ジェダイ(仮)と理想主義者(笑)と退職(無断)者の小話。 作:夭嘉
私は不貞行為が大っ嫌いだ。
つまり、浮気のこと。
理由は単純、裏切りと同義だから。だって、それは私から離れるってことだし、私以外を見るってことだから。余所見は許さない。
離れるならケジメをつけてからでしょ?
「ダライアス・カートンって知ってる?」
「ええ。なぜですか?」
「最近言い寄ってくる人。」
「何ですって!?」
パドメに話したら、驚いていた。
ダライアス・カートン、彼はDKって呼んでほしいらしい。DKは最近反乱軍に入ってきた人で、私に猛アプローチをかけてきていた。面白半分で付き合ったものの、どうやら浮気している。
「で、試しに付き合ってみたんだけど、浮気されてる。」
「なぜ私に言うのですか?」
「だって経験豊富でしょ?」
「………」
「何?」
「貴女の方が多いと思うわ。」
それは悪い意味でね。
やっぱり落とし前つけさせるべきだよね?
丁度良いタイミングだし、DKのことを解決するか。
「マスター・ジェダイ♪」
ケイナンに声をかけたら、心底嫌そうな顔をされた。
「なんで嫌そうな顔をするの!?」
「あんたの機嫌が良すぎて嫌な予感がするんだよ。」
「何も企んでないって!これから任務でしょ?私も行きたい。」
「………」
「だからなんで嫌そうな顔をするの!?」
「エレノアから言い出すのは気味が悪いからな……」
「ひどくない?」
任務のメンバーはケイナンとDKだ。それに私も同行することになった。もちろんモスマ議員にきちんと“話した”。
何も脅すようなことはしてない。
「なんだ、ネルも来るのか?」
「そ!よろしく!」
DKに笑顔を見せ、私はルンルンでシャトルに乗り込む。2人が乗り込んだところでハッチを閉め、ケイナンが舵を握った。副操縦席にはDKが座る。
今回の任務は、帝国のTIEファイター工場の破壊。1つでも減れば、帝国の戦力減少に繋がる。1つ1つが小さくても、数が増えれば、塵が積もるように大きな損害になる。
ハイパースペースに入った後、ケイナンがオート操縦にして3人で休憩に入る。
「アミダラ議員から聞いたんだが、2人はそういう関係なのか?」
「そうだよ?」
ケイナンの前でDKにキスすれば、2人共なぜか怒り出す。
「エレノア!イチャイチャさせる為に同行を許可したわけじゃないぞ!」
「その通りだ!あと人前でやめろ!」
「そっちが本音?」
「人前でやると恥ずかしいだろ!」
「そうかなぁ…?」
「とりあえずやめろ。」
DKに諌められ、私は渋々やめた。
「ねぇDK、任務続きだから休みなよ。」
「いいのか?ケイナンも大丈夫か?」
「俺は大丈夫だ。遠慮するな。」
「そうか。なら休ませてもらうか。」
DKは貨物室へ向かい、1人休みに入った。
私はケイナンと2人になり、壁を背に気を緩める。
「エレノア、わざと追い出したのか?」
「ちょっと待って。」
コックピットから出て、そーっと貨物室を覗くと、DKは爆睡していた。
静かに戻ると、ケイナンが変なものを見るかのように私を見る。
「あの人、浮気してる。」
「なぜ言い切る?」
「この前見ちゃったんだよね……」
ホロ通信で浮気相手とイチャイチャしてるのをね。
ムカつくったらありゃしない。
「どう聞いても恋人同士の会話だったし、絶対浮気してる。」
「それは残念だったな。」
「ほんと、残念、だよね。」
「今強調したな。」
「他意はないよ?」
やがて目的地に着き、ケイナンがDKを起こしに行く。
私が先に降りて、トルーパーの数を確認する。その後からケイナン達が来て、私達は作戦を練り始めることにした。今回は、ケイナンが司令塔となる。
「トルーパーの数が思ったより多いな。」
「………」
「エレノア、やけに静かだな。」
「そう?ちょっと考え事してて。トルーパーが多いのは仕方ないとして、工場にはどう潜入する?」
「俺が工場の通信センターへ行く。お前達は合図を待って潜入するんだ。」
「ダメ。ケイナンが行って。」
私の言葉に、DKとケイナンは問題ないと言い張る。
