ジェダイ(仮)と理想主義者(笑)と退職(無断)者の小話。 作:夭嘉
クローンアリスの話が見たいと言われましたw
重い話ですがどうぞ(・∀・)
これは、とあるクローンの記録である。
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ヤヴィンの戦いから、7年前。
1体のクローンが誕生した。
否、誕生というより、完成だった。
科学者達は、あるジェダイのクローンを作っていた。ジェダイの名は、アリス・レイン。科学者達は、アリスのクローンを作っていた。
クローンはタンクの中で目を覚まし、科学者達は彼女を外に出す。
しかし禁忌に触れた科学者達は、生まれたてのクローンにフォースで頭を潰されて殺されてしまった。
「………」
彼女は手の平を見つめ、次いで死んだ科学者達を見る。
その姿は誰が見てもアリスで、声もライトセーバーの扱いも、アリスと同じだった。唯一の違いは、暗黒面を使い、ライトセーバーの色が赤いということ。そして、虹彩は金色に染まっていた。
彼女は死体を跨ぎ、まずプロジェクターを立ち上げる。
そこに映ったのは、皇帝パルパティーンだった。
彼女は、ホログラムの皇帝に跪く。
『立て、“尋問官”。』
「………はい、“マスター”。」
皇帝の指示に従い、彼女は立つ。
アリスのクローンを時間をかけて見た後、皇帝は静かに口を開いた。
『最初の試練は合格だ。余の期待によくぞ応えた。どれ程この瞬間を待ったことか……』
彼女はラボを見渡し、皇帝の言葉の意味を理解した。
「私が最初ではないのですね。」
『左様。今までのクローンは、期待外れだったのだ。1人目は良心が残り科学者共を殺せず、2人目は殺しを躊躇い、3人目は丸腰の者を殺せなかった。』
アリスのクローンには、刷り込みが施されていた。目覚めたらまず、自らを生み出した科学者達を殺せ、と。彼女は、それに従ったのだった。
だが、今までのクローンはそれができなかった。
クローンのホストであるアリス・レインは、ジェダイで、良心を持つ善人だ。人を殺さず、理性を保って踏み留まる。ホストの遺伝子が、クローンを踏み留ませたのだ。
そこで皇帝が考えたのは、刷り込みだった。
刷り込みでクローンに殺人指令を与え、科学者達を殺させた。
そしてようやく、躊躇いなく、彼女は科学者達を殺すことができたのだった。
「ご期待に添えることができ、光栄です。次は何をすれば良いのでしょう?」
『ホストであるアリス・レインのように、あらゆる経験を積むのだ。』
「経験……?」
『まずは、ダンタム・ルードという元老院議員に会うと良い。あの者はアリスを愛し、理解している。ルードに会えば、何をすれば良いか分かるはずだ。』
皇帝はそう話しながら、アリスとルード議員の資料を送る。
彼女は資料を見て、疑問を投げかけた。
「この資料によれば、私は尋問官ではおかしいのでは?」
『不満か?』
「はい。ホストであるレインがジェダイ・マスターなら、私は“シス”であるべきです。」
『“尋問官”、驕るでないぞ。其方はまだ未熟なのだ。やるべきことを果たし、結果を為せ。』
皇帝はそう言い、通信を切る。
残った彼女は、膝の上の手を怒りに震わせていた。なぜ自分は認められないのか、納得ができなかった。今のポジションは不相応だと、彼女は唇を噛む。
それから、彼女は尋問官の服を着て、元老院のオフィス・ビルへ向かった。
皇帝の指示通り、彼女はマスクをしてルード議員のオフィスをノックする。
『誰だ?』
中から返事が聞こえ、彼女は声高に名乗る。
「尋問官のファースト・シスターです。」
『………少し待て。』
ドアが開錠され、ルード議員は彼女を中に促した。目線はデスクの資料に向け、デスクに座ったまま彼女に要件を問う。
「何の用だ?」
「尋問官に対して、随分と嫌悪感があるようですね。」
「私はジェダイを知っている。貴女が元ジェダイなのかそうじゃないのか知らないが、私はジェダイを狩る尋問官を軽蔑している。」
「なら、なぜ議員を続ける?」
彼女はきつい口調で、ルード議員に聞く。
「民の為だ。」
「民?いや、違う。貴方は帝国を利用している。」
「どうしてそう思う?」
「“お前”の行動は矛盾だらけだ。」
彼女はマスクを取り、素顔を見せる。
ルード議員はその顔を見て、不快な顔をした。
「お前は誰だ……?」
彼は、反射的に敵意を抱く。
その反応に、ファースト・シスターは苛立ちを覚えた。
愛している女と同じ顔のはずなのに、敵意を向ける理由が分からなかった。動揺さえ感じない男に、彼女は睨み付ける。ルード議員は鋭い視線をものともせず、同じ質問をした。
ルード議員の反応に、彼女の方が動揺してしまっていた。
「私はファースト・シスターだ。」
「違う。何者だ?」
「………アリス・レインのクローンだ。」
「何が目的だ?」
「奴はどこにいる?」
「知らない。知っていても、教えてやる義理はない。」
「何だと……?」
彼女はやるべきこと、アリスの居場所を問い詰めた。
だが、ルード議員は言わなかった。
「私の顔を見ろ。」
「………」
「私を見ろ!!」
彼女は声を張り上げ、元老院議員の胸倉を掴む。
