GBN総合スレpart.862
1:以下、名無しのダイバーがお送りいたします
ここはガンプラバトル・ネクサス・オンライン、通称GBNに関する総合雑談スレッドです。
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45:以下、名無しのダイバーがお送りいたします
梅雨に入ってきたな
46:以下、名無しのダイバーがお送りいたします
梅雨だ! 室外塗装派モデラー殺しの魂!
47:以下、名無しのダイバーがお送りいたします
室外トップコート派も死んでるんだよなあ……見ろよこの無残な姿をよぉ!(白被り)
48:以下、名無しのダイバーがお送りいたします
雨降ってないし出勤前にコート噴いとくかってやったらおもっくそゲリラ豪雨くんにやられてて涙が出ますよ
49:以下、名無しのダイバーがお送りいたします
夏まだ来ねえのかなあ……
50:以下、名無しのダイバーがお送りいたします
来たら来たでクソ暑いんだよなぁ
51:以下、名無しのダイバーがお送りいたします
室外塗装派としては来て欲しいけどそもそも外に出たくなくなるヤマアラシのジレンマよ
52:以下、名無しのダイバーがお送りいたします
流れぶった切って悪いけどリビルドガールズ解散したってマジ?
53:以下、名無しのダイバーがお送りいたします
>>52
シルバリィの残党じゃなかったんか解散したの
54:以下、名無しのダイバーがお送りいたします
この前ロビーにGM来てたしなんかあったのかな
55:以下、名無しのダイバーがお送りいたします
あいつらがチートに手を出したとかは考えにくいよなぁ
56:以下、名無しのダイバーがお送りいたします
元シルバリィが身内にいる時点でないでしょ
57:以下、名無しのダイバーがお送りいたします
マジかよ、よく見たらガンスタグラムもGM来た日から更新されてねえ……アイエリは俺の生きがいだったのにどうしてくれんだあのクソGM
58:以下、名無しのダイバーがお送りいたします
あんまGM責めてやんなよ、何があったか知らねえけど
59:以下、名無しのダイバーがお送りいたします
何があったかわかんねーのが怖いんだよな、あの後受付からお問い合わせでなんで来てたのか聞いてもお答えできませんなテンプレ返信だったし
60:以下、名無しのダイバーがお送りいたします
チィママ……チィママどこ……?
61:以下、名無しのダイバーがお送りいたします
GMが動き出したってことはまたなんか一波乱あんのかもな、有志連合戦的に考えて
62:以下、名無しのダイバーがお送りいたします
またGMの胃袋が爆発すんのか
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チィを失ったGBNの空は、いつもと変わらないはずなのにどこか色褪せているように見えた。
ここ数日、フェアライズガンダムに乗ってディメンションを彷徨うアイカは、エリィのリビルドウォートと連携してチィの反応を探していたが梨の礫だ。
その間にもフォース戦の申請がいくつも届いていたりしたのだが、アキノがリアルで定期考査前の小テストにおける試験期間に入ったのと、何よりそんな気分ではないからアイカはそれら全てを蹴り付けていた。
一晩経っても二晩経っても、心の底から信頼していた仲間にあんなことを言われて一方的にフォースを抜けられた心の傷が癒えたわけではない。
バトルロワイアルミッションが開催されている乱戦エリアを示す光の壁から迂回しつつ、眼下に見えるアレックスとバスターライフルを持ったジム・スナイパーIIのコンビの位置どりが悪いなあ、なんてことを現実逃避のように考えながら、アイカは無言で操縦桿を倒す。
それでも完全に冷静になれた訳ではないけれど、とりあえず混線していた思考回路の整理に成功したのは他でもないエリィのおかげだろう。
──もう一度、 チィに会って真意を問いただす。
なんてことはない。アキノの時と同じだ。
探す範囲がヴァルガからディメンション全体に変わっただけで、虱潰しに探していればいつかは見つかるだろう。