そうもいかない。これはケイナンの為でもあるんだから。浮気するような奴、DKには任せられない。
「陽動ならDKでも問題ないだろ。」
「こういう場合、私かケイナンのどちらかの方がいい。不測の事態になった時、その方が柔軟に対応できるし。」
「おいネル、さっきから何なんだ?変だぞ。」
「自分の胸に手を当てて、よくよく考えてみなよ。」
「はぁ?」
「浮気、してるよね?」
「なっ……!!」
ストレートに問い質せば、DKは狼狽える。
「私が知らないと思った?」
「っ……すまん。」
「別に、浮気に関してはそこまで怒ってない。この話は後にして、さっさと任務を始めよう。ケイナン、そういうわけだから行ってきて。」
「ったく……痴話喧嘩は帰ってからにしろ。」
「喧嘩はしないから安心して。」
満面の笑みを見せれば、ケイナンは呆れた表情で工場へ入っていく。
作戦は、単純。
ケイナンが馬鹿正直に正面入口から入って、帝国軍の気を引く。所謂陽動だ。その間に、私とDKが密かに侵入。それぞれ爆弾をセットしたら脱出して、3人合流する。その後、遠隔で爆破してサヨナラだ。
しばらくして工場が騒がしくなり、私とDKは侵入する。
私がTIEファイターに爆弾をセットして、DKは帝国のトランスポートに爆弾をセットする担当だ。
一通りセットして合流ポイントに着いたけど、来たのはケイナンだけだった。
「DKは?」
「俺は会ってない。」
「まさか……」
「クソ!戻らないと!」
一番の可能性は、DKが捕まったこと。浮気するような奴だけど、見捨てたりはしない。仕方ないから助ける。
ケイナンはDKのことが好きじゃないみたいだけど。
だってあいつ、性格悪いし?
「エレノア、何を隠している?」
「何も隠してないよ。ほら、入るよ。」
通信センターに入ると、トルーパーが2人いた。撃ってこようとするのを、ケイナンと1人ずつ請け負い、気絶させる。ケイナンが制御パネルを触ろうとするとアラートがなり、応援のトルーパーが続々と通信センターに入ってくる。
まさかの事態に、私達は手を上げる。
「はい、降参しまーす。」
「エレノア!」
「多勢に無勢って言葉知ってる?」
「そうじゃないだろ!」
2人手錠をかけられ、私達は連行される。
連れて行かれた先は工場のハンガーで、提督の1人が待ち構えていた。
つまり、作戦は失敗したということだ。
「エレノア・クラウド、よくも平気で顔を出せたな!」
「私だって好きで来たわけじゃないし。」
「しかし聞いた話では、自分で来る選択をしたそうじゃないか。」
「その通りだ。」
「ケイナン!どっちの味方!?」
「どっちもないだろ!あんたが付いてくるって言ったんだ!」
どうやら私のことは嫌いらしい。
嫌いなのは別に良いけどね。そもそも私は元シス卿だし。善人のジェダイと友達になった覚えはないから。
「ケイナン・ジャラス、この女に振り回されたのが運の尽きだ。」
「ところでさ、私達の連れ知らない?」
「あぁ、そんなのがいたな。連れてこい。」
ケイナンはその言葉に、落胆する。本当に捕まっていたとは思わず、彼は唇を噛む。3人とも捕虜になったとなれば、脱出が難しくなる。寧ろ逃げられるかどうかすら怪しくなる。
「お前……!?」
だけど、現れたDKにケイナンは落胆ではなく絶句した。
「見捨てれば良かったのにな。ジェダイの悪い癖だ。」
DKは捕虜ではなく、裏切り者だった。
彼は手錠をされていなくて、提督の隣に立った。ケイナンを見た後、DKは私を見て鼻で笑う。馬鹿にしたような視線に、私は真顔のまま彼を見上げた。
「悪いな、ハニー。俺は帝国と組むことにしたんだ。爆破装置も解除してある。」
「何?爆破装置があったのか?なぜ言わなかった?」
「DK!!!」
ケイナンは黙っていられず、怒鳴ってしまった。
提督は爆弾のことを知らなかったようで、DKを詰める。
「解除したんだから必要ないだろ。それで、この2人はどうする?」
「もちろん尋問した後、処刑だ。」
「そりゃ残念。」
「ふっ…あはははっ!!」
そこで私の我慢が限界に達して、笑いが込み上げてきた。
