人はなぜガンプラを買うのか。
それは恐らくガンプラを嗜む者の至上命題にして、頭を悩ませる問いかけであるに違いない。
例えば翌月に新商品が出ると知った時、ミキシングの糧にするでもなく純粋に組みたいと思って買ったものが押し入れに眠っていたり、必要はないけど売り切れられると困るなと思って買ったものがミキシングの素体としてGBNで活躍したり、とかくガンプラを巡る事情は複雑怪奇、蒟蒻問答だ。
本気でそんなこと言ってんの、と突っ込まれそうではあるが、実際のところプレミアムな財団のサイトで三ヶ月後に届くことが楽しみでポチったにも関わらず届く頃には別のキットにお熱だったり、逆に少年と出会った乙女座の人みたいになったりもする。
心が付いたら離れたりするのはさながら恋人との逢瀬だ。
買わない理由が値段なら買え、買う理由が値段なら買うな、とはフィギュアとの一期一会な出会いを待ちわびるマニアたちの格言ではあるが、案外値段が安いから勝ったキットが運命のガンプラ──デスティニーガンダムという意味ではない──になるのとは往々にしてあり得ることだ。
ガンプラはその弛まぬ企業努力と独自の販路のおかげで、値段という点に関しては異常なほどに、狂気的なほどにお安い。
では、その値段に見合ったチープな出来なのかと訊かれれば、ガンプラを組まないモデラーですら何を馬鹿なことを、と答える程度に、そのクオリティは異常に高いものとなっている。
本来、整形色による色分けと組み立てづらさは相関するものであったが、ガンプラはその二律背反を嘲笑うかのように、最近は一部を除いてシールに頼ることなく設定通りの色分けを実現しながらも、圧倒的に「組みやすい」仕上がりを見せているのだ。
本来倍の値段で売られててもおかしくないクオリティのものが安価でかつ大量に店頭に並ぶとあれば、こちらも財布の紐を緩めなければ無作法というもの。
秋乃はそんな侍じみた心境で、大学帰りに家電量販店を訪れていた。
本来ならチィが勤めているガンダムベースに行ってあげるのが一番なのだがこの家電量販店、ただでさえ安いガンプラが更に割り引かれて安くなり、おまけに購入額のポイントがつく。
つまりそれはとりも直さず買っていけばいくほどお得になり、一万円を使う頃にはHGUCガンダム(REVIVE版)だとか、HGガンダム・バルバトス(第四形態)が実質無料で買えるという素晴らしい文明の産物だった。
代わりに限定キットこそ買えないものの、大学生にとってそのポイント優待制と、何より駅から近くにある、というのは大きな魅力に他ならなかった。
「しかしストライクダガーがパラシュートパック付きでキット化されるとは良き時代になったものです」
並んでいた同好の士が三つ分の箱を抱えて迷わずレジに並ぶのに倣って、秋乃は「HGCE ストライクダガー パラシュートパック装備」をカゴの中に入れると、他にも何か巡り逢いがないかと、家電量販店だというのに巨大な売り場面積を占めるガンプラコーナーを散策し始める。
ガンプラというのは、見ているだけでも楽しい。
サンプルを飾るショーケースの中にはガンダムマーカーの塗料をエアブラシで吹くことができる画期的なアレで全塗装が施された作品……黒地のゴールドフレーム天ミナを天ハナに塗り替えたものが展示されていた。
ガンダムマーカー。部分塗装とお家塗装派の共である彼らの中における白のそれが牛乳と揶揄されていた時代があった。
だが、そんな赤で成形された足の甲を白く塗るためにマーカーを使って涙を流したビルダーたちが数多いた時代は最早遠く、その濃い成形色ですら隠蔽して塗膜を乗せられるほどにガンダムマーカーの白色は劇的な進化を遂げている。
秋乃はそんな時代に生まれたわけではないが、その塗装に臭いのきついラッカー塗料を使っている以上集合住宅では迂闊にエアブラシを起動できない。
