ガンダムビルドダイバーズ リビルドガールズ   作:守次 奏

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盆休みが気付けば終わっていたので初投稿です。


第四話「そこにある''理由"〜袖の擦り合いにPKを添えて」

 時代が病んでも、人生は自分がどうにかするものだと、うろ覚えだけれど、そんな歌をいつか、どこかで聴いたことがあった。

 愛香は人でごった返す通学電車の壁に背を預けて、アルス・ノヴァ──GBNで活動するバーチャルアイドルである──のシングルをイヤホンから流しながら、茫洋と考えを巡らせていた。

 なりたい自分。なれない自分。

 画面の中で、ビビッドな色に染められたガンダムの掌で踊る栗毛の少女を脳裏に浮かべながら、付いてきた言葉をすり潰すように愛香は奥歯をきつく噛み合わせる。

 暦を見れば、時代は前に進んでいるはずだ。

 ガンダムベースを訪れた客が、ガンプラの箱を手に取りながら、「こいつがキット化されるなんていい時代になった」と歓喜する姿を何度も見てきた。

 一方で、街を歩けば、電子の海を彷徨えば、いつもどこかで誰かが時代がおかしくなっていくと嘆きの声を上げている。

 そのどちらが正しいのか、愛香にはわからない。

 あるいは両方とも間違っていて、両方とも正しくて、そんな曖昧さの中で何となく時間に沿って前へと押し流されていくような、そういう感覚があるだけだ。

 

「なんだろうね」

 

 自分って。

 ぽつりと喉からこぼれ落ちた言葉は、学校の最寄駅に着いたことを知らせる車掌のアナウンスにかき消されて霧散していく。

 ──あたしは朝村愛香で、GBNに潜れば「アイカ」になって。じゃあ、どっちがあたしで。そっからあたしは「アイカ」になって、そして。

 茫洋と、同じ駅で降りる学生やサラリーマンの人波に流されながら、愛香はただ考える。

 それでも鞄の中には中身が大量の緩衝材で保護されたタッパーが詰まっていて、その中には愛香が作ったガンプラがあって。

 そして今日は、理由だとか自分だとか関係なしに、ガンダムベースに、GBNに行く約束があるのだった。

 

 

 

「おはよー」

「おはよ」

 

 どこか気怠い朝の匂いを残した挨拶が、教室を飛び交う。

 儀礼的に、というよりは機械的にそんな四文字を呟いてから、教室は各々で作ったグループがそれぞれに好き勝手なことを話す場所になる。

 それが今日まで続いてきたし、中学でも高校でも変わらなかった。ただ。

 がた、がた、と控えめにフレームが鈍く軋むような音を立てて、教室の扉が開かれる。

 誰かが登校してきたのだろう。

 普段ならそんなことに注意を払う同級生はほぼいないし、愛香も出席番号順の都合で出入り口近くに配置された自分の席で、気怠げに鞄を枕にして突っ伏していたのだが。

 

「……誰?」

「うわ、めっちゃ痛そう……」

「あ、この席って」

 

 昨日放映されていたドラマやGBNがどうのこうのと、バラバラになっていた教室の視線と話題が、誰かの呟いた言葉を皮切りに、一つに纏まってざわめき出す。

 

「ん? なんかあったの……って、あ」

 

 野次馬根性に乗っかって、愛香も突っ伏して顔を上げたその時だった。

 彼女の視界に、スライド式の扉を僅かに開いてその隙間から顔を覗かせていた絵理が映ったのは。

 

「絵理じゃん、おはよ」

「……お、おはよう、ござい、ます……」

 

 教卓の真前。出席番号順に並べられた法則を例外的に外れたその席は、普段は空白地帯として認識されていたものだ。

 だが、そこには座るべき誰かがいた。

 たったそれだけのことなのに、クラスメイトたちはがやがやと騒ぎ始めている。

 愛香は微かに眉を潜めて、肩を震わせながらその席に座った絵理の元へと歩き出す。

 

「大丈夫なの?」

 