そんな自棄を起こしたような考えを抱いている時点でアイカは大分危険だったし、エリィに至ってはその考えに縋るような思いでいるのだから、誰かが止めなければならないのだが、アキノですら冷静ではなくこの場にはいないのなら、どうしようもない。
そしてそれは、チィを探すという今の「リビルドガールズ」に課されたミッションも同じだった。
手がかりも何もなくディメンションを当てもなく彷徨って特定の個人を見つけるという行いは、サハラ砂漠の砂に埋もれた一粒のダイヤモンドを探せと言われているのに等しい。
その茫漠に耐えきれず心が擦り切れるか、そうでなければ、狂ってしまうか。
「……チィさん、見つかりませんね……」
「うん……」
「……もし、このまま……このまま、チィさんがいなくなっちゃったら、わ、わたし……」
「……大丈夫だよ、エリィちゃん」
人が少ないディメンションなら身を隠すのにも最適だろうと一昨日はディメンション・トワイライトの各エリアを探し回った。
そして今日は逆に人が多い初心者から上級者まで広く親しまれているディメンションを手当たり次第に探している。
こんなに頑張っている。頑張っているならいつか報われる。
アイカは自分を何度も裏切ってきた、自分を何度も見失わせたその言葉に跪くようにエリィへ、そして自身に何度も、大丈夫と、大丈夫だと言い聞かせ続けていた。
「えへへ……そう、ですよね……そうですよね、きっと……」
エリィもどこか安心したように呟いたが、その眦には涙の雫が滲んでいる。
アイカの言葉だから信じられるし信じたい。だけどもしそうじゃなかったらとてもじゃないけど耐えられない。
そんな、か細い蜘蛛の糸を互いの手足を錠で繋いで登り合うかのような緩慢な自傷をアイカとエリィは二人で続けているのに等しかった。
それはもはや病的だといっていい。だがそれを指摘する人間もいなければ、指摘されたところで聞き入れる余裕は二人にない。
その後もアイカはエリィと共にガンダムベースの閉店時間まで、ディメンション内の各エリアを探索し続けていたが、目ぼしい成果など得られるはずもなく、ただ消沈した足取りで家に戻る他になかった。
バイトの予定も詰まっているから明日はGBNにログインできない。
いつもなら笑って我慢できたような事態が今は無性に腹立たしく、ログアウトするときにアイカはいっそ、喉元を掻き毟ってしまいたいほどの衝動に駆られていた。
それがなんの意味もないこともわかっていても。実行したとしてもしなかったとしても何かをなすわけでもなく、ただ命が思考回路のどちらかを浪費しているということも。
わかっていても、今のアイカには何かを冷静に考えて受け止められる余裕などなければ、よしんばそれがあったとしても、まだアイカは十六歳の高校一年生なのだ。
大人には確実に近づいていてもその分別が完璧にできているならば。それはできすぎているかスペシャルな少年少女か、あるいは代償として何かが欠如しているかだろう。
仮想の海を泳ぐ躯体である「アイカ」の意識が解けて「愛香」へと登るように戻されていく感覚の中で、リアルの自分が涙を流しているのだと、意識が交差するその瞬間に愛香は知覚する。
エリィと絵理がいればそれだけで世界が平和じゃなくたっていいと言ってたけれど、仲間を失うというのはこんなにも痛い。
だからこそ、当たり前のように側にいてくれるエリィが、絵理が愛おしかったのだし、だからこそ愛香は、そこにまたいつか来るであろう別れのことを考えてしまって涙を零す。
愛香さん、と、自分を慕ってくれた絵理が突然「さよなら」と告げていなくなってしまったら。
想像するだけで恐ろしいそれと同じなのだ。
このフォースが、「リビルドガールズ」が愛香を中心とした縁で寄り合ったのなら、チィがいなくなったというのはその身を引き裂かれたのにも等しい。
繰り返されてきたよくある話だと大人は笑うのだろう。フォースの繋がりなどドライなものだと傭兵たちは嘯いて、或いは戦い続ける戦士たちは己の苦い過去に勝手に愛香たちを重ね合わせて。
絵理と分かれた家路で、愛香は傘を放り捨てながらただ雨の中に立ち濡れていた。
一緒にするなと、見えない敵に篠突く雨の中で叫び続ける愛香の姿に、通行人たちは見てはいけないものを見たかのような、或いは可哀相な人を見るような哀れみの視線を送って遠巻きに去っていく。
