東方独剣録   作:らすこーす

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会話を書くのは楽しいな


この世界の実情

 目をあけた先に映っていたものは、木製の天井だった。

「………………」

 ここはどこだ? 状況を把握しようと首を回して周りを見てみると、そこは全く知らない部屋であった。和室だ。広さは学校の教室の半分ほどといったところか。家具としては机や本棚、謎の器具が大量に置かれている台などがある。俺はというと、部屋の壁際に敷かれた布団に寝かされていた。部屋の障子は開いており、そこからは庭が見える。晴天の空から入ってくる穏やかな風が顔に当たり、前髪がふわりと揺れる。

 何をするわけでもないが、寝てままの体勢でいるのもなんなので怠い体を起こす。

「……俺、助かったのか……」

 記憶が確かなら、昨日俺は思い出したくもないほどの恐ろしい目にあった。人を喰っていた醜悪な外見の怪物に襲われたのである。正直ショックのせいかところどころ記憶が曖昧になっているが、そこはなぜかしっかりと覚えている。それは忘れていたかったのに……。それともう一つ、最後に銀髪の女神を見たのは覚えている。彼女は何者だったのだろうか……。

 そうこうしていると、廊下から足音が聞こえてきた。それは俺のいる部屋の前で止まり、足音の持ち主はここに入ってきた。

「あら。目が覚めたのね」

 入ってきたのは記憶にあった銀髪の女神だった。藍色の着物がよく似合っている。

「体の調子はどう?」

 彼女は俺の側に座りながら聞いてきた。

「は、はい……少し、体が重いかなって感じです……」

「そう。ずっと寝ていたものね。あなた、極度の疲労で丸二日寝ていたのよ」

「ふ、二日も!?」

「ええ」

 思わず大きな声を出してしまった。そんなに俺は寝ていたのか……。どおりで全身が鉛のように重いわけだ。

「いつ起きたの?」

「つ、ついさっきです」

「そうなの?なら、私は良いタイミングでここに来たということね」

「そうなりますかね……」

 なんかこの人良い人そうだぞ。美人だし。

 まじかで見る彼女は、やはり美しかった。艶やかで長い銀髪は腰まであるロングストレートだ。二つの黒色の瞳は俺を映していて、肌はまるで雪のように真っ白だ。中でも一番に目がいくのが胸である。彼女の胸の双丘は、着物を大きく押し上げている。着物越しでも分かる。そう、彼女はびっくりするほど巨乳なのだ。巨乳。男なら誰もが(一部を除く)その圧倒的な魅力に誘惑されるだろう。かくゆう俺もそうだ。きっと、この女性は脱いだらとてもグラマラスな体つきをしているんだろう………………。

「ねえ」

「!?」

 やばい! 思わず目と思考が胸にもっていかれた!

「はっ、はい! なんでしょうか!?」

「あなた、私の話、聞いていなかったわね」

「いえ! そんなことは……」

「あらそう? じゃあ、私が何を言っていたのか言ってみて」

「…………私は良いタイミ『はい違う』……すいません。聞いてませんでした……」

 彼女が冷ややかな目で俺を見ている。馬鹿な嘘つくんじゃなかった。

「もう一度言うわよ? あなた、倒れる前のことは覚えている?」

「覚えてます……」

 嫌なところはしっかりと。

「そう……。なら、そのことはまた後で事情聴取するとして……」

 事情聴取!? その言葉を聞くと、なんか悪いことしたような気分になるな……。

「まずは、あなたについていろいろ聞きたいのよ。私の名前、覚えている?」

 名前?

「いや、記憶にないですね」

「そう。なら、まずはお互いの自己紹介ね」

 そう言って、彼女は俺をしっかりと見つめて言う。

「私は八意永琳よ。この里で、医者をやっているわ」

「俺は蒼威巧です。…………迷子です」

 そうして俺は、彼女――永琳さんと出会った。

 

 

                    ◇

 

 

その後俺は永琳さんの自室へと移動し、事情聴取とやらを受けた。彼女の部屋には中身が全く分からない書物や様々な実験に使うのであろう器具がたくさんあった。まるで研究室である。自室だと聞いていたので、入る前まではてっきり普通の女性らしい部屋かと思っていた。

「どこか適当に座って」

 適当って言われるとすげー困るんですが……。

 彼女は自分の椅子に座り、俺は近くにあった椅子に座った。

「それじゃ質問していくわね」

 向かいあった永琳さんはそう言って、数枚の紙と鉛筆を用意した。恐らく俺についてのことをあれに書いていくのだろう。そうして、俺への質問タイムが始まった。

「身長は?」

「百七十六センチです」

「体重は?」

「六十八キロです」

「年齢は?」

「二十一です」

 そこで永琳さんは少し驚いた表情を見せた。

「意外と若いのね……」

 なんですかそれは。俺は老け顔だって言いたいんですか!?

「じゃあ、次ね」

 それからも質問は続いた。彼女から聞かれたことは、実に様々であった。身長から始まって、体重、年齢、普段食べているもの、睡眠時間などなど。普段の生活内容が主だった。警察でもこんなに聞かないぞ。

「それじゃ、二日前のことについて聞いていくわね。まず、何故あなたはあの場所にいたの?」

 やっぱりあのことを聞くのか……。まあ正直に答えるほかないだろう。

「俺はあの場所で寝てたんです。その時は怪物はいなかったんですけど……起きたらいました」

「なぜ寝ていたの?」

「ずっと歩き回っていたんで、疲れて寝てました」

 実際は疲れたとかいうレベルじゃなかったけどな……。

「なぜ歩き回っていたの?」

「人を探していたからです……」

 って、そうだ! この人人間じゃん! あれだけ探しても見つからなかったのに、どういうことだ?