一応そういう人のための制作スペースでありガンダムベースの制作ブースなのだが、ガチで気合を入れて作るものとは別に、少し肩の力を抜いてガンプラを作りたくなる時もあるにはある。
そのため、ささっと積みプラを消化してしまうなら色の足りない部分をマスキングして、これでサッと塗ってからトップコート、という仕上げをするのも悪くはないのではないかと、そんなことを秋乃が考えていた時だった。
「お姉さん、ガンプラが好きなんですか?」
ふと、甘く問いかける声が秋乃の耳朶に優しく触れる。
声がする方に振り向けば、そこには大体、ダイバールックの外見としてのチィと変わらなさそうな年頃の女の子が小首を傾げて秋乃の瞳を覗き込んでいる姿がある。
金髪をポニーテールにまとめあげたその少女にどこか、小さな同居人の面影を見出しながら、気付けば籠の中に入れていたストライクダガーだけではなく、再販がかかったキットとストライクダガー以外の本命──本来はこっちが目的でここにきたのだ──があることに気付いて苦笑しつつ、少女へと言葉を返す。
「ええ、大好きですよ。ところで貴女は? お父さんとお母さんはいらっしゃらないのですか?」
「んー……お父さんとお母さんはね、洗濯機のコーナーにいるから、弓彦に来てもらってるんだけど、弓彦もガンプラが好きだから、今はレジにいるの」
ちょうど先ほど、ストライクダガーを三機抱えてレジに並んだ、秋乃とそう年頃の変わらない少年を指差して、少女はどこか困ったような笑みを浮かべつつ、秋乃の問いかけにそう答えた。
「では、抜け出してきたのですか? ダメですよ、逸れてしまっては危険です」
「あはは、お姉さん優しいんだね。でも密航と脱出はね、鈴の得意技なの。生まれて一回も迷子になったことないんだよ?」
「……なんと」
まるでクロスボーン・ガンダムだ。
密航が得意だと言ってのけただけではなく、生まれて一度も迷子になったことがないと自慢する少女に、割と方向音痴で駅から徒歩五分の位置にある大学のキャンパスに三十分かけて辿り着いた己の不甲斐なさを嘆きながらも、秋乃は素直に称賛の言葉を送る。
とはいえ、危険なことには変わりがない。そして、レジへと伸びる長蛇の列が動くこともそうない。
「鈴ちゃん、でよろしかったですか」
「うん、鈴は鈴だよ?」
「……本当なら、弓彦さんのところに戻った方が良いのです、私も……悪人でないとは限らないのですよ? よろしければ洗濯機のコーナーまで案内しましょうか?」
弓彦が並んでいて退屈だというのなら、せめて両親の元に送り届けるのが年長者としての義務というものだろう。
秋乃は鈴と名乗った少女へと手を伸ばしてそう提案するが、歳不相応に老成した様子を見せる彼女はううん、と首を横に振る。
「あなたの提案はとってもありがたいんだけど……鈴もガンプラを見ていたいから、だって弓彦が大好きなんだもの」
「……大事な人なのですね」
「うん! だって弓彦は鈴の将来のお婿さんだから!」
屈託のない笑顔でそう答えてみせる鈴だったが、聞いている人が聞いていれば即座に110番を押されかねない案件だ。
とはいえ、鈴の身なりは極めて綺麗なものに纏まっていて、その言葉遣いからも育ちの良さが窺える以上、あの少年は許婚とかそういう間柄にあるのだろう。
鈴の言葉を聞いていたのが自分だけだったことに感謝しつつ、弓彦がいつでも見られる位置取りを心がけながら、秋乃は彼女の願いを叶えるようにガンプラコーナーを巡ることにした。
平積みにされた再版キットの塔も、今は余裕があるように見えて明日ごっそりと削られているなんてこともこの界隈では珍しくない。
あれはなに、これはなに、という鈴の無邪気な質問に答えながらも、「掘り出し物」を買い物カゴに突っ込みたくなる衝動をグッと堪えた上で秋乃は一つずつ丁寧に説明していく。