その様子に、周りの全員が私を奇怪な目で見る。
「何がおかしい!?」
提督が我に返り、私に怒鳴る。
「いや、だって……」
「ネル、状況を理解できていないようだな。」
「その言葉、そっくりそのまま返そうか?」
「何だと?」
「あのさ、浮気に気付いてたのに、この私が裏切りに気付かないと思った?」
見てないのに、ケイナンの怒った表情が見えたような気がした。
ハイハイ黙っててごめんねー。
「だったら…!!」
「だから言ったでしょ?浮気“は”もう怒ってないって。私が怒ってるのは、反乱軍を裏切ったこと。」
怒りは私の力になる。こんな怒りは久しぶりだ。DKにはそれ相応の報いを与えよう。
とても気分が良い。
「この女を今すぐ殺せ!!」
「無駄だよ。」
提督が動揺するが、もう遅い。私は提督にフォース・チョークをかける。彼は首を押さえて足掻くけど、次第に意識が遠退き始めた。ケイナンは私を止めようとはせず、視線を逸らされた。
そして、提督は息絶えた。
人形のように倒れた提督に、DKは顔を青くさせる。
当然だ。私の本性を彼に見せたのは、これが初めてだから。とても冷たく、残酷で、無慈悲。これが私だ。
「う、撃て!!」
DKは慌てて指示を出すが、既に手遅れだ。
「さて、ケイナン。逃げよっか?」
「………ああ。」
トルーパーの撃ったレーザー弾で、私とケイナンは手錠を壊し、自由になった私達は急いでハンガーから出ようとする。逃げる私達に、DKは怒り心頭で追いかけてきた。
あまりにしつこく、TIEファイターの間で撃ち合いが続く。
「ねぇダーリン、その起爆装置、本当に無効化されたと思う?」
「俺がやったから間違いない!嘗めるな!」
「へぇ?」
私の楽しそうな顔に、ケイナンはどうしたのかと問う。
「ケイナン、ワイヤーある?」
「あるが、なぜだ?」
「脱出経路は上ね?」
「はぁ……分かったよ。」
ケイナンが用意すると同時に、私はDKに声をかけて前へ出る。
「降伏しろ!命は惜しいはずだ!」
「残念ながら、私は死を恐れてない。それこそ、あんたの方が恐れるべきだよ。」
「いい加減に、っ!?」
DKは足元を見て、即座に私を見る。
「燃料が……!」
「ただ逃げてたわけないでしょ。ケイナーン?」
「行くぞ!」
「待て!!!」
ケイナンがワイヤーを天井に引っ掛けたと同時に、私の手を掴む。そのまま天井の骨組みに足がかかり、私は下を見下ろした。DKは私を狙い撃つが、足元の燃料で集中できず全て外れる。
「言っとくけど、こっちが本物。」
「は……?」
「私があんたを潰したって、反乱軍の誰も文句は言わないよ。じゃあね、ダライアス・カートン。」
「よせ!やめろ!!!」
起爆装置を押すと、仕掛けた爆弾全てが爆発して燃料が発火する。燃料に触れていたDKは炎に包まれていった。断末魔の叫びに、私は口端が上がるのを我慢できなかった。
炎の熱に苦しみ、命乞いをする元恋人に、私は冷たく言葉を吐き捨てる。
「浮気には怒ってない。私は裏切りに怒ってるの。裏切りは許さない。謝るなら、死んで詫びろ。」
悲鳴が聴こえなくなり、ケイナンに帰還を促す。
工場を出てシャトルに乗り、私はさっきまでDKがいた格納庫に入り、壁に背を凭れて目を閉じる。
実は、DKの裏切りは最初から知っていた。
ケイナンとDKに同行したのも、DKを消すからだ。モスマ議員には許可を得ている。もちろんDKを“対処”することも含めて。
汚れ役は私が引き受ける、と。
不貞行為は嫌いだけど、裏切りはもっと許せない。
でも気分が良かった。クローン戦争時代を思い出す。あの頃は悪意を抑えることをしなかった。今回、その頃の悪い癖が出た。
ケイナンと帰った後、彼はしばらく私を避けた。当然の結果だ。ジェダイであるケイナンは、私の言動に納得できないだろう。
理解できなくていい。
始めから理解してもらう気はない。私は善人じゃない。反乱軍にいるのは、パドメがいるから。彼女がいなければ、私は今生きていなかったのだから。
あーあ、また一から恋人探ししなきゃ。
また夢が遠退いたよ。
continue……