ジェダイ(仮)と理想主義者(笑)と退職(無断)者の小話。 作:夭嘉
まだ観てない方はUターンで!
微ネタバレの可能性有ります!
尚、閲覧は自己責任です!!!
タナヴィーでオビ=ワン達と別れてから、私はタトゥ星系から1星系離れたところにある衛星トラスクに不時着した。
つまり、海洋メインの衛星に不時着ということは海に落ちるわけで………
脱出ポッドを出た後、私はリブリーザーを着けて海面に顔を出す。落ちたのは漁港の近くらしく、通りかかった漁船に引き上げられた。善良なモン・カラマリの漁師を巻き込むことはできないから、陸に着いたらお礼を言って即座に行方を眩ませた。
「………寒っ。」
暗い声で、思ったままの感情を路地裏で吐き出す。
いくら展開を知っていても、やっぱり心の傷は深いみたいで、喪失感は簡単に消えてくれない。壁を背に座り込み、漁師からもらったブランケットを頭まで被って踞った。水に濡れた寒さだけじゃなくて、心まで冷え切ったみたいだ。
「逃げなきゃ………」
気力のない身体に鞭打って、私は無理矢理立ち上がる。
ここで止まっていたら、帝国に見つかってしまう。フォース感応力があることを除けば、私にジェダイの概念は無いに等しい。私は、普通のジェダイには難しいことができるんだ。
平凡に暮らすこと、これだけが私の取り柄だ。
ブランケットを羽織ったまま、私は表通りに出て服屋に足を踏み入れる。
当たり前の静寂が、こんなにも怖ろしいなんて思わなかった。
────────
1ヶ月後。
私は外縁部にある、某惑星の工業都市にいた。
ジェダイの服は捨て、この世界の普通の服を着た。ライトセーバーは誰にも見つからない場所に隠して、ブラスター・ピストルを携帯した。名前も相手に教えず、なるべく人々の記憶に残らないようにした。
そう決めていたのに、気が付いたらブラスターを握っていた。
目の前にはクローン・トルーパーが2人倒れていて、私は1人の少女を助けていた。
「ねぇ、大丈夫?」
少女が声をかけてくるけど、答えられなかった。
トルーパーは死んではいない。ブラスターには安全装置をかけていて、私はトルーパーをスタンしただけ。でも自分の鼓動がうるさい。
「ねぇってば!」
少女は声を張り上げ、私の腕を引く。
「早く逃げよう!」
「行って。私は一緒には行けない。」
「けど、」
「この人達は、あんたを捕まえようとしてた。私よりも自分の心配をした方がいいよ。」
「………ありがとう。」
少女はお礼を言って、走り去っていく。
私も反対方向に走り、気配を頼りに帝国軍の警備が少ない宇宙港へ向かった。
「いたぞ!こっちだ!」
騒ぎが広がったのかトルーパーが増えてきて、徐々に逃げ道を減らすしかなくなってきた。誰が指揮しているのか知らないけど、相手も分からないのに周到すぎる。
いや、狙っているのは私じゃない。私を狙っているなら、もっと高官クラスの将校が来るはず。それに、ジェダイ相手にこんな単純な詰めはしない。
私は逃げられないこともないけど、かなり厄介だ。
「おい!止まれ!」
「通行許可証を見せろ!」
おっと、違う道に来てしまったらしい。焦っていたみたいで、気付かなかったのか。通行許可証なんて知らないし、どうしようかな。
逃げるの一択だよね。
「待て!止まるんだ!」
「嫌だね!!」
マントのフードを被り、角を曲がった先で屋根の上へフォース・ジャンプする。
「消えた……?」
「バカ!見失ったんだよ!」
トルーパーがいなくなり、私は路地裏に静かに降り立った。
危なかった。素性がバレたら、更に警備が厳しくなる。少女を助けちゃったとはいえ、これ以上目立ちたくない。
とりあえず、この星から脱出しよう。
「レイン将軍!!!」
思わず身体が固まる。
