ジェダイ(仮)と理想主義者(笑)と退職(無断)者の小話。   作:夭嘉

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悪魔から逃げて【後編】

起きたら、身体が少し軽くなったような気がした。

 

眠れなかったのは主に襲撃を想定していたからだけど、理由はそれだけじゃない。

 

薄れていた前世の記憶が、どういうわけか今になってはっきり思い出したからだ。アナキンがオビ=ワンに四肢を切り落とされ、マグマの熱で身を焼かれる姿が頭から離れなかった。友人関係を持ったのも相まって、アナキンの苦しむ姿が忘れられない。

 

覚悟はしていたけど、アナキンの憎しみに満ちた表情が何度も脳裏に蘇る。

 

 

「大丈夫かい?」

 

 

起きると、シドが寝台脇に座っていた。心配してくれていたようで、温かいスープまでくれる。身体が冷えてしまっていたのか、スープの温かさが心地良い。

 

 

「ありがとう。」

「あたしの噂は聞いたことがあるだろう?どうして頼らない?」

「………現実から逃げちゃいけないと思ったの。」

「アリス、誰かを頼ることは、逃げているわけじゃない。救いの手を差し出すジェダイが、救いの手を払ってどうするんだ。」

 

 

それでも、巻き込むと思ったら頼れなかった。ジェダイに信頼されていたなら、根っからの悪人じゃない。そんな人を巻き込みたくない。

 

 

「スープありがとう。」

「どこ行くんだい!?」

 

 

寝台から起き上がると、シドは慌てて止めてくる。

 

 

「充分寝させてもらったから、出て行くの。」

「待ちな!」

 

 

襟を掴まれ、私は部屋に引き戻される。不機嫌な顔をすると、シドは溜め息を吐いた。私の態度を見て、シドはもう少し寝ろと言ってくる。

 

 

「あんた、まだ冷静になれないようだね。しっかり休まないと、肝心な時に戦えないよ。」

「………」

「いいかい、寝るんだよ。」

 

 

シドはそう言って出て行こうとすると、今度はオメガが駆け込んできた。

 

 

「シド!ハンター達とまた出るね!」

「どうしたんだい?帰ってきたばかりだろう?」

 

 

オメガは私を見ると、気まずそうに目を逸らす。どうやら、私は知らない方がいいらしい。だけど、匿ってもらって何も知らないふりはしたくない。

 

私は退室せず、そのまま聞くことにした。

 

 

「何かあったんだね。」

「アリス、」

「教えて。」

 

 

真剣な私の声のトーンに、オメガは事情を明かした。

 

 

「レッカーの逃げ道がなくなっちゃったの……」

「え……?」

「トルーパーに囲まれて、身動きできないの。」

 

 

私が眠っている間に仕事をしていたようで、レッカーが取り残されているという。

 

ただ、私にはライトセーバーがないから、何もできない。

 

 

「アリス、いいの。ここにいて。」

「でも……レッカーが………」

「レッカーは大丈夫だよ。」

 

 

大丈夫じゃない。レッカーは頭脳戦向きじゃないんだ。誰かがリードしないといけない。

 

黙って待つことはできない。

 

私はジェダイだ、助けを待つ人を見捨ててはいけない。

 

 

「私も行く。」

 

 

オメガに付いていき、私もシャトルに乗り込む。

 

テクとエコーがコックピットに入り、私は貨物室を借りて扉を背に座る。

 

複雑に考えるのはやめよう。ジェダイなら、すべきことを為すだけ。余計なことは考えてはダメだ。

 

目を閉じて、心を無にする。

 

 

「我はフォースと共に……」

 

 

ジェダイは、ライトセーバーがあるからジェダイというわけじゃない。ライトセーバーを持てば、誰でもジェダイになってしまう。それは誤解だ。

 

私自身も、誤解していた。

 

ジェダイはフォースの声を聞き、人々を守るものだ。

 

 