 自分で言っておいて、何が大丈夫なのかもよくわからないが、とりあえずの話題として、愛香は絵理に問いかける。

 

「……あ、えっと、その……はい、元気、です……」

「英語の授業じゃないんだから」

 

 思い返せば謎だった。

 確かに外国語を学ぶのには初歩的なところから入るしかないのだが、何かのジャーゴンのごとく「アイムファイン、サンキュー、エンドユー?」と繰り返していたのは今思えばどこか異様でさえある。

 絵理の答えに少し昔を思い出しながら、愛香が苦笑していた時だった。

 

「愛香、その子と知り合いなの?」

 

 席で言うと教室のど真ん中ぐらいに座っていた、セミロングを、愛香よりも明るい茶髪に染めた女子生徒が席を立って愛香に尋ねる。

 

「ん、そうだよ恵美。バイト先でねー」

「へー、愛香のバイト先ってガンダムベースだっけ? どうなの?」

「まあ給料はいいかな、未だにガンダムの名前とか全部覚えてないけどね」

 

 だよね、と、恵美と呼ばれた生徒は苦笑した愛香につられて一頻り笑った。

 

「でもわかるだけすごいよ、あたし、ガンダムとかザクとか全部おんなじに見えるもん」

 

 そんな風に冗談めかして肩を竦めながら、恵美は元の席へと戻っていく。

 スクールカースト。嫌な言葉だと、ひらひらと恵美に手を振りながら落ち着きを取り戻した教室を一望して愛香は喉元に溜息を押し留める。

 とりあえずクラスの中で浮いていない愛香の知り合いで、中心的な恵美に渡りがついた。

 それを判断材料に、絵理の存在はひとまずクラスに受け入れられたのだろう。

 それでも尚、愛香と絵理に注がれる値踏みをするような視線と、関心を失って中断していた会話を再開する同級生たちに、愛香はどこか冷めたような視線を送ってしまう。

 

「……あ、ありがとう、ございます……」

「ん、気にしなくていいよ、てか学校来れたんだね」

 

 萎縮する絵理を宥めるように、愛香は言う。

 絵理の家がどこにあるのかは知らなくとも、精神的な意味でも抱えているハンディキャップという意味でも、それが自分の想像を絶するぐらいに難しいことぐらいはわかる。

 

「……約束、したので……」

 

 どこか照れたように頬を染めて、両手の人差し指同士をもじもじと合わせながら、絵理は今にも消え入りそうな声でそう答えた。

 律儀だな、と、そう愛香は思った。

 義理堅い、とでもいうのだろうか。知り合って一日しか経っていないし、ガンダムベースに来てほしいというだけの意図で取り付けた約束なのに、絵理はわざわざ学校まで足を運んでいる。

 

(いい子、なんだろうなあ)

 

包帯で覆われた右眼と、左の頬に貼り付けられた絆創膏に視線を落とす。

 絵理がどんな経緯で包帯を巻くようになったのかは、軽はずみに訊いてはいけないことだと愛香はわかっている。

 それでも、きっと絵理はいい子だから。

 いい子だから、狙われたのだろう。

 そんなことぐらいは、今も──恐らくはどこかで愛香にすら怯えている絵理を俯瞰すれば想像がつく。

 そこにある罪について考えれば、悪いのは人間だ。疑いの余地はない。

 それでも、標的にされるのがいつだって何か特別に悪いことをした人間じゃなくて、何も悪いことをしていない、虫だって殺さないような「いい子」なのは。

 

「寒い時代だね」

「……時代……?」

「なんでもないよ、それじゃ授業始まるし、またね」

 

 病んでいく時代が人にそうさせるのか。それとも、人間という生き物が抱えている構造的な欠陥なのか。

 答えは出ないまま、ひらひらと手を振って愛香は自分の席に戻っていく。

 そこに、一抹の無力を抱えながら。

 

 

 

「いつ見てもでっかいねこれ」

「は、はい……」

 

 全ての授業と教室の掃除を終えて愛香たちが訪れたガンダムベースシーサイド店の前に佇むエールストライクガンダムの立像は、今日も変わらずその白亜の巨体に威容を湛えている。

