東方独剣録   作:らすこーす

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某投稿小説を読んでから、永琳はヤンデレだと頭から離れない……


綿月家へいらっしゃい

 今日の天気は快晴。今日も空高くから太陽が暑苦しい光を地表に注いでいる。おかげさまで熱くなった俺の額や首筋からは汗が出ていた。遠くからは蝉の鳴く声が聞こえ、今の季節は夏なんだなあと感じさせる。

「ここに来て怖くなったのかしら?」

「怖いっていうか……ちょっとびびってる」

 永琳のからかったような口調にそう返しながら、俺は正面にそびえる巨大な門を見ていた。見たところビルの二階建てほどの高さだ。門の前には門番が二人いて、彼らはこの家の者だそうだ。ちなみにこの里には自警団がいて、警備といった仕事はたいてい彼らに依頼されるのだが、ここにいる二人の服装を見るとそれは自警団のものではなかった。自警団以外には武装関係の集団はないので、彼ら二人は一体どこの所属なのだろうか。

「ぼーっとしていないで、早く入りましょ」

「おーう」

 そう言って永琳は足早に門へと向かった。門番二人はそれを受け入れる。

 現在俺と永琳は、数日前にこの里へ帰還した調査団の団長である、綿月重三の家を訪れていた。

 

 

                    ◇

 

 

「綿月家からの呼び出し?」

「ええ」

 事のあらましを聞いたのはつい昨日のことだった。六日前に永琳の幼馴染である月夜見という男に通り魔的に攻撃を受けた際に危うく死にそうになったのを、月夜見が所属する調査団の団長である男に助けられたのだ。助けられた直後は永琳と茜ちゃんに連れられ診療所へ直行。それから数日間は月夜見を警戒した永琳によって家に軟禁状態だった。彼女が常に隣にいるのは当たり前。便所まで一緒に入ってくるのはさすがに全力で阻止した。しかも食料は買い貯めたり、月夜見の襲来に備えて家の周りには強固な結界は張ったりと、なんだか籠城でもしている気分だった。

 いつもならドン引きの所業なんだが、今回ばかりは相手が相手なので納得もできる。だってあいつ怖すぎる。出会っていきなり殺しに来るとか、ただの通り魔じゃねえか!

「調査団の団長、綿月重三からの直々の御呼出しよ」

 突然この家を訪れた訪問者の対応を終えた永琳が玄関から居間へと戻ってきた。

「その人って、この前助けてくれたおっさん?」

「そうよ」

 なるほど。あのガチムチのおっさんか。そういえば、あれ以来会ってないからまだお礼言えてないな。行きたかったんだけど、外に出ようとすると永琳の目からハイライトが消えるんだよなあ……。しかも片手に包丁持って。ある意味月夜見より怖い。

「そうか。いってらっしゃい」

「何を言っているの? あなたも来るのよ?」

 畳の上に転がりお菓子を食べてながらそう言うと、永琳は不思議そうにこちらを見ている。え? 俺も?

「何で?」

「何でって……、この招待状に私と貴方の名前が書いてあるもの」

 そう言って永琳が手に持っていた手紙を渡してきた。

「あ、ほんとだ」

 起き上がって呼んだ手紙の内容には、確かに招待客として俺と彼女の名前がある。

「何の用かは大体想像がつくけれど、呼ばれたからには行かないわけにはいかないわ」

「そっか。なら、ようやく俺は外に出れるんだな。あぁ~、良かった~」

「…………」

 さすがに家にこもりっきりは疲れる。たまには直に日の光を浴びたい。

 晴れやかな気持ちで背伸びしていると、それを見ていた永琳が言った。

「……私とずっと一緒にいるのは、そんなに嫌なの?」

 ……言っているセリフは聞きようによっては可愛いんだけど、だけど永琳さん? 声がすごく重苦しいですよ? しかも、目から光が消えてるんですけど……。

「…………」

 あれ? もしかして俺、ルート選択間違えた?

