ガンダムビルドダイバーズ リビルドガールズ   作:守次 奏

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十時愛梨のLost Princessカバーがアンケート1位だったことを記念して初投稿です。


第四十七話「邂逅、黒銀の亡霊〜再会、戦友よ」

【今年も】ハードコアディメンション・ヴァルガ総合スレpart189【申年】

 

1:以下、名無しのダイバーがお送りします

ここはGBNにおける超上級者向け、無制限のフリーバトル区域、ハードコアディメンション・ヴァルガに関しての雑談スレッドです。ヴァルガ構築、クリエイトミッション攻略に関する相談はビルドスレ、クリエイトミッションスレでお願いします。

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※※※

 

384:以下、名無しのダイバーがお送りします

ぬわ疲、三十秒で消し飛ばされてやめたくなりますよ苦行

 

385:以下、名無しのダイバーがお送りします

専スレ向けの話題なの承知で言うけど巻き込まれ事故ならクオンちゃんの生放送あったから潜ったのが悪いぞ

 

386:以下、名無しのダイバーがお送りします

クオンちゃんvsFOEさんとか近付けねえんだよなあ……

 

387:以下、名無しのダイバーがお送りします

第二次有志連合戦、俺は遠くで見てただけだけどあの二人より凄いチャンプとビルドダイバーズのリクってなにもんだよ

 

388:以下、名無しのダイバーがお送りします

バケモンでしょ

 

389:以下、名無しのダイバーがお送りします

バケモン、ゲットだぜ!

 

390:以下、名無しのダイバーがお送りします

ポイントとしてゲットされんのは俺たちなんだよなぁ……

 

391:以下、名無しのダイバーがお送りします

おまけにクオンちゃんの配信と聞いて凸ってきた亡者が結構な数いたからいつにも増して地獄だったな、スポーン位置で屑運引いたから三分生き残れなかった

 

392:以下、名無しのダイバーがお送りします

>>391

その状況で二分ぐらい生き残れるとかお前GBNうま男か?

 

393:以下、名無しのダイバーがお送りします

亡者共本当にゾンビ映画かってぐらいいて草も生えんかったわ、全部クオンちゃんとFOEさんが六時間殴り合ってた余波に巻き込まれて消し飛んでたけど

 

394:以下、名無しのダイバーがお送りします

これ以上は専スレ定期、でもその後配信見逃してたオーガがブチ切れて乱入してきてそれを鎮めるために「ビルドダイバーズのリク」がわざわざやってきたのも酷かったな色んな意味で

 

395:以下、名無しのダイバーがお送りします

始めて二年でチャンプに最も近い男になってんの嫉妬で狂いそう……!(静かなる怒り)

 

396:以下、名無しのダイバーがお送りします

おっとそれは愚痴スレ案件だって言いたいけどヴァルガの愚痴スレないんだよな

 

397:以下、名無しのダイバーがお送りします

このスレが愚痴スレみたいなもんでしょ、ついでに愚痴っとくけど亡者といや「ノイエ・シルバリィ」の連中が最近また活発化してきたらしいな

 

398:以下、名無しのダイバーがお送りします

あいつらも大概懲りねえよな

 

399:以下、名無しのダイバーがお送りします

自称運営の代行者だっけ、あれ本当なー

 

400:以下、名無しのダイバーがお送りします

しかもリーダーが無駄に強いのが腹立つんだよな

 

401:以下、名無しのダイバーがお送りします

わかる、てかシルバリィといや「リビルドガールズ」にもいなかったっけ

 

402:以下、名無しのダイバーがお送りします

>>401

「リビルドガールズ」に入ってからあいつこの猿山で見てないな

 

403:以下、名無しのダイバーがお送りします

>>402

居場所を見つけたんやろ、そっとしといてやれよ……そろそろダインスレイヴ落ちかねないからこの話はやめやめ! はい終わり!

