ガンダムビルドダイバーズ リビルドガールズ   作:守次 奏

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リライズ最終回の余韻が覚めやらないので初投稿です。


第三十話「白兎の舞う空〜エリィ、戦場をその手に」

 ──なんだ、これは?

 フォース、「ボルケーノ」を率いるリーダーである男、ヨシキは目の前に展開された光景に愕然としていた。

 コックピットに浮かんでいるのは撃墜を示す、レッドアラートの中心に【Signal Losted】という黒帯が走る電幕と、ノイズだらけのメインモニター。

 確かに、「ボルケーノ」は「ビルドダイバーズ」への挑戦に当たって、一度慢心によって「ガリュウ」というCランクダイバーが操るデスティニーガンダムのカスタムモデル、【ガンダムデスティニースカイ】に敗北を喫するという手痛い経験をしている。

 だからこそ、ヨシキたちは慢心を捨て去り、自らを鍛え上げようと、あのモヒカンの巣、戦闘狂のラスト・リゾート、チンパン博覧会会場と悪名高いハードコアディメンション・ヴァルガへの挑戦──ダイバーたちが絶界行と読んで憚らない苦行に何度も身を投じて、「三分の壁」を乗り越えて生存することに何度も成功できる程度には腕を上げていた。

 勿論、スポーン地点で屑運を引き当てたことでFOEさんとその妹である「ユユ」が繰り広げる死闘の余波に巻き込まれて僅か二十秒で三人とも撃墜されたり、「獄炎のオーガ」と遭遇したはいいが「喰う価値もねェ」と蹴り飛ばされて地面に落下したところを漁夫の利天誅されるという屈辱的な体験も何度か果たしているが、客観的に見てもヨシキたちの腕は「ガリュウ」に挑んだ頃より上がっていると見てもいい。

 そして、外部から傭兵を招集することでその戦力は万全を期して、「ビルドダイバーズ」へ挑む予行演習だとしても、決して気を抜かずに「リビルドガールズ」へと挑戦したはずだった。

 だが、目の前にあるこれは、なんだ。

 ヨシキは突きつけられた現実を認めることができず、わなわなと操縦桿から離した手を震わせる。

 ──敗けた。

 一言で表すのならば、そういうことになる。

 だが、ヨシキの描いていた負け筋は、あの元シルバリィ──アキノという女が必殺技を発動して戦況をめちゃくちゃに引っ掻き回すというもので、それさえ耐えきれば腕の差と連携によって圧殺できるはずだった。

 だが。

 ヨシキたちが敗れたのは、他でもない、あのフォースの中で一番弱いと目していた、泣き虫の少女──エリィにしてやられたからに、他ならなかったのだ。

 

 

 

 フォース「ボルケーノ」は、連携戦術をパターン化して使い分けることで、個人の技量だけに頼るのではなく必ずツーマンセルないしスリーマンセルの状況を作り出して、相手を圧殺する戦い方を好む。

 チィから提供された情報を、エリィはコンソール上で確認した上で、戦場となった市街地──恐らくは「機動戦士ガンダムΖΖ」におけるダブリンがモチーフとなっているであろうそれの空を駆け抜ける。

 GNドライヴを組み込んだ「リビルドウォート」の挙動は「ヘイズルII」を使っていた時と比較してかなり軽く、そこに違和感を覚えこそしたものの、乗って数秒も飛んでいればその違和感は霧散して、エリィの手に操縦桿がぴったりと馴染んだような錯覚を与える。

 ──相手は恐らく開幕に範囲攻撃をぶっ放してくる。

 それが、チィの立てた予測だった。

 ボルケーノの三人組がハードコアディメンション・ヴァルガに何度か顔を見せていると思しき書き込みは、該当スレの進み方が比較的ゆっくりしていることもあってすぐに発見された。

 そして、ヴァルガ上がりが勘違い、というよりは見積もりを外しているのが、開幕ぶっぱという戦術の有用性だ。

 開幕に事故狙いで強力なビーム砲や戦略兵器を放つ戦術は、確かにハードコアディメンション・ヴァルガにおいては生存しつつダイバーポイントを一挙に稼ぐ戦術として有効だとされている。

 だがそれは、あの場所が例外中の例外だという前提からなるものだ。

 端的に換言するならカミカゼアタック、「どうせ数十秒で殺されるから乱戦エリアみたいな敵が固まってるところにぶっぱすることで、自分が撃墜された時のダイバーポイントのマイナスよりもキル数で稼いだダイバーポイントを上回らせることで収支を黒字にする」という、狂気的な発想の元に成り立っている。