 

「エールストライク、っていうんだっけ、なんかストライクって名前だけでもいっぱいあって、最初何がなんだかわからなかったんだよね」

 

 ガンプラを手にして立像の足元に屯した、恐らく記念撮影目当ての観光客であろう集団の邪魔にならないように大きく迂回するルートを取りながら、愛香はぽつりとそう零した。

 ストライクガンダム。

 型式番号GAT-X105。ガンダムSEEDの前期主役機で、背中の装備によって名前が変わったり、そもそも同じストライクでも顔と名前が違うのがいたり、同じ装備でも色違いで商品名が変わるものがあったりで、バイトを始めたばかりの頃は知らない人が「ガンダムなんて全部同じだ」とぼやくのも無理はないと思ったことを覚えている。

 

「……わたし、も……」

「うん」

「……ガンダムの、こと……よく……知らなくて……」

 

 よく見えないけど、この大きなガンダムがエールストライクということも今初めて知ったと、絵理は少し気まずそうに呟いた。

 まずったか、と、愛香は自分が地雷を踏んでしまったことを悟って、声には出さず小さく呟く。

 それもそうだ。絵理は最前列にいて黒板の板書もぎりぎりな程に視力が悪い。

 そんな絵理が、いかに大きかろうとここに佇む立像の全体を把握するのは不可能だろう。少し考えればわかることだった。

 ──ああ、全く。

 気まずい。ただひたすらに気まずい。

 絵理は特に気にした様子もなく杖を突き、愛香の右袖を左手で握り締めながら歩いているが、愛香の胃袋は今にも悲鳴を上げ出しそうなほどだった。

 

(……じゃあ、なんでこの子はここに来たんだろう)

 

 現実逃避か、はたまた脳が悲鳴を上げた産物か、ふと、そんな疑問が滴のように、思考の片隅を転がり落ちる。

 ガンダムを知らない人間がGBNをやってはいけないなどという道理はどこにもない。

 ただ、GBNというゲームを遊ぶのに、人は何かの理由を抱えている。

 自分こそがガンプラバトルを一番上手くやれるんだと、そう叫びたい者がいる。丹精込めて作り上げた魂の分け身のようなガンプラを、多くの人に見てもらいたい、そして認めてもらいたいという者がいる。

 そして、仮想の世界だからこそ、歌い、踊りたいと願った彼女たちもいて。

 絵理の理由がなんなのか、愛香にはわからない。

 それでも、それが切実なものであることぐらいはわかる。

 ガンダムを知らないのに、ガンダムベースに足を運んで、あの世界にダイブする。それは愛香も同じだ。だが。

 

(本気、なんだろうな)

 

 絵理の左眼は怯えながらもガンダムベースを真っ直ぐに見つめている。

 強い動機が、本気の理由がなければできない目だ。そして。

 三年間全力で頑張って、その全てがダメ金に終わった吹奏楽、全力で走って3位しか取れなかった徒競走。いくつもの本気と、そこに突きつけられたいくつもの現実と蹉跌を、愛香は思い返す。

 きっとそれ以上の蹉跌を抱えながらも、それだけ強い動機を持つ絵理が、愛香はどこか羨ましかった。

 強い動機に突き動かされたのは確かだ。

 だが、愛香の中でそれは日ごとに薄れて、気付けばいつもと同じように、同居人のような諦めと背中合わせになりながら歩いている。

 だからこそ。絵理が気付く余地はないが、自分が失ったその目を持つ彼女を、愛香はこの一瞬、本気で羨み、そして。

 僅かばかり、妬んでいたのだった。

 

 

 

 ダイバーギアにガンプラを読み込ませ、ゴーグル型のデバイスからGBNへのログインを試みれば、愛香の意識は解けて、アバターである「アイカ」へと再構成されていく。

 意識が文字通り遠のいていく感覚は、どこかエレベーターで下り続けているようで、何度やっても慣れそうにないと、現実が解けて結ばれた仮想の身体でロビーに降り立ちながらアイカは苦笑する。