「これは……ザンネックですね。Vガンダムに出てきた機体で、地球の上から地球にある目標を撃てる恐るべき機体なのです」
本編での活躍もさながら、「機動戦士クロスボーンガンダム ゴースト」において、無慈悲にもローズマリーの乗ったVガンダムを撃ち抜いてみせたその悪役としての活躍を思い返して苦い顔をしつつも、大きな箱を手に取って問いかけてきた鈴の質問に秋乃は答える。
あの作品は全体的に「命」の重さと、「戦場」の狂気でそれがいとも容易く失われていく無情さを描いた名作だ。
Vガンダムの時代をベースとしていることもあって、その、時代という基盤が徐々に崩れていく危うさの中で人々がなんとかそれでも宇宙と地球を支えようと手を伸ばし、命を奪っていく狂気に立ち向かう姿には秋乃も受験の時に勇気付けられたのを覚えている。
「ふうん……お姉さん、この機体は好きじゃないんだね」
「……ええ、好きな方には申し訳ないのですが……思い入れのあったキャラクターを葬ったモビルスーツなので」
「じゃあ、こっちはなんていうガンプラなの?」
ザンネックを棚に戻すと、鈴はその隣にぽつねんと佇んでいたキットである、「HGUC クロスボーンガンダムX0フルクロス」を手に取って、秋乃へと再び無邪気に尋ねてくる。
奇しくも、その機体もまた秋乃にとっては思い入れが強い、否、思い出そのものだと言ってもいいものだった。
正確にはフルクロスではなく本体のX0の方なのだが、それはかつて「ザ・シルバリィ」を束ねていた男が使っていたガンプラだ。
そしてフルクロスの代わりにV2アサルトのユニットを組み込んだミキシングモデル、「アサルトゴースト」は「銀の幽霊」としてマスダイバーたちからは恐怖の象徴となり、そして秋乃たちのように同じ旗の下に集ったダイバーたちからは畏敬の象徴となった機体だった。
秋乃は今でも夢に見る。
初心者だった自分を追い詰めて嬲り殺しにしようとしていたマスダイバーの膝関節を薙ぎ払うことで再生時間の間足を止めさせた上でコックピットへと無慈悲にもその「クジャク」を突き立てて葬り去った銀の幽霊とその主人であるビーティスのことを。
シルバリィについてだが、秋乃にとってはそれはもう、あの「ノイエ・シルバリィ」戦を経て吹っ切った過去の残滓でしかない。
故にダイバールックだって「リビルドガールズ」の盾として自らを規定した服装に装いを改めている。
だからといって、かつて自分が抱いていた尊敬や憧れが完全に消えたわけではないのだ。
自らの中に息衝いていた憧れと過ちの欠片を慈しむように笑みを浮かべながら、秋乃は鈴の問いかけにザンネックの時とは違う、優しい声音で答えてみせる。
「クロスボーンガンダムX0フルクロス……漫画に出てくる機体ですね、面白い漫画です。フルクロスの部分が新規金型なので色分けがかつて出ていたX1フルクロスよりも向上しているので組みやすいかと」
ガンプラは確かに安い。
しかし、安いから手に取ってもらえるという販売戦略上どうしても生じてしまう枷のようなものは確かにあって、フルクロスのようにあまりにも薄く、細かな色分けが難しいものはHGブランドではどうしてもシールに頼らざるを得ない。
江戸の仇を長崎で討つがごとく、大体そういうのはRGブランドでリベンジを果たされたりするのだが、X0フルクロスの場合は既にX1フルクロスを持っている客にもアピールする狙いなのか、実質的な値上げを行ってでもフルクロスの色分けを向上させたことをアピールポイントとしているのだ。
「お姉さん、クロスボーンガンダムが好きなの?」
「そうですね……好き、ですよ。思い出のある機体なのです」
「ふうん……確かに目を見るとわかるね、じゃあ鈴はこのフルクロスを買っちゃう! お父さん、お母さん!」
鈴は秋乃に手渡していた箱を受け取ると、家電売り場にいるはずの両親へと向けて呼びかける。
いくらなんでもそれは通じないのでは、と秋乃ら訝り小首を傾げた。