 以前にアイカたちが「名機アルビオン」と戦った時もハマモリはウッキースに砲手を任せて、開幕ぶっぱに近い戦術を用いてきたが、あれは「ハマモリのビーム・マグナム」、「チャッピーとヨネヒトの偽装ツーマンセル」という二つのブラフを用いていたからこそ、有効に作用したのだ。

 早い話が、通常のフォース戦において開幕ぶっぱというのはよっぽどランクが低い帯域でなければ、エネルギーとブーストと照射時間、その他諸々を無駄にする行いでしかない。

 そして、チィの予想は滞りなく現実となった。

 アキノを先頭にアイカとチィを後方の両翼に、そこから離れた最後尾にエリィを配置するという菱形陣形で戦場を突き進んでいた「リビルドガールズ」に向けて、一筋の閃光が押し寄せてくる。

 

「来ましたか。防楯展開……アイギス、護りなさい!」

 

 アキノの叫びを合図に、ドラグーン・システムを搭載したIフィールドソードが全員を庇うように前へと躍り出て、大剣から大楯へとその姿を変える。

 そして、ミネルヴァガンダムの胸部が蒼色の光を放つと同時に展開された、不可視の盾は、果たして飛来した閃光──戦術核の一撃を見事に食い止めて、アイギスの名に恥じることなく、長い攻撃時間の間で一ミリたりとも、味方に些細な傷をもたらすことなく守り切っていた。

 

『嘘でしょ!? Iフィールドが核を防ぐなんてチートよ! シルバリィにいた癖にチートを使うなんて……恥ずかしくないの!?』

 

 戦術核を開幕でぶっ放したと思しき女が搭乗しているウィンダムが、その背中から二発同時にしか撃つことのできない核ミサイルを搭載したマルチランチャーパックをパージしながら、爆炎が晴れた中心で両手を広げていたアキノとミネルヴァガンダムを睨みつけて吠える。

 

「いえ、これはサイコ・フィールドですが……」

『はあ!? 何よそれ! チートの名前!?』

 

 ──こいつ、UC見てねえな。

 チィはここまで見事に自分の予想が当たってくれたことにほくそ笑みながらも、チーターとアキノのことを罵る女に不快感を隠せなかった。

 チーター、というのは、チートという言葉が現代においては一種の褒め言葉として作用するジャンルが存在するために罵倒としてのハードルも同時に低まってしまったのだが、本来であればゲームを嗜むものにとっては目の前で中指を立てて家族や親族を侮辱されるのにも等しい罵倒だ。

 アイカはそれを知らなかった。だが、逆ギレしてアキノを罵倒する女の行いは許せないものだった。

 

「ふっざけんな! チーターだかライオンだか知らないけど、アキノさんの実力も知らないで好き勝手なこと言わないでよ!」

『ふん! 事実を指摘されたら逆ギレ? 最悪ね!』

「いやどの口がほざいてんだ……まあいい、チィの仕事は一旦終わったし、後は手筈通りにやっちまってくれや」

 

 アイカがブチ切れたことで少し溜飲が下がったのか、冷静さを取り戻してチィはパラシュート・パックを展開して、アイカの放ったコアスプレーガンによる牽制弾がウィンダムを遠ざけたのを一瞥して、その建物の殆どが消し炭と化した市街地に降り立つ。

 

『落ち着け! いつも通り連携戦術パターンBであのアイドル女から仕留めるぞ!』

『……っ、了解!』

『了解っと……恨みはねえがやられてくれや!』

 

 ウィンダムの両翼に控えていたズゴックEによる号令を合図に、市街地跡へと降下したアイカを追いかける形で、ガンダムAGE-1タイタスが先行し、その進路を確保するように、立ち塞がったアキノを牽制する形で、ズゴックEとウィンダムがそれぞれメガ粒子砲とビームライフルによる十字砲火を試みる。

 エリィにはそれらが全て「視」えていた。

 ランナーズハイならぬダイバーハイが与える全能感に酔いしれているのではなく、機体スペックが向上したことで後手に回り続けるという恐れがなくなったために、エリィは持ち前の観察眼を万全に発揮していた。