 

404:以下、名無しのダイバーがお送りします

ノイエの連中からするとそうもいかねーみたいだけどな

 

 

※※※

 

 

『貰ったぞ!』

「しまっ……!?」

「バッキャロー、何やってやがるアキノ!」

 

 背後を取ったフルアーマーガンダムの380ミリキャノン砲が、僅かに足を止めていたアキノを死角から砲撃していた。

 もう少しでアキノがSランクに昇進するということで「リビルドガールズ」はバトランダムミッション──文字通りの無差別マッチによるフォース戦に挑戦していたのだが、平均ランクがSに達している相手は流石に一筋縄ではいかない。

 フォース「アーマード・ファイターズ」は全身に装甲を纏ったタイプのガンプラを中心に構成され、その重装甲と重火力を活かすようなフォーメーションを組むことで高い練度を誇示しているが、決してその足回りは鈍足というわけではない。

 鈍足機体の定義にはそのパブリックイメージと実際の事情には若干のズレが存在している。

 単純に装甲化を施して、ブーストダッシュの速度が落ちた機体は得てして鈍足の定義に当てはまるが、それは直線加速力だけを見ての話で、旋回性という観点から評価を下しているダイバーは少ない。

 フルアーマー化を施すダイバーは、上のランクに行けば行くほどその装甲による重みを知っているからこそ、旋回性、AMBAC等に気を配って、「鈍重ながら小回りが利く」というカスタマイズを施す傾向にある。

 中には例外的にひたすらブースターもガン積みして重装甲と超加速を無理やり両立させるロマン派もいるのだが、それは今は割愛しておこう。

 そして「アーマード・ファイターズ」の面々は手堅い選択肢を選んだ前者であったからこそ、直線加速力こそ「リビルドガールズ」の面々に劣っても、その旋回性と小回りを利用することで細かく刻むように距離を詰め、とうとう隙を見せたアキノの背後を急襲したのだ。

 しかし、それを易々と見逃すチィではない。

 まず無線観測機を落とされ、有線観測機も同様に狙撃で叩き落とされたことで徹底的に「目」を奪われ、更には敵機の中に混ざったデュエルダガーが、ミラージュコロイドディテクターによってその欺瞞をも無力化することで、チィは徹底的にその役割を奪われていた。

 上位陣は決して斥候や偵察を軽視しない。

 手札がバラされる、というのはゲームにおいて致命的であり、例えば傭兵として「ジムの惑星」に加担していたチィの存在を軽視していた、ビッグガンを切り札としていたフォース「ゾック・ズゴック・ジョング」はその作戦を完全に暴かれたことで敗北を喫したことからも、偵察機を、情報を蔑ろにすることがどれほどの愚行であるか伺えるというものだろう。

 そうなれば、チィにできることは「イグナイターズ」の時同様に回避盾ぐらいしかなかったし、その回避盾をメタるほど圧倒的な弾幕を「アーマード・ファイターズ」が保持しているなら、今ここで役に立たない、失って損がない手札は自分だけだ。

 380ミリキャノンの直撃からアキノを庇い、レッドアラートが絶え間なく鳴り響くコックピットでチィは眉根に深くしわを刻んで、呆けていた彼女を叱責する。

 

「何考えてんのか知らないけどさ、この戦いはアキノがやられりゃ終わりなんだ! アイカとエリィは火力と自衛こそできてるけど耐久は並かそれ以下だ! お前は火力とメイン盾、そしてチィは役立たずなら要になるのがお前だってことぐらいわかんだろ!」

「……っ、すみません、チィ……」

「はい反省会終わり! アキノにどんな事情があったかは知らねえし訊かねえ! だからとっととあいつらシメて夕飯にカツ丼食うぞ!」

『ははは……威勢がいい、だが大破したSDではあと一発、そしてそのIフィールドソードで私の弾を防ぐことは不可能! カツ丼は我々の手にこそふさわしい!』

 

 フルアーマーガンダムを駆るダイバー、「アムドラン」は満身創痍のチィから確実に処理すべく、万一に備えてアキノが構えたIフィールドソードの死角を突くように機体を小刻みに動かし、今度は一斉射でもってチィとアキノの両獲りを狙って照星を覗き込んだ。

 

