ガンダムビルドダイバーズ リビルドガールズ   作:守次 奏

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タカキも頑張ってたので初投稿です。


第三十一話「翔るワン・ナイト・パーティー〜今日もGBNは平和です」

GBN総合スレpart.834

 

1:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

ここはガンプラバトル・ネクサス・オンライン、通称GBNに関する総合雑談スレッドです。

 

各種ミッションについてはwikiを参照した上で専門スレへ、フォース勧誘、ビルド構築、クリエイトミッションの攻略に関する相談も専用スレでお願いします。

 

【GBNまとめwiki】https〜

【ミッション攻略スレ】https〜

【ビルド構築スレ】https〜

【フォースメンバー募集スレ】https〜

 

 

 

※※※

 

324:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

例の「ボルケーノ」三人組、「噂のリビルドガールズ」に敗北してて草

 

325:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

うみみ……(既知)

 

326:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

このスレ必ず325番に変な鳴き声のやつ出てくるよな

 

327:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

サニー○兄貴はアロー○の海に帰って、どうぞ

 

328:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

天敵がいる海に送り出すとか抹殺する気満々で草、お前ヴァルガ民かよぉ!?

 

329:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

まあこういう事言うのもあんま良くないんだろうけど正直ざまぁって感じ

 

330:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

イキりたくなる気持ちはわかるけど他人のガンプラそのものには難癖付けないだけ「ダーク♂アヴァロン」とかいう連中の方がマシだったな

 

331:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

あの「チャンプ以外のAVALONは寄せ集めに過ぎない」とかイキってた奴らだっけ、懐かしいな

 

332:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

大体の連中はそのまま雲隠れしたけど副リーダーの奴はガチで反省して三日三晩チャンプと「AVALON」のメンバーに土下座参りしてから真っ当にやってるんだっけ

 

333:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

元々「AVALON」所属の奴らで問題起こした奴が立てたフォースだからなー、チャンプはそういうとこ甘いと思うけどあの人が許したんならもういいんじゃねえかな

 

334:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

「遥か遠きCAMELOT」だっけ改心した連中が立てたフォース、まあ今は普通にやってるしいいんじゃねえの

 

335:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

ボルケーノの連中、「リビルドガールズ」相手に負けたら50万払う約束して試合したから傭兵代丸々損してんのほんと草生えますよ

 

336:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

(´・ω・`) ぼるけいのうwwwぼるけいのうwww

 

337:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

>>336

(´・ω・`) 出荷よー

 

338:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

で、案の定傭兵がそもそもルール違反でフォース勧誘スレで暴れてたのが原因だからって当たり前だけど支払い断って揉めたのをあのチハヤって銭ゲバ女に仲裁されて結局25万ずつの折半になったのが一番笑える

 

339:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

>>338

揉めて支払いがうやむやになるより納得できる形で支払わせる銭ゲバの鑑、それとあの女の子その名前で呼ぶとキレるみたいだからやめてやった方がいいぞ

 

340:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

(´・ω・`) まあ「リビルドガールズ」も随分このスレの噂の種になったわね

 

341:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

俺は最初からエリィちゃんの可愛さを見抜いてたから……

 

342:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

>>341

夜道には気を付けろよ

 

343:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

アイカちゃんの「エリィちゃんのために死ね!」が本気で殺意こもっててマジで怖い

 

344:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

(´・ω・`) アイカちゃんにあの狂気的な目を浮かべてもらいながら病んだ高笑いと共に踏まれたいわね

 

345:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

>>344

(´・ω・`) あきらめて? 出荷よー

 

346:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

(´・ω・`) そんなー

 

347:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

まああんまり有名になんのも考えものだよな、あの「ビルドダイバーズ」も「ボルケーノ」にELダイバーがどうこうとかそれでチートしてるとか言いがかりつけられてたっぽいし

 

348:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

有名税っていうけどあんまりいい考え方じゃないよな

 

349:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

まあそのせいで「リビルドガールズ」もあの連中に目ぇ付けられたっぽいしな……

 

350:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

どの「あの連中」だよ

 

351:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

 

352:以下、名無しのダイバーがお送りいたします

把握した

 

 

※※※

 