 その手に戦場を掌握したかのように、リビルドウォートは空中から戦場を俯瞰し、エリィは主人の指示を待つ白兎に号令をかけるが如く、音声入力を起動する。

 

「……お願い……飛んで、フィン・ファンネル!」

『何だと!?』

 

 事前情報では、無線兵器を持っているのは偵察機みたいなSDを使っている銭ゲバだけだった筈だ。

 二基のフィン・ファンネルが閃光の網を描くように、アイカへと接近するタイタスの足元を穿ち、そしてまた残った四基は十字砲火を試みたウィンダムとズゴックEを逆に取り囲むように単発射撃を細かく刻む形で繰り返す。

 GBNにおいて、ファンネル系統の武装は手動操作と自動操作の両方が存在する。

 そのどちらにも利点があり欠点があるのだが、主流となっているのは今のところ後者だった。

 理由は単純だ。

 ただでさえクソ忙しい戦場で機体を操作するのですら手一杯だというのに、思考補助によるアシストこそあれど無線兵器のマニュアル操作まで手を焼いていられない。つまりはそういうことだった。

 だが、エリィは六基のフィン・ファンネルを全てマニュアルで操作して、その掌で「ボルケーノ」の三人組を踊らせるかのように閃光の糸を描いて、望む形に三人組を誘導する。

 

「貰ったぁっ!」

『しまっ……!』

 

 足元を穿たれたことで体勢を崩したタイタスの左腕を、ビルドボルグを展開したアイカがすかさず切り落とす。

 フィン・ファンネルによる包囲から逃れるために連携を崩してでも左右に分かれることを選んだウィンダムとズゴックEに対して、アキノは主力武装である核ミサイルを失ったウィンダムから早々に無力化すべく、手数を優先してビーム・トンファーを展開して斬りかかる。

 

「……先程、私をチーターと罵ってくれましたね」

『な、何よ! 事実じゃない! Iフィールドが防げるのはビームだけで、あんたのそのキャプテン・ジオンからパクってきた剣はIフィールドソードって名前なんでしょ!?』

「……いいでしょう。百歩譲って無知による間違いは看過するとしましょう。ですが貴女は今、もっとも軽率なことを言った……!」

 

 あの、狂気に身を焦がしながら、下手をしていれば自身の必殺技すら打ち破ろうとしていた白亜の悪魔にしてその王たるバエルの、アリアの足元にも及ばない太刀筋を一蹴し、アキノはウィンダムの四肢を瞬く間に解体し、残ったコックピットを踏みつける。

 

『ひッ……』

「……パクりとリスペクトには大いなる差があります。そしてキャプテン・ジオンは……己を目指す全てを許容するとして、自身の動画でジオニックソードの作り方を公開しています、そして!」

『あっ、あたしは、あ、あああああーっ!!!』

「……この剣の名前はIフィールドソード、ジオニックソードを発想の原点としつつも防御力を高めるカスタマイズを施した、私だけの剣です」

 

 そうして無慈悲な宣言と共に抜き放ったIフィールドソードを、四肢を喪失して地面に転がっているウィンダムの頭部バルカンによる悪あがきも物ともせずに、アキノはそのコックピットへとゆっくりとゆっくりと、己の罪を後悔させるがごとく突き立てるのだった。

 

「……ありゃおっかねえな、マジでキレてんぜ」

『余所見をしたなぁ、偵察機!』

「あ? よそ見してんのはあんただろ、ヨシキのにーちゃんよ」

 

 足を止めて何やら大掛かりな装置を展開しようとしているチィに、フィン・ファンネルによる弾幕砲火を逃れたヨシキのズゴックEがそのアイアン・ネイルで襲い掛からんとするが、刹那。

 ズゴックEの両腕が、どこからか飛んできたビームによってその関節を射抜かれて爆散し、勢い余ったヨシキとその機体は顔面から破壊されたコンクリートにダイブして、地面と熱いベーゼを交わす羽目となった。

 

『クソっ、どこから……フィン・ファンネル!? なんでファンネルがあんなに持つんだ!?』

 

 ヨシキは舌を噛んだ痛みに悶えながらも、自身の背後に浮遊していたエリィのフィン・ファンネルを視認するなり、困惑に目を見開いてそう叫ぶ。

 確かにファンネル系の武装は展開できる時間は基本的に短く、再使用のためのクールタイムも長く設定される傾向にある。

 だが、GBNの仕様としてファンネル系武装がリキャストを必要としている、と判断するのは「射出したファンネルに設定されたエネルギーが完全に尽きた場合」だけだ。

 そしてエリィは、六基のファンネルの内、最初にタイタスへと送ったそれとウィンダムに放ったそれを即座に回収して本体からエネルギーを供給し、そして最初にズゴックEに送っていたものを今は回収して、その代わりに単射の繰り返しで消耗が少なかった、最初にウィンダムを標的とした二基をヨシキへと差し向けた。