「フォースは我と共に……」

 

 

ジェダイ・コードも言っていた。感情的になってはならない。冷静にならなきゃ。

 

 

「アリス」

 

 

ハンターの声に、私は目を開く。

 

 

「大丈夫か?」

「うん。」

「ブラスター、使うか?」

 

 

そう言って、ハンターがブラスター・ライフルを差し出してくる。

 

だが、私はそれを断った。

 

 

「必要ない。」

「必要ない?武器がないと、」

「大丈夫だよ。」

 

 

私にはフォースがある。

 

ジェダイ・コードの教えに従えば、私は倒れたりしない。

 

 

「私はジェダイだから、武器は必要ない。」

「………大丈夫か?」

「正直、全然大丈夫じゃない。でも、希望が完全に消えたわけじゃない。」

 

 

そう、まだ何も終わってない。

 

アナキンが暗黒面に呑まれて、パドメも死んだ。2人共、私が隣にいたのにいなくなってしまった。隣にいるだけでは何も変わらないと思い知った。

 

私が行動することで、変えられるものもある。

 

 

「着いたようだ。」

 

 

シャトルは、惑星の首都に着陸した。

 

ハンター達の後に続き、私も町に入る。

 

テクによれば、信号は時計塔から出ているそうだ。レッカーは時計塔に隠れている。だけど問題は、隣に議事堂があるということ。

 

議事堂には、この星の指導者が集まっている。その指導者達は、帝国肯定派だ。私も不良分隊も、素性がバレたら立場が危うい。

 

日が暮れた後、時計塔近くの通信棟に侵入し、私達は身を潜める。

 

 

「さて、どうするんだ?」

 

 

ハンターの問いに、私は不良分隊にある話をする。

 

私の話を聞いた彼らは、当然反対した。

 

 

「ダメだよ!」

「了承は無理です。」

「自分も同意見です。」

「アリス、考え直せ。」

「なら他に作戦は?あの警備の高さじゃ、私の案しかないよ。」

 

 

そもそもイレギュラーの私が現れたことが、レッカーが迷子になった要因だ。私がやらなきゃ、恩も借りも返せない。

 

 

「分かった。」

「ハンター!どうして!?」

「オメガ、アリスは問題ない。」

「………うん。」

 

 

ハンターは、私の意図を読み取ってくれたようだった。これはお互いの為でもある。この作戦が、最良策なんだ。

 

オメガには申し訳ないけど、私の選択だ。

 

制御室から出て、私はマントを脱ぎ捨て柵の淵に立つ。

 

 

「じゃあ、行ってくる。ハンター、後はよろしくね。」

「ああ。」

「アリス……?」

「オメガ、元気でね。フォースと共にあらんことを。」

「アリス!!!」

 

 

淵から飛び降り、私は背中から落ちていく。不良分隊は見慣れた光景だろうけど、オメガは顔を真っ青にさせていた。

 

私は落ちながら身を翻し、フォースを使って着地する。

 

辺りのトルーパーは即座に反応して、私にブラスターを向けた。

 

 

「ジェダイだ!撃ち殺せ!!」

「待て!!」

 

 

撃とうとしたトルーパーを、帝国軍の将校が止めた。

 

 

「アリス・レイン、やはり生きていたか。」

「私の生存を知ってるなんて、随分と情報が早いね。」

「帝国を甘く見るな。お前はアナキン・スカイウォーカーやオビ=ワン・ケノービと並ぶ、名のあるジェダイだ。容易く信じるわけないだろう。」

 

 

“名のあるジェダイ”と言われて、複雑な心境だ。

 

死を偽装しない選択は正しかったらしい。“皇帝”は、私が簡単に死ぬと思わなかったようだ。寧ろ、生存を前提としている。

 

 

「なら撃ち殺せば?あんたの昇進も間違いなしだよ。」

「私が素直に撃たせると思うか?丸腰で現れ、反撃もしない。何を企んでいる?」

「ちょっと待った!」

「なんだ!?」

 

