ジェダイ(仮)と理想主義者(笑)と退職(無断)者の小話。   作:夭嘉

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これぞ本当の終活【後編】

目を覚ますと、フォースが溢れる森の中にいた。

 

呆然としていると、穏やかな顔をしたフォースの女官に声をかけられた。

 

 

『私の後に続いてください。』

 

 

私は女官を追い、浮遊する植物を足場にして跳ぶ。

 

女官の進む先には、不穏に浮かぶ孤島が見えた。

 

 

「この後は?」

『貴女は、あの地で恐怖を捨てなければなりません。』

「恐怖にも、いろんなものがあるでしょ?」

『はい。しかしあの地にあるのは、貴女が一番怖れているものです。』

「怖れるもの……?」

『貴女はこの世界の知識を持っていますが、それは知識に過ぎません。貴女はこれから、己の闇を理解するのです。』

 

 

私は息を飲み、孤島に足を踏み入れる。

 

暗く、冷たい気配しかない。暗黒面の力を感じる。ひんやりとした空気が背中を走った。

 

アニメでは、マスター・ヨーダは暗黒面とぶつかった。同じ地でも、マスター達と同じ試練とはいかないだろう。これは、私だけの試練だ。

 

 

『………アリス……』

 

 

名前を呼ばれ、私は立ち止まる。

 

クスクスと笑い声が聴こえて、いつでも戦えるように身構えた。

 

 

『無駄だよ。』

「っ!?」

 

 

いきなり吹っ飛ばされ、受け身が取れず倒れてしまった。

 

立ち上がろうとするけど、誰かが馬乗りになって両腕を押さえ付けられる。

 

 

「っ……」

『可哀想な子。』

「はぁ!?」

『怖いなら最初から捨てちゃえばいいのに。』

「あんたに何が分かる!?」

 

 

頭突きを食らわせて、乗ってきた相手を押し返す。フォースを使って腕を押さえ込み、身動きできないように相手を組み伏した。身動きできないというのに、相手は不気味に笑う。

 

 

『分かるよ。愛する人を失うのは怖いよね。』

「あんたは私じゃない!」

 

 

相手をよく見ると、マスター・ヨーダの時と同じように、私とそっくりの背格好をしていた。

 

でも、彼女は私じゃない。

 

私は一度たりとも、暗黒面を受け入れたことはない。誘惑はたくさんあった。誘惑は多かったけど、私は約束を守り続けてきたんだ。

 

 

『私はあんただよ。だからあんたの愛情も分かる。愛情がある限り、私を拒むことはできない。』

「そんなことない。私は拒む。あんたなんか、絶対に認めない。」

『分かってないね。あんたジェダイでしょ?愛情は暗黒面への落とし穴だと教わったはず。あんたの深い愛が、私に力を与えるの。』

 

 

そう言って、彼女はフォースで私の首を絞める。

 

 

『さて、どうするの?』

 

 

考えろ、どうすればいい?

 

愛情と暗黒面は切っても切れない。だからジェダイ・オーダーも禁じた。それでも、愛情は捨てられない。

 

私はダンタムを愛している。

 

 

「私…は………!」

 

 

そこで、ずっと忘れていたことを思い出した。

 

喪失を怖れているから、暗黒面が誘ってくるんだ。

 

愛情は、恐怖でも感情でもない。好意とは違って、愛情は失うことはない。好意は一瞬で生まれて、一瞬で消える。

 

愛情とは、長い時間をかけてできた唯一無二の誓いで、道標だ。

 

ダンタムへの愛は、永遠のものだ。

 

誓いは、永遠に続く。

 

 

「私は、愛情を怖れない。」

『嘘…!?』

「暗黒面は、絶対に受け入れない。私はバランスを保つ。選ばれし者だから。」

 

 

絞められたまま、私の暗黒面に手を伸ばす。

 

確かに、暗黒面の彼女は私の一部だ。でも、選ぶのは私。愛を見失わない限り、私が暗黒面に手を伸ばすことはない。

 

彼女は断末魔を上げ、塵となった。

 

気が付けば意識を失っていて、私は女官達に起こされた。

 

 

「思ってたのと違った。」

『ようやく理解しましたね。』

「今の試練の目的は何?」

『貴女はジェダイの掟に背徳を感じていたのです。執着と愛、そして喪失への恐怖を捨てなければなりませんでした。』

 