「……なんで……なんで、チィちゃん……」
力なく膝から頽れて、愛香は脳裏にあのニヒルだけれど悪戯っぽくて子どもっぽい笑顔を浮かべながら、戻ってこないその名前を呼ぶ。
本当なら絵理に抱きついて泣き喚きたかった。
いつもそうしてきたように肌と肌を重ね合わせる温もりに溺れて、世界の輪郭を二人に合わせるように狭めて夜に沈んでいきたかった。
でも、自分の前だから笑おうとしてるだけで、本当は絵理の方が遥かに傷ついていることぐらい、愛香にはわかっている。
だから、彼女の傷を広げるような真似をしちゃいけない。痛みを受け止めるべきは自分の方なのだ。
溢していた涙を雨に濡れた袖口で拭って、愛香は誰の帰りも待っていない家の扉を開けた。
「そうだ……絵理が……絵理が悲しんでるなら、あたしは腐ってなんかいらんない……」
泣きたい。喚きたい。辛いと叫ぶだけ叫んで、可哀想だったねと哀れんで、抱きしめてもらいたい。
それでも、前に進むことを選ばなければいけないと、愛香の中で何かが、或いは今も鞄の中で主人に寄り添っているフェアライズガンダムがその名に込めた祈りの通りに叫んでいたのかもしれない。
自分のためじゃない誰かのためなら。自分だけで独り相撲をしてきた日々にお別れを告げられるなら。
絶え間なく溢れてくる涙を拭いつつ、リップグロスも落ちてしまった唇をきつく引き結んで、濡れそぼった服を脱ぎながら愛香は決意する。
まずは知らなきゃいけない。チィのことを、ELダイバーと呼ばれる存在のことを。
知らないままにがむしゃらになっていたって何のいいこともないと、自分がわかっていたはずだ。
タッパーから取り出して、アクションベースの上に安置したフェアライズガンダムを見つめながら、愛香はひたすらに歯を食いしばって、一糸も纏わない身体に布団を巻きつけて目蓋を閉じる。
「……だから、だから……今だけは、泣いていいよね、フェアライズガンダム……?」
当たり前だが、そこに言葉はない。しかし、愛香には一瞬、部屋の蛍光灯が照らす光を拾ってフェアライズガンダムの双眸がきらりと瞬いたように見えた。
多分錯覚だろうと片付けて眠りの淵に落ちていく愛香を見守るかのように、最終解答者のごとく勇壮なポーズを決めているフェアライズガンダムはその手を、何かを掴みとらんと広げている。
もしも彼に言葉があったのならば、きっと愛香の弱音を肯定してい他のだろうか。涙が滲んだかのように、蛍光灯を常夜灯に変える余韻を再び拾い上げて、フェアライズガンダムのツインアイは優しく、慈しく、そしてどこか物悲しげにきらめくのだった。
──主よ、清らに燃える炎よ、我らを哀れみたまえ。
アイカはかの施設の名前を調べるときにそのように願ったり祈ったりするような場所だとばかり思っていたのだが、どうにもそのようなことはなく、割と普通というか事務的な場所なのだな、というのが正直な感想だった。
ガンダムベース本店へのヘルプに志願したせいで、シーサイドベース店よりもてんてこまいな在庫補充や接客難度の高さに四苦八苦こそしたものの、休憩時間を利用して「サラ」にある程度の話を聞き出すことができたのは大きかったし、何よりメンターになってくれた先輩がELダイバーと関わりを持っているのもまた嬉しい誤算だ。
そんなわけでELダイバーにまつわるあれこれを聞きたい場合はどこにいけばいいのかという愛香の質問に対して彼女たちは声を揃えてELバースセンターの名を口ずさんでいた。
どうやらメンターの人の兄がそこでELダイバーを現世に送り出すために働いているらしいことを、ベースの屋上でほとんど無許可で栽培しているトマトを齧りながら彼女が語っていたのは今でも覚えている。
トマトの栽培許可はともかくとして、例外的な自分を除けばELダイバーはそこで生まれてくるらしいと語ったのはサラだった。
生まれたてのELダイバーは、GBNにとっての異物であるため、さながら洗礼を受けるかのごとくビルドデカールなるものに自身のデータを圧縮して登録、現実に戻してからの再ログインだったか、或いはモビルドールの準備ができていない場合はビルドデカールを貼り付けた素体にGBNからデータを転送してログイン状態を維持しつつ待ってもらうという手順を踏まなければならない。
