ジェダイ(仮)と理想主義者(笑)と退職(無断)者の小話。 作:夭嘉
今回もリクエスト回です!
旭日提督様のリクエストです。
最後に処分された残酷なクローンの話のご要望でした。
私も完全に忘れていたので、新鮮で楽しかったですw
ストーリー的には少し重いかもしれませんw
では、お楽しみ下さい←
コルサントのとある施設、とある部屋で、1人の女性が報告書を見ていた。
その報告書は、“アリス・レイン”のクローンで、尋問官として動いていた。だが本物のアリスに呆気なく敗れ、その首はモールに切り落とされた。死んだクローンの尋問官は、皇帝から失敗作と言われ、アリスへの捨て駒の為だけに生かされたクローンだった。
その報告書を読む彼女も、アリスのクローンだった。彼女は他のクローンとは違い、ダース・シディアスのテストを全て突破したクローンの、2人の内の1人だ。更に、彼女は異例のクローンだった。
異例だったのは、アリスの姿をしながらも、何一つ情を示さないことだった。これは皇帝の目にも止まり、本来厳選されて1人だけ残るはずのクローンが、2人残る事由にもなった。彼女はその残酷さを隠すことなく、与えられた尋問官という役目を滞りなく熟した。
報告書を見たそんな彼女は、内容を読んで鼻で笑った。
「当て馬にもならないじゃん。」
彼女はテストを全て合格していて、シディアスの指示を待っていた。
だが、彼女は退屈していた。
皇帝、もといシディアスの為に作られたが、何の指示もない。それは同施設にいる、もう1人のクローンも同じだった。しかし、彼女はもう1人のクローンを越える為に、行動を起こした。
彼女は施設を出て、トルーパー小隊の1つに命令を下した。
それは、かねてからスパイの疑いがある補佐官を、反逆罪で逮捕するというものだった。彼は元々ルード議員の補佐官で、彼の好意でリステ大尉を補佐していた。ところが、リステ大尉と一部の将校しか知らない機密のいくつかが、反乱組織に漏れているのだ。スパイなのは確実だ。
そして、スパイを逮捕させ、彼女は一芝居演じることにした。
囚人服を着て、トルーパーに自分を連行させた。更に、軍には箝口令を出して、別のスパイにルード議員へ報告させた。彼女の思惑通り、ルード議員は“アリス・レイン”との面会を要請してきた。それと同時に、彼は“アリス・レイン”の解放と酌量を要求してくる。
彼女はそれを受け入れさせ、ルード議員は迷うことなく独房へ会いに来た。
「アリス!!」
トルーパーの目も憚らず、ルード議員は彼女を気にかける。それから、ルード議員はトルーパーに2人で話したいと言って、部屋から追い出そうとする。トルーパーはさすがに危険だと言うが、知り合いだから大丈夫だと追い出した。
2人きりになり、彼はすぐに彼女の手錠を外した。
「あれほど気を付けろと言ったのに……!」
「でも、補佐官が逮捕されたって、」
「君の安全の方が心配だ。早く逃げるんだ。」
「なら、一緒に逃げて。」
「私は大丈夫だ。帝国に賛同している。誰も疑っていない。だから君は逃げろ。」
何も疑わず自分を逃そうとするルード議員に、彼女は思わず笑いそうになる。
それを堪えて、データを元に彼を罠に嵌めていく。
「逃げない。私が逃げたら、貴方が疑われる。大人しく皇帝と会ってくるよ。」
「ダメだ。本当に逃げられなくなるぞ。頼む、逃げてくれ。」
彼女は、ルード議員の懇願は正しいと思った。
もし本当に“アリス・レイン”を捕らえていたら、コルサントに連行され、シスの術で拘束されるだろう。従順になるまで拷問も行われて、シディアスは心を折ろうとする。その過程でルード議員も、今度はふりではなく、本当に従うことになるだろう。
「だったら貴方も来てよ。人質にされたら、私も堪えられない……!」
「人質にされても構わない。さっき補佐官を呼んだ。一緒に行くんだ。」
「本気なの……?」
「ああ。」