だが、次の瞬間にはどういうわけか彼女の父母と思しき、日に焼けた健康的な肌にサングラスの男性と、癖のある金髪を結えた、鈴とよく似た女性がガンプラコーナーへと歩いてくる姿がある。
「ね、凄いでしょ? 鈴、わかるんだよ」
「え、ええ……」
まるで、最初から来ることがわかっていたかのような口ぶりでえっへん、と胸を張ってみせる鈴だったが、ニュータイプというのはこのようなことを指すのだろうか。
秋乃は人智で説明できる範囲を超えたその感覚に驚きを隠せずに冷や汗を流していたのだが、鈴の両親が近くに訪れた時にもまた、何か第六感じみたものが脳の中心をくすぐるような、むずむずとした感じを覚えていた。
「鈴ちゃん、大丈夫だった?」
「へーきだよお母さん、あのお姉さんがガンプラについて教えてくれたの!」
母に駆け寄った鈴はその身体に抱きつきながら、買い物カゴを抱えて呆然としているアキノを指してそう言った。
「ふむ……?」
その唸り声が聞こえたのは、教えてくれた、というよりは訊かれたことに答えていただけなのだが、と秋乃が何か言葉を紡ごうとした瞬間だった。
サングラスをかけた男性──恐らく鈴の父親は、秋乃の顔を覗き込むなり、まるで旧知の人間の中から符合する顔を見分けるように、組んだ指へと顎を乗せて考え込むような仕草を見せる。
「あの、失礼ですが私に何か……?」
「ああ、すまないね。どこかで君に似た女性を見たことがあったから……鈴の面倒を見てくれて感謝するよ」
「いえ、私は……ただ鈴ちゃんから訊かれたことに答えていただけですからなんとも」
「ははは、それだけでも十分さ。鈴は知りたがりだからね。彼女の問いに答えてくれるだけ、親としてはありがたいのさ」
あっけらかんと笑いながら言葉を紡ぐ鈴の父親の言葉に、秋乃はどこかで似ているはずもない鈴とチィを重ね合わせながら、子供の面倒を見るというのはこういう感覚なのだろうか、と考えを馳せる。
とはいえ、チィの口から出てくるものは金、金、金と銭ゲバとしては恥ずかしくないものであるため、鈴のように世間擦れしていない無邪気なそれとはまた違うだろうが──
母に連れられて、X0フルクロスの箱を大事そうに抱えながらレジから伸びる長蛇の列に入っていく鈴を見送りながら、秋乃が物思いに耽っていた時だった。
「X0か……昔使っていたのが懐かしいな」
「使っていたのが懐かしい? というと、貴方もGBNを?」
「うん、まあね……とはいえおれは引退勢なんだけどさ」
サングラスを外して、きっと娘が向かおうとしている先を見ているかのような眼差しでレジに並んだ彼女たちを見つめながら、まるで帰ってこない誰かを待ち続けるような口調で鈴の父親はそう零す。
事情があってGBNを訪れる者がいるなら、事情があってGBNを去っていく人間がいる。
だからこそ、それについて訊くのは野暮だと秋乃にもわかっていた。
誰の過去も気にしない。誰の事情も気にしない。
ただ、一緒に昼ごはんを食べるような、そうじゃなければ放課後にろくに活動もしていない部室に入り浸っていつまでも他愛のない言葉を交わしているような、そういう寄り合いが「リビルドガールズ」であり、それこそが特に掟や規定を設けているわけではない自分たちにとって唯一の、暗黙の了解のようなものだった。
だからこそ、秋乃は鈴の父に多くを問うことはしない。
ただ一言、きっと同じ目をしているのなら、していたのなら、それだけで通じるバベルの言葉で、尋ねるのだ。
「……ガンプラは、お好きですか?」
「ああ……妻と娘とおんなじぐらいにね」
復帰してみるのも悪くはないのかな、とサングラスをかけ直してからからと笑いながら、鈴の父親──飛田明人は、秋乃の方へと振り返り、ひらひらと手を振りながら去っていく。
「……アキノ、君は……おれの亡霊から解放されてくれたみたいで良かったよ。いい仲間に出会えたんだな」