 それが、「ファンネルがあんなに持つ」絡繰であった。

 そして、エネルギーをチャージしているファンネルを今どこに送っているのか。

 無慈悲に、気が動転していたことで、最後までその接近に気づくことのなかったヨシキのズゴックEを、エリィはヘイズルIIから受け継いだビームライフルで撃ち抜きつつ、最初に照射ビームを放ったそれをタイタスの直上へと放ち、ヨシキに差し向けたファンネルを回収する。

 

『クッソ……! もういい、やってくれ!』

『こんな雑魚相手に手は借りないんじゃなかったのか?』

『うるせえ、傭兵なら傭兵らしく50万BC払ったんだから仕事しやがれ!』

 

 一人残され、ファンネルとコメットコアガンダムの小柄な体躯を生かしたすばしっこさに翻弄されているタイタスのパイロットは、秘匿回線でそれを「傭兵」へと伝えたつもりだった。

 だが、チィが放っていた有線観測機は確かにその無線を傍受して、エリィを、アイカを、アキノを信頼してわざわざ足を止めてまで準備していたその装置は、確かに──開幕からずっと姿を見せずにどこかに潜んでいた、「傭兵」の手口を暴いていた。

 

「っしゃビンゴ! アキノ、もう一仕事頼むぜ!」

「任されました、チィ! ……アイギス! 再び我等を護る盾となりなさい!」

 

 剣を突き立てて沈黙していたウィンダムの残骸を蹴り飛ばし、アキノはアイカの援護に向かうのではなく、チィから転送されてきた予測座標に向けて機体を加速させ、再び「アイギス」を展開する。

 

『なっ……!』

 

 そしてその機体は、攻撃判定を持つ武装を使用したことで、戦場にその巨体を現すこととなった。

 

「ミラージュコロイドディテクター……サイコブリッツガンダムとは旦那もいい趣味してっけど、次からフォース勧誘スレで傭兵の相談受けんのやめた方いいと思うよ?」

 

 ──戦う前から最早勝敗は決していた。それが、チィの見立てだった。

 チィは自身の機体からミラージュ・コロイドを取り外す代わりに、その逆探知が可能となるシステムを搭載することで、「傭兵」が隠していた一発逆転の切り札を確実に無効化すべく、その探知と射線の予測に全てのリソースを割いていたのだ。

 しかし、傭兵とて腐ってもAランクダイバーだし、態度こそ最悪だがあのウィンダムを使っていた女だって腐ってもBランクダイバーだ。

 サイコ・フィールドを展開していたとはいえ、Iフィールドソードは核爆発から味方を守りきったことで少なからずダメージを受けていたし、サイコ・フィールドをIフィールドに重ねるのにも長大なリキャストを必要とする以上、頼れるのは純粋なIフィールドによる力だけだ。

 アキノは歯を食いしばり、【サイコブリッツガンダム】がその腹部に搭載した巨大スキュラと、指先に搭載された五連装ビーム砲計十門の一斉射を受け止める。

 

「おおおおおおっ! シルバリィの……銀の誇りにかけてぇッ!」

 

 確かに、Iフィールドソードはサイコブリッツガンダムによる照射攻撃でその刀身を完全に崩壊させて、内部に仕込まれていたIフィールドジェネレーターもビームの熱に耐えきれず融解し、爆散した。

 そして、アキノのミネルヴァガンダムも、短時間に多大なエネルギーを損耗した影響で、傷こそつかずとも地面に膝を突いてしまった。

 ──これは、ワンチャンあるんじゃないか?

