ジェダイ(仮)と理想主義者(笑)と退職(無断)者の小話。 作:夭嘉
目を覚ますと、磁気フィールドで拘束されていた。逃げられないようにカフの内側には棘があり、四肢に毒を流し込まれている。意識のある状態で、逃がさないようにする為だろう。
「ご機嫌よう、ルシル卿。」
タイミング良く、私を拉致した男が入ってきて、丁寧にお辞儀をする。
「この場所、貴女はよくご存知でしょう?」
「そうだね。本当に連れてきたんだ?なんでここなわけ?」
私がいるのは、ヤヴィン第4衛星。通称、ヤヴィン4。かつて反乱軍の基地だった、マサッシ遺跡だ。
この遺跡には、シスが眠っている。エグザ・キューンという、古代のシスだ。彼は肉体と精神を分離して、銀河を脅威に曝した。私が反乱軍に入った時に封印を強化したけど、復活しないという断言はできない。
「貴女に封印を解いてもらう為ですよ。」
「するわけないだろ。調子に乗るな。」
「痛い目に遭いたくはないでしょう?封印を解くだけで良いのです。簡単なことでしょう?」
「あはははっ!馬鹿じゃないの?私はシスだよ。ちょっとやそっとの痛みじゃ苦痛は感じないから!」
「減らず口を……!」
男はエレクトロスタッフを振り被ろうとする。
その瞬間、私はシスの秘術を使って口から毒霧を吐き出す。男が毒に悶えている隙に、自らフォース・ライトニングを浴びて、磁気フィールドをショートさせた。フィールドが消えた後、私はカフを外して男のエレクトロスタッフを奪い取る。
電磁モジュールの威力を最大にして、男を殴り飛ばした。
「ぐっ…!?」
「馬鹿な男。シスに喧嘩売るなんてね。」
「毒が回っているはずだ!なぜ動ける!?」
「だからその毒を返したんだよ。知らないわけないよねぇ?私はシディアス卿に“シスの奇才”と皮肉られた女だよ。」
シスの奇才、その由来は私がシスの秘術に長けているから。フォース・ドレインに始まり、炎を操ったり、人形を作ったり。シディアス卿の誤算は、私が愛を知ったこと。
愛を知る私は、シディアス卿よりも強い。
「さて、終わりにしよう。」
「終わらせるか!!」
男はナイフで自分の首を掻き切り、絶命して倒れる。
真っ赤な血が地面に広がり、呆気ないとがっかりしてしまった。
「つまらな、え…?」
嫌な気配を感じ、男の死体から離れる。
今まで感じたことのない寒気が、私を襲った。
何かが足元を通り、その気配は死体から何かを奪う。男の額には毒虫のマークが現れ、死体は急速なスピードで干からびていった。ここにいたら私も危ない。そう思ったのに動けなかった。
毒虫のマークで何が起きているのか分かっていたのに、恐怖の方が勝って逃げることを諦めてしまった。
『ダース・ルシル……』
「っ!?」
突如伸びてきた手に首を掴まれ、壁に叩き付けられる。
「っ……」
靄の中から人影が現れ、その額には毒虫のマークがあった。
最悪の事態だ。エグザ・キューンが目覚めてしまった。精神体とはいえ、かなり厄介だ。肉体があっても厄介だけど、肉体がないから直接手出しができない。
それに、エグザ・キューンは“2人の掟”ができる前のシス卿だ。あの頃のシス卿は、ジェダイと渡り合い、簡単に殺せる程の強い者ばかり。私1人では太刀打ちできない。
更に悪いことに、エグザ・キューンはこの時代のシスを認知している。
勝ち目はない。
『ダース・シディアスの弟子、ダース・ルシルよ。わしに肉体を寄越せ。』
「断る……!」
『任意だろうとなかろうと、貴様に拒否権はない。』
「はな…せ……!!」
フォースで押し返し、私は逃げ出した。逃げ切れるか分からないけど、逃げなければならない。奴に暗黒面の力を奪わせるわけにはいかない。
どうして復活したのか分からない。
私は封印を解いてない。復活できる要素はないはずだった。そもそも、最後のシスである私しか封印に触れられない。
『逃がさん。』
「いっ……!」
キューンのフォースに捕まり、私は無理矢理振り向かせられる。
「どうやって…!」
『自ら首を切った男が、わしに命を差し出したのだ。封印を抜け出すには、それで充分。貴様の緩い封印なぞ、取るに足らん。』
抜け出した方法がどうであれ、キューンを解放するわけにはいかない。
「お忘れみたいだけど、この時代のシスのトップは私。私が唯一のシスなの。私の天下を奪わせるわけないでしょ。」
『ほぅ?どうする気だ?』
