ジェダイ(仮)と理想主義者(笑)と退職(無断)者の小話。 作:夭嘉
それは、クローン戦争中のある日の出来事だった。
オルデランの防衛戦の最中、ジェダイ評議会から任務が下りた。
「で、何の任務だって?」
仮眠しているところを起こされ、ヘクターとブリッジへ向かった。
歩きながらヘクターに、評議会の要件を聞く。
「さぁ。ヨーダ将軍によれば、クレル将軍の手助けだと……レイン将軍?」
抑えろー私。あのクレル大先生が不祥事を起こすわけないよねぇ。抑えろー私。
「レイン将軍、顔が歪んでますよ。」
「お黙り。なんで私があいつの尻拭いなんか………」
「オルデランが平和だからですよ。」
「でも時々ドロイド軍が来るじゃん!」
「将軍、その為にコマンダーの私がいるんです。」
こうなるなら、ヘクターの経歴をでっち上げるんじゃなかった。今回ばかりは旗艦に残りたい。なんで私が行かなきゃいけないんだよ。
評議会の指示だし、今回の任務はさすがに無視できない。
「詰んだ……ジェダイやめたい………」
「軍曹、将軍をお送りしろ。」
「イエッサー!」
渋々ハンガーへ向かい、私はシャトルに乗り込む。
旗艦を発った後、送られてきた任務の詳細を開く。
任務のランクは最高位で、かなり重いものだった。クレル大先生は、ラサットとの話し合いで揉めてしまったらしい。つまり、交代しろって指示だ。
責任重すぎる、行きたくない。
ハイパースペースに入ってすぐ、同伴してきた軍曹に慰められた。
「将軍、元気出してください。」
「もっと元気出る言葉頂戴……」
「恐れながら……帰ったら一杯やりましょう。」
「よし行こう。」
軍曹に言われて、私は了承した。もちろん共和国軍司令部やジェダイ評議会には言えない。申告すれば、確実に何か言われる。
ジェダイには楽しみがないから、こういう些細なことが大切なのです。
「そういえばレイン将軍、なぜコマンダーに言い返さないのですか?」
「あー、あれねー、あー、うーん……」
私とヘクターのやりとりを見ていたのか、コックピットでそう聞かれた。
「あれ以上話すと、ヘクターがエスカレートするから…」
「あの……貴女が上官ですよね?」
「やっぱり私の方が上だよね……?」
おかしい、私が上官のはずなのに。
「しかし、コマンダー・ヘクターの昇進は素晴らしいですね。」
「え?」
「ラワイズ議員を捕縛したんです。昇進して当然ですよ。」
言えない……経歴がでっち上げだなんて言えない!!しかも本人は了承してないし!共和国軍上層部もスルーしたなんて言えない!!
「ハイパースペース出るよ!」
「あ、はい。」
ハイパースペースを抜け、シャトルはラサンの軌道上へ飛び出す。
前の世界のネットで見た話では、ラサンはとても綺麗だと書いてあった。実際に目の前にして、私は言葉に詰まった。だって、本当に綺麗だったから。
軌道上にはマスター・クレルの艦隊がいて、景色を台無しにしていた。
シャトルはラサンの神殿へ向かい、儀仗兵の指示に従って着陸する。
ハッチを下ろすと、私1人だけ降りろと通信で言われた。
「将軍!」
「大丈夫だよ。待ってて。」
ラサン儀仗兵の1人に付いていき、私は神殿に足を踏み入れる。
中に入ると、クレル大先生がすごく嫌そうな顔をしていた。その正面には、シャーマンの1人が渋い顔をして座っている。その状況で、ポング・クレルがどれだけ“失礼な”発言をしたか悟った。
こいつ、1回でいいから痛い目に遭わないかな。
「ようこそ、マスター・ジェダイ。」
「この方は預言者のチャヴァ様だ。」
「初めまして、預言者殿。私はアリス・レイン。マスター・クレルがラサットと揉めているとお聞きして、馳せ参じました。」
丁寧に挨拶すれば、チャヴァは私とマスターを交互に見比べて、私に感心の眼差しを向ける。
「この子の方が柔らかい物腰じゃないか。」
「何だと……!?」
「マスター・クレル、私が引き継ぐので次の任務へ行ってください。」
「レイン、私はジェダイ・マスターだぞ。お前の手助けは必要ない。」
「ですが、実際に評議会に言われて来ているんです。」
どうも話が噛み合わない。
マスターは後ろのクローン・コマンダーを見ると、怒りを露わにする。察するに、コマンダーの独断らしい。いや、コマンダーはSOSを送っただけだ。
寧ろ、正しい判断をしてくれたんだ。
「コマンダー、どういうことだ?」
「自分は上層部に判断を煽っただけです。」
「レインが来ることも言わなかったな?」
「レイン将軍の到着は、知らされていません。」
「本当ですよ、マスター。私は重要任務として、ここまで来たんです。」
「貴様……」
来たくなかったとはいえ、これは他のジェダイが来ないとまずかった。このまま放置していたら、“共和国”の信頼を失う。誰かさんのせいで、ラサンを戦場にするわけにはいかない。
何より、私の遠征先が増えるからやめてほしい。
「レイン、これは命令だ。コルサントに戻れ。」
「戻るのはあんただよ。私は評議会の指示だって言ってんじゃん。あんたがさっさと戻れ。」
「なっ…!?不敬だぞ!………評議会に報告する。覚悟しておけ。」
「勝手にしてください。私もマスター・プロに叱られるのは嫌なので。コマンダー、マスター・クレルに何か言われたりしたらジェダイ評議会にチクって。」
「はい、レイン将軍。」