「んぎゃああああっ!」

「チィ!」

「クッソ、なんだよこいつら! 百歩譲って見た目が独特なのはいいけど首回しながら変形ゲロビなんか撃ってくんじゃねえええ!」

 

 仮想郷が夜の帳に包まれても、現実のそれと変わらないメガロポリスは電気の灯りを地上に瞬く星々に代えて瞬き続ける。

 眠らない街と呼ばれた世界の主要都市をモチーフとしたそのエリアは、「走り屋たちのペリシア」という二つ名で呼ばれて憚らない。

 ディメンション・シュバルツバルトの中に存在するそのエリア──「ハイウィンド・エリア」は、首都高速とニューヨークの街並みが悪魔合体したかのような、ただふらふらと街を歩くのであれば見事にバエる……ガンダム・バエルという意味ではなく花の学生たちが使う意味であるその言葉を体現する夜景に一日中包まれている。

 しかしてその実態は、都市が見せる幻想と、メガロポリスを生かし続ける大動脈、十八メートル級に拡大されたガンプラが複数機集まっても余裕を持つ巨大高速道路たる「ストレイ・ハイウェイ」の漂わせる「高速」の夢が覚めないことを願いながら電子の海の走り屋たちが、誰に咎められることもなく日々都市の血管で「最速」を賭けたデッドヒートを繰り広げる、ある意味では理想郷で。

 アイカたちのような一般人が、軽率に踏み込むような場所ではなかった。

 マジョーラカラーを見事に活かしきったことで、都市の明かりを取り込んで七色を通り越して約千六百八十万色に輝く、ホットスクランブルガンダムの改造機と思しき四機のガンプラが編隊を組み、敢えて先行させている「リビルドガールズ」の四機を追跡する。

 

『フハハハハ! 少女たちよ、これこそがバンデッド・ルール! これこそが「ガンプラバトル」と「レース」が融合した究極の遊戯、バンデッド・レースに他ならぬのだ! その魅力はわかってもらえただろう!?』

「わかってたまるかあああ!!!」

 

 そのホットスクランブル──というか、ホットスクランブルガンダムの変形時に機首となる部分と武装だけを流用し、フィン・ファンネルを元のスクランブルガンダムに戻した四機のカスタマイズモデルは、スピードを重視したこのバンデッド・レースにおいては標準的なカスタマイズであり、その方向性も極めて真っ当なものだといえた。

 機種の先端に、鳩だかオウムだかカカポだか知らないが、デフォルメされた鳥の頭部、プチッガイの頭を改造したパーツを搭載し、極彩色の輝きを放ちながら迫ってくること以外は。

 アイカはグルグルと首を回しながら、その目に当たる部分から連続して放たれるビームを死にそうな思いで回避しつつ、反射的にそう返していた。

 仮にバンデッド・レースが魅力的な競技であったとしても、「ダイバールックがその機種部分と同じようなデフォルメされた鳥の頭に全身タイツで」「どことなくゲーミングな輝きを放ちながら首を回して襲いかかってくる」紛れもない変態の編隊に追いかけられているような状況で、その魅力を理解できるような人間は頭のネジが一本か二本外れているか、このフォース……「パロッツ・パーティー」のような鳥頭ぐらいしかいないだろう。

 厄介なのはこの「パロッツ・パーティー」、先日戦った「ボルケーノ」三人組と違ってその態度は極めて紳士的で、見た目以外はまともなところだ。

 

(勿論、嫌がる少女たちに無理強いをしてまで吾輩は戦いたいと思わない。だが……リビルドガールズ、吾輩も憧れるあのスピードを誇るアリアとガンダム・バエルを破った、超スピードで成長する君たちに……このめくるめく高速の世界を見てもらいたいのだ)

 

 現在、ホットスクランブルもとい【パロットスクランブルガンダム】四機編隊の中でも三機を後ろに従えてアローヘッド・フォーメーション、その先頭となって首を回している男……ダイバーネーム「ハート」は、極めて温厚に、そして紳士的に、チィからの金銭要求にも嫌な顔一つせず、むしろ自分たちが負けた時は倍額を支払うとまで言ってのけた、極めて度量の大きい人物だ。