辺りにフォース・ライトニングを放ち、遺跡の壁や天井を崩しまくる。
私は解放され、その隙に遺跡の外へ脱出する。
すぐにシスの秘術で結界を張り、キューンが出られないように何重にも張った。奴を外に出すわけにはいかない。結界には生命エネルギーを使っていて、私は次第に体力を失っていく。
最悪の事態も考えながら、息も絶え絶えに膝をついてしまう。
『いつまで保つだろうな?』
嘲笑うような声が、フォースに乗って聴こえてくる。
もう、ダメかもしれない。
『諦めの悪い小娘だ。』
「しぶとさじゃ、私がシスの中で一番だよ。」
フォース・ドレインで奪ってきた分の生命エネルギーは絶え、自分の生命エネルギーも使う。
「フォースと共に………」
そう呟き、最後の手段を使おうと覚悟を決める。
古代シス語を唱えようとした瞬間、誰かが私の手に触れる。
「エレノア、もういい。」
「で…も………」
「僕“達”に任せて。」
そう言われて、私は結界を解く。
駆け付けたルークの後ろには、キップ・デュロンやカイル・カターンなど、彼の弟子として従事している若者達がいた。
結界が解除された途端、キューンの霊体が遺跡の外に飛び出してくる。
『ジェダイか。』
「そうだ。僕はルーク・スカイウォーカー。僕と仲間が、お前を止める。」
『無駄だ。ジェダイにわしは止められん。』
その通りだ。ジェダイは、シスとは違って何もできない。だから私が止めていた。
「そんなこと分かっているさ。」
「ジェダイにもできることはある。」
ルークの弟子達が口々に反論する。
「エレノア」
そんな中、ルークが私に声をかける。
「ジェダイとシスが手を組む時だ。」
「本当にいいの?正確には、ジェダイがシスに手を貸すってことだよ。」
「それを言うなら、シスだってジェダイを助けているだろ。」
ルークが言っていることは、何となく分かった。
ジェダイがシスを支え、シスはジェダイに力を貸す。今まで有り得なかったことだ。前例すらない。
でも、やる価値はある。
「始めるよ。」
「キップ!カイル達と援護を!」
「分かりました!」
私は古代シス語を唱え、ジェダイ達に力を分ける。
キューンは、魂を生き延びさせる為に生命エネルギーを溜め込んでいる。まずはそれを剥がし、それから奴の魂を破壊する。さもなければ、私の肉体を奪われる。
私の身体は私のものだ。
『ダース・ルシル!その生命エネルギーはわしのものだ!』
「元々は奪ったものでしょ。」
口端を上げ、私は仕上げにかかる。
デュロン達は私が与えた力で、キューンの魂を破壊していく。ルークも同じように魂を破壊して、キューンの霊体はもがき苦しむ。私が魂の深い部分を潰していくと、キューンは抵抗して腕を伸ばしてくる。
それをデュロン達が止めて、私は更に集中する。
『許さん!許さんぞダース・ルシル!!』
「強い者が勝つ。それがシスの世界でしょう?私はあんたよりも強い。ジェダイもいるしね。」
『愚かな!シスはジェダイなんぞと手は組まぬ!シスこそが銀河最強なのだ!』
「残念だけど、時代は変わったの。」
ついにキューンの魂は完全に破壊され、霊体も消えた。今度こそ魂が破壊され、キューンは二度と復活することはない。もし地獄から這い上がってきても、“私達”が許さない。
私はキューンの霊体がいた場所に声をかける。
「あんたこそ役不足だっての。」
この時代のシスは、私だけだ。
「エレノア!なんで呼んでくれなかったんだ!?」
鼻で笑ってやると、ルークに怒られてしまった。
「えぇ?だってあんたジェダイじゃん。」
「母が素直に助けを呼べと、常日頃から言ってるだろ!」
「ごめん。でも来てくれてありがとう。デュロン、あんた達も。」
デュロン達はただルークに従っただけだけど、来てくれて良かったことは変わりない。
「そういえば…忘れてた。」
「ん?どうしたんだ?」
よっこらせと座り込み、私は岩を枕にして寄り掛かる。
「毒打たれたんだよね〜解毒しないと〜」
「なぜそれを先に言わないんだ!?」
駆け寄るルークを見たのを最後に、私は眠気に身を任せた。
結局、アナキンはヤヴィンに来なかった。
フェラスとステファニーが、シャンドリラでアナキン率いるジェダイ・オーダーで守られているのはありがたい。でも、できることならアナキンが来てくれたら嬉しかった。今回のことを機に、何かが変わってくれたら良いと思う。
アナキンは、パドメと同じく私の友人なのだから。
continue…