「バーカ……焦りやがったな?」

『何……っ、まさか、しまっ──』

 

 こうしてチィとお喋りしてるからそうなんだよ。

 満身創痍ながらもチィはニヒルに笑って、その機動力でジェスタキャノンとフルアーマーΖΖガンダムの包囲を掻い潜ってフリーとなったアイカが、フルアーマーガンダムのコックピットに自慢のビルドボルグを突き立てる光景を見届ける。

 

『アムドラン! 仇は取るぞ!』

「取らせない! エリィちゃん!」

「……っ、はい!」

 

 しかし、背中を晒す形となったアイカを撃ち抜くためにフルアーマーΖΖガンダムのダイバー、「テッパン」は必殺のハイパー・メガ・キャノンを構えたが、仲間のジェスタキャノンとデュエルダガーに任せていたはずのリビルドウォートもまた、赤熱化したように真紅へと染まった機体──トランザムの発動によりその包囲を振り切っていたのだ。

 エリィはビームライフルに六基のフィン・ファンネルを纏わせると、バーストショットで足を止めたテッパンの機体をその重装甲ごと撃ち抜くのではなく、ハイパー・メガ・キャノンが接続されているバックパックを狙ってトリガーを引いた。

 まだ残っていたミサイルが、エネルギーが臨界寸前までチャージされていたハイパー・メガ・キャノンに直撃することで暴発し、テッパンの機体は一撃の元に、レッドアラートをコックピットへと吐き出す形となる。

 そしてエリィが足を止めてくれたなら、アイカが止まる理由はない。

 フェアライズガンダムを加速させ、アイカは左手で引き抜いたビームサーベルをすれ違いざまにテッパンの機体、それに刻まれた傷口へと投擲するとその機体を破壊して、今まさにミサイルポッドの掃射でエリィを追い詰めようとしていた、デュエルダガーへと強襲をかける。

 

『猪武者ではなあ!』

 

 迂闊に中距離からの突撃という選択肢を選んでいたアイカに対して、レールガンによる迎撃を試みたデュエルダガーの対応は、普通であれば極めて正しいものだった。

 そこに裏の択がなければ、という前提を置くことを除けば。

 この試合でアイカはビルドボルグを引き抜く一度しかビルドドラグーンを起動していない。

 レールガンを回避して旋回するフェアライズガンダムが握り締めている大剣からその刃が脱落していると、デュエルダガーのダイバー「フォルテス」が気づいた時には遅かった。

 

『何、ドラグーンを積んでいたのか!?』

 

 ビルドボルグから分離した刃は、デュエルダガーの誇る増加装甲……フォルテストラの正面装甲を切り裂いて傷口を開くと同時に、ノックバックによる衝撃で彼の機体、その姿勢を打ち崩している。

 

「そういうことっ、アキノさん!」

 

 そして、いつまでも呆けているのがアキノではない。

 

「……私は……いえ、今はこの誇りではなくチィの献身に懸けて!」

 

 機体を加速させたミネルヴァガンダムは、その名に違わない分厚く大きく大雑把なIフィールドソードをデュエルダガーへと撃ち下ろし、アイカが傷を刻んでいたとはいえ、その正面装甲ごと強引に機体をへし切っていく。

 否。斬る、というよりそれは潰す、といった方が正しい。

 重量と加速が生み出す質量兵器の攻撃力、そしてそれを振り回して尚腕部に異常をきたすことのない、サイコ・フレーム搭載機であるミネルヴァガンダムの本質は味方を守る守護の盾であり、敵対者を完膚なきまでに、そして文字通りに押し潰すチャリオットなのだ。

 デュエルダガーは断末魔を上げる間もなく押しつぶされて、「アーマード・ファイターズ」が掴み取ったはずの勝利へのワン・チャンスはいつしかその掌からこぼれ落ち、微笑んでいたはずの勝利の女神は嫌味な笑みを浮かべながら彼らの頬をひっ叩いていた。