「なんで人がこの時代にいるんですか!?」

 俺は思わず立ち上がって言った。

「? なんでももなにも、人は昔から存在しているわよ」

 彼女は一体何を言っているのだという風に、きょとんとしながら言った。

「え!?」

 そんな馬鹿な! 恐竜だぞ!? 恐竜がいたんだぞ!?

「恐竜がいるんですよ!?」

「彼らも昔から存在しています」

 永琳さんは当たり前のように言った。俺は体から力が抜け、椅子に座りこむ。

「マジかよ……」

 どうやら今俺がいる世界は、俺の知っているものとは大きく異なるようだ。

「どうも、あなたと私の認識が大きく食い違うわね……。いいわ。事情聴取は一旦終了よ。あなた、聞きたいことは全部私に聞きなさいな」

 俺は胸の内に吹き荒れている嵐のような質問を彼女にぶつけた。

 

 

                    ◇

 

 

 それからしばらくして、長かった質疑応答は終わった。目の前の永琳さんは束になっている書類に何かを書き込んでいる。十中八九俺のことだろう。俺はというと、椅子の背もたれに体を預け、ぐったりとしている。彼女によって、わからなかったことはほとんどなくなった。しかし、どれも信じられないようなことばかりだった。

 まず、この世界は俺が生きていた世界とは違うものだということである。俺の知っている歴史では、恐竜ははるか昔に絶滅している。しかしここの人間は恐竜と同時代を生きており、恐竜は人を襲い、人は恐竜を狩る。そんな弱肉強食の世界である。永琳さんが出した結論は、俺は異世界に跳んだというものだ。意味がわからんて……。

 次に、俺を襲ったあの怪物だ。この世界の人々は、あいつのような怪物を妖怪と呼んでいるらしい。妖怪がなぜ存在しているのかは、まだよくわかっていないらしい。彼らは妖力と呼ばれる力を使って人を襲ったりしている。妖力は妖怪の力の源であり、妖怪が妖怪たるための最も重要なものなのだそうだ。それは人を病に侵し、寿命を削り、死に追いやる。時には人を妖怪に変えてしまうらしい。人々はそんな妖力のことを「穢れ」と呼んでいる。妖力の対極の位置にあるのが霊力というものだ。霊力は人間が使うことのできる力で、それをつかって妖怪を退治できるのである。ただ、使える人間が圧倒的に少ないらしい。永琳さんはその数少ない人物の一人で、俺を妖怪から助けてくれたのも彼女だという。本当に感謝してもしきれない。

 実は、彼女は俺にも霊力があるというのだ。妖怪が襲ってきたときに現れた謎の光の壁。俺はてっきりそれも彼女のものだと思っていたのだが、違うようだ。同行していた男もあんな技は持っていないらしい。すると、あの場にいた人間は俺と永琳さんたち二人の三人だけであったので、消去法で壁を発動したのは俺ということになる。現に、永琳さんは俺から霊力を感じているらしい。なんてことだ。俺にそんな不思議パワーがあるなんて思いもしなかった。これについては追々調べていくようだ。俺自身も非常に気になるので、よく調べていただこう。

 永琳さんとの話の中で、度肝を抜かれた話題があった。それは、彼女の年齢である。なんと今年でちょうど四百歳だというのだ。こんな見た目二十代前半の美しい人がである。めちゃくちゃシニアじゃないですか。それを聞いた時の俺は、目が点になっていただろう。

 聞くと、この世界の人間は元来とても長生きなのだという。寿命は本当に万単位らしい。なので永琳さんでも、年長者からしたら赤ん坊扱いなのだという。……ゲームのエルフかお前らは! 全ての質問が終わった後、俺は彼女に言った。

「どおりで俺の年を聞いた時、永琳さんはあんなこと言ったんですね……」

「ええ。あくまでも推測だったけど、あなたのこと、五百歳ぐらいだと思っていたからね……」

 …………。どういう推測だ! その判断基準を教えてくれ!

 

 

                    ◇

 

 

 お互いに聞きたいことはなくなったので、しばらくの間、沈黙が続いていた。

「……………………」

「……………………」

 永琳さんは相変わらずずっと何かを書いているし、俺はそんな彼女を見ていたり部屋を見渡していた。そんな中ふと、彼女が呟いた。

「あなた、これからどうするつもりなの?」

 ……そういえば何もかんがえていなかったな……。今は命の危険などはないようなので、とりあえず衣食住の確保などが最優先だろう。しかし、考えたところで何をどうすればいいのか全くわからない。

「……わからないです。これからどうしたらいいのか……」

 すると彼女は少し笑みをうかべながら言った。

「私、あなたにとても興味があるわ」

「…………え?」

「だから、私のもとで暮らしなさい」

「……………………」

 彼女は、まるで命令をだすようにそう言った。

 

 ……また、いろいろと大変なことになりそうだ……。

 

 




この物語はどうも話の展開が遅いですが、気ままに見てやってください。
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