ルード議員は、彼女を抱き締める。一瞬間があったが、ルード議員は彼女を強く抱き締めた。彼女は顔が見えないのを良いことに、笑みを浮かべる。
「愛している、アリス。」
「私も……」
「議員!手配ができ……」
そこへ、ルード議員の現補佐官が部屋に入ってくる。
2人が離れて顔が見えると、現補佐官の男は戸惑いを見せた。正にキスをしようとしていたところだった。だが、彼はそんなことよりもあり得ないことに戸惑っていた。
「マスター・レイン……?」
「ああ、そうだ。彼女がアリスだ。すまないが、アリスを案内してくれ。」
「彼女をですか?でもマスター・レインは、ケイト・ニモーディアで捕まったはず……」
そう、本物のアリスはケイト・ニモーディアで尋問官に連行されたばかりだった。彼女はその報告書も見て、こうして赴いたのだった。本物のアリスがどこで捕まったとも知らないルード議員を、彼女は罠にかけに来たのだ。
ルード議員は、部下の言葉に彼女を見る。
「ケイト・ニモーディアだと……?」
「フルクラムの情報だと、皇帝とホロ通信する予定で、なので、っ!議員!!」
「っ!?」
間髪入れず、彼女はブラスターでルード議員を狙った。しかし補佐官の男が庇い、代わりに彼が撃ち殺されてしまった。その銃口はすぐに議員に向けられ、彼は手を上げる。
「お前はクローンか。」
「そうだよ。惜しかった。もう少しでキスしそうだったのに。」
「なぜ彼を殺した?」
「秘密がバレたら殺すしかないでしょ。」
彼女はさも当然のように言い放つ。
「外道め。」
「その外道とキスをしかけたのに?」
「………私も殺すのか?」
「どうしてほしいの?」
彼女は、ルード議員を簡単に殺すことができる。皇帝からの許可も得ている。議員の1人くらい、彼女はそう考えていた。
だが、彼女の中で欲が芽生えた。
本物のアリスは、この男に愛されている。それを奪ってしまえばいい。奪う方法は、たくさんあるのだ。
彼女はルード議員をフォースで押し飛ばし、彼の上に馬乗りになる。
「っ……」
「暴れないでよ。怪我するよ?」
「黙っていられるか!」
「っ…!!」
頭突きされ、彼女はふらついてしまう。
その隙を逃さず、ルード議員は身体を捻って起き上がり、彼女を組み伏せる。彼女は生まれたてのクローンで力はあるが、議員は体術師範だ。実戦の経験もある。
逆転になるのは必然だった。
彼女は身を捩っても動けず、歯を食い縛る。
「この……!離せ!肩書き以外価値もないくせに!」
「さっきまでアリスだと錯覚していたのに、最早別人だな。」
「黙れ!!」
「本物のアリスはどこだ?」
「あはははっ!」
ルード議員の問いに、彼女は笑う。
「何がおかしい?」
「私がここに来た時点で手遅れだよ。」
「っ!?」
ルード議員は彼女から離れ、急いで独房を出る。
その背に、彼女は声を張り上げる。
「あんた達に明るい未来はない!精々苦しめばいい!」
ルード議員はひたすら走った。
残された彼女は倒れたまま宙を見つめて、1人笑っていた。
帝国に敵うものはない。例えジェダイだとしても、だ。彼女はそう思い、ルード議員とアリスと嘲笑う。
「陛下に逆らったら死しかないのに。」
彼女は起き上がり、施設へと戻っていった。
その日の夜、補佐官の遺体は密かに処理され、ルード議員はコルサントに戻ることはなかった。
彼はパルチザンのゲレラにコンタクトを取り、アリス救出の為に奔走したのだった。
その後、クローンの2人はアリスと皇帝の取引で、ヴェイダーにより処分された。
死の直前、彼女は閲覧したデータを思い出す。資料によれば、アリスは皇帝にとって最重要人物だった。皇帝直々の命令で、拘束を指示されていた。
アリスを従わせる為なら、皇帝は迷いなくクローンを切り捨てる。今までもそうだった。何人ものクローンが処分された。彼女はそれに気付かず、鼻で笑っていた。
自分もその中の1人なのに。
本物のアリスが捕まれば自分は不要なのだと、彼女は死ぬ直前に悟ったのだった。
continue……