あらすじ、というか登場人物
P ストレイライトの皆さん はづきさん
はづきさんは皆勤賞達成です

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累計3作目、あさひさんでは2作目です。
前作からの続きとか、そんなんないです。
これまでと比べるとちょっと長いですが、内容的には全然難しくないです。
いつもに増して駄文なので、ありがてぇ指摘、お待ちしてます。
え?季節感?なにそれ、食べれんの?


もう、やめるんす。

「プロデューサーさん。わたしに、関わらないでほしいっす」

 自分の耳を疑った。唐突すぎて状況を呑み込めない。そんな俺にあさひは追い打ちをかける。

「一緒に楽しいもの探しに行ったり、レッスン見に来てくれたり、そういうのはもうやめるんす」

 暦では春を迎えても、まだ肌寒く暗い夜のことだった。

 

 

 

「……で、何よ話って。ふゆ達これからレッスンなんだけど」

「寒いのに朝からすまない。そこまで時間はとらないつもりなんだが……」

「ていうか、プロデューサー、あさひちゃんはまた遅刻? メッセ入れてみよっか?」

「あぁ、気遣いはありがたいが、そのあさひについての相談なんだ」

 

 ───俺は昨日の夜の出来事をすべて話した。

「……というわけなんだ。2人なら何か知ってると思ったんだが……」

「……なるほどねぇ。それでプロデューサーは、あさひに嫌われてる、って思ってるわけね」

「あさひちゃん、昨日のレッスンじゃそんな感じ系じゃなかったよ? ウチがなんか聞いといてあげよっかー?」

「いや、これは俺とあさひの問題だ。2人を巻き込むわけには……」

「はぁ? 何言ってんの。あんたはともかく、もしあさひが何か抱えてるなら、ふゆたちの問題でもあるのよ。それがグループってもんじゃないの」

「……ほら、冬優子ちゃんもこう言ってることだし。アタシ達に任しときなって!」

 情けない。自分のアイドルに情けをかけてもらっている自分が情けない。

「……はぁ。もう! またそんな顔する! こっちまで気分が沈んじゃうじゃない! あーあ。ほら愛依、レッスン行くわよ」

「あっ、ちょっと冬優子ちゃん? なんかゴメンねプロデューサー! またあとでねー!」

 冬優子が愛依の手を取り、部屋から出ていく。ドアが閉まる直前、また冬優子の声が響く。

「あんたももう一回、ちゃんと考えてみなさいね? 何か大事なこと、忘れてたりするんじゃないの?」

 冬優子はそう言い、後ろ手でドアを閉めていった。

「何か……忘れていること……」

「今日も朝からたいへんですね~」

 後ろから声が聞こえ、慌てて振り向く。

「あ、はづきさん……。あの……聞いてましたか……?」

「はい、ばっちり。うーん、でも私も、特に思い当たることはないんですけどね……」

「そうですよね……。すみませんこんなところをお見せしてしまって……」

「いえいえ。あっ、でもそういえばあさひちゃん、最近……」

 と、はづきさんが何かを言いかけた矢先、背後の扉が勢いよく開く。

「冬優子ちゃん、愛依ちゃんおはよっす! 今日もレッスン行くっすよー! ……ってあれ? いない?」

 今まで通りのあさひだ。俺は少し安堵する。

「おう、あさひ。おは……」

「プロ……は、はづきさん、おはよっす! 2人、知らないっすか?」

「2人なら、先にスタジオに向かいましたよ~」

 前言撤回する。今、俺は明らかに無視をされていた。

「分かったっす! じゃあはづきさん、また夜っす!」

 そういってあさひは俺らに背を向けて、小走りで部屋を出ていった。

 やはり何か、あさひの気に障ることでもしてしまっていたのだろうか。とまた自覚のない自責の念につぶされそうになる。

 昨日までの自分の立ち居振舞いを思い返していると、ふと、違和感に気づいた。

「ん? いまあさひ、また夜に……って言ってたか?」

「あ~。最近、ストレイライトの皆さんから、レッスンを頼まれていまして……」

 そんなことは聞いてないぞ。第一、レッスンが物足りないなら俺に一言相談してくれたっていいじゃないか。それにあさひだけじゃなくて2人まで……。

 そんな俺の様子をみていたはづきさんが、慌てたようにして喋りだす。

「あ、でも、そんなに体を酷使するようなことはしてませんし、私もずっとついてますから! 大丈夫ですよ!」

 確かにはづきさんがついていてくれるのなら、安心ではある。……のだが、それでもやはり一言、相談をしてくれてもよかったのではないか。

 様々な思案をし、またしても俯きかける自分を制し、感情の乗り切らない声を出す。

「……そうですね。よろしく、お願いします……」

 そうとしか言えなかった。色々な言葉が浮かび、溶けてゆく。そんな曖昧な感情の詰まった頭をもたげて、デスクへとつく。

「……コーヒー、淹れますね。お砂糖とミルク、どうしますか?」

「ありがとうございます。……どっちも、お願いします」

 

 俺はいつ、何を間違っていたのだろうか? 

 どんなふうに接していれば、こうならなかったのだろうか? 

 3人とも、無理をしていないだろうか? 

 そういえばこの部屋、朝からこんなに甘い香りがしていただろうか? 