 

「エリィちゃん、いる?」

「……は、はい……」

 

 一応、同時に同じ店舗からログインを試みても、ロビーは人でごった返しているのだから万が一ということもある。

 周囲を一望しながらアイカが呼びかけると、すぐ後ろにいた、包帯を巻くことなく髪を銀色に染めて、青い瞳を鳶色に変えた以外は、学生服風の衣装であることも含めて現実とそう変わらない絵理のアバター……「エリィ」が小さく返事をした。

 エリィはなりきらないタイプなのだろう。

 そこかしこでガンダムの原作アニメを再現したアバターであったり、獣の耳や尻尾を生やした人間、獣人のようなアバターであったり、何か粘土細工じみた質感の、埴輪にガンダムのアンテナやザクのモノアイを貼り付けたような謎のアバター──アイカは知らないが、ピキリエンタポーレスというらしい──が練り歩いているほどに、GBNにおけるキャラメイクの自由度は高い。

 かくいうアイカ自身、現実では茶髪のショートボブだがGBNでは鮮やかな桃色の髪にウェーブをかけ、お団子状のツインテールを結えた派手なアバターを作っているし、衣装もどこかアイドル風な、リボンやフリルのあしらわれた肩出しのワンピースを選んでいる。

 多分この辺が、ガンダムを知らなくてもこのゲームをやりたがる人間の動機になっているのだろう。

 風の噂で聞いた、アバターがワカメのようにぐにゃぐにゃに崩壊したり、拳のテクスチャが崩壊して、何故かその全てに当たり判定があるという格闘ゲームの存在を思い返す。

 そんなクソゲーと比べること自体がそもそも失礼なのだろうが、恐らくキャラメイクという一点に限ってだけでも、GBNはその対極に位置する、いわゆる神ゲーに当たるのだろう。

 そんな他愛もないことを思考の片隅に浮かべながら、愛香は絵理を一瞥する。

 

「……あ、あの……わたし……何か……?」

「ううん、なんでもないよ。それじゃ、フレンド申請しちゃうねっ☆」

 

 元々今日GBNにログインしたのはそのためだ。アイカはコンソールを操作しながら、エリィへとフレンド申請を送る。

 

「……あ、ありがとう、ございます……! わたしも、送り、ました……!」

 

 ぱたぱたと、コンソールを眺めて小躍りしながら、エリィは目を輝かせる。

 本当に嬉しいのだろう。彼女からのフレンド申請を受理しつつ、アイカは小動物を見るような面持ちではしゃぐエリィを見つめていた。

 

「あたしも受け取ったよっ、さてと、それじゃミッションを……」

 

 先日は騙されて散々な目にあったが、元々このロビーの真ん中にある窓口に配置されたNPC、このゲームではNPD、ノンプレイヤーダイバーと呼ばれるそれを経由してミッションは受けるものなのだ。

 搭載されたAIも何を受けたらいいかわからない時は受付のNPDに訊けばいいと、攻略サイトに書かれる程度には高度なものである。

 

(エリィちゃんを助けるとはいえ、思えばあたしはなんであんな時間を……)

 

 そんなことはつゆとも知らず、モヒカンに追いかけ回された記憶に悲しみを覚えながら、アイカがエリィの手を引いて受付に向かおうとした時だった。

 

「待てやゴラァァァ!」

「ざっけんなボケ、死に晒せェェェ!」

 

 二昔かそれ以上前ぐらいの任侠映画じみた怒号がロビーに響き渡ると共に、銃声が轟く。

 

「なんだ!?」

「げっ、PKかよ! 運営何やってんだ!」

 

 非戦闘区域に設定されているロビーでのプレイヤーキルは重罪中の重罪だ。

 それでも尚禁を犯そうとした辺り、声を上げた連中の殺意の高さが窺えるというものだ。

 ロビーにひしめく人々は平穏をかき乱し、乱入してきたプレイヤーキラーの凶弾から逃れようと慌ただしく駆け回る。

 