 

 

                    ◇

 

 

「こちらでしばしの間お待ちを」

 屋敷に入ってから通された部屋は、風通しが良くてとても広い和室だった(この世界の建物は全て和式)。奥にある障子は開かれていて、その向こうには美しい庭の様子が窺えた。部屋の真ん中には座布団が適度な感覚を開けて三枚置かれていて、一枚とそれと対面するように二枚の座布団が並んで配置されている。並べてある二枚は、枚数からして俺と永琳が座るものだろう。だとしたら、対面の一枚は綿月団長のものだ。

 特にすることもないので、俺と永琳は用意されている座布団に座り、招待者を待った。

「……今になってなんだ、って話なんだけど」

「?」

 永琳が疑問を浮かべた顔でこちらを向く。

「綿月団長ってどんな人なんだ?」

 初めて会ったのは六日前で、しかも会って数十秒で俺は診療所行になり、まともに話すどころかあまり顔も覚えていないという。命の恩人になんとも失礼なことだ。

 俺の問いかけに、彼女はなんだそんなことか、といったような顔で答えた。

「そうね……。まず名前は綿月重三。この綿月家の第百三十七代当主よ」

「百三十七!?」

「ええ。と言っても、今は息子さんに家督を譲っているから、元がつくけどね」

「綿月家は長いこと続いてる家系だとは聞いてたけど、そこまでだとは思わなかったな……」

「……貴方、私が昔教えたことも忘れたの?」

 永琳が【絶対零度の眼差し】を発動した! 巧は凍って動けない!

「え?」

「貴方がここで暮らし始めた当初、里の常識や歴史についてだとかいろいろと教えたでしょ? その時に言ったはずよ」

「…………あ」

 思い出した。この世界に来た当初、俺は永琳の家にお世話になる際に彼女から徹底的にこの世界のことについて教わったのだ。先程彼女が言ったものや、マナーや風土や社会の仕組みなど。それはもうたくさん教わった。覚えることがあまりにも多かったので、五十年も経てば少しぐらいは忘れてしまっていても仕方ないんじゃないと思う。余談だが、教師モードの永琳は地味にスパルタ。

「後でちゃんと復習しておきなさい。話を元に戻すわね。重三団長は、里一番の剣術家として知られているわ。実力は、貴方も見たけれど月夜見を簡単に抑え込むほどよ」

「ああ。めちゃくちゃ強いよな」

「彼はその強さと剣の技術を活かして、この家で道場を開いているわ」

「へえー」

 道場か……。通ってみたいな。何故そう思うのかというと、実は俺、強くなりたいのである。思い返せばこの五十年間、何度か危険な目にあってきてそれらから生き延びてきたわけだが、一度たりとも自分の力で切り抜けたことがないのだ。全て誰かに助けてもらっている。しかもほとんどが永琳だ。これはもう、男としての矜持とかプライドとか誇りとかいろいろと粉々である。

 いつまでも守られるだけの男ではいけない。それに、そう遠くないうちに月夜見が永琳関係でまた問題を起こすはずだ。あのルナティック嫉妬ボーイが、この前の騒ぎだけで満足するはずがない。そういう時にちゃんと永琳を護れるような頼れる男に俺はなりたいのだ。ま、このことを永琳に言うと確実に猛反対をくらうだろうから今は黙っておく。

「……」

「? どうしたの?」

「いや、なんでもない。続けて」

「そう。まあ、続けると言っても彼の簡単な紹介はこんなものね。もうすぐ会うのだから、そんなにいらないでしょ?」

「そだな」

「あえて付け加えるとするなら、彼にはお孫さんが二人いることね」

「孫?」

「そうよ。私もあまり会ったことはないのだけれどね。ちなみに姉妹よ」

 孫かあ。孫と聞くとどうしても幼い子のイメージが沸くんだが、ここの住人は年齢詐称集団だからなー……。俺の常識からすると、容姿と年齢とのギャップがありすぎるのだ。彼らは早熟なのだが、大人になってからが長い(と言っても、見た目十歳になるころには実年齢は五十歳だったりする)。見た目二十歳で実年齢は二百歳とかざらでいるからな。そのくせ彼らはお互いの年齢を見た目で推測して、しかもそれが当たるというのだから末恐ろしい。

「……手を出したら許さないから。出したら、問答無用で処刑します」

 永琳は光の消えた瞳で俺を見る。無表情なので感情が読めないのが怖い。

「出さないからな!?」

 さりげなく恐ろしいこと言ってんじゃねえぞ!  

