ジェダイ(仮)と理想主義者(笑)と退職(無断)者の小話。 作:夭嘉
これは、アリス・レインとダンタム・ルードがタコダナを訪れた際の記録である。
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ジャクーの戦いから1年後、私とダンタムはナブーの田舎を出て、タコダナへ訪れた。
遅すぎるハネムーンの為だ。
いや、だって、せっかくストーカーが死んで自由になったのに、行かないなんて選択肢はないでしょ!
因みに、レイアは了承済みだ。本当はソロ夫妻の結婚の後すぐに行きたかったけど、手続きに手間取って遅くなってしまった。ジェダイの私は公的データには入っていなくて、まず情報登録から始まった。今後を考え偽名で登録することにしたら、手続きがさらに複雑化した。
なぜ偽名かって?
だって、隠遁するのに名前とか所在とか、詳細は晒したくないもん。
「ここが1000年近く経営してるレストランか。」
「ダンタム、すごくマイナーなところに来たね。」
「このレストランの主は元海賊だが、今は善人の店主だ。アリスも仲良くできるだろう。」
「へぇ。」
その店主の名前はマズ・カナタ、元海賊だ。
存在は知ってたけど帝国に追われてたし、迷惑がかかるからずっと会えなかった。ご飯が美味しいと聞いてたから、本当は来たかった。
マズの銅像を通り過ぎて、ようやく城に辿り着く。
扉を開けると、客が私達に気付いて静まり返る。
「ジェダイのアリス・レインか……?」
「まさか……」
「おい、嘘だろ……?」
客の大半がならず者だったり、賞金稼ぎだったりする。私を知っていても不思議じゃない。中には帝国軍の脱走兵だっているはずだ。
ある意味有名人になっちゃったよ。
ここまで客層がやばいとは思わなかったなぁ。
「ジェダイ様が一体何の用だい?」
奥からマズが出てきて、そう声を上げる。
「食事に来ただけなんですけど………」
「そうかい。こっちにおいで。席を用意するよ。」
「ありがとうございます。」
席に案内され、夫と2人で座る。
「注文は?」
「ランチ2人分、お願いします。」
「はいよ。」
マズが奥に消えて、水を飲んで料理を待つ。
ダンタムと他愛ない話をしていると、周りからチクチクと殺気が刺さった。
当然と言えば当然だ。帝国が滅んだとはいえ、非合法のリストには私の名前がまだ残っている。イコール、私を恨んでる奴なんてたくさんいる。
「アリス……」
「私は大丈夫。」
また水を飲み、椅子に背を凭れて心身共にリラックスさせる。
そんな状況が続いてしばらく経った後、料理が運ばれてきた。数々の料理に、私は素直に喜ぶ。料理を運んできたマズは、喜ぶ私を微笑ましく見てくる。
「誰も盗りゃしないから、ゆっくりお食べよ。」
「あはは……」
「アリス、時間はあるんだ。慌てるな。」
「分かってますよー。」
ダンタムと2人で食事していると、賞金稼ぎの1人が私達の席に寄ってくる。
トワイレックの賞金稼ぎは、敵意の籠った目を向けて私に声をかける。
「おい、俺を憶えているか?」
「………誰だっけ?」
「テメェ……俺はお前を許さねぇからな!」
「私何かした?」
「アリス……」
「いや、本当に分からないんだってば。」
ダンタムに呆れた視線を向けられるけど、本当に憶えてない。追ってきたのは帝国だけじゃない。帝国が賞金を懸けたせいで、賞金稼ぎにも追われた。ジャバの懸賞リストからは外されてたけど、それでも数多くの賞金稼ぎに追われた。
それなのに個人を、しかも忘れたい記憶なのに、憶えているわけないじゃん。
「今じゃお前を捕まえても金は出ねぇが、恨みはある。ここで命を差し出せ。」
「え、やだよ。」
「はぁ!?」
「やっと解放されたし?」
「ふざけてるのか!!」
「至って真面目だよ。マジであんたのこと憶えてないし。」
食事を続けようとすると、フォークを叩き落とされた。
更に、トワイレックの男は無関心の私を殴ろうとしてくる。
「殺してやる!!」
その拳を、意外な人物が止めた。
「妻を傷付けたら許さない。」
「ダンタム!」
自分で反撃するつもりが、夫が先に動いた。まさかダンタムが間に入ると思わなくて、少し焦る。前に立つのは私の領分なのに。
「妻だぁ?だったらまずお前から殺してやる!」
ダンタムが男を睨んだ頃、マズが止めに入った。
「お前達、店内で争い事は禁止だよ。喧嘩なら外でやりな。」
「だとよ。おいお前、表に出ろ。」
「上等だ。」
ダンタムとトワイレックの男が外に出ていく。食事中の私も、後を追って外に出る。他の客の何人かも野次馬で追いかけてきて、穏便ではなくなってくる。
「ダンタム、彼の相手は、」
「今回は君の為の旅だ。だから私にやらせてくれ。」
「でも、」
「アリス」
「………分かった。」
渋々引き下がり、私は傍観することにした。
「男らしく、武器はなしだ。」