「あ、アイカさん、わたしたちも……!」

「ねーちゃんたち、ちょっとそこにそのまま立ってて!」

 

 エリィが逃げ出そうと呼びかけた声をかき消して、小さな子供のような叫びがアイカたちへと投げつけられた。

 人混みをかき分けて、丁度ロビーの壁を背にする形になっていたアイカとエリィの背後にできた僅かな隙間へと、声を上げたと思しき人影が滑り込む。

 

『違反行為を検知しました、対象の確保と鎮圧に当たります』

 

 受付のNPDがアナウンスを流すと同時に、赤いアラートの文字が乱舞するロビーが封鎖され、どこからか転移してきた【GBN-ガードフレーム】──本来はガンプラごと対処に当たるためのそれを人間サイズに小型化したものだ──が、銃撃を行ったダイバー二名を、その抵抗も物ともせず瞬く間に確保して、強制ログアウトの措置を取る。

 

『お騒がせして誠に申し訳ございません。鎮圧は完了いたしましたので、ロビーの封鎖を解除します』

 

 恐らく、鎮圧されたダイバーのアカウントがGBNに戻ってくることはもうないだろう。

 それを確信してか、平穏を取り戻していくロビーで、アイカはただ押し寄せくる疲労にまた厄介ごとかと溜息をつく。

 

「いやあ、死ぬかと思ったね、ったく……裏口クリアがイヤならあんなミッション作んなっつーの」

 

 アイカとエリィの後ろに隠れていた、黄色のレオタードにシースルーのパレオを纏わせたような衣装に身を包んだ小柄な少女が呆れたように肩を竦める。

 

「……えっと……その、あなた、が……?」

「ん? ああ、追われてたって意味ならそうだよ、まあチィは悪くないよ、悪質クリエイトミッション作るような奴が悪い」

「チィ?」

「ん? ああうん、チィはチィだよ、チハヤって名前だから縮めてチィ」

 

 勝手に付けられた名前だしね、と、チハヤ改めチィと名乗る少女は追われていたことに悪びれるでもなく、あっけらかんとエリィとアイカからの疑問に答えてみせる。

 さくらんぼのような髪留めでセミロングの茶髪を頭の右側に纏めたチィの外見は十代前半の子供にも見える。だがここはGBNだ。アバターとリアルは必ずしも一致するものではない。

 勝手に付けられた、というチィの言葉に違和感を覚えながらも、アイカは言葉を続ける。

 

「チィちゃんでいいのかな? 追われてたって、何したの?」

「ただのチィでいいよ。ちゃんとかいらない……んで、追われてた原因だっけ、まあただの裏口作って申請通したような高難度クリエイトミッション受けて報酬ガメてたら目ぇ付けられただけだよ」

 

 クリエイトミッションは必ず作った人間がクリアしない限り、ミッションとしての申請が通ることはない。

 そのため、高難度のギミックを思いついたはいいが自分ではクリアできないダイバーが突破のための裏口を作って無理やりクリアしてから申請を通すというのは残念ながら珍しくないことなのだ。

 そして、チィはその手のミッションを狙って受けることで、難易度による報酬を荒稼ぎしていた。結果、あのヤの付く自由業みたいなPKに目をつけられた。

 彼女の説明を要約すると、こういうことになる。

 

「まあ、姉ちゃんたちには助けられたし、袖の……袖が? まあ袖付きがなんとかかんとかって人間もいうしね、とりあえず迷惑かけた分はお礼させてよ」

「はあ……」

 

 アイカとしては助けた覚えはないのだが、身を隠す場所を提供させられて結果チィが助かったという意味では間違っていないのだろう。

 コンソールを開いてBCの数字を確かめながら、とりあえずよろしくとでも言いたげに、チィはにやりと笑った。

 ──きっとあたしはこれからも何かしらこういうことに巻き込まれるのだろう。

 笑うチィと、何かを言いたそうにしているエリィを横目に、アイカは根拠こそないがそんな予感を胸に抱くのだった。

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