コマンダーは私側だ。コマンダーもマスターを嫌っている。上層部に報告したのも、マスターをどうにかしてほしかったからだろう。
マスターが旗艦に向かい、私は預言者と向き合う。
「大変お騒がせしました。」
「もう少し周りを気にしないと報いを受けるよ。」
「え…?」
「預言者の忠告だよ。本題に入ろう。我々の結論は変わらない。どちらにも付かず、戦争にも関与しない。」
クレル大先生が交渉していたのは、共和国への加入だった。だけど、ラサンには儀仗兵がいる。共和国軍の介入が拒まれ、クレル大先生が納得せず揉めたというわけだ。
共和国の加入は、ジェダイが強制するものじゃない。
無理に縛り付ければ、しっぺ返しを食らう。
「ラサットの決定を尊重します。」
「あんたは物分かりが良いね。」
「強制するものではありませんから。」
「ほぅ。それじゃあ、これで話し合いは終わったね。」
「評議会及び、共和国軍に決定を伝えます。しかし、助けが必要な場合はすぐに共和国へ。共和国軍が駆け付けます。」
「アシュラは必ずあんたを導く。気を強く持つんだよ。」
この時は、この言葉の意味が分からなかった。
ラサットのシャーマンは、アシュラを通して物事を見通す。フォースは、種族によって呼ばれ方が違うこともある。ラサットはフォースをアシュラと呼ぶ。
その預言者のチャヴァが、私に哀れみの視線を向けているなんて思いもしなかった。
チャヴァと握手して、私は神殿の外へ出る。
私をシャトルまで送るのは、儀仗兵の隊長だ。彼に付いていき、町を歩く。
その隊長の名前は、ガラゼブ・オレリオス。
そう!あのゼブなの!“反乱者たち”に出てくるあのゼブなの!!
「なぁ、ジェダイってあんな奴ばっかなのか?」
「そんなことないですよ。あの人がおかしいだけです。」
「その喋り方やめてくれねぇか?」
「え?」
「畏まった喋り方は好きじゃねぇ。」
「あー、そう?分かった。私アリス・レイン。よろしく。」
「ガラゼブ・オレリオスだ。」
挨拶をしていると、街が騒がしくなってきた。
オレリオス隊長が状況を確認すると、バトル・ドロイドの襲撃があったみたいだった。襲撃ということで、オレリオス隊長も向かうようで、私も必然的に同行することになった。
走りながら、私も軍曹に連絡を取る。
「軍曹!シャトルは大丈夫!?」
『はい!数体侵入してきましたが、既に対処済みです!』
「了解。警戒を解かずに待機してて。今向かってるから、いつでも飛べるようにしておいてくれる?」
『イエッサー!』
通信が終わった頃、私達は騒ぎの中心に辿り着いた。
非戦闘員のラサットが避難していき、儀仗兵はそれぞれボー=ライフルを構える。
ラサットが戦う姿を生で見れるなんて、とても光栄た。見ているだけなんて勿体ない。私も加勢したい。
「おい、あんたはやめておけ。」
「どうして?」
腰のヒルトに手を伸ばすと、オレリオス隊長に止められた。
「ラサットはどちらにも付かねぇ。あんたが手を出せば、ここは戦場になる。控えてくれ。」
「そうだった……」
「心配するな。儀仗兵は強い。」
「気を付けて。」
それから、ラサットの戦いは圧巻だった。
戦いは長引くこともなく、すぐに終わった。手を出さなかったお陰で、共和国とラサットの立場を守れた。
だけど、今回のようなことは初めてじゃない。戦争が始まってから、共和国という立場が邪魔することがある。もちろん、我慢はしてきた。
早く戦争が終わってほしい。
でも、戦争が終わる時は………
「将軍!遅いので心配しましたよ!」
「あんた将軍なのか。ちっこいな。」
「これでもジェダイ将軍だよ。あと、ラサットが大きいの!」
「行きましょう、将軍!」
「ありがとう、軍曹。」
ハッチを上ろうとすると、オレリオス隊長に声をかけられた。
「手助けしようとした気持ちだけ受け取っておく。」
「そう、障害にならなくて良かったよ。オレリオス隊長、どうか気を付けて。」
ネタバレはできないけど、些細な忠告はできる。でも本当に、これくらいしか言えない。少し先に起こるラサン包囲戦に、心が締め付けられる。
「Karabast‼︎」
「え…?」
「いや、何でもねぇ。じゃあな、ジェダイ。」
そう言って、オレリオス隊長は神殿へ戻っていく。
シャトルはラサンを離れ、私と軍曹はコルサントに帰還した。
その後、クレル大先生が本当に私のことを報告した為、一時は謹慎を食らいそうになった。だけどチャヴァのメッセージのお陰で、私の不敬は不問にされた。クレル大先生はジェダイ・マスターで、共和国軍の貴重なジェダイ将軍だから、私と違ってお咎めは何もない。
本来ならマスター・クレルは追放される案件なのに、今回は戦争中で何もない。
その決定に、私は評議会が更に嫌になった。
判断は正しいと思う。このクローン戦争にジェダイ将軍は必要だ。だから私だって謹慎止まりだった。
でも、マスター・クレルがラサットを怒らせたことは納得いかない。
みんな戦争で変わってしまった。
私も、おかしいと感じても何も言えない。それは、私も戦争に感化されている証拠だ。戦争が感覚を鈍らせている。これがシディアスの狙いの1つかもしれない。
ジェダイの粛清も、そう遠くない。
私は、生き残れるのかな……?
あ、軍曹とはちゃんと一杯交わしました!楽しかったです!
continue………