見えたのは、アーマーを着たクローン達だった。クローンの脳にはチップが入っているから、ジェダイの私を見れば命令を思い出すだろう。仮に本人達にそのつもりがなくても、クローンは命令に逆らえない。
ウォルフにした小細工は、二度目は通用しない。
だから逃げるしかない。
「将軍!お待ちを!」
味方かもしれないけど、敵かもしれない。クローンだって、演技くらいできる。味方のふりをすることも可能なんだ。
ひたすら走り、私は漁港に引き返してきて適当な漁船に潜む。
夜で暗くなったけど、足音は分かる。
「………」
私に追い付いたらしく、漁港を歩いて回っている。
ブラスターを取り出し、いつでも撃てるように息を殺した。
「………よし。」
漁船から顔を出し、私は追跡者にブラスターを突き付ける。
「来るなっ!!!」
「落ち着いてください!自分は敵ではありません!」
赤いバンダナを頭に巻いたクローンが、ゆっくり近付いてくる。
このクローンは、クローンだけど普通のクローンじゃない。意図的に遺伝子操作された、好ましいとされる突然変異を起こしたクローンだ。とても優秀で、とても厄介。
「あんた達には命令がある。」
「俺達は違います。どういうわけか、チップの作用がないらしい。」
「つまり、後々は危険ってことでしょ?そんな危険なクローンとは一緒にいたくない。」
「………敵だと思うなら、俺を撃てばいい。」
彼の言葉に、私は安全装置を外す。
「待って!!」
さっき助けた少女が走ってきて、私とクローンの間に入る。
クローンの方は少女と面識があるらしく、危険だと彼女を咎める。だけど、少女は引き下がらなかった。今度は私を見て、信じてほしいと言う。
「敵にならないと約束する。お願い、ブラスターを下ろして。」
私は少女の目を見つめる。彼女の感情からは、悪いものは感じない。分かるのは、少女が私を心から心配しているということ。
静かにブラスターを下ろして、少女に私の答えを告げる。
「分かった。信じる。」
「ありがとう。」
「おい!トルーパーが来るぞ!」
クローンの声に、私と少女は彼に従って走る。案内された先には、クローン・フォース99のシャトルがあった。私達が乗り込むと、シャトルはすぐに発進した。
ハイパースペースに入った後、私は座るように促され、ベンチに腰を下ろす。
「僕達のことは知っているようですね。」
眼鏡のクローンが、予想通りだと言ってくる。
「資料は読んでたから。それで、チップが作用してないのはなんで?」
「チップは抜いた。俺達自身でな。」
「大変苦労しましたよ。」
「………なるほど。」
ガタイのデカいクローンとエコーが、そう答えた。
最初からそう言えばいいのに、赤バンダナのクローンは撃てばいいと言ってきた。その考えがよく分からない。私が信じなければ、本当に撃っていたかもしれないのに。
「どうして撃てと言ったの?」
「貴女は俺達が追手だと思ったんでしょう?」
「優秀な兵士は命令に従うからね。あんた達、実際優秀だし。あと、敬った話し方はしなくていいよ。」
そう付け足したら、彼らは頷いてくれた。
それから、赤バンダナのクローンは問いに答える。
「撃たれても仕方ないと思っただけだ。」
「だけって……」
「ジェダイのことは、正直よく分からない。分からないが、孤立すればどう動くかは分かる。だが、貴女はジェダイの型に当て嵌まらない。貴女をジェダイではなく、ただの人として考えて、そう思っただけだ。」
私のことは、オビ=ワンやアナキンから聞かされていたらしい。私の自由すぎる性格で、難を逃れられたのは幸いだ。悪いことじゃないけど、良いことでもない。
悪目立ちをしているようなものだ。
「まだ信じられないか?」
「そのことはもういいよ。追手じゃないなら、あの町で何してたの?」
「任務だ。」
「………」
