ジェダイ(仮)と理想主義者(笑)と退職(無断)者の小話。 作:夭嘉
ジオノーシスの戦いから1年前。
ナブーの屋敷にて、私はパドメの護衛任務に就いていた。
久しぶりの静かな時間に、私とパドメはボートで涼む。湖の上にいると冷たい風が吹き、ナブーの夏が嘘のように感じる。その心地良さを、パドメが教えてくれた。
私はボートをゆっくり漕ぎながら、パドメに声をかける。
「そろそろ戻らなくても良いんですか、議員?」
「ネル、今は私達2人よ?畏った話し方はやめてちょうだい。」
「ごめん……」
小さく謝ると、パドメがオールを漕ぐ私の手を止める。
「パドメ……?」
「最近、元気がないって聞いていたの。」
「え?」
「マスター・フィストーに、頼まれたのよ。貴女の悩み事を聞いてほしいって。」
「マスターが………」
ここ数日、感情を上手く隠せていなかったようで、マスター・フィストーに迷いを悟られたらしい。
マスター本人からも問われたけど、私は頑なに話さなかった。
「私に話して?マスター・ジェダイ達には言わないわ。」
パドメにも、簡単に言えることじゃない。
ジェダイや共和国を裏切って、シスになる。
なんて、パドメには言いたくない。いつかサヨナラすると分かっていても、パドメには言えない。友情を築けたから、彼女を裏切るのが辛い。
「言えないよ……」
「どうして?私が力になるわ。」
「………無理だよ。」
「ネル……?」
「無理なの。」
2日前、私は主からシスの名を戴いた。その名も、ダース・ルシル。過去であるネルの心を捨て、ダース・ルシルとして生きるんだ。
私は、別人となる。
シスの名を与えられたということは、ほぼ全ての準備が整ったということだ。
もうすぐ、パドメともお別れしなければならない。
「ねぇ、ネル。もしこれが戦いの最中なら、私は貴女を守るわ。」
「私が守られるのは、」
「ジェダイだということは分かってる。でも、心は?貴女の心は、まるで剥き出しのようだわ。」
「私は……ジェダイだよ。身も心も自衛できる。」
嘘だ。
心は既に、シディアス卿へ差し出した。シスに心なんて必要ないから。私は主に従うだけ。
「そうは思えないのよ……」
「パドメ、ごめん。いつか話すから。今は何も聞かないでほしい。」
ただし、心の内を明かす時は裏切る時と同じだ。
「本当に、それで良いの?」
「うん。大丈夫だよ。夢のことを話したでしょう?その為に、できることをしているだけだから。」
「ネル、貴女は幸せなの?」
「もちろんだよ。」
笑顔で言えば、パドメは私の方へ寄って抱き締めてくる。彼女は離れようとする私を離さず、表情が見えないように顔を突っ伏す。パドメは黙ったまま、しばらく私を抱いていた。
何を優先しなければいけないのか、よく分かっている。パドメやアナキンでもなく、自分でもない。夢を叶える為には、主の命令が最優先事項だ。
そして、パドメはようやく口を開く。
「ネル……」
「パドメ……?」
「貴女が心配よ。」
「心配なんて……」
「ネルが遠い人になってしまいそうだわ……」
何かを感じたのか、パドメはそう言う。
間違ってはいない。私は彼女から離れることになる。友達ではなくなるんだ。戦争が始まれば敵だ。
元はと言えば、共和国がジェダイを頼るのがいけないんだ。マスター・ドゥークーも、そんな共和国とジェダイ・オーダーに嫌気が差して去った。今のジェダイは、本来の姿を忘れている。
私も、ジェダイである自分が嫌だ。
早くこの苦痛から解放されたい。
「もう戻ろう?」
「……」
「大丈夫だよ。私は私だから。」
「ネル、無理はしないで……?」
「うん。ありがとう、パドメ。」
パドメが私から離れて、私は再びオールを手にする。行きと同じようにゆっくり漕いで、ネイベリー家の別荘に戻った。船乗り場でパドメを降ろし、私はもう一人のジェダイと護衛を交代する。
「ナイト・クラウド、最高議長が呼んでいます。」
「分かりました。」
ホロ通信に出る為に、私はシャトルへと戻る。
恐らく、主の準備ができた報せだ。もうこの別荘に来ることもないだろう。今日が、パドメとの最後の時間になった。
別れは突然訪れる。
ジェダイの教えで学んだことは、それだけだ。
早く、早くジェダイをやめたい。
continue……
短いかもwww
エピソード2の前日譚です!