「そ、そういえば八意家はどうなんだ?」

 このままだと恐ろしいことになりそうだったので、慌てて話を変える。

「え?」

「いや、永琳って、昔からこの里を発展させてきたんだろ? 博士って呼ばれてるし。実質リーダー……ってか、里の重役だろ? なかなか良い家柄じゃないのか?」

「私の家はそんなものではないわ。普通の一般家庭よ」

 彼女は何でもない風に言った。

「え? マジで?」

「本当よ。たまたまその家で生まれた私が異常で非常なだけ」

 それは知らなかったなあ。

 こんな感じで雑談を交わしながら待つことおよそ数十分。

「はっはっは! 待たせたな!」

 俺たちが入ってきた入り口から、部屋中に響き渡るほどの声が聞こえた。声の持ち主は来るなり笑いながらさっさと座布団に胡坐をかいて座った。いや、それにしても遅すぎるだろ。俺と永琳の間に何度会話が続かない時のあの気まずい沈黙が訪れたと思ってるんだ。長年一緒だからと言ってそう会話がずっと続くわけじゃないんだぞ。

「遅れてすまない。儂が綿月重三だ。よろしく頼む」

 そう言って挨拶をする男の顔つきは、孫がいるとは思えないほど若々しく壮齢なものだった。口元の髭がとてもダンディーですね。

「八意永琳です。こちらは蒼威巧。本日はお招きいただき誠にありがとうございます」

「よろしくお願いします」

 俺と永琳も彼に合わせて挨拶をする。

「うむ。さっそくだが本題に入ろう。先日はうちの月夜見が君たちに危害を加えたことを、改めて謝罪する。本当に申し訳なかった」

 そう言って彼はなんと土下座をした。まさか土下座をされるとは思わなかったのだろう、永琳も驚いているようだ。

「い、いえ、もういいのですよ。顔を上げて下さい」

 少し焦った永琳は膝立ちになりながら言うが、綿月団長は未だ頭を下げ続けている。

「いや、これは重大な問題だ。私が頭を下げたところで君たちの気が収まるとは思っていないが、私にはこれしかできないのだ。本当にすまなかった」

 そう言って頭を下げ続ける綿月団長。なんだろう。この人強面の顔つきの割に、すごく礼儀正しいな。会う前は怖そうな人かなと思っていたけど案外そうでもなさそうだ。

 でもまあ、このままずっと土下座されて話されるのも嫌なので、どうにかして顔を上げてもらおう。

「俺たちは大丈夫です。永琳もこう言っていますし、どうか顔を上げて下さい」

「そ、そうか」

 俺と永琳の言葉で顔を上げた綿月団長だが、その表情からはまだ謝り足りないといった気持ちが読み取れる。良い人だ。

「では、謝罪も一旦ここまでにしておいてだな。君たちには月夜見の現状を話そうと思う」

 やはり話題は月夜見関連か。彼のその後については永琳はともかく、数日間外部との接触を禁じられていた俺は当然のごとく外からの情報を手に入れることが出来なかったので、全く知らないのである。頼みの綱の永琳は、月夜見関係のことは何も教えてくれなかったし。

「二人とも知っていると思うが、あの騒ぎの後、月夜見は無力化され里の裁判所で無期懲役の判決を受けた」

「はい、存じております」

 俺は知らなかったけどな。

「何しろ八意博士に攻撃を加えようとしたのだ。意見の中には死刑を求刑するものもあったが、月夜見の価値は高い。失えば里全体の大きな損失となるだろう。無期懲役が落としどころと言ったところだな。現在は里外れの収容所にいる」

 なるほど……。さすがに無期懲役じゃかわいそうな気もするが、こちらは危うく死ぬところだったしな。刑についてはそんなところだろうか。個人的にはそのままずっと収容所に籠っていてほしいが。