 これが上級者たちの世界、その入り口では日常茶飯事の光景だ。

 故にこそ修羅場を潜り抜けた者たちは口癖のように呟いている。

 獲物を前に舌舐めずりをするのは三流の兵士のすることだと、そのどこかでコッペパンを巡って発泡沙汰を起こしていそうな高校生が呟いたその言葉は、ダイバーたちにとってもまた、極上にしてほろ苦い格言に他ならなかった。

 舌舐めずりをして許されるのは「獄炎のオーガ」だけだ。違うというなら彼と同じところに行けばいい。

 GBNでは後ろにその言葉が付け足される通り例外となる災害がいるのだが──「アーマード・ファイターズ」はその例外ではなかったのだろう。

 トランザムを起動したエリィに猛襲を受け、四人の中では一番足が早かったにしても砲撃者としてその両方にロングバレルビームキャノンを装備している、重量バランスの悪いジェスタキャノンではその曲芸じみたファンネルを潜り抜けることが精一杯であり、頭上から降ってくるアイカのフェアライズガンダムと、正面から突撃してくるアキノのミネルヴァガンダムへ対処することなど不可能であった。

 それでも迎撃をしようとしたのは、Sランクダイバーゆえの反射神経だろう。

 指先が勝手に引いていた引き金からロングバレルビームキャノンが発射され、正面から来たアキノを撃ち抜こうとしていたが、彼女が構える黄金の剣とその刀身──対ビームコーティング加工が施されたそれは迎撃射を突っ切って、止まることなくジェスタキャノンへと差し迫る。

 

「これで……終わりだっ☆」

「……終わりです、『アーマード・ファイターズ』!」

『お、終わりだよ〜ぐあああああっ!?』

 

 妙にノリのいい断末魔を上げながら、なんだか有名なブログの締めくくりに使われていそうな顔文字型の爆炎を残して、ジェスタキャノンを駆るダイバー「モモチヨ」はアイカとアキノ、「リビルドガールズ」が誇る二人のアタッカーによってその機体を装甲ごと貫かれてテクスチャ宇宙の塵となっていった。

 

【Battle Ended!】

【Winner:リビルドガールズ】

 

 そうして、バトランダムミッションが終わったことを無事に告げる機械音声が四人のコックピットへと響き渡り、加えてアキノのコックピットには、彼女のダイバーランクがAからS──上級者のきざはしへと立つスタートラインとなるところまで昇格した旨が伝えられる。

 だが、アキノの心にあったのは喜びではなかった。

 

(私は、またも……またも過去に囚われて、今を……)

 

 アイカとエリィが何やら送ってくれていた祝福さえ、今の彼女には届かない。

 アキノは静かに瞑目し、己を包む「ザ・シルバリィ」の制服、その胸元をきつく握りしめながら、犯し続ける過ちに歯噛みしていたのだった。

 

 

 

「ようアキノ、昇格したってのに随分浮かねーツラしてんな」

 

 バトランダムミッションは文字通りのランダムマッチであるため、試合後に相手フォースと出会うようなことはほぼない。

 受付ロビーに送還された「リビルドガールズ」の四人も、立っていた位置はバラバラで、アイカとエリィはチィから持ちかけられたミッションの誘いをそのまま承諾したカフェの近くに、そしてアキノを連れてミッションを受注したチィは彼女と同じくロビーの近くにリスポーンしたと、そういうことになる。

 そして、チィが指摘した通り、アキノの表情は決して晴れやかなものではなかった。

 むしろどこか悲しんでいるような、昇格というめでたい事態にあって尚、自分にはその資格がないからと辞退を考えているような、そういう切羽詰まった雰囲気が、彼女の背中からは漂っている。

 

「……チィ……」

「別にチィはアキノのママじゃねーからな、話したいことがあるなら聞くけど話したくねーなら何も訊かない。好きにしろよ」

 

 こうも年下に見える子供に、自分の心を見透かされているというのは、ずっと一人で何かをやり続けてきたアキノにとってある種屈辱的でもあった。

 だが、それ以上に今の彼女を縛り付けているもの、その感情の正体はひとえに後悔と罪悪感に他ならず、そこに自尊心を傷つけられた怒りのような些細なものが入り込む余裕などない。