「なぜ奴を隠す!?レインはジェダイだ!お前が守る価値などない!!」
「何も分かっていないのはそっちだ。求婚を拒まれても、私は彼女を愛している。私が愛したのはジェダイではない。アリスという、1人の人間だ。」
「だが、」
「アリスは確かにジェダイだ。しかしそれは、アリスの人間性とは関係ない。これからもそうだ。」
ルード議員はジェダイのアリスではなく、アリスを1人の人として愛している。それは皇帝や尋問官に分かるはずもなく、彼も理解してもらう気もなかった。
彼女は服から手を離し、議員を突き飛ばす。
「なぜ私ではダメなんだ?何が悪い?同じ遺伝子だというのに。」
「君は愛されたいのか?」
「………」
「残念だが、例えアリスと同じ経験していても、君はアリスではない。本物のアリスは私を遠ざけ、危険から離そうとする。それも私を納得させ、言葉で距離を置く。」
それを聞いても、彼女はアリスを理解できなかった。
「皇帝がそう仕向けたのは分かる。だが、君とアリスは違う人間だ。クローンだからと、私は同じ存在として見ることはできない。」
「私は……!」
「最初の質問だが、嘘ではない。本当に会えないんだ。意図して会えば、君やヴェイダー卿、皇帝に予期されるからな。」
それは、アリスの案だった。
現に2人が結婚した時も、容易く尋問官に見つかっている。アリスとルード議員が屋敷で将来を考えた為、固定点となったのが原因だった。アリスが尋問官の襲来をヴィジョンで見た為に難を逃れたが、同じことは続かない。
結果、アリスは去ることを選んだのだった。
「最後に会った時、アリスは言っていた。遅かれ早かれ、私は尋問官に詰問される、と。まぁ、クローンの君だとは思わなかったがな。そんな君宛に、伝言を預かっている。」
「伝言……?」
「もし万が一私に何かあれば、密輸業者やギャング、あらゆるシンジケートに肩入れするそうだ。今の帝国は、彼らに手を焼いているのでは?」
アリスの意図が分かった彼女は、唇を噛んで怒りを抑える。
「あの女……!」
「同じ遺伝子だろう?」
「うるさい!!」
彼女は叫び、デスクのグラスを壁に叩き付ける。
「まるで子供だな。」
その瞬間、彼女はルード議員の首にプラズマの刃を添えた。しかし、何度も窮地を乗り越えてきた彼には通用せず、ヒルトを持つ彼女の手を問答無用で掴み下ろす。
「立場を弁えろ、“尋問官”。」
「一介の議員がほざくな!」
「ああ、そうだ。だが、私の方が立場は上だ。私に何かあれば、元老院も黙ってはいない。あぁ、君のことはアリスに言わないでいてやろう。」
ルード議員の言葉に、彼女はライトセーバーを収め、荒々しくオフィスを出て行った。
残された彼は、溜め息を吐く。
その数日後、彼は意図せずアリスと再会した。
それは彼がシャンドリラで、“パドメ・アミダラ”の意志を汲んだ会で、モスマやオーガナ、チューチーなどと会合した時のことだった。この会合は帝国も認知しているが、会合はただの建前だ。皇帝もヴェイダーも見向きしなかった。
アリスはその隙を狙い、シャンドリラへ潜り込んだのだった。
「アリス」
彼は展望台にいるアリスに声をかけ、横に立つ。
アリスの視線は、すぐに彼に移った。
「そろそろ会えると思ってた。」
「そうだな……」
「どうしたの?」
「尋問官がオフィスに来たんだ。君の言う通りに話したら、逃げていったよ。」
「それは私のアドバイスじゃなくて、ダンタムの交渉術の成果だよ。羨ましい。」
アリスは、交渉は苦手だと零す。
「過激な交渉は得意だろう?」
「やめてよ。あ。」
アリスのコムリンクに、R7-D4から通信が入った。
彼女は通信を切ると、ルード議員に謝る。
「時間切れみたい。気を付けて。」
「君も無茶はしないでくれ。」
「分かってる。愛してる、ダンタム。」
2人は別れのキスを交わし、アリスは展望台から飛び降りる。茂みで見えなくなった後も、彼は愛する妻を見送った。
そして、ルード議員は会合に戻っていった。
同じ頃、ムスタファーではファースト・シスターがヴェイダーに跪いていた。
皇帝と連絡ができず、彼女はもう1人のシス、ダース・ヴェイダーの下へ訪れたのだった。
「ファースト・シスター、皇帝陛下はお前に失望しておられる。」
「私は……」
これから起こることに身を震わせ、彼女はまともに話すことができなかった。
「奴と唯一の繋がりがあるダンタム・ルードをどうにかできぬならば、お前に価値はない。よって、お前を処分せよとの御命令だ。」
「そんな…!?私はまだ、っ…!!」
左腕を切り落とされ、彼女は床で踞る。
だが、ヴェイダーの裁きは終わらない。
「お前はただのクローン。選択の自由はない。」
ヴェイダーは容赦なく首を切り落とし、彼女は絶命した。
そして、新しいクローンが再び誕生する。
そのクローンはまた同じ試練を繰り返し、皇帝の期待に応えようと働き、同じように処分される。誕生と処分、何度も繰り返された。
ヴェイダーは元親友と同じ顔のクローンを見下ろすが、何の感情も抱くことはなかった。
皇帝だけでなく、ヴェイダーも期待していたが、どのクローンも期待に応えることはできなかったのだ。
皮肉にも、ルード議員だけがクローンに同情していたのだった。
continue……