 

女官の言う通りだ。私は物心がついた頃から、掟を守ってきた。疑いたくないけど、愛情を抱くことに対して、安心感と同時に未来への不安を感じていた。

 

それが、さっき現れた私の影だったんだ。

 

 

「次は?」

『貴女には“滅びの谷”に入ってもらいます。』

 

 

女官が指刺す先には、異様な雰囲気を放つ谷があった。

 

 

『私達があらゆる誘惑をするでしょう。』

「どうすればいいの?」

『貴女は感情と愛着を捨て去り、谷を抜けるのです。』

『さっさと行きなさい!!』

 

 

怒った面の女官が怒鳴り、女官達は谷に消えていく。

 

言われた通り、私は谷に入る。

 

歩いていくと、そこはエンドア、緑の月だった。辺りは炎が燃え上がり、反乱軍はみんな倒れている。その中には、知っている顔もあった。

 

 

「アリス!逃げて!!」

 

 

ハッとして振り向くと、レイアがAT-ATから逃げていて、私の方へ来ていた。

 

ところが、合流する直前でレイアは撃たれて倒れてしまった。

 

 

「レイア!!!」

 

 

私はレイアを抱えて、木の茂みに身を隠す。レイアの呼吸は荒く、フォースが弱くなっていくのを感じた。死ぬと分かってしまって、自分の無力さに心が張り裂けそうになる。

 

レイアの頬に触れると、彼女は弱々しく口を開く。

 

 

「アリス……どうして皇帝に会いに行ったの……?」

「え……?」

「貴女と…ルークは……最後の希望……なのに………」

 

 

そう言って、レイアは息絶えた。

 

そうだ、私はレイアや反乱軍を置いていった。皇帝を倒す為に、ルークと第二デス・スターへ向かったんだ。アナキンは光明面に再転向せず、ルークはシスに降った。

 

そして、私は心を壊された。

 

正気に戻った私の頬には、涙が流れた。

 

 

「どうすれば良かったの……?」

 

 

小さく呟くと、誰かに肩を叩かれた。

 

見上げると、見覚えのある男の子がいた。少年は優しく微笑み、私の涙に触れる。だけど私を気遣う少年のことを思い出せず、鋭く咎めてしまう。

 

 

「貴方は誰……?」

「僕はただの案内人。お姉さん、苦しいよね。お姉さんが泣かなくていいところに行こう。」

「え…」

「目を閉じて、僕の手を取って。」

 

 

言われた通りに手を伸ばして、少年の手に触れる。

 

瞬きした瞬間、全く違う景色が広がっていた。

 

私がいるのは、ナブーの邸宅だった。これも見覚えある。ここは、ネイベリー家の別荘だ。手を離すと、少年は私を安心させるように微笑む。

 

少年の向こう側にはパドメとアナキンがいて、2人の近くには女の子がいた。

 

 

「どういうこと……?」

「パドメ・アミダラが元老院議員をやめて、アナキン・スカイウォーカーがジェダイをやめた世界だよ。」

「アナキンがジェダイを………」

 

 

私が呟くと、少年はアナキン達のいるダイニングへと踏み込む。

 

 

「父さん!母さん!」

「ルーク、外出するなら声をかけてちょうだい。」

「レイア、兄さんの真似をするんじゃないぞ。」

「はぁい。」

 

 

アナキンとパドメの子供達を見て、これで良いのだと思った。パドメは子供達の為に、アナキンは家族の為に、最善の選択をしたんだ。何より、彼が暗黒面に苦しむことは二度とない。

 

スカイウォーカー家を微笑ましく見ていると、優しく肩を抱かれた。

 

 

「アリス」

 

 

夫のダンタムが、私を抱いていた。

 

私達に気付いたアナキンとパドメは、手を振る。

 

 

「来ていたのか。」

「一緒にディナーはどう?」

 

 

2人に誘われて、私とダンタムは中へ入ろうとする。

 

いや、こんなことあり得ない。

 

 

「パドメとアナキンは死んだ。」

「どうしたの、アリス?」

「大丈夫か?」

 

 

心配そうな2人に、私は後退る。

 

そう、2人はとっくに死んでいる。家族4人揃ったスカイウォーカー家を、現実で見られるはずがない。何かが違うんだ。

 

だけど、これは私が願っていたことだ。

 

 

「………大丈夫。」

 

 

