ジェダイ(仮)と理想主義者(笑)と退職(無断)者の小話。 作:夭嘉
初のサム編です!
気分転換に書きましたw
小休憩にどうぞ^^
とある男の観察録
これは、ある男の任務の記録である。
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クローン戦争の最中、男はある店を訪れた。
その店の名は〈ホーガ・フォレスト〉。サマンサ・ホーガンが営む、船を改造して作られた店だ。従業員はパトリック・カーターと、サマンサの相棒であるアズルナ20。
男は〈ホーガ・フォレスト〉を訪れ、カウンターの隅から店を観察する。
彼が眺めていると、カーターは男に声をかけてきた。
「あんた、見ない顔だな。」
「あぁ、初めて来たんだ。」
「やっぱそうか。まぁ、ゆっくりしていってくれ。」
カーターはそう言い、他の席へと行く。
男はグラスを傾け、残った酒を飲み干す。それから席を立ち、アズルナ20にお代を渡して退店した。店を出ながら奥に目をやるが、彼の見たかった人物は見られなかった。
男はほぼ毎日〈ホーガ・フォレスト〉に通い、観察を続けた。目的の人物と会えたのは、来店した初日のみ。それ以降は、彼はその人物と会うことはなかった。
その翌日、ようやく目当ての人物が店に立った。
男は“彼女”に視線を向けながら、いつものように酒を飲む。
「ねぇ」
唐突に声をかけられ、男は反射的に振り向いてしまう。
そこにいたのは、サマンサだった。
「最近よく来てるんだって?」
「あ、ああ……」
「客として来てると認識してるけど、合ってる?」
「そうだが……なぜだ?」
「あんた、分離派の人でしょ?」
そう言われ、男は鼓動が速くなる。
バレている。彼は瞬時にそう思った。同時に出入り口を横目で見て、逃げる隙を探した。
「あ、心配しないで。追い出したりしないから。」
「は……?」
「いろいろ聞いてるかもしれないけど、問題さえ起こさなきゃ客は客だから。タンバーも常連だし。ゆっくり寛いで。」
サマンサは空いたグラスを持って、店の奥へと戻っていく。
男は拍子抜けてしまった。まるで、彼女は自分は関係ないとでも言っているようだった。噂には聞いていたが、男は本物のサマンサを見て、本当にジェダイとは関係ないのだと実感した。
アズルナ20が閉店を知らせて、客は次第に帰り始める。
やがて他の客はいなくなり、客は男1人になった。
「お客様、閉店のお時間です。」
アズルナ20が、男に退店を促す。だが男はそれを断り、サマンサを呼んでほしいと頼む。アズルナ20は少し考えた後、了承して奥へと入っていく。
しばらくして、サマンサが1人でカウンターへと来た。
「何か用?」
「忠告しに来た。」
「あぁ、そういうこと……」
「気付いているようだな。」
「よくあることだよ。大方、あんたのボスが私を取り込みたいんでしょ?金欲しさに、そういう奴はいっぱい来るから。」
サマンサの言う通り、よくあることだった。
共和国や分離派問わず、懐に取り込んでしまおうと偵察や交渉が頻繁に来ている。サマンサはその度に断ったり、追い返したりしていた。悪質な場合は、サマンサ本人やカリが実力行使で追い払ったりしている。
そういった経緯もあり、サマンサは男が偵察だと気付いて観察していた。
「あんたも大変だな。」
「どうして気が変わったの?任務はいいの?」
「真っ当に商売したいのが分かったからだ。俺が分離派の人間でも何も言わないし、客として扱ってくれる。あんたのことはよく分かったよ。常連が多いわけだ。」
男は立ち上がり、サマンサにお礼を言う。
「感謝する。だが、もう来ることはないだろう。」
「それは残念。でも、客としてならいつでも歓迎だからね。」
「ああ。本当に気を付けろ。俺のボスは、ガンレイ総督と繋がっている。何かあったら迷うことなく共和国に手を借りるんだ。」
「お気遣いありがとう。ただ、この店は私の城だから、私が自分で何とかする。心配しないで。」
「そうだな。飯美味かったよ。ご馳走様。」
男はそう言って、退店していく。
その後、男はボスに手を引くように進言した。ところが聞き入れられることはなく、そのボスは強行手段を取ろうとした。だが男は非人道的なボスから去り、サマンサの店に手が届かないように細工をした。敵意もない彼女と彼女の店に迷惑をかけないように、男は自らの良心に従ったのだ。
男のお陰で〈ホーガ・フォレスト〉は難を逃れ、そのボスは諦めざるを得なくなった。
こうして、〈ホーガ・フォレスト〉の問題は人知れず解決されたのだった。
それから数日後、カリが買い出しに行っている最中、サマンサとカーターはコックピットで話していた。
「そうか、あの男が来なくなった頃か。」
「タイミング的にも、あの人が何かやったんだろうね。」
2人は、分離派の男の話をしていた。
サマンサはあるシンジケートの男から男の組織が潰れたと聞き、カーターにそれを教えていた。潰したのは男のボスの失敗を知ったガンレイだが、そうさせたのは男だ。カーターは事情を知り、彼も男が何かしたのだと察した。
「根は良い奴かもな。」
「そうだね。悪意はなかったし。」
「ジェダイのそういうところ怖いぜ。」
「だから私はジェダイじゃないってば。」
「分かってるさ。だからこそ、あの男もあんたに味方したんだと思うけどな。」
カーターの言葉に、サマンサは本音は本人しか分からないのだと呟く。
コーヒーを飲みながら、カーターはサマンサが自分のことに鈍感だったと思い出していた。
「ただいまー。あれ?どうしたの?」
「カーターと新メニューの話をしてたの。」
「新メニュー?」
「カーターか辛い料理出したいんだって。」
「それカーターが好きなだけでしょ。」
「好き勝手言うなよ。だが1つくらい出したっていいだろ。」
「「ダメ。」」
辛いものが嫌いなサマンサとカリは、同時に拒否する。
カーターはそれこそ2人の好き嫌いではないのかと、心の中で思うのだった。
fin.