 アキノは呼吸を整えるように小さく息を吸い込むと、何か意を決したように、背を向けてカフェにいていちゃついているのであろうアイカとエリィ(メンヘラコンビ)を呼び出そうとしているチィへと言葉を投げかける。

 

「チィ、貴女は」

「あん、何さ? とりあえずあいつら呼びたいんだけど?」

「……貴女は、シルバリィのことを知っているのでしょう?」

 

 フレンドワープの申請を二人に送信してから、ゆっくりと踵を返してチィは、その問いかけをぶつけてきたアキノへと向き直った。

 

「知ってるけど、それが何?」

 

 チィは「ザ・シルバリィ」が現役だった頃にGBNをやってはいない。

 だが、彼らが残していった爪痕は今も尚GBNにおける銀の蝗害、災禍の証明としてそのフォース名を忌み名とするほどに深く刻まれており、そして掲示板を覗けば彼らの残党がまだ、諦めずにGBNでの自治活動を行なっているという嘆きが見られれば、それがどういうフォースであったかということにも察しがつく。

 しかし、それが何だというのか。

 フレンドワープが承認され、「今食べてるケーキを食べ終わったら行く」という吞気なアイカからの返答を確認しつつ、チィはアキノから投げかけられたその質問にただ首を傾げる。

 別にシルバリィが自治厨の集まりだろうと、その結果として二年前がドッタンバッタンで大騒ぎしていて、今もその残党が暴れまわっていようと、チィの懐が痛むわけでもなければ、残党と関わりがあるわけでもないアキノに何か因縁めいた話を聞いていたわけでもない。

 だからチィとしてはアキノが元第七機甲師団だろうが元AVALONだろうが元シルバリィだろうが、何も関係はないしそこに不都合はなかった。そういう話だった。

 しかし、アキノにとっては違ったらしく、彼女はぽろぽろと涙をこぼしながら、懺悔でもするようにチィへとその過去と、自らの行いを告白していく。

 

「……私は、許されないことをしました。正義のため、誇りのためだと信じて傲慢にも運営の代理人を名乗って……多くの罪なき、いえ、規約には反していたとはいえ、軽度のものだったダイバーまでも私刑にかけてきました、それは……今のチィやエリィ、そしてアイカさんから笑顔を奪っていることに他なりません。そんな私が……『リビルドガールズ』にいて、良いのでしょうか……?」

 

 この「リビルドガールズ」で過ごしてきた日々はアキノにとってもかけがえのないものだ。

 だが、出て行けと言われるなら、そこに名残惜しさこそ覚えてもアキノは素直にその言葉に従ってまた、放浪の旅を続けるつもりだった。

 だからこそ、裁いてほしかったのだ。チィに、アイカに、エリィに。そうでもしなければきっと自分はいつまでもこのぬるま湯に浸かり続けて罪から目を逸らし続ける道を選び続けたから──

 アキノは縋り付くように、涙をこぼしながらもチィの瞳を真っ直ぐに見据える。

 だが、返ってきた言葉は。

 

「バッカじゃねえの?」

「……は?」

「いや、アキノお前本気でバカなんじゃねえの、って思っただけだよ」

 

 チィは心の底から呆れて、その言葉を返事としていた。

 前から堅物で四角四面で融通が効かないと思っていたが、よもやここまでバカだとは思いもしなかった。

 それこそがチィの本音であり、すべての答えだったが、アキノにそれが伝わる筈もなく、涙を溢していた顔は見る見るうちに怒りへと染まって、肩を竦めていつも通りビルドコインを弾き出したチィへと怒鳴りつける。

 

「バカとは何ですか! 私は真剣に……っ!」

「いやバカはバカだろ、逆に訊くけどさ」

「っ……!」

「アキノはどうしたいわけ? それでいいじゃん。辞めたいなら多分アイカもエリィも止めはするだろうけど最終的にはアキノの判断をそんちょーしてくれるだろうし、チィも同じだよ。続けてえってんならあいつらは喜ぶしチィとしてもいつも通り金を稼げて愉快にやってけるからそれでよし、欠けてんのはお前がどうしてーかってだけの話だよアキノ」