否定の言葉を飲み込み、何事もなかったかのように笑顔を見せる。

 

きっと、フォースの女官達は失望しただろう。でも、私はこの現実が良い。パドメもいて、アナキンも暗黒面に堕ちない。子供達も戦いを知らずに、幸せに人生を送る。

 

こんなに良いことはない。

 

 

「アリス!大変!」

 

 

パドメの声に、私はホロニュースを観る。

 

そこには、炎上するコルサントが映されていた。

 

ニュースの内容は、悲惨なものだった。

 

パルパティーン最高議長がシスだと気付いたジェダイ評議会は議長のオフィスに向かい、逮捕を試みた。当然、議長は抵抗した。その結果、ジェダイは議長を殺害。元老院はジェダイの無惨さを否定し、ジェダイ・オーダーは権限を剥奪された。

 

つまり、ジェダイは共和国の敵になったんだ。

 

こんなの間違っている。

 

 

「私が元老院に、」

「ダメ!やめて……」

「アリス、」

「アナキン、ごめん。私が間違ってた。」

 

 

後の言葉は、アナキンに言ったんじゃない。フォースの女官に言ったものだった。目の前のアナキンは訳が分からず、私に首を傾げる。

 

ジェダイ・オーダーの滅亡は、避けられないもの。この幸せは、不幸の上に成り立つもの。フォースの意志は、それを私に分からせようとしたんだ。

 

だけど、一度アナキンと決別したからこそ、変わったこともある。

 

そう、忘れてはいけない。

 

 

「ありがとう、2人共。」

 

 

アナキンとパドメに感謝の言葉を伝えて、私は谷を抜けた。

 

私の命は、アナキンがくれたもの。彼が最後に親友として手を取ってくれたから、今の私がある。アナキンの想いをなかったことにしたくない。

 

谷を抜けると、フォースの女官が姿を現した。

 

何も言わない私に、女官は声をかけてくる。

 

 

『アリス』

「少しの間でも、夢を見せてくれてありがとう。」

『これで思いは固まりましたか?』

 

 

その問いに、顔を上げる。問いの意図は聞くまでもない。私は迷いなく肯いた。

 

 

『貴女はこれから、険しい道を進むことになります。』

「私は願いを叶えられる?」

『アリス、貴女自身がよく分かっているのでは?』

 

 

考えるな、感じろ。それが私の学んだことだ。考えて行動してはダメだ。自分の直感を信じよう。

 

 

「この次は?モラバンドでしょ?」

『いいえ、貴女には不要です。』

「え……?」

『ただ、貴女には厳しい訓練を受け続けてもらうことになります。覚悟はできていますか?』

「できてる。」

『分かりました。谷で得たものを、くれぐれも忘れないように。』

 

 

私は女官に頷く。

 

ここで学んだことは、ルークや後の世代に伝えなければならない。現存するジェダイ・マスターとして、その責任がある。

 

これからやることが、山のようにある。

 

 

『今後、貴女にはアナキン・スカイウォーカーが訓練を与えます。』

「………」

『学ぶ上で大切なものは、悟り、魂を知り、バランスを保つことです。アリス、フォースの意志は、更なるバランスを求めています。ジェダイとは何か、シスとは何か、心で考えるのです。』

「分かった。」

 

 

訓練が終わり、私はシャトルへと戻る。

 

今は、愛する旦那に会いたい。

 

滅びの谷で夢を見せられて、平常心を保つのは大変だ。でも、バランスを保つ為には無理矢理感情を抑えなければならない。ジェダイの自分を選んだからには、私は自分を律する必要がある。

 

未来の為に、今は耐え忍ばなきゃ。

 

 

「ダンタム……」

 

 

夫の名を呟き、私は舵に顔を突っ伏す。

 

ダンタムは、できることをやれと言うだろう。ジェダイも人間だ。できることは限られる。

 

でも、大丈夫だ。

 

私には、フォースが共にある。

 

それは、ダンタムも同じだ。

 

 

「我はフォースと共に……」

 

 

隣に座る霊体のアナキンに微笑み、私はハイパードライブを起動させる。

 

もうそろそろ、ジェダイだと胸を張って名乗れるかな。

 

私はジェダイ、ジェダイ・マスターのアリス・レインだ。

 

 

continue……

 

 






昔の執筆スピードが欲しい()
今じゃバンサ並み……orz
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