どちらにせよあの時GMが口にしていた、一年間の失踪が可能であるかはともかく餅は餅屋だ。
ELダイバーを扱う専門家なら、もしかしてELダイバーのIDを掌握していた居場所が分かったりしないかな、などとある程度アイカが楽観的な考えを抱いていることは確かだった。
だが、今そんなELバースセンター、誰が言ったかGBNのカテドラルなどという異名を頂戴している場所にアイカが立っているのは、それ以上にまずELダイバーとはなんなのか、現実とどう折り合いをつけているのか、知らないことを訊きたいという気持ちの方が強いためだ。
ELバースセンターの扉を開いて、アイカは緊張と共に乗り込んだが、返事はない。
仕事に忙しいのか或いは口止めされているのかは知らないが、なんらかの機器の駆動音こそ聞こえるものの人の声はしないのだから、留守だと考えるのが妥当だろうが、ここまで来て収穫なしだったというのも骨折り損だ。
「あのー、こんにちはー! 誰かいませんか!? あたし、ナナ……じゃなかった、ナミさんとサラちゃんに紹介されてここに来たんですけど!」
別に紹介状を持っているわけではないが嘘は言っていない。
チィのような真似をしながらアイカは声を張り上げて受付近くをじろじろと眺めていたのだが、流石に大声を出せば気付くのか、スタッフオンリーと書かれた扉から受付にやってくる人影があった。
少しだけ猫背気味に長身を丸めている銀髪にエルフ耳という中々濃い属性のスタッフ──「コーイチ」は、サラはともかく妹からの紹介で来たと名乗るアイカの姿に何かを察したのか、目線を合わさず、どこか事務的に口を開く。
「ああ……えっと、ELバースセンターにようこそ。普段は僕じゃなくてツカ……じゃなくて『アンシュ』が対応するんだけど……君は、確か『リビルドガールズ』のアイカちゃんだったかな」
「はい、ELダイバーについて知りたいならここに行けって言われたので……主にナミさんから」
「あいつ……まあいいや、でも申し訳ないな。『チハヤ』ちゃんの居場所を知りたいとかだったら、僕も一応運営だから……そういうのは答えられないよ」
わかりやすく冷や汗を流しつつ視線を逸らしながら、コーイチは精一杯に冷淡な声を取り繕ってアイカへと伝えるのだが、本音としては彼女に協力してやりたいといったところだった。
とはいえ守秘義務は守秘義務だし、ついさっきまでもやっていたことはチハヤの、チィの捜索であるわけで、訊かれたことに答える権限があったとしても知らない、進捗がないの一言に尽きるのもまた悲しいところだ。
一応、コーイチの中に目星をつけた存在がいないわけではない。
だからこそ密告こそしなかったが、カツラギもそれを察していたのだろう。
故にこのカテドラルで生への祝福を行う神父であり按手たる男は今GMに呼び出されて、残りの業務を全て引き継がされたというのがコーイチという男の現状であった。
「あはは……やっぱバレちゃってますか」
「うん、ごめんよ……」
「じゃあせめて、ELダイバーがなんなのかについて訊かせてくれませんか? ELダイバーと人間って……本当にたったそれだけの理由で共存できないんですか?」
アイカは切実に、上目遣いで長身のコーイチを見上げながらどこか縋るようにコーイチの手を握って問いかけるのだが、頬を赤らめこそしても、彼もまたどこかで堅いところがあるのは否めない。
ぶんぶんとかぶりを振りつつ眼鏡のズレを指先で直してから、わざとらしい咳払いと共に彼はアイカの問いへと淡々と言葉を返していく。
「……申し訳ないけど、その話もできないんだ」
「どうしてですか!?」
「……守秘義務があるんだ、僕も一応運営の側だからね……ELダイバーの概要について知りたいなら、Wikiを読んでほしい」
「そんな……」
取り付く島もないとはまさにこのことだ。
縋り付くように手を伸ばすアイカに踵を返して背を向けて、そのままスタッフルームへとコーイチが帰還しようとした時だった。
「いいじゃねえかコーイチ、減るもんでもねえ」
「ツカサ……お前GMとの話は」