「今日、君たちを呼んだのは謝罪ともう一つ理由があるのだ」

「もう一つ……ですか?」

 永琳が訝しそうに尋ねる。

「ああそうだ。実は、儂は月夜見を釈放したいと考えておる」

「!」

「釈放って! あんな危険人物を解放するつもりですか!?」

 その言葉に俺たちは二人とも驚き、俺は思わず叫んでしまった。でも仕方がないだろう。もしまた襲ってきたらどうするのだ。

「先ほども言ったが、月夜見の能力は桁違いに高い。儂にはまだ及ばんが、里でも有数の人材だ。彼を収容所に幽閉するのはまさに宝の持ち腐れ。それに、確かに奴は君に攻撃を加えたが、普段の奴は全く攻撃的な人間ではないのだ。長年一緒に行動してきたが、奴があんなにも取り乱しているのは初めて見る。まあ、その原因は察しがついているがな」

 熱くなっている俺に、綿月団長は冷静に返す。横にいる永琳が目を細めながら問いかけた。

「理由とは?」

「八意博士。あなたが一番よくわかっているだろう? 原因は、月夜見の蒼威への嫉妬だ。奴は長年貴女に恋心を抱いている。それは里の皆もよく知っている。しかし、それは儚く散ったのだ。貴女は我々が外に赴いている間にいつしか恋をし、恋人を得られた。それ自体はとても喜ばしいことだ。儂も祝福する気持ちはある。だが、それは月夜見にとっては地獄のような出来事であっただろう」

 まあそんなことだろうとは思っていたよ。

「理解しております。しかし、それは彼の釈放にどういう関係が?」

 彼を問い詰める永琳に、綿月団長は少し怪訝な表情で口を開いた。

「……貴女はこの里を発展させてこられた第一人者であるが、その陰にはいつも月夜見がいたはすだ。その彼にいささか冷たい態度だとは思うが?」

「それについては彼には本当に感謝しております。しかし、それとこれとは別の話ですわ。今の私には、巧の身の安全が第一なのです。故に、彼に危害を加える可能性のある月夜見を釈放することは納得しがたいことです」

「……なるほど。なかなか愛されているではないか、蒼威よ」

「はい……」

 あくまでも真剣に言う永琳。それを聞き少しにやけている綿月団長であった。俺は気恥ずかしさを感じ、顔が赤くなっているのがよくわかる。

「ふむ。君たちの言い分はわかった。しかしだな、よく考えてみてくれ。蒼威と月夜見は初対面のはずだ。会話などまともに交わしてはおらんだろうから、お互いにどういう人物かはよくわかっていないだろう?」

「確かにそうですね」

「蒼威の方は里の皆から月夜見について聞いたことはあるだろうが、所詮は他人の言うことだ。参考にはなるだろうが、それで相手を選り好みするのは全く以て良くない」

「……」

 耳が痛いです……。

「して、君と奴はもっと互いのことを知らなければならん。人というものは、心から語り合えば強い絆を持った友人となるのだ。そうすれば、奴も君を襲うことはなくなるだろう」

「はぁ……」

 無理やりな話にも聞こえるが、言わんとしていることはわかる。要するに、初対面なんだから仲良くなれと言っているのだ。確かに第一印象は最悪中の最悪だが、人との関係は第一印象では量れないものがある。綿月団長の言っていることは一理あるな。恐怖はあるし良い間柄になれるなんて思わないが、一度話してみるのも大事だろう。

「わかりました。話し合ってみるのも大事でしょう」

「え?」

「おお、わかってくれたか!」

「ちょっと巧! 貴方殺されかけたのよ!? そんな相手に会ってみるだなんて……」

 すごい剣幕で迫ってくる永琳。彼女の言いたいこともわかる。彼女は俺がひどい目にあうことを恐れているのだろう。しかしだな……。

「永琳。お前が俺を心配してくれているのはよくわかっている。俺は能力持ちとはいえ、基本は戦えないただの一般人だ」

「わかっているんだったら……っ」

「けどな、確かに綿月団長が言っていることもわかるんだよ。俺とあいつは初対面で、一度も話したことがないんだ。まだこれから先どんな関係になるかはわからないだろ?」

「殺し殺される関係に決まっているじゃない!」

 永琳が半狂乱になりつつ叫んだ。

「落ち着けって。俺もあいつと良い関係を築けるなんてこれっぽっちも思っちゃいない。むしろさらにこじれる気がしてる」

「ならなんで!?」

「話したこともない奴に殺されるなんてまっぴらごめんだし、俺自身あいつがどんな奴なのか知っておく必要があると思うからだ。大丈夫だって! 俺一人で会うのは無理だろうけど、強い人に警護してもらいながら会うさ。いざって時のために綿月団長にも護衛依頼でも出したらいいだろ?」