 その度量に反比例して、格好が突き抜けていることさえ除けば。

 アイカは宿命的に変なのに絡まれる己の体質を呪って涙しながらも、「パロッツ・パーティー」が見せようとしている最速の景色に乗せられて、メガロポリスを一周する大動脈を、愛機の名の如く流星のように駆け抜けていた。

 

『ムッハハハハ! 少女たちよ、最速のチュートリアルは堪能しただろう……ならばここからが本番だ!』

 

 通信ウィンドウが開かれて、デフォルメされたペリカンの被り物にやはり白い全身タイツという奇妙奇天烈な出立をしたダイバー、「ペリー」が叫ぶと、チィが予め察知していた通り、攻撃判定を持つ武装を一切行使しなかったことで夜の闇に溶け遂せていたそのモビルアーマーが、ハイウェイに全容を現す。

 

「うおおおおきめええええ!?」

『キモいとはなんだ! きもちわるい、と言いなさい!』

「……あ、あの……あんまり……変わらないんじゃ……っ、ひぅ!?」

 

 チィが思わず反射的に「キモい」と叫んでいた通り、姿を現したモビルアーマーは明らかに異形と呼んで差し支えない姿をしていた。

 元になったのはおそらく「グラブロ」だろう。だが、水中でこそその本領を発揮するものの、陸上では丘人魚なそれが何故、帝都を駆け巡るハイウェイに降り立っているのか。

 その答えはシンプルだ。本来グラブロが備えている巨大クロー・アームがあるべき場所にはゲルズゲーの下半身が移植されていて、その天面からは無数のテンタクラーロッドと、モノアイシールドがあった場所からはパロットスクランブルと同じデザインながらベアッガイⅢのそれで作られた鳥頭が、グラブロのクロー、そのアーム部分を首の代わりにする形で接続されている。

 反射的に答えたエリィのリビルドウォートに対して、「違うのだ!」とばかりにテンタクラーロッドによる猛攻を仕掛けるそれは、百歩譲ってキモいではなくきもちわるい、だったとしても、ギリギリとはいえ鳥と言い張れなくもないパロットスクランブルの範囲からは明らかに逸脱している。

 

「エリィ! 私が盾に……! それと!」

『ムッハハハハ! なんだねアキノ女史!』

「……それは、鳥なのですか?」

 

 バンデッド・レースは直接攻撃やトラップの設置など、「場外から行われるものを除いて」妨害行為の全てを認めた上でゴールを目指す荒々しい競技であり、確かにその魅力に取り憑かれる人間が出てくるのもわからなくはないと、生真面目なアキノは本気でそう思っていた。

 だからこそ「パロッツ・パーティー」は鳥をモチーフとしたカスタマイズをフォースメンバーのガンプラのみならず、ダイバーのアバターにさえ適用しているのだが、目の前にいるモビルアーマーは明らかに翼を持つ鳥のそれからは逸脱している。

 

「……それ、今聞くことかなぁアキノさん……」

「ええ、今聞くべきことです、アイカ」

 

 ミネルヴァガンダムはスピードという面でも「リビルドガールズ」で随一だ。

 そして、この競技が純粋にヨーイドンでゴールを目指すものでないのなら、極端な話全員が潰し合うのを待ってから、歩きで悠々とゴールしたってルール上は構わない。

 なんてことはない。普段のガンプラバトルにレース要素が加わったものがバンデッド・レースならば、自分はいつも通りチームの盾になるべきだと判断を下して、アキノは異形のモビルアーマーと対峙することを選んだのだ。

 アイカは開いた口が塞がらない、とかフレーメン反応を起こした猫とかそういう類の顔をして呆れていたが、対峙する相手が相応にこだわりを持っているなら、それから外れたものを運用しているのはよほど切実な理由があるか、或いはその解釈をこちらが誤っているかのどちらかだ。

 だからこそ、戦う相手については知っておきたい。

 巧みに伸ばされるテンタクラーロッドをビーム・トンファーの乱舞で切り刻みながらバックブーストで前進するという奇妙な光景を展開しながら、アキノとペリーは互角に渡り合う。

 

『感動した……』

「はい?」

『俺は今、猛烈に感動しているのだアキノ女史! この【ドードラブロズゲー】をキモいと評するダイバーは数知れず! しかし! 貴女は敢えて理由を問うてきた! なれば答えねばなるまい……このドードラブロズゲーは……翼を持たぬ鳥、ドードー鳥なのだ!』