 そんな今の頭の中の、濁った感情も全部、コーヒーに溶かして、口の中へと流し込んだ。

 

 

 あれから数日、あさひとは挨拶以外、ほとんど会話をしていない。もとい、させてもらえていない。会話をしたいのはやまやまなのだが、あさひはすぐに顔を背けて走り去ってしまう。

 重くのしかかるような曇り空。今日も事務所のドアが開く。しかし今日はいつもと少し違った。

「おはよっす! プロデューサーさん!」

 いつもと違った、というよりはいつも通りになった、というべきだろうか。いつも通りの素振りで、笑顔で、声色で挨拶をするあさひに、一瞬心を奪われた。

「お、おぉ! おはようあさひ! なんだか今日は一段と楽しそうだな!」

「そうなんすよ! 実は昨日、ようやくできたんす!」

 と言い終わるあさひは、はっとした顔をしていた。嫌な予感がする。

「あ、いや。な、何でもないっす! ほんとっす! こっちの話なんす!」

 あさひが、そう言い終わるタイミングで、冬優子が事務所に入ってくる。

「あぁ、おはようプロデューサー。それとあさひも。おはよ」

 その声をきいたあさひは、そそくさと冬優子の陰に隠れる。

「……あんた、あさひに何かしたんじゃないでしょうねぇ?」

 冬優子がにらみつける。『名は体を表す』なんて言葉は迷信だったのか。

「……まぁいいわ。大体の想像はついてるから。それよりプロデューサー。今日、あさひと愛依、うちに泊まっても大丈夫かしら?」

「また急な相談だな。少し、待ってくれ」

 俺は鞄からスケジュール帳を出し、三人のスケジュールを確認する。

「……うん。明日は三人ともオフだな。問題ない。ただ、最近レッスン量を増やしているんだろう? 夜更かしするなとは言わないが、しっかりと休んでおくんだぞ。あとちゃんと親御さんにも連絡してから行くように。なにかあったらすぐに……」

「あー、はいはい。分かってるわよ。3人とも家に着いたらちゃんと連絡入れるから、安心しなさい」

 そういうと冬優子は、あさひを連れてレッスンスタジオへと向かっていく。俺はその背中を見送ることしかできなかった。閉じたドアの向こうから2人の会話がこぼれる。

「冬優子ちゃん! 夜はこの前言ってた、ジェイソンのやつ見るっす!」

「それは持ってくる愛依に言いなさいよね。ていうかそのためのお泊り会じゃないっての」

「えぇー! なんでっすか! 前から見るって言ってたっすー!」

 

「13日の金曜日……か」

 カレンダーに目をやり、自分に言い聞かせるように呟く。

 俺の不吉な心とは裏腹に、雲の切れ間からは陽の光が差し込み、歩道に薄く残った雪を溶かしていた。

 

 

 

 翌日。俺は出張で郊外まで出ていた。用件を済ませ、帰りの電車へと乗る。

 帰路の途中、冬優子からメッセージが届く。

『プロデューサー、おつかれさま。みんなちゃんと休んだし、うちからも帰ったわよ。それよりも。あんた、大事なことは思い出したのかしら。もし、まだ、万が一思い出せてないのなら』

 そこでメッセージは終わっていた。

 自分の力のなさを痛感する。彼女たちは俺のいないところでも成長していた。成長しようとしていた。それを俺は止めてしまっていたのだろうか。

 昨日とはうって変わって快晴の空。まだまだ肌寒いが、あたたかな光は雪を解かしていた。

 事務所の扉を開き中に入る。と同時にスマホが鳴る。冬優子からだった。

『思い出せていないのなら、タイムオーバーよ。この鈍感プロデューサー』

 その瞬間、衝撃と同時に、視界がが真っ白になる。

 否。視界が真っ白なもので覆われている。

「あはは! 冬優子ちゃん上手っすー!」

「言ったじゃない! ふゆにかかればこんなもんよ!」

「あっはは! プロデューサー、それちょーイケてるよ! あっ、写メ写メ……」

 聞きなれた、どこか懐かしいような笑い声がする。

「……なんなんだこれは」

「何って、バレンタインデーっすよ! バレンタインデー!」

「俺の知ってるバレンタインデーなら、こんなに真っ白にはならないはずなんだが」

「ふゆ達からもらうんだから、それくらい食らったってバチは当たらないわよ」

 今しがた、バチみたいなものにあたった気もするが。

「にしても、よかったねあさひちゃん! プロデューサー、めっちゃ喜んでる系じゃん!」

「はいっす! 愛依ちゃんと冬優子ちゃんと、それとはづきさんのおかげっす!」

「はづきさん……?」

「そうよ。夜にレッスンしてもらってるって言ってたでしょ? あれ、チョコの試作を手伝ってもらってたの」

「わたし冬優子ちゃんに、ばれちゃうからプロデューサーとあんまり話すなって言われてたんすよ?」

「サプライズで渡したいんすー、って言いだしたあんたが一番言いふらしそうだったじゃないの」

「まぁまぁ2人とも、結局うまくいったんだし、結果オーライってやつっしょ? それよりほらあさひちゃん、最初に渡しな?」

「はいっす!」

 そういってあさひは奥へとかけてゆく。

『わたしに関わらないでほしいっす』……か。あさひの言葉足らずなところが災いしていた気もするが、俺もまだまだ分かってあげられてなかったな。

「見てくださいっすプロデューサーさん! これ、なかなかいい出来なんす! 昨日冬優子ちゃんちで作ったんす」

「これ……一応聞くが、何の形なんだ?」

「斧っす!」

 

 俺は笑いながらコーヒーを用意する。

 今日はもちろん、ブラックで。

 

 


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