「ああ? クビだってお偉いさんが怒り狂ってようが、オープンソースにしたって奴らはビルドデカール一枚再現できないんだぜ? 今回の事件にしたって知ったこっちゃねえと……それで、アイカだったな」
突如として転移してきた紫色のハロ──正確には機動戦士ガンダム00に登場する「HARO」なのだがそれは置いておくとして、ダイバーネームにアンシュと書かれている男は昔からの知り合いであるかのようにコーイチへとぶっきら棒に言い放つ。
そして流れるように、当然の権利のように他二人が立っている中で躊躇なく椅子に腰掛けて、その男は、コーイチからツカサと呼ばれていた「アンシュ」はどこかふんぞり帰ったような態度をしながら絶望に暮れていたアイカの瞳を、無機質な赤い吊り目で覗き込んだ。
「はい、アイカはあたしですけど──」
「お前にあいつが救えんのか?」
「……は……?」
「チィのことでここに来たんだろ、各ディメンションを放浪してるからってそろそろ運営も目ぇつけはじめてきたから老婆心ながら警告しとくぜ……っと、そうじゃねえな、アイカ。テメェはチィを救えんのかって聞いてんだよ」
そうじゃなければ、何も話すことはねえから帰れ。
ある意味ではコーイチ以上に容赦なく、傍若無人な態度を取るアンシュだったが、問いかけられているのはこの問題の本質的な部分であることは、アイカも直感的に理解できる。
だが、チィを救う以前に探さなければいけないのに、救うとはどういう話でどういう了見なのかと、そういう問いを返すことができずにアイカが黙り込んでいたのはひとえに、この問題に対しては無知な部外者であるという証明に他ならなかった。
「あたしは……」
「……俺はGBNに魂を売ったわけじゃねえ」
「は……?」
「GPDを廃れさせといてこっちが本家です、みたいなツラしてるところが気に食わねえ。だがそれはそれとして──生まれてくる命に対して祝福をするのが俺の仕事だ。そっから先は命と向き合う人間の仕事だ。それを背負うってのがどういうことかわからねえなら……ここに来るんじゃねえ、『リビルドガールズ』。これは運営の意見でもなんでもない俺の持論だがな、そんなあやふやな状態であいつを助けますと言ったって空回りするのなんざ目に見えてんだろうが」
んなわけで今日は帰れ、何も話すことはねえ。
言い過ぎだとコーイチから諌められながらも止まることはせず、アンシュは一息にその長広舌をぶちまけると、諌めながらアイカに頭を下げていた彼を連れて己の仕事に戻っていく。
にべもない、という風情であしらわれこそしたが、アンシュの言葉にはいくつものヒントが詰められていた。
アイカはその中でも頻出した、「覚悟」を示す言葉を脳裏に描きながら静かに拳を握りしめる。
どうしたいのかという願いは揃っている。だが、どうすればいいのか、ここからどうしていくのかという行動指針だけが致命的に欠けている。
そんなアンシュの指摘は鋭くアイカに突き刺さり、心臓の辺りに斬り付けられたような、そこから引き裂かれたかのような痛みを与える。
言われるがままにELバースセンターを出たアイカは眦に浮かぶ涙を拭いながら、静かに歯を食いしばって、色褪せた電子の空を睨みつける。
「あたしにできること、あたしにしたいこと……」
それは奇しくも、コメットコアガンダムをフェアライブガンダムに生まれ変わらせる時とよく似た問いかけだった。
ならば再び始まるだけのことだと、フェアライズガンダムに乗って、アイカはとりあえずはロビーへと戻っていく。
今ここには、一つの決意が生まれていた。
再び行う電海の巡礼。それがひとひらの塵が重力に逆らって空に舞うだけの行いなのか、或いは嵐を起こす蝶の羽ばたきなのかはわからない。
だが今一度、仲間を取り戻すために、妖精の翼は羽ばたいていく。
アイカが願いとその探し物を見つけられるようにと、今度は自分が主人の願いを叶える番だと、その双眸に光を灯したフェアライズガンダムは頽れていた大地を蹴って、天高く舞い上がる。
そして鬱蒼と周囲を覆った木々の影でそんなアイカを見つめている人影が、否、白亜の機体があることに、彼女は最後まで、気づかないのであった。
動き出す歯車、それは小さくともリライズ