「ドードー鳥に触手は生えてないよね!?」

『何を言うかアイカ女史! ここはGBN、そしてガンプラは……自由だっ……!』

 

 自由にも程があんだろ。

 思わずもう既に崩壊寸前のロールプレイを叩き壊してアイカは叫びたくなったが、なんとも言えない微妙な顔で眦に涙を浮かべているエリィと、もうどうにでもなれとばかりに逆に満面の笑顔を浮かべているチィを通信ウィンドウ越しに視認することで、幾分か冷静になる。

 しかし。

 

『然りっ……! 我らは自由にこのGBNの空を飛ぶ!』

『高速の世界……ハート殿が我等に見せてくれた夢をこの翼に乗せるために!』

『そしてその夢を我らで独り占めするのではなく、他者にも分け与えるために!』

『吾輩たちは、自由なのだ!』

 

 上からハシビロコウの被り物をしている「ハッシー」、カラスの被り物をしている「カーラ」、ハクチョウの被り物をしている「チョウ」、そして当然の権利のように全身タイツ姿の彼らをまとめ上げるリーダーであるハートが、力強く宣言する。

 うわーいこいつら努力の方向音痴だ(もうどうにでもなーれ)

 確かに彼らの理念は立派なものだ。そしてダイバーとしても、人間としても非常に器が大きく、尊敬に値する人物でさえあると、アイカもそこは認めている。

 だけど、どうしてその熱意を主にダイバールックの面でまともに活かせなかったんですか?

 アイカは電話をかけている猫の如く頭を抱えたくなったのを堪えて、戦況を冷静に分析する。

 あのキモいモビルアーマー、ドードラブロズゲーはいつも通りにタンク役を引き受けてくれているアキノが抑えている。

 そしておそらくあの構成は妨害に特化したものだ。ならば、敵が次にやってくることは何か。

 奇しくも、アイカとエリィは同じことを考えて、そして。

 

『チュートリアルは終わりだと宣言した……! チョウ!』

『了解しましたリーダー! 少し本気を出す……さあ、ついてこれるか少女たちよ!』

 

 ──膠着した戦況を打破することだ。

 失念していた。あの主に独特すぎるダイバールックやガンプラの姿に気圧されて忘れかけていたが、このゲームの本質はバトルではない。

 あくまでもレースだ。それを見せつけるように、ゲーミングな輝きを放っていたパロットスクランブルの一機、チョウが駆っている機体の全身が赤みを浴びたかと思えば、そして。

 

「……流星……っ……!?」

『フアッハハハ! 違うなエリィ殿! これは……彗星だッ!』

 

 エリィが誤認しかけたのも無理はない。トランザムと見紛う速度で飛び出していくチョウのパロットスクランブルは、現在先頭を走っていたアイカを早々にぶち抜いて、このストレートでレースを決めようとしたのだろう。

 

「ちっ!」

 

 アイカは舌打ちと共にコンソールを忙しなく操作すると、レースの舞台となっているこの「ストレイ・ハイウェイ」の全体図を映し出して、残りの区間を確認する。

 ──まずい。

 そこに表示された事実にアイカは当惑し、操縦桿を握る手を緩めかけたが。

 

「アイカ、おめーの考えてる通りだ、止めなきゃやべえ! 飛べるか!?」

「勿論、チィちゃん!」

 

 チィの一言がアイカを現実に引き戻す。

 迷いなく「フェアリィ・テイル」の発動を選んで、アイカは先行したチョウのパロットスクランブルを叩き落とすべく、膠着した集団から離脱しようとするが。

 

『それは読んでいた!』

「ぐ……っ!?」

 

 ハートのパロットスクランブルもまた、そのトランザムと極めてよく似た必殺の加速ギミック、「紅の彗星」を発動すると、フェアリィ・テイルの発現によって飛び出したアイカに一瞬で追い付き、その喉元を啄まんとクチバシから伸ばしたビームサーベルで襲いかかる。