 

 別に過去の罪がどうのこうのという話でもない。

 自治厨として私刑をしていたからそんな自分を私刑に処してくださいというなら本末転倒もいいところだし、本当にアキノが何か罪を犯しているならその裁きを下すべきはチィでもアイカでもエリィでもなく、あのガンダイバー姿のGMとガードフレームたちだ。

 そいつらが飛んできてないということは、それがすべての答えということだろう。

 代わりに、ふわりとロビーに着地したアイカとエリィはなんだか剣呑な雰囲気に戸惑っているものの、その顔にアキノを責める意図はどこにもない。

 

「私は……『リビルドガールズ』に……いて……」

「いいに決まってんだろ、お前がそうしてーならな、違うか? アイカ、エリィ」

 

 とうとうその本音を口に出しかけた堅物へ、ニヒルに笑いかけながらロビーに現れたばかりの二人へ、チィはその問いを投げかける。

 

「何があったかわかんないけど……アキノさんに怒ってなんかないですよあたしたち。それにさっきの試合もチィちゃん守れなかったの、あたしのせいですし……」

「……え、えっと、その……わたし、も……よくわからない、ですけど……その……泣かないで、ください……アキノさん……」

「アイカ、エリィ……私は……」

 

 困惑しつつもアキノの存在を否定することなくアイカはさっきの試合で自らやらかしたことについて頭を下げて、エリィは泣いているアキノを宥める優しさだけを言葉に出して、あわあわと、しかしアイカの後ろからは出てアキノを慰めようと四苦八苦していた。

 きっとこれが答えそのものだ。もう過去を追いかける必要はどこにもない。一人では追い込む必要もない。

 そんな説教だって、わざわざかますのも無粋だろうと、チィが物質化した1BCを指で弾いたその瞬間だった。

 

「いいや、アキノ……お前は俺たちと来るべきだ」

「あん? 空気読まずにいきなり誰だよてめーは」

 

 とうとうその口から本音を聞き出せるとチィが踏んでいた楽観を踏みにじるように、アキノとよく似た意匠の軍装──「ザ・シルバリィ」の制服を着た青年とその取り巻きと思しき男女が十五人、「リビルドガールズ」を取り囲んでいた。

 

「俺はリヒト……リヒト・フェーンミッツだ。フォース『ノイエ・シルバリィ』、運営の代行者にして秩序の番人として、貴様たち『リビルドガールズ』に鉄槌を下すと同時に仲間を……取り戻しにきた!」

 

 引き抜いてはまずいからか鞘ごと、腰に提げていた飾りの剣をアイカとチィ、そしてエリィへと突き付けながらリヒトは高らかにそう宣言する。

 

「リヒト……」

 

 終わったと思っていた。

 これで自分がもしも許してもらえたのなら、アキノは「リビルドガールズ」の一員として、頭を下げた上でリスタートを切るつもりだった。

 だが、人生は歩き回る影法師。哀れな役者を嘲笑うかのように、その過去は、過去に囚われた黒銀の亡霊は、構えた剣の切っ先を、今を生きる少女たちに突きつけるのだった。

 そこに正義があると、何一つ信じて疑わず。




哀れな役者たちの邂逅

【アーマード・ファイターズ】……その名の通り全身をフルアーマーに包んだ鉄の兵士たちというコンセプトで集まった重装甲、重火力に身を包んだ平均Sランクの中堅フォース。フルアーマーへのこだわりから連携戦術を中心に大火力砲でフィニッシュを決めるという戦術を常道としており、偵察機にも警戒を怠らないなど腕は決して悪くなく、目の付け所も良いのだが、よりにもよってアイカとエリィがフルアーマーをメタれるタイプの高機動アタッカーだった屑運と、どちらかから目を離してしまったことが敗因となったフォース。とはいえ紙一重で「リビルドガールズ」もまた敗れかねなかったのだが、小柄で大火力で高機動なアイカをフリーにするということがどういうことかは推して知るべしといったところだろう。
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