「そう聞くと大丈夫な気もするけれど……」

 額に手を当て悩む永琳。うーむ。説得は難しいな……。それにしても永琳は心配性だな。しかしその分愛されているのだと思うと、不思議と心が温まる。

「そうですぞ、八意博士。もしかしたら蒼威も何かしらの対策を見つけるかもしれません。どちらにせよ、このまま襲撃を恐れているような受け身の姿勢ではいつかは死にますぞ」

 綿月団長が俺にのっかかる様に言った。

 おお! 団長からのありがたい援護だ。永琳はそれを聞いてさらに頭を悩ましている。しばらくして永琳は苦い顔をして口を開いた。

「…………いいわ。わかりました」

「マジで!?」

 やったぜ! 説得任務成功だ!

「ただし、巧と月夜見の話し合いの際には最善の安全を用意し、二人の間は私が取り持ちます。詳しくは後々考えますが、この二つは絶対です」

 永琳は毅然とした態度でそう言った。

「……綿月団長、この条件はどうですかね?」

「うむ。儂が責任を持って許可しよう」

「ありがとうございます」

 俺が綿月団長に恐る恐る尋ねると、彼は意外にも快く快諾してくれた。

 これでどうやら話はまとまったな。

「綿月団長、一つ聞きたいのですが、よろしいですか?」

 すると永琳が手を上げて尋ねた。

「いいでしょう」

「二人の話し合いはどれくらい先の話になるのでしょうか?」

 永琳が聞いた質問は俺も考えていたものだ。いきなり明日ということはないだろうし、準備とかでいろいろかかりそうだから一か月先ぐらいか?

「そうですな……。奴をすぐに出すのは危険だから、軽く百年後といったところですな」

「え!?」

 俺は驚きのあまり目が点になった。百年後て! めちゃくちゃ先じゃん! 永琳も驚いて……はいなかった。むしろ納得している風だった。

「そうですね。では、まずは百年後を視野にこれから考えていきましょう」

「いやいやいや」

「? さっそく何か不満があるの? せっかく貴方のわがままに賛成してあげたのに」

「百年後って長すぎない? 先すぎない?」

「それくらい普通でしょう?」

「……」

 そうだった……。こいつらは桁違いの長生き集団だった……。その感覚からすると百年ぐらい短いものなのだろう。

 そこで綿月団長は真剣な目をしながら言った。

「では、おおよその話もまとまったところで、八意博士、申し訳ないが席を外してはくれないだろうか?」

 ? まだ何かあるのだろうか?

「何故です?」

 永琳は訝しながら聞いた。

「儂は蒼威と個人で話がしたいのです。できたらこれは男二人だけで」

「……私は別にかまいませんが……」

「俺もいいですよ」

 俺たちがそう言うと、綿月団長は満足したような顔をした。

「ありがとうございます。では、家の者を呼びますので、博士はしばしお待ちを」

 その後綿月団長の呼びかけに使用人らしき女性が部屋を訪れ、永琳を伴い別の部屋へと移動していった。部屋を出る永琳は、少し心配そうな目であった。部屋に残った俺と綿月団長は改めて向かい合う。改めて向かい合うと、彼はとてつもなく強いということが分かる。オーラというやつだろうか? 全身から妙な圧迫感を感じるのだ。

「こうして二人で話すのは初めてだな。改めて言うが、儂が綿月重三だ。よろしく頼む」

「蒼威巧です。よろしくお願いします。……この前は助けていただきありがとうございます」

「もうそのことはいいだろう。部下の不始末を掃除するのは儂の仕事だ」

 やっぱり良い人だ。

「俺をここに残したのは、一体何でしょうか?」

 綿月団長はおもむろに口を開いた。

「うむ。貴様――――儂の弟子になる気はないか?」

「…………は?」

 

 




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