「……はい、ビーティスさん」
「それは……もういない男の名前だ。仲間と一緒に、元気でな」
どことなくわかっていた。
一足先に会計を終えていた、弓彦と呼ばれる少年を説教するビーティスの、明人の顔に憂いはない。
きっと秋乃にかけた、いや、「アキノ」へと投げかけたその言葉こそが、彼にとって、最後の禊となったのだろう。
もしかしたら、明人はGBNに戻ってくるのかもしれない。
それでも、「ビーティス」というダイバーは帰還しない。
不思議だと自分でもわかっている。だが、秋乃はそれに対して悲観することはなく、むしろどこか晴々しい気持ちさえ抱いていた。
「……今まで、ありがとうございます」
返しきれない恩があった。重ね続けてきた罪があった。
それでも、その言葉こそがビーティスにとっての禊であるなら、それは秋乃にとっては一つの赦しに他ならなかったのだ。
そうして秋乃は、いつかくるお別れ、中途半端に終わってしまったそれを見送った。
こっそりと、もう一つだけ他のキットの箱の後ろに隠されていたクロスボーンガンダムX0フルクロスを手に取って買い物カゴへと入れて、レジへと向かいながら。
しかし、その顔にあるものは憂いでも涙でもなく、一つの──蕾が綻んだような笑顔に、他ならないのだった。
チィは激怒した。必ずあの金銭感覚に無頓着な鈍感女を叱らなければならぬと決意した。
チィには積みプラの塔を作る気持ちがわからぬ。銭ゲバとしてリアルでは真面目に接客をして、GBNではアコギな商売もやりながら金を稼いで暮らしてきた。
けれどもチィは、ガンプラの思いについてはELダイバーだからこそ敏感だった。
チィは家計簿に抱え込んだボールペンで記帳しながら、正座させたアキノを前にして、あからさまに大きな溜息をついてみせる。
「なぁ秋乃、こいつはどういうことなのか説明してくれよ」
「……買ってきたガンプラです」
「こいつらは?」
「先月以前に買ったガンプラです……」
「積むなら組めや、あいつら泣いてんぞ」
「ち、違うのですチィ、時間が……時間とかが……」
「あ?」
「はい、組みます……」
有無を言わさず目の幅涙を流してニッパーを握る秋乃に、だからチィはママでもなんでもねえんだぞ、と嘆息しつつも、その浪費を咎められない自分に甘さを覚えて、ばつが悪そうに肩を竦める。
人はなぜガンプラを買うのか。
多分買って家に帰って箱を開けるまでが一番楽しいから。
そんなのはチィにとっては戯言ではあるのだが、それもまた、ビルダーたちにとっては一つの真理なのかもしれない。
「縦一列組むまで次のガンプラなしな」
「そんな、殺生な……」
「うるせえ、そんなんだから食パンにジャム塗ったもん食って生きてんだろうが、むしろなんでその食生活で色々デカくなったんだよ秋乃は」
「胸は関係ないでしょう!?」
「うっせバーカ、悔しかったら積みプラ消化してから言いやがれ」
「ぐぬぬ……」
積みプラ。それは願いによって形作られた星積みの塔。
お持ちなさい、貴方の望んだそのガンプラを。
しかして積むだけでは天井まで届く罪になる。
だからこそ、そこに込めた願いや祈りへの禊として、人は今日もどこかで積みプラを消化しているのだ。
そう、それこそ今の秋乃とチィのように。
そしてそれは、そんな素朴な願いと祈りが交錯する、二人のありふれた日常の一幕に他ならないのだった。
欲しいのですね、しかし欲しいと満たされたから積んでしまう、わかります(キリン)
【飛田明人(トビタ・アキヒト)】……ダイバーネーム「ビーティス」のリアルの姿であり職業は銀行員。妻の鈴音と娘の鈴、そして息子である明浩を誰よりも何よりも大事に溺愛しており、鈴が将来のお婿さんとして連れてきた近所の大学生、本渡弓彦に対しては認めるか社会的にころころするかの間で揺れ動く子煩悩なパパ。