!?」
「3年ぶりだな、アリス。いててて……」
「あぁぁぁすみません、痣になってないですか!?」
「大丈夫だ。」
腕を摩る議員に、私は何度も謝る。
議員もマントを着ていて、護衛は伴っていなかった。護衛も付けず、こんな辺境で何をしているのか。無防備な議員に、思わず冷たく言ってしまった。
「血迷いましたか?」
「何を、」
「お一人でこんな星にいて……帝国を敵にしたいんですか?」
帝国ができて、まだ3年しか経っていない。それなのに議員が関心を逸らせば、帝国に目を付けられる。議員も分かっているはずなのに。
「議員職は、辞める覚悟で来たんだ。」
「え……?」
「どうしても、貴女が心配だったんだ。」
「私なんかの為に?貴方の身に危険が及びます!」
その時、帝国のシーカーが出てきて、議員に引っ張られる。
次の瞬間、鼓動が止まるようだった。
議員はキスをしてきて、私を隠す。シーカーは何事もなかったかのように通り過ぎ、いなくなった後、ようやく離される。呆然となる私に、議員は何度か名前を呼んでくる。
おかしい、ファーストキスがこんな形で終わったなんて………
「ファーストキス………」
「何だって……!?」
議員にものすごく謝られた。やり過ごす為とはいえ、抵抗しなかった私に反論する権利はない。一つ納得できないとすれば、やはり順番がおかしい。
だって、まず告白からでしょう?
それからキスで、求婚じゃない?
「議員、一般人の認識を持った方がいいですよ。」
「すまない……」
またシーカーが現れ、今度は私が議員の胸元に額を突き付ける。シーカーは通り過ぎ、私は議員から離れる。ところが、議員は離してくれなかった。
「議員……!」
「許してくれ。こんな機会は滅多にないんだ。」
「下心を隠してください!ていうか、今はそんな場合じゃない!」
議員を無理矢理剥がし、彼の腕を引いて隠れ家へ向かった。寂れた住宅街に入り、今にも崩れそうな空き家に足を踏み入れる。こんな隠れ家、帝国には見つかりはしない。
ドアをロックして、私は壁を背に座り込む。
「なぜこんなところに?」
「貴女に会いに来たんだ。アリスが生きているか心配で……」
「何度も言いますが、私は議員の想いには応えられません!私と貴方は、一緒にいてはいけないんです!なんで分からないんですか!?」
口調を強くして言っても、議員の気持ちに変化は感じられなかった。
このハンマータウンまで来た覚悟は本物だ。
「では、なぜ貴女は逃げることをやめたんだ?」
「え……?」
「スカイウォーカー将軍と貴女に、何があった?」
アナキンの名前を出されて、思わず口を噤む。
「私は、友を救えなかったんです。アナキンを……」
「貴女のせいでは、」
「私の責任です。私が大人しく従っていれば、皇帝はアナキンを諦めてくれていた。でも、私はそれを拒んだ。」
「正しい判断だ。」
「いいえ、間違った判断です。私が与すれば、アナキンは暗黒卿にならなかった。」
ここまで言って、ハッとする。議員は、ヴェイダーの正体を知っている。それを踏まえて、私に会いに来ているんだ。
「アリス、私を拒む理由はそれだけか?」
「そうだと言ったら……?」
「貴女の後悔も受け入れる。だから、安全な場所にいてほしい。私の目の届くところで。」
「………できません。」
「なぜだ?」
「私には、不老の呪いがかけられています。皇帝であるパルパティーンがかけたものです。それがある限り、貴女の横に立てません。」
もし結ばれたとしても、私は議員と共に老けることはできない。私だけが置いていかれる。彼を受け入れたら、その喪失に耐えられない。
アナキンと同じ轍を踏むことになる。
「構わない。寧ろ、美しいまま生きるということだ。私は、アリスに生きていてほしい。」
「議員……」
「頼む、アリス。」
私は感情に負けて、議員の手を取った。
彼以上に、私と生きたいと願ってくれる人はいない。そんな人を、拒めるわけがない。議員の為に生きよう。私が暗黒面に堕ちても、議員だけは傷付けたくない。
私の人生を、眩しい光が照らした。
──────………
1ヶ月後。
私と議員は、秘密の婚儀を挙げた。たった2人の婚儀。いつかのアナキンとパドメのように……
婚儀は誰にも知られることはなく、見届けるのはR7-D4のみ。
婚儀を行う前、議員は相棒を探し出してくれた。あのR7-D4を、力を尽くして見つけてくれた。彼には感謝しかない。
「アリス、ありがとう。」
「“ダンタム”、これからも貴方の隣にいます。」
婚儀が無事に終わり、私達は晴れて結ばれた。
その夜、幸せなはずなのに嫌な予感がした。とてつもない恐怖が、私を襲う。酷い寒気と恐怖に、夜中に目が覚めた。
汗だくの私に、隣で寝ていた議員も起きる。
「アリス……?」
「………大丈夫です。」
「ずっと魘されていた。何もないわけないだろう。」
「ただの悪夢です。」
背を向ける私に、議員は毛布を掛けてくれる。
「ジェダイの夢は、ただの夢ではないと知っている。一人で悩まないでくれ。」
「ありがとう。でも、本当に大丈夫です。」
「………分かった。おやすみ、アリス。」