「帝国じゃない。依頼を受け、報酬をもらうということだ。」
今はその帰りだと言う。
シドという人が、仕事を振っているらしい。酒場も経営していて、いろいろ工面もしてくれるそうだ。
分隊のメンバーの名前も教えてもらった。
レッカー達がコックピットへ向かう中、私はハンターと話を続ける。
「もう1人いなかった?」
「………クロスヘアーはカミーノに残った。」
「どうして?」
「分からない。」
「あの子は?」
私は視線を少女に向ける。名前はオメガ。カミーノアンのナラ・セの側にいたという。
「オメガは、特殊なクローンだ。」
「あぁ……」
「知っているのか?」
「一応。」
私はシスの呪いを解くヒントとして、ジェダイ公文書館でいろいろと資料を見た。その中にはクローンのことも書いてあった。いつかシディアスの弱みになりそうだと思い、詳しく読んだという経緯があるだけだ。
「アルファとオメガ、ジャンゴ・フェットの純粋なクローンだよね。カミーノアンが手放したくないと思うのも当然だよ。カミーノがドロイド軍に襲撃された時、クローンが劣化がどうのこうのってマスター達が言ってたから。」
「少し怒ってるのか?」
「あ、分かる?」
「目が笑ってません……」
テクに苦笑いされながら言われる。
そりゃ怒るよね、私の推しもクローンだし。彼らも生きているのに。そのクローンを無下にする人がいると考えたら、怒らないわけがない。
「軍曹」
「なんだ?」
もうすぐ不良分隊の隠れ家に着くけど、私はこの人達と一緒にいちゃいけない。
「私なんかと関わらない方がいいよ。」
そう言うと、軍曹達はムッとした顔をする。
「ねぇアリス、私達は味方だよ?」
「分かってるよ。だからこそ、一緒にいない方がいい。」
「え?」
「私といたら、帝国に目を付けられる。」
帝国はまだできたばかりで、将校も皇帝も神経質になっている。その状態で一緒にいることを知られたら、私より先に軍曹達が目を付けられる。ジェダイ・マスターの私より、クローン数人を処分する方が早いのだから。
「シドの店には行かない。着陸したらすぐに別れる。」
「でも、」
「オメガ、俺達の目的を忘れるな。」
「うん……」
ハイパースペースを抜けた後、シャトルが着陸して、私は1人違う方角に歩く。
軍曹達と別れようとすると、オメガに呼び止められた。
「助けが必要なら、私達を呼んで。すぐに向かうから。」
オメガの言葉に、私は屈み込んで目線を合わせる。
「大丈夫だよ。」
「私はドクター・ナラ・セの下で勉強してきたの。本当に問題ないか判断できるの。アリスは大丈夫そうに見えないよ。最後にゆっくり眠ったのはいつ?」
「オメガ………」
この子の言うことは当たっている。
でも、ゆっくり眠れるわけがない。いつ襲われるか分からないんだ。安心して眠ることなんてできない。
「レイン将軍、」
「将軍って言わないで。」
「アリス、ジェダイの武器を持っていないのは、眠れないからか?」
「それは……」
「俺達を信用できないのは分かる。だがジェダイとクローンには、長い時間をかけてできた絆があるはずだ。チップを取り除いた俺達が、自分の意思で貴女を攻撃することはない。」
テクやレッカー、エコーからも説得され、私はオメガに手を引かれてシドの店へ向かった。
店に入ると、シドというトランドーシャンの婦人が快く迎えてくれた。彼女はジェダイに深く信頼されていたことを、エコーから聞かされた。この優しさが、ジェダイの信頼を得ていたんだろう。
私は奥の部屋に通され、何日かぶりにゆっくり眠った。
身体だけでなく、心も疲れているみたいだ。
目を覚ましたら、オメガにお礼を言おう。
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