 タイタスを駆っていた男はそう錯覚し、一瞬気を緩めてしまった。だが。

 

「エリィちゃんとリビルドウォートのデビュー戦……悪いけど、エリィちゃんのために……」

『う、うわあっ、なんだよこの女、目が──』

「死ねええええッ!」

 

 その一瞬は、ヴァルガであれば命取りとなる。

 ヴァルガに潜っていたのにも関わらず、皮算用で舌舐めずりをした三流の兵士をアイカは慈悲なく一刀の元に切り捨てて、その残骸を踏み台にして空高く跳躍し、フライトシステムを起動する。

 

『雑魚どもは死んだか……だが俺も傭兵なんでな、金の分の仕事はさせてもらう……!』

「いいや、あんたは50万BC、チィたちに払う羽目になんのさ」

『何……?』

「決め手はあるんだろ!? アイカ、エリィ! 殺っちまえ!」

 

 チィはニヒルに笑い、膝を突いていたミネルヴァガンダムを担ぎながら、サイコブリッツガンダムが形成する弾幕砲火から核攻撃の余波を免れた建物を利用しながら巧みに逃れつつ、アイカとエリィの仲良しコンビ(メンヘラズッ友ダイバーズ)へと呼びかける。

 

「うん! チィちゃん! エリィちゃん!」

「……はい! アイカさん、受け取って、下さい……っ!」

 

 仲間からの声に応えて、アイカとエリィは迷いなく、コンソールに表示された必殺技の発動ボタンへとその指をかける。

 そして、アイカは。

 

「これが……あたしの選んだ、あたしの描くフェアリィ・テイル!」

 

 その叫びに呼応するように、必殺技を発動したコメットコアガンダムのフライトユニットと、サイドアーマーに増加装甲として追加していたガンダムAGE-FXの肩アーマー、その天面に設けられたスリットから緑色の光が噴き出し、妖精の羽のようなものと、Cファンネルのような形状をしたエネルギーの塊を展開する。

 そして、エリィが発動した必殺技は、四基のファンネルがそのエネルギーを切らしていなければ無条件で発動できるものの、単体では攻撃力を持たないという極めて特殊なものだった。しかし。

 傭兵の男は、四基が集まって菱形に展開されたフィン・ファンネルの姿に、あのハードコアディメンション・ヴァルガで遭遇した人間災害──FOEさんが使用していた【ディバインダブルオークアンタ】が用いていた武装を想起して、チィとアキノに向けていた射線を咄嗟にファンネルへと変更した。

 だが、結論からいえばそれは無駄な行いだった。

 サイコブリッツガンダムが放つ砲撃を吸収したエリィの必殺技──「リビルド・パワーゲート」に、アイカは「システム・フェアリィ・テイル」を展開したコメットコアガンダムを全力で突っ込ませる。

 

「これが、あたしの!」

「……わたしの……っ!」

『私たちの描くフェアリィ・テイルとその結末!』

 

 フェアリィ・ストライク。奇しくもアイカとエリィが共同で作り上げた必殺技は個人ランク39位──あの人間災害が使用していた、「二桁の魔物」とよく似た一撃を織り成していた。

 パワーゲートを通過して、戦場を駆け抜ける光の矢と化したコメットコアガンダムは、照射ビームをビルドボルグで切り裂きながら、鈍重さゆえに小回りの利かないサイコブリッツガンダムのコックピットを確かに貫き。

 

『うおおおおっ!?』

「爆散っ☆」

 

 その巨体を地に堕とし、四散せしめていた。

 アイカとエリィの視線が、通信ウィンドウ越しに交錯する。

 勝った。夜ご飯にカツ丼を食べても許される、文句なしの大勝だ。

 そしてそれはその「眼」によって戦場を支配して、その掌にエリィが戦局を掌握せしめていたところが大きい。

 

「やったね、エリィちゃん」

「……はい……っ! わたし、勝てました……アイカさん……っ!」

「やれやれ、一週間ぐらい見ねー間に随分仲良くなったみてえじゃねーの」

「いいではないですか、チィ。仲良きことは美しきことかな、です」

 

 勝利を画面越しに称え合って満面の笑みを浮かべているアイカとエリィをニヒルな笑みで一瞥するチィもまた、笑っていたことには変わりないし、それを少し呆れ気味に叱るアキノもまた苦笑とはいえ笑っていた。

 リビルドウォート。アイカとエリィの魂が織り成した、再構築の白兎。

 差し込む日差しに浮き上がる、フードのような装甲に隠れたそのツインアイが、勝鬨を上げるかのように光を浴びて勇ましく煌めく。

 その初戦は、そして「リビルドガールズ」が各々その力を万全に発揮した初めての戦いは。

 完膚なきまでの勝利という形で、決着を迎えたのだった。




二人はニコイチ──!

第三部完結なのですわセバスチャン
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