「いいだろう。立てなくなったら負けだ。」
「分かった。」
「俺が負けたら殺せ。その代わり、俺が勝ったらお前を殺す。お前の女もな。」
「待って!」
「アリス、下がっていろ。」
ダメだ。ダンタムってこういう時は折れてくれない。命を懸けさせてはいけない。
止めようとするが、奴と連んでいた賞金稼ぎが立ち塞がる。
「邪魔すんなよ。」
「そこを退かないと、」
「退かないとなんだ?殺すか?」
「っ……」
ダンタムの負けは心配していない。問題なのは、互いの命を懸けるということ。夫は正しい道を歩いてきたのに、手を掛けさせてはいけない。
「黙って見ていろ。」
戦いが始まって、トワイレックの男は真っ直ぐダンタムに向かってくる。対するダンタムはそれを避け、足払いをかける。バランスを崩した男は身を翻し、ダンタムの腹を狙う。
その一撃を止めるのは分かっていても、ヒヤヒヤする。
「この……!」
優劣は、見て明らかだった。
夫の技は男に当たるけど、男の拳は一度もダンタムに当たっていない。寧ろ、ダンタムに受け流されている。先に立てなくなったのは、トワイレックの男の方だった。
「お前の負けだな。」
「クソ!」
ダンタムは私と同じ50歳過ぎだけど、体術師範の腕は鈍っていない。一対一のフェアな戦いなら、負ける道理はない。ダンタムの圧勝だ。
何事もなく勝負が終わり、私は胸を撫で下ろす。
「心配なかっただろう?」
「心配はしてないけど……」
「どうした?」
「ヒヤヒヤした。」
男に背を向けたダンタムに、そう返す。
「終わったようだね。」
マズが終わったのを見計らって、呼びに来た。
ダンタムを伴い、私達は野次馬とトワイレックの男に背を向ける。
「あんた、よく手を出さなかったね。」
「彼を信じてますから。」
「良いものを見せてもらった。デザートはサービスするよ。」
「本当ですか!?やった!!」
「まるで子供だね。」
「貴女の20分の1しか生きてませんし?」
「おやめ。」
女同士だから言える年齢の冗談だ。
その時、トワイレックの男はブラスター・ピストルを取り出して撃とうとしてくる。
私はそれを予期して、ライトセーバーを起動する。ダンタムとマズを狙ったレーザー弾を偏向させ、テレキネシスでブラスターを奪取した。引き寄せたブラスターはライトセーバーで両断して壊し、男と距離を詰める。
次の武器を出す間を与えず、私はプラズマの刃を男の首に添えた。
「な、なに……!?」
「ダンタムだけならまだしも、マズも狙ったね?」
「化け物め…!!」
「この見た目は私のせいじゃない。あれ?このやりとり……」
「今思い出すのかよ!!」
やーっと思い出した!!
あまりにしつこくて、この人のシャトルを壊したんだよね。追ってこないように。良い部品をたくさん使ってたから、たぶんあれは良い船で拘りがあったんだろうなぁ。
もしかして、恨みってそれかな?
私のこの若い見た目の下りは、当時も話した気がした。
「アリス、彼に何をしたんだ?」
「特に何も?船を壊しただけ。」
「壊した?」
「違う!木っ端微塵に爆破したんだ!飛んだ損害だったんだぞ!!」
「それは君が悪い。」
「アリスが悪いね。」
「えー」
野次馬からも、私が悪いと言われているような気がした。
「ごめん?」
「アリス、もう何も言うな。」
「解せん。」
「嘗めてんのか!?」
確かに、私が悪かった。
でも言い訳すれば、あの時の私は必死だったんだ。船の1つや2つ、追手を潰す為に爆破するのも仕方なかった。自分の命が懸かってたんだもの。
考えた末に、先日手に入れたあるものを男に投げ渡す。
「こ、これは……!?」
「カイバークリスタル、あげる。闇市で高く売れるよ。」
「いいのか?スペアのヒルトを作ると言ってなかったか?」
「いいの。二刀流は割に合わないから。」
アソーカのように2本持とうかと思って手に入れたクリスタルだったけど、必要ないと判断した。
だから、お詫びとして男にあげた。
「マジかよ……」
「そういうわけだから、それで勘弁して。」
「なんだよ、興醒めじゃねぇか……」
「それに、あの時はお互い様だったと思うけど?」
「………」
「おい、妻に何を言った?」
「………年齢詐称女。」
まぁ、間違いじゃないよね!現在進行形で年齢詐称してるし!!
結局、男はクリスタルを受け取って引き下がってくれた。年齢詐称と言われた件は許し、船の件も許してくれた。これで、一件落着。
とは、いかなかった。
「裏口教えてください。」
「あんた達がいると、賑やかだねぇ。」
「楽しそうに言ってるけど、全然楽しくないからね!?」
「邪魔をしたな。ありがとう、マズ・カナタ。」
「ダンタム!早く!!」
暗殺者はさて置き、賞金稼ぎはあの男だけじゃない。さっさと共和国に帰ろう。賞金稼ぎの相手って、本当に面倒臭い。
下手に出かけるものじゃないね!!
continue……