 それでもモビルスーツ形態に変形しないのは、「パロッツ・パーティー」の意地が故だろう。

 エリィは混乱と当惑に頭を支配されながらも、この長いストレートを抜けた先にあるものがヘアピンカーブの連続であることを確認すると、躊躇いなくトランザムシステムを発動させて、この乱戦を切り崩そうと全てのフィン・ファンネルを一斉に射出する。

 

『イエッハハハハ! エリィちゃん! ファンネルとはまだ若いな!』

『ハハハハハハ! 我らとて百戦錬磨のレーサーよ、ファンネルによる妨害など、お手の物ぉっ!』

 

 混戦の模様を増してきた後方集団で、一斉に「紅の彗星」を発動したパロットスクランブルたちは、エリィが戦場を掌握し、完全な起き撃ちを行っているにも関わらず強引なブーストによる推力の暴力と、繊細な機体捌きでメガ粒子砲にも匹敵する、トランザムで強化されたフィン・ファンネルが形作る光の網を華麗にくぐり抜けていく。

 

「……う、ああっ……」

「弱気になんじゃねえ、エリィ!」

 

 リビルドウォートを得ても変わらないのかと、エリィが絶望に沈みかけていたところへ、チィの鋭い叱咤が投げつけられる。

 

「いいかエリィ、今一番役に立ってねえのはチィだ! アキノがあのキモいのを抑えてくれてるから妨害は何とかなる! お前はサポーターじゃなくてレーサーになれ!」

『フハハハハハ! チィよ! ならばどうする!』

「こうすんだ……よっと!」

 

 大きく馬身を開けられたチィは、フェアリィ・テイルとトランザムによって三機のパロットスクランブルに食らいついている二人から離れた位置にいる。

 そして、このゲームはコースに立っている限り、どんな妨害も許可される。

 チィは迷うことなくコンテナから折り畳まれたロングバレルを取り出すと、ストレートが幅を狭くし始める、コーナーまでの折り返し地点の壁を狙って、そのバレルを持っていたビームマシンガンと接続することで、一発の出力を絞り込み、弾速を極限まで高めた一撃を発射した。

 

『ヌヴォォォォォォ!?』

『ヌゥン!?』

『ヌアアアアアッ!!!』

「うわ……っ!?」

「わわ……っ!?」

 

 機体の純粋なスピードなら、当たり前だがそれを追求してきた「パロットスクランブル」の方がコメットコアガンダム、そしてリビルドウォートよりも上回っている。

 だが、機体が加速すればするほど、何かにぶつかった時のダメージもまたそのスピードに比例して大きくなる。

 爆発を起こして吹き飛んだ瓦礫は、敵味方の区別なく先頭であるチョウに追いつかんとしていた五機にへと一斉に降り注いだが、その被害を甚大に被ったのはやはりというか、並び立って集団を抜けようとしていたアイカとエリィを包囲する形で陣形を組んでいたパロットスクランブルたちの方だった。

 

「……もうチィのグラスランナーじゃ追いつけねーな、悪い、アイカ、エリィ。これしかなかったんだ、後は頼んだわ」

 

 瓦礫と爆発の中から姿を現したコメットコアガンダムとリビルドウォートは著しく損傷していた。

 そして、化け物のようなモビルアーマーであるドードラブロズゲーを一人で相手していたアキノはとうとう必殺技を解禁し、その巨体をハイウェイに伏せさせることに成功していたが、その代償としてミネルヴァガンダムからのシグナルはロストしている。

 ぺたん、と座り込んだグラスランナーのコックピットの中で、チィは自分が機体やダイバーの見た目に惑わされて、戦術の本質を見失っていた事実に唇を強く噛み締める。

 

「クソッ……何が偵察だ、斥候だ……チィは、調子に乗ってたのかよ……!」

 

 そんなチィの嘆きは、ハイウェイを駆け抜ける機体が全力で噴かしているスラスターの残響にかき消されて霧散する。

 それはまるで、一夜の夢を見ているかのように。

 なんでもありだからこそ戦術を見誤る悔しさも悲しさもまた、バンデッド・レースの一部なのだ。

 シグナルを喪失しながらも通信は傍受できるコックピットの中で、ハートはチィの嘆きに対して静かに腕を組み、泣くなとばかりに、それを乗り越えた先に最速の見せる夢があるとばかりに、後方保護者面で静かに頷くのだった。

 

 

 