議員の寝息が聴こえたことを確認して、ベッドを抜け出す。彼が寝返りを打ってヒヤヒヤしたが、起きないことに安心した。私はライトセーバーを持って、屋敷を出て行く。
夢で見たのは、近い未来、それもすぐ起こるであろう未来だった。
尋問官が、私を見つけた。
すぐに屋敷に来る。私を捕らえる為に。周りが、元老院議員が死のうが、皇帝は意に介さない。
その未来を避けるには、私が自分で向き合うしかない。
屋敷を出て古い地下道に入ると、尋問官が待ち構えていた。
「自ら来たか。」
マスク越しの声が、ヴェイダーの予期通りだと言う。
「ヴェイダーはなんで来ないの?」
「知りたきゃ自分で聞くがいい。大人しく投降するか?」
「勘違いしないで。ここに来たのは、あんたを捻り潰す為だから。」
ライトセーバーを起動させ、有無を言わさず斬りかかった。尋問官も赤いライトセーバーを取り出して、応戦する。ライトセーバーの鍔迫り合いになって、尋問官は苛立ちを見せる。
「このっ……!」
尋問官は動けず、更に苛立つ。
その隙を狙い、私はライトセーバーを力一杯薙ぎ払った。尋問官は押されて、後退する。間髪与えず、私は下からライトセーバーを振り上げた。尋問官が慌てて防御し、膠着状態に陥る。
「ここで何をしていた?」
「あんたに教える義理はない。」
防御されていたライトセーバーをそのままに、フォース・プッシュで尋問官を押し飛ばす。間合いができて、お互い距離を保つ。歩き続けるものの、どちらも詰める気はなかった。
「この屋敷は、ルード一族の所有物だ。奴に惚れたか?」
「そんなはずないでしょ。私は仮にもジェダイなのに。」
「本当にそうか?」
尋問官の視線が、私の後ろに注がれる。振り向くと、議員がブラスター・ピストルを尋問官に向けていた。当然の如く、敵意を共に向けて。
「ルード議員、ジェダイの女を匿っていたのか?」
「彼女はジェダイではない。私の妻だ。」
「妻?あぁ、なるほど。そういうことか。お前達は愛し合っているのか。アリス・レインは、ジェダイだと言い張っているのに。」
尋問官の言葉を、議員は肯定も否定もせず、ただ黙ってブラスターで狙いを定める。
「議員、やめてください。」
「断る。君を守る為だ。」
それを聞いて、私は通路の天井に手を向ける。次の瞬間、フォースによって地下道が崩れ、瓦礫が議員を阻む。議員が私の名前を叫ぶが、無視して尋問官に向き直る。
「続きを。」
「馬鹿な女だ。自ら死を選ぶとはな。」
「誰が死を選ぶって?私は生きると決めてるの。あんたなんかに殺されないから。」
呼吸を整え、互いのライトセーバーを振りかぶる。
ほんの一瞬のことだった。
私は尋問官の一太刀を躱し、身を捻って奴のライトセーバーのヒルトを破壊する。ヒルトが壊され、尋問官の表情は焦りに変わった。奴の脚を払い、うつ伏せに組み伏す。
組み伏せた尋問官の首にライトセーバーを添えて、降伏を迫った。
「さて、どうする?」
「殺すがいい。どうせ俺は処分される。死は避けられない。」
「あっそ。じゃあ、私が殺してあげるよ。」
「アリス!よせ!」
瓦礫を抜けてきた議員が、声を張り上げる。
だが議員の制止は間に合わず、私は尋問官の首を落としていた。絶命した尋問官を見下ろし、ライトセーバーが手から落ちる。転がるヒルトに構わず、議員は私を抱き締めた。
自分がどんな状態か理解できていなくて、ただ抱かれるしかなかった。
「アリス……!」
「ごめんなさい………」
最早、誰に言っているか分からない。
死んだ尋問官に言っているのか、議員に言っているのか、分かっていなかった。
「君のせいじゃない。」
あれだけ嫌っていたのに、暗黒面に頼ってしまった。どす黒い感情が、心の奥底で渦巻く。憎しみで、尋問官を殺したんだ。
思考がはっきりしてきて、私は決断をした。
「議員、やはり一緒にいてはいけません。」
「アリス、」
「貴方を危険に曝すことになる。ダンタム、私は貴方を死なせたくない。今離れないと、取り返しの付かないことになる。」
悪夢が、脳裏に蘇る。
あの夢を、現実に、未来にしたくない。今さらなければ、後戻りできなくなる。ダンタムの死という、最悪の未来を迎えたくない。
「分かった。」
「感謝します。」
「だが、夫婦の縁が切れたわけじゃない。アリス、君と結ばれたことを幸運に思う。いつかは、私の下へ戻ってきてくれ。」
「ダンタム、この1ヶ月はとても幸せだった。私こそ、幸運だと思ってる。ありがとう。」
しばしの別れを告げて、地下道を出る。
外は雨だった。マントを着て、フードを被る。R7-D4を呼んで、屋敷の格納庫にあるシャトルに乗り込んだ。幸福な生活は幕を閉じ、私は波乱の生活へと戻ることになる。
一つだけ違うのは、本物の愛情を覚えたこと。
愛情は危険だけど、救いでもある。
「行き先?えっと……アウター・リムのどこか。どこって……適当だよ。」
R7に座標を適当に入れさせる。
シャトルはハイパースペースに入り、屋敷がある惑星が見えなくなった。
これで良いんだ。議員の身を守る為には、こうするしかない。一生会えないわけじゃないんだから。
頬が濡れていると気付いたのは、ハイパースペースを出た後のことだった。
騒がしい日常が、また始まる。
continue………