 

左腕のコムリンクを見れば、点滅していた。作戦は成功したみたいだ。これで、私の役目は終わりだ。

 

 

「もう少しお喋りしたいけど、時間切れだよ。」

「何だと!?」

「大尉!シャトルが……!」

 

 

トルーパーは一斉に空を見上げる。

 

暗い空に、シャトルのランプが煌々と光る。将校、大尉まで見上げて、私は口角を上げた。予期通り事が進んでくれて何よりだ。

 

私は家の向こう側の皇帝像に、ケーブルの先端を飛ばす。

 

フックが皇帝像の手に引っ掛かり、私はケーブルを縮める。

 

 

「逃がすな!!」

 

 

私の行動に気付いたトルーパー達は、トリガーを引くがもう遅い。

 

地を蹴り、スイングして宇宙港のある方へと飛ぶ。全体重をかけたスイングにより、皇帝の像は傾いていく。像が倒れる前に、私はケーブルを切ってドッグの上に着地した。

 

 

「よし、倒れた。」

 

 

少し先に見える倒れた皇帝の像に、思わずガッツポーズする。

 

“シディアス”は、パドメが死んで、アナキンが暗黒面に呑まれて、私の心が荒んでいると思っているだろう。確かに、2人がいなくなって苦しんだ。だけど、奴の思惑に乗せられる気はない。

 

その悲しみを受け入れ、何でもないと示してやった。

 

それが、この倒れた皇帝像だ。

 

不敬?あんな奴を尊ぶ必要はない!

 

 

「脱出脱出!」

 

 

クレジットの入った袋を置いて、私はドッグのシャトルに乗り込む。エンジンを立ち上げ、すぐに軌道まで飛んだ。

 

これは、作戦通りだ。

 

最初から、オメガ達と別れるつもりだった。第一目的は、レッカーの救出。そして、不良分隊の脱出だ。彼らが逃げられれば、それでいい。あとは私が消えればいいだけ。

 

軌道を離脱して、思い付いた座標を入力する。

 

その時、通信機のランプが光った。

 

 

『アリス!!』

 

 

応答すると、真っ先にオメガの声が聴こえてきた。

 

 

『こんなの、あんまりだよ!』

「ごめんね。やっぱり、私とはいない方がいいよ。」

『アリス……』

『オメガの言うことは最もだが、アリスの言葉も一理ある。』

 

 

ハンターが割って入り、刺々しく言ってきた。結局、私はまだクローンへの信用を取り戻せていない。ハンターはそのことに気付いている。

 

 

「本当にごめん。でも、私の意思を尊重してくれてありがとう。」

『礼を言うのはこちらです。』

『来てくれて感謝してます!』

 

 

テクとレッカーも、割って入ってくる。

 

 

『アリス、自分達はジェダイの敵ではありません。それをお忘れなく。』

「エコー、ありがとう。それじゃあ、そろそろ行くね。フォースと共にあれ。」

 

 

レバーを押し、私のシャトルはハイパースペースへと入る。

 

【バッドバッチ】を観ずにこちらに来たから、彼らがどうなるのか分からない。オメガのことも、自分がジェダイ・マスターになるまで知らなかった。だけど実際に会って、無事でいてほしいと思った。

 

彼らは、彼らの道がある。

 

私の険しい道に巻き込んではいけない。

 

それから数日後、私は隠していたライトセーバーを再び手にした。なるべく使いたくないけど、いつか必要になる時の為だ。その時が来ないことを祈るしかない。

 

まず現れるとしたら、シスになったアナキンだ。アナキンとの再会が怖い。殺されることより、現実と向き合うのが怖ろしい。怖くても、再会は宿命だ。再会は避けられない。

 

フォースだけが、私の行末を知っている。

 

私はフォースと共にある。

 

 

continue……

 

 





本編もこれくらい熱があればいいのに(自戒)
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