 結論から言えば、損傷したコメットコアガンダムとリビルドウォートでは、無傷で見事にストレートを抜けて、ヘアピンカーブを華麗に、最低限のブレーキとアクセルを使い分けて駆け抜けていくチョウに追いつくことはできなかった。

 アイカは焦りからフェアリィ・テイルを切らずにヘアピンカーブへと突入したことで壁に激突して盛大にコースアウトとなったことで失格となり、エリィはトランザムを切ってヘアピンカーブへと突入したが、瓦礫の余波で片肺を失っていたリビルドウォートでは、万全かつ走り慣れているパロットスクランブルに追いつけるはずもない。

 それでも、もたもたと機体を慌ただしく立て直しながらも完走したのは、エリィが見せた意地と言うべきか。

 そうして「リビルドガールズ」が敗北を喫してロビーに帰還したその時、勝てなかったことを悔やんで泣いているエリィに、そっと全身タイツに包まれた白い手が伸ばされる。

 

「エリィ、悲しむことはない……このレース、本当にグッドゲームだった」

「……あ……っ……!?」

 

 ハートの被り物越しに見える目はどこまでも慈しみに溢れていたが、その異様な姿、端的に換言すれば変態そのものな様相に恐れをなして、エリィはびくりと身を震わせるといつも通りにアイカの後ろに隠れてしまった。

 

「ごめんなさい、エリィちゃん、シャイな子なので……」

「フハハハハハ! 吾輩にも同じような年頃の娘がいる、何、気にすることはないさアイカ! 改めてグッドゲームであったぞ!」

 

 いやその情報はちょっと聞きたくなかったです。

 そう言いたくなるのを堪えて、アイカはハートが差し伸べてきた手をがっちりと握り返して言葉を紡ぐ。

 

「GGでした、ハートさんっ☆」

「うむ! 最速の世界がまた見たくなったなら吾輩たちをいつでも呼んでくれ! GBNは……純粋なバトルだけがその全てではない。そう、全ては自由、ガンプラもこの世界も、自由なのだからな! フハハハハハ!」

 

 そう言い放って、仏頂面のチィから報酬である10万BCを受け取ると、次なる対戦相手を探してか、ハートはロビーから再びディメンション・シュバルツバルトへと解けて消えていく。

 

「……なんつーかごめん、チィが調子乗ってたわ」

「いいえ、チィ、貴女は悪くありません」

「アキノ……」

「これは、私たちチームの敗北です。私も……どこかで浮かれていたところがありました。だから、皆で反省会を開きましょう」

「……わ、わたし、も……それが、いいかな、って……」

「完全にあの見た目にやられてたよね……それも作戦だったのかな」

「おめーら……」

 

 途方に暮れていたチィに、一様に苦笑を浮かべながらも己の失敗を頭に浮かべて、アイカたちはその手を差し伸べる。

 

「よっしゃ、反省会だ! 次は勝って……そうだな、30万は貰ってくぞ!」

「さんせーいっ☆、それじゃカフェに集まろっか!」

「……はい……っ……!」

「ええ、それがいいでしょう」

 

 確かに、「リビルドガールズ」は敗北を喫した。

 だが、その蹉跌を受けてもアイカは、エリィは、チィは、アキノは、決して涙に暮れて己を責め続けるのではなく、前を向いて笑っていた。

 それはきっと、「リビルドガールズ」が「リビルドガールズ」にならなければそれは実現できなかった光景なのだろう。

 アイカも、エリィも、チィも、アキノも。それぞれに理由を抱えてこの電子の海へと潜っているが、四人でいる内は少しでも互いに抱えた理由を支え合えているような、そんな感覚がする。

 四人は一様にそう思っていたが、誰一人、野暮なことだと、その言葉を口には出さず、カフェで何を頼むかについての雑談に興じていた。

 きっとこれが、GBNだった。そして。

 かつて──ある少女の犠牲と、ある少年……クガ・ヒロトの覚悟と最後の意地が、そしてある少年、ミカミ・リクの勇気が奇跡への一矢となって守り通した、仮想故の理想郷の日常、その一幕だった。




全身タイツに被り物の集団がゲーミングな色に光って首を回しながら変ゲロを垂